世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第926信(2008.10.13)

  • 「あの時、声を上げなかった」=ラビの批判にバチカン当惑
  • バチカンで2000人が聖書朗読マラソン
  • 教皇、避妊反対の姿勢を改めて明示
  • モルモン教会がローマなどに神殿建設計画
  • ロシアは米国務省の宗教報告書を拒否
  • ペンシルベニア教区が米聖公会離脱決定
  • ドイツで初めて福音派神学校が大学認可
  • 聖墳墓教会が崩壊の危機
  • 《メディア展望》

◎「あの時、声を上げなかった」=ラビの批判にバチカン当惑
 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世が「教会の生命と使命における神の言」を主題に召集した、世界司教会議(シノドス)は10月6日から実質協議に入った。
 現代のカトリック者にとっての聖書の意義を扱う今回のシノドスには、カトリック以外の各教会代表が参加するほか、ユダヤ教から初めてイスラエル・ハイファの大ラビ、シェアー=ヤシュフ・コーエンが、ユダヤ人が聖書をどう読み、理解するか、について講演するというので注目を集めていた。
 講演でコーエン氏は、聖書についてユダヤ教の理解を語った後、ホロコースト(ナチによるユダヤ人大量殺害)に触れ、「多くの人が、偉大な宗教指導者を含め、わたしたちの仲間を救おうとして声をあげることをせず、沈黙を守り、極秘裏に手を差し伸べる道を選んだ、という悲しく苦しい事実を忘れることは出来ない。わたしたちはそれを許せず、また忘れることは出来ない。あなたがたが、欧州でつい昨日に起きたことに対するわたしたちの痛み、わたしたちの悲しみを理解することを望む」と、教皇ベネディクト十六世始め、枢機卿、司教ら253人の参加者を前にして語った。この部分は準備文書には盛り込まれていなかった。
 コーエン氏が当時の教皇ピオ十二世に直接言及はしなかったのは、枢機卿やバチカン(ローマ教皇庁)当局者の中の古くからの友人に配慮したとも見られるが、同氏が、戦時下の教皇を聖人にする計画には反対だ、と語っていたことは確か。
 コーエン氏は、シノドスが9日にピオ十二世の死去50周年を記念する公開ミサを行うことを知らされていたら、シノドスでの講演を引き受けなかったと、講演直前にロイター通信に述べていた。「同じ集まりの中で行われるとは知らなかった。もしも知っていたら、あの痛みがなおここにあると思うので、来るのを控えたかもしれない」と言う。
 コーエン氏の発言にバチカン側は当惑を隠さず、無視を貫いている。ラビがシノドスで講演するのは「革新的」と報じていた、機関紙ロッセルバトレ・ロマノは、コーエン氏がシノドスにいたことすら無視するように黙殺した、と英カトリック週刊誌『タブレット』が指摘している。
 バチカン当局は、一方でピオ十二世の戦時下の活動を擁護、批判には取り合わない構えのようだ。ユダヤ人との宗教関係委員会の委員長ヴァルター・カスパー枢機卿は、ユダヤ人をホロコーストから救うために、教皇は出来ることは何でもやったと確信している、と語った。


◎バチカンで2000人が聖書朗読マラソン

 【CJC=東京】バチカン(教皇庁)で10月5日から7日間、1000人以上が交代しながら「創世記」から「ヨハネの黙示録」まで聖書全巻(73巻)を休みなく朗読する「聖書、昼も夜も」が、サンタ・クローチェ・イン・ジェルサレンメ教会(エルサレムの聖十字架教会)で行われた。最初の朗読は教皇ベネディクト十六世が行った。
 朗読マラソンは、聖書をテーマにした世界代表司教会議(シノドス)の開催合わせて、イタリア放送協会(RAI)と教皇庁シノドス委員会・文化評議会が共同企画、同時中継された。
 朗読マラソンは、昼夜にわたり聖書を読み上げるものだが、一つの書から次の書に移る時には交唱が入るほか、1日数回、聖歌による中断もあった。
 朗読者は一般信徒、聖職者や修道者らを中心としているが、他のキリスト教会や、ユダヤ教、イスラム教信者たちも参加した。年齢、国籍、職業も様々。


