世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第925信(2008.10.06)

  • カトリック教会の司教会議開催
  • 教皇、カステルガンドルフォからバチカンへ
  • 「新しい技術、新しい関係:尊重・対話・友情の文化の推進」=広報の日主題
  • インドでテロ続発、キリスト者への襲撃止まず
  • 金融破たん、英国国教会の財政は?
  • ムハンマドの妻を描いた小説の英出版元で火災、3人逮捕
  • キリスト教ネットブロガー版の『十戒』
  • 聖書に関する記事を書く時のガイド、英で刊行
  • 《メディア展望》

◎カトリック教会の司教会議開催

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は10月5日、「教会の生命と使命における神の言」を主題に召集した、世界司教会議(シノドス)開催のミサをローマの「場外の聖パウロ聖堂」で行った。シノドス開催は教皇が2005年に着座以来2回目。
 現代のカトリック者にとっての聖書の意義を扱う今回のシノドスには、世界各地から司教250人が参加、3週間にわたって討議を重ねる。ただ中国本土の司教は全員出席しないとされ、バチカン(教皇庁)と中国との関係改善に進展がないことを示した。
 ミサの説教で、教皇は、今日、福音をより効果的に伝えるにはどうしたら良いのかを問う場としての会合で、神が参加者全てを助けられるように、と述べた。
 シノドスの準備書類では、聖書に対する根本主義的な取り組みを否定、聖書と科学との関係を、信仰者に明確にすることが求められている、という。
 今回は、イスラエル・ハイファの大ラビ、シェアー=ヤシュフ・コーエンが、ユダヤ人が聖書をどう読み、理解するか、について講演する。シノドスでキリスト者以外の講演が行われるのは、初めて。ラビ・コーエンは、シノドスで講演するように、との招きが「長年にわたる愛、共生、平和のメッセージをもたらす希望のシグナル」だと語っている。
 正教会の最高指導者コンスタンチノープルのエキュメニカル総主教バルトロメオス一世も講演する。英国国教会、プロテスタント諸教会からもオブザーバーが参加する。


◎教皇、カステルガンドルフォからバチカンへ

 【ローマ=CJC】教皇ベネディクト十六世は9月30日、夏の公邸カステルガンドルフォ離宮での滞在を終えバチカン(教皇庁)に戻った。
 教皇は7月2日にローマ近郊カステルガンドルフォ離宮に移り、オーストラリア、北イタリア・ブレッサノーネ、フランスなどへの訪問期間を除いて、9月末まで離宮に原則滞在した。


◎「新しい技術、新しい関係:尊重・対話・友情の文化の推進」=広報の日主題

 【CJC=東京】バチカン(教皇庁)広報評議会(議長=クラウディオ・マリア・チェッリ大司教)は9月29日、来年5月に記念される第43回世界広報の日のテーマとして、教皇ベネディクト十六世が「新しい技術、新しい関係:尊重・対話・友情の文化の推進」を選んだ、と発表した。
 カトリック教会が定める「世界広報の日」は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、映画などのメディアを通して行なわれる広報の重要性を認識し、これらの広報機関を用いて行う福音宣教について教会全体で考えることを目的としている。
 広報の日に向けての教皇メッセージは、今後発表される。


◎インドでテロ続発、キリスト者への襲撃止まず

 【CJC=東京】インドでテロが続発している。人口約11億人の宗教構成は、8割を占め、政治・経済・社会などでも優勢なヒンズー教に対し、イスラム教(14%)、キリスト教(2・5%)、シーク教(2%)、仏教(1%)などと、複雑。さらに地域によってその比率も異なり、都市部ではヒンズー教徒が半数以下のところもある。
 インドでは、地方・州によって「改宗禁止法」がある。出自(ジャティ)である宗旨を変えてはならない、としているが、実態はヒンズー教徒の改宗を阻止するためのもの。ヒンズー教徒の懸念が、ジャティを離れる改宗者の増大にあるのは、社会秩序の基盤が揺らぎ、ヒンズー教の優位を失わせることにつながる。
 イスラム教徒やキリスト者が「改宗禁止法」反対の声を上げること自体が紛争の原因にもなっているが、せめぎ合いの後、同法の改変、廃止を決めたところもある。
 今夏以降、爆弾テロが多発する異常事態が続いている。連邦政府は、イスラム教徒とヒンズー教徒の対立をあおる狙いが事件の背後にあると見ている。バングラデシュなどを拠点とするイスラム過激派組織の連絡団体『インディアン・ムジャヒディン』(IM)の犯行との見方もあるが、IMの実態は不明だ。
 ヒンズー教徒とキリスト者との対立は、キリスト者の多くがヒンズー教からの改宗者なことが、背景にある。東部オリッサ州では、1970年代に1万4000人弱だったキリスト者は現在約8万人という。ヒンズー教側には「再改宗」を勧める動きも活発化している中で、インドで伝道に力を入れている集団『ニューライフ・ミッション』の動きがヒンズー教徒の敵視を買ったと見られる。
 ヒンズー教過激派は、キリスト教宣教師が、無料で教育したり医療活動を行うことで、貧困層や最下位のカースト層を「買収」している、と言う。
 オリッサ州では、7月ごろから、農村地帯のキリスト者が襲われ、家を焼かれたり、少女が強姦殺人されるなどの事件が続発、一部のキリスト者が難民化している。8月に入って、キリスト者のデモ行進が行われたがいずれも平和的なものだった。23日、カンダマルでヒンズー教指導者ラクスマナンダ・サラスワティが射殺された。これがヒンズー教徒の怒りを買い、事態は泥沼化の様相を深めた。狙撃したのはキリスト者だと主張されたものの、マオイスト(毛沢東主義者)・テロ集団の幹部との説もある。
 オリッサ州で10月1日、キリスト者の住居300家屋以上が放火され、1人のキリスト者女性が殺害された。8歳の子どもを含む6人も重傷を負った。同州では、キリスト者に対する暴力が先鋭化した8月24日以来、10月1日までに、迫害で命を失ったキリスト者は60人。破壊された教会は178、放火された家屋は4600軒、被害を受けた教会系の学校は13に及ぶ。避難民は5万人以上で、負傷者の数は約1万8000人に上った。


◎金融破たん、英国国教会の財政は?

 【カンタベリー(英)=ENI・CJC】(トレバー・グランディ記)ロンドン証券取引所のアナリストは、英国国教会に、投資状況を検討するよう助言している。カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏ら教会指導者が市場の統制強化を要求した後だけに、それが自らの投資にどう影響するか、を考えるのは当然だというもの。
 「教会が、十分な利潤を期待するなら、低リスク、低成長を言うことは出来ない。資産構成を広げる必要がある」とアナリストのマーク・スピークス氏は9月27日にBBCのインタビューで語った。
 カンタベリー大主教とそれに次ぐ霊的指導者とされるヨークのジョン・センタム大主教が金融市場の問題点を指摘したばかり。センタム大主教は金融トレーダーを「資産はぎ取り屋とと銀行強盗」との烙印を押し、ウィリアムズ大主教は、カール・マルクスの資本主義批判を部分的には正しかったとも語っている。
 英国の代表的なキリスト教シンクタンク『エクレシア』のジョナサン・バートレー氏は、英国国教会自身が、原油や商品相場で高利益を得ていたとする声明を出した。教会が、「2006年に為替変動による損失を回避する投資も行った」と言う。
 公営BBC放送に、「教会は物価上昇率を5%上回る収益を目指しており、最近10年間では年利9・5%を得ている。教会がより収益の低い投資をするという考えもある」と、バートレー氏は語った。
 英国国教会報道事務所のルイス・ヘンダーソン氏はENI通信に、教会の倫理的投資顧問団が、株式貸しの手法を検討するよう依嘱されている、と語った。
 大主教会議のスティーブ・ジェンキンズ広報担当は、『エクレシア』の声明が「多くの点で誤解を招く」と言う。教会の財務委員会は、短期の収益を期待しているのではなく、鉱山、原油など資産構成を広くし、倫理方針に従って投資している、と付け加えた。