◎教皇、避妊反対の姿勢を改めて明示

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は10月3日、ローマで開かれていた結婚と家庭に関する国際会議の参加者に宛てた書簡で、避妊が神からの贈り物を受けるための夫婦間の愛を否定することを意味すると述べ、避妊反対の姿勢をあらためて明らかにした。
 1968年に当時の教皇パウロ六世が全司教に宛てて避妊反対の回勅「フマーネ・ヴィテ」を出してから今年は40年目にあたる。パウロ六世は、信者の既婚男女が生活困難にある場合、受胎可能期に性的関係を避ける避妊法は認められるとの見解を示したもの。
 この7月には英、米、仏、加、ブラジルなどのカトリック団体60以上が、教会の産児制限反対は、女性の生命を危うくし、数百万人をエイズ(後天性免疫不全症候群)感染の危険にさらすとして、教皇に姿勢変更を求める公開書簡を発表していた。
 パウロ六世が避妊反対の立場を明らかにした当時、ピル(経口避妊薬)の普及により性の自由が拡大しつつあった。
 回勅が示された結果、全世界で11億人とされるカトリック者の中から数百万人が教会を去ったと言われ、聖職者にも、教皇が決定した絶対の真理と位置づけられるこの文書の扱いについて困惑が見られた。


◎モルモン教会がローマなどに神殿建設計画

 【CJC=東京】末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教会、信徒数1300万人)のトーマス・モンソン総裁が10月4日、ローマなど5カ所に神殿の建設計画を発表した。同派の第178回半年総会の席上、明らかにしたもの。
 ローマでの神殿建設はイタリア初で、地中海地域でも初めてとなる。イタリアの信徒数は2万5000人を超えているという。
 ローマの他、カンザスシチー、フィラデルフィア、コルドバ(アルゼンチン)、カルガリー(カナダ)が予定されている。


◎ロシアは米国務省の宗教報告書を拒否

 【ワルシャワ=ENI・CJC】(ジョナサン・ラクスムーア記)ロシア外務省は、宗教の自由に関する米国務省報告書「国際宗教の自由レポート」2008年版の指摘を否定する声明を発表した。報告書は、ロシアで少数派の信仰が不公平な扱いを受けている、と言う。
 「ロシア正教会の特権的地位に関する指摘は、またも誇張されたものだ。複合国家の米国がカトリックのクリスマスを公式に祝っていないからと言って、正教会のクリスマスがロシアで休日とされているのをその"証拠"としている」と外務省は声明で反論している。
 米国務省報告書は、ビルマ、中国、北朝鮮、イラン、スーダン、エリトリア、サウジアラビア、ウズベキスタンを「特に懸念のある国」としたほか、宗教的権利が「大きく懸念」する24カ国の中にロシアを入れている。
 国務省報告書は、ロシアの最近の改善状況を指摘している。それには当局が宗教指導者と積極的に接触するようになったこと、公式な人権委員会が問題に関心を持つようになったことが触れられている。しかし、連邦や地方当局は、プロテスタント、カトリックを含めて、宗教的少数派の権利をなお制限している、と報告書は断定している。「政府が一般に人口のほとんどのために宗教の自由を尊重する一方で、場合によっては、特定のグループには制限を課し、政教分離や、法律の前ですべての宗教の平等を尊重したわけではない」と報告書は指摘している。
「ロシア正教会の聖職者の何人かは、カトリック、プロテスタントなど非正教派の存在が拡大することに、公然と反対している」と言う。
 外務省声明は、「特定の宗教団体の活動が法制度の枠組を越えるべきでない」ことはロシアでは受け入れられている、と報告書について指摘、「法律が侵され、人々と社会への脅威があるならば、国家は黙って傍観することは出来ず、適切な行動をとらなければならない」と付け加えた。
 外務省声明は、米国報告書に対し、非政府組織に関する最近の法改正が「登記や責任の要件を簡素化し」たものだ、と指摘した。それなのに「国務省はまだ、現在の規制が"非常に負担となっている"と不満を言う」としている。「わたしたちは、米国務省の専門家にとって、1000年以上も正教会とイスラムが共存し、ユダヤ教徒と仏教徒が何世紀にもわたって発展し、カトリックやさまざまなプロテスタント運動が追随者を見出して来たロシアの歴史を理解することが常に容易なわけではないことは理解する」と述べている。