◎ムハンマドの妻を描いた小説の英出版元で火災、3人逮捕

 【CJC=東京】ロンドン警視庁(スコットランド・ヤード)は9月27日早朝、3人の男を放火の疑いで逮捕した。
 ロンドン北部イズリントン地区のロンズデール・スクエアにあるビルで小規模火災が発生、大きな被害は出なかったが、このビルにはイスラム教の預言者ムハンマドの幼な妻アーイシャについて書かれた小説の出版元ギブソン・スクエア・ブックス社が入居していたと公営BBC放送は伝えており、警察はテロ容疑で捜査していた。
 問題の小説は、ジャーナリストのシェリー・ジョーンズ著「メディナの宝石(仮訳)」。初め刊行を計画していた大手出版社ランダムハウスは「暴力行為を駆り立てる恐れがある」として計画を白紙に戻していた。ギブソン・スクエア社は9月に入り、版権を取得したと発表、英連邦では10月出版を予定している。


◎キリスト教ネットブロガー版の『十戒』

 【ロンドン=ENI・CJC】キリスト教関係のインターネットブログを発信しているブロガーの中には、急いで発信したために、後で後悔する経験を持っている人も多い。その危険を避けるための指針が必要だ、と英国でネットブロガー版の『十戒』が登場した。
 出エジプト記の『十戒』と違って、サイバー版は石の板にではなく英福音同盟のウェブサイト上に置かれている。
 日記や発信者の思いを書き込むブログの発信者は、他人の名誉を傷つけたり、そのコンテンツ(中身)を盗んだりしてはならない。さらに偽証したり、心の中のことであっても姦通したり、ブログに偶像を作るべきではない、と戒めが上げられている。
 「私は、ブログ世界を愛してはいるが、家族のめんどうを見なければならない時に、ブログを発信するなど、ブログに生活まで支配されがちだ」と、同盟のクリシュ・カンディア宣教部長は言う。そこで18歳から87歳まで幅広いブログ仲間と『十戒』を作り上げた。
 「このアイデアは雨降りの休日に出てきた。ブログで何を言うべきか考える前に、まずブログしようという誘惑があることに気が付いた。そこで始めていたら、誰かを傷つけたり、中傷しかねないかも知れなかった」とカンディア氏は言う。
 結成したグループの目的は、最善の行動が出来るような指針を作成すること。福音派が共同体作業をする時、意見の違いを友好的にどう克服するかについてまとめられた福音同盟の1846年指針を基盤にした。
 聖職者、10代の若者、80歳になる身上相談の女性回答者などのブロガーが顔を合わせて『十戒』を徹底的に議論したという。
 同盟の『十戒』は次の通り。
(1)あなたのブログをあなたのインテグリティ(完全性)より重視してはならない。
(2)ブログのアイドル(偶像)を作ってはならない。
(3)罪が現われないように、とスクリーン・ネーム(ブログで使う名前)を悪用してはならない。
(4)ブログから1週間に1日は離れて、安息日を覚えるべきである。
(5)仲間のブロガーを敬い、その誤ちを過大視しない。
(6)他人の名誉、名声、または感情を損なってはならない。
(7)あなたの心の中で姦通したり、それを容認するためにウエブ(インターネット)を使ってはならない。
(8)他人のコンテンツを盗んではならない。
(9)仲間のブロガーに対して偽証をしてはならない。
(10)あなたの隣人のブログのランキング(評価順位)をほしがってはならない。あなた自身のコンテンツで満足すべきである。