◎ペンシルベニア教区が米聖公会離脱決定

 【CJC=東京】米聖公会(英国国教会)では聖書理解や同性愛者への姿勢で保守的とされているピッツバーグ教区(ペンシルベニア州)は10月4日、同聖公会からの離脱を、240対102、棄権8の圧倒的多数で決定した。
 AP通信によると、ヘンリー・スクリヴェン補佐主教は、「わたしたちの投票で、世界的なアングリカニズム(英国国教会主義)の主流にピッツバーグ教区を戻ることを喜んでいる」と語った。
 米聖公会のジェファーツ・ショリ総裁主教は、「メンバーでありたいと望むものすべてのための場所はある」と、言う声明を発表、分裂が「アングリカニズムの中の尊重された伝統」ではなく、「異端以上の言語道断な誤りと考えられる」と指摘した。
 ピッツバーグ教区は11年間、ロバート・ダンカン主教の指導下にあったが、同氏はこの9月、主教会によって解任された。今回の離脱決定には、同情票が集まったと、見られる。


◎ドイツで初めて福音派神学校が大学認可

 【CJC=東京】独フランクフルト近郊ギーセンにある「自由神学的アカデミー」(FTA)が「大学」として国家認定を受けた。福音派神学校としては初めて。
 ドイツの大学神学部や神学校の多くは、自由神学の流れに沿っているが、1974年設立されたFTAは、聖書を神の誤りない言葉と見る。
 神学修士課程と神学博士課程を設置する計画。現在、専任講師15人、学生150人。バプテスト派神学者ヘルガ・シュターデルマン氏が校長を務めている。
 ドイツ、オーストリア、スイスのドイツ語圏などに、福音派の神学校、聖書学校が約50カ所あり、3000人が学んでいる。


◎聖墳墓教会が崩壊の危機

 【CJC=東京】エルサレムの聖墳墓教会の屋根上にある歴史的なデア・アル=サルタン修道院(エチオピア正教会)が崩壊の危険にある。イスラエル紙ハアレッツが報じた。
 礼拝堂2カ所と修道士の居室が崩壊すると、そこに住んでいる修道士や多数の観光客を傷つけるだけでなく、聖墳墓教会自体にも影響を及ぼしかねない。
 このほど構造を調査した技術者は、「人命の危険」があると述べた。電気関係や排水にも問題があるという。
 2004年、事態が緊迫する前に、イスラエル内務省は、修理費を負担する、と述べた。しかし司祭が居住しているエチオピア正教会と、所有権を主張するコプト教会の間の長年にわたる紛争のため、修復を可能にするための合意に達しなかった。
 内務省の姿勢は、それぞれが所有権を主張する各派の間で問題を解決するのが先決としている。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(10月12日)=https://www.cwjpn.com
★2008年度特別臨時司教総会=世界人権宣言60年で=司教団メッセージ12月に=列福後、全教区で感謝の祈願も
★神戸・たかとりのペーパードーム=移築完了、台湾"新生"

★日本カトリック看護協会=寄り添う看護目指して=全国大会で使命考える
★死刑支持は信仰の否定=バチカン高官が指摘
★対話集会=日本キリスト教協議会(NCC)/カトリック=殉教者の生き方問う

  =キリスト新聞(10月11日)=https://www.kirishin.com
★祈り、行動する宗教者=「九条」護持・発展への誓い新た=第4回平和巡礼に400人
★金融破綻受け訪問者増加=ウォール街の「悪夢」に教会は?
★統一協会関連会社を摘発=「がん治る」と高麗人参売る=大阪
★日本福音ルーテル社団・日本福音ルーテル教会=カンボジアで青年ら交流
★"パウロが回心したように"=「黙示録」題材に伊・写真家がコラージュ

  =クリスチャン新聞(10月12日)=https://jpnews.org
★インド・ハリアナ州=「子ども村」建設着々=家庭生活、教育、職業訓練を提供=売春、麻薬...狙われる少年たち
★中国=米国務省「宗教の自由」報告書に強い不満
★信徒、教職らの交流深め宣教の活力に=東海宣教会議
★日本伝道者協力会=25年の活動に幕=伝道者の研さんに尽力
★OMF総裁招き世界宣教の夕べ=東アジアに900人の宣教師を=日本総主事に管家庄一郎氏

  =リバイバル新聞(10月12日)=https://www.revival.co.jp
★世界の少数民族が集合=イスラエルでWCGIP開催
★タイ=少数民族が聖書カバー製作=フェアトレードを実践


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