◎聖書に関する記事を書く時のガイド、英で刊行

 【ロンドン=CJC】英聖書協会が「聖書スタイル・ガイド」を刊行した。記事を書いたりテレビで話す際の決まりなどを盛り込んだ「スタイル・ブック」を持っている新聞社や放送局は多いが、聖書に関する記事に絞って、しかも聖書協会が作ったことは注目される。
 同時多発テロを契機に、世界中のメディアがユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三大一神教に注目するようになった。激変する政治、経済、社会状況を追跡する時に、その背景としての宗教に触れざるを得ない。さらにその聖典としての「聖書」に言及しなければならなくなった。欧米のメディアでは見出しに「聖書」が出て来ることもまれではない。
 英聖書協会が、聖書に関して正しい情報が伝わるように、とスタイル・ガイドを企画したのも、関係する動きが急進展している中で、記者がその動きについて行けるように配慮してのことと言う。
 インターネット時代とあって、ジャーナリストやブロードキャスターだけでなく、ネット上で発信する「ブロガー」も意識して、簡便なパンフレットの体裁で、いつでもすぐに利用されることを想定している。英国で活動している記者たちには無料贈呈しているが、ネット上でダウンロードも出来る。協会はさらに聖書に関するブログも開設した。
 「聖書スタイル・ガイド」は、当然のことながら英語だが、語順に従って、アブラハムからシオニズム、シオニストまで112項目を29ページに収めた部分が中心。ただ聖書自体についても、注解、翻訳などの解説も加えた。
 「特殊創造説とかシオニズムについて報じようとしている時、また新約聖書の書簡や使徒について知りたい時、手初めの役に立つことを願って作成した」と執筆者のデービッド・アシュフォード氏(同聖書協会開発部長は語った。
 「聖書スタイル・ガイド」では、イエスの誕生は本当はいつか、からインテリジェント・デザインは特殊創造説と同じものか、キリスト者は聖書の中の暴力的な個所をどう扱えば良いのか、といった問題も取り上げられている。特殊創造説について報じる時に、神が文字通りに6日で世界を創造したということに焦点が合いがちで、進化論を否定するために聖書を利用している、などの偏りを是正しようと企画された、という。聖書理解も広い視野に立っている。
 「聖書スタイル・ガイド」ダウンロードはhttps://www.bitemybible.com/files/style_guide.pdf
 聖書に関するブログはhttps://www.bitemybible.com


《メディア展望》

  =カトリック新聞(10月5日)=https://www.cwjpn.com
★長崎教会管区=外国人信徒セミナー=熊本=日本人信徒と「話し合う機会」=九州各県から参加、家族連れも
★インドの反キリスト者暴動=背後に「明白な謀略」=教会指導者らが指摘
★カトリック信徒の首相誕生=第92代内閣総理大臣に麻生太郎氏
★新しい宣教の担い手に=必要な神学教育は?=第20回 日本カトリック神学会
★死刑執行に抗議=カトリック正義と平和協議会=イエズス会社会司牧センター

  =キリスト新聞(10月4日)=https://www.kirishin.com
★韓国仏教界="宗教差別"で抗議=李明博大統領が遺憾の意=「キリスト教偏重」と僧侶ら
★徐正敏氏「民衆神学」の衰退憂う="日韓の新しい神学に期待"
★ユダヤ人と福音派=「転向」めぐり衝突
★プロテスタント「宣教150年」="キリストにあってひとつ"=来年に向け決起集会
★英国国教会=生誕200年で126年ぶり=ダーウィンに謝罪

  =クリスチャン新聞(10月5日)=https://jpnews.org
★第5回日本伝道会議プレ青年大会=次世代の宣教協力へ=超教派50教会から若者ら参加
★「宗教の自由改善せず」=米国務報告書=北朝鮮に言及
★WOGA JAPANリトリート=女性リーダーの意義、指針に言及=AEA議長キム・サンボク氏がメッセージ
★鬼頭梓氏逝去=図書館設計に高評
★サンデー・アデラジャ氏来日=関東・関西で講演=「私たちが『地の塩』として社会の腐敗を阻止する」

  =リバイバル新聞(10月5日)=https://www.revival.co.jp
★"地の塩"となり社会変革を=サンデー・アデラジャ聖会開催
★イスラエル=聖書世界を体験する=ヤッド・ハシュモナ


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             ........................... https://www.kohara.ac/church/

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