世界キリスト教情報 第924信(2008.09.29)
- 不安のウォール街で、頼りは宗教?
- ウォール街の苦難に教会どう対応?
- WCCがコビア総幹事の任期延長
- 中国は米国務省の「宗教の自由」報告書に強い不満
- オリッサ州の迫害にWCCが政府の介入要請
- ドイツでプロテスタント教会がユダヤ教礼拝堂に
- 使徒パウロと十二使徒の交流をテーマに、教皇一般接見
- ギリシャのカトリック大司教、教会の法的な平等扱い要求
- 《メディア展望》
◎不安のウォール街で、頼りは宗教?
【CJC=東京】9月15日、リーマン・ブラザースの破綻を契機として、あっと言う間に金融恐慌が「世界の中心」ウォール街ではビジネスマン自身を襲うことになった。こうなると、最後の頼みが宗教になるのも無理からぬことか。
周辺の教会やユダヤ教会堂など、ウイークデーの正午礼拝への出席者が普段より多かったと言う。
ロイター通信によると、「何せ明日の運命も分からない人たちだ。驚くことではない」と観光客にも人気のトリニティ教会(聖公会)のマーク・ボズッティ=ジョーンズ牧師は言う。「金融恐慌は、私たちの信仰を富に変えることも出来なければ、富を信仰に変えられないことを思い起こさせた」と19日正午礼拝の説教説教で語った。
7年前の同時多発テロの後と違うのは、あの時、生き残った人たちは、進むべき道を確信出来たが、今回は何をどうして良いかすら分からないということだろう。
普段なら平日には観光客やビジネスマン数人の姿しか見えないところだが、破綻以後は訪問者が増えている、とボズッティ=ジョーンズ牧師、仕事を失った人々から助けを求められてもいる。「人々は、ただそこに座り、祈るか、泣くか、疲れていることは間違いない」と言う。
少し離れた所にあるセントピーター・カトリック教会では「スーツを身に付けた人々の出席が増えたようだ」とピーター・マディガン神父は言い、あの9月11日の瓦礫の中から発見された十字架を記者に見せた。
ユダヤ教会堂は、ウォール街の人々のために夜も扉を開けることにした。
◎ウォール街の苦難に教会どう対応?
【CJC=東京】米国始め世界を襲った金融破綻。本拠とも言える「ウォール街」では、企業消滅に伴い、投資家は先行きを見通せず、経営者は相次ぎ高級マンションから退去しているが、一方で突如クビにされた従業員は、明日のこともわからず路頭に迷う始末。
「世界の他のどことも違って、ニューヨークで、私たちが吸う空気は、お金の分子で一杯」と、マンハッタンのミッドタウン地区にあるセントバーソロミュー教会(聖公会)のバディ・スターリングス牧師は9月21日の説教で述べた。その日の説教では、マタイによる福音書20章の最初にあるぶどう園で働く労働者の賃金をめぐる物語に触れたところが多かったと見られる。
米国の教会は、教会員の生活が不安になれば献金の減少が避けられず、、投資の収益急減にも頭を痛める。その一方で、苦難にさらされている人たちへのケアは欠かせない。
ウォール街の名所ともされているトリニティ教会(聖公会)は、「ストレス対策」と言う集会を9月22日から始めた。場所柄もあってか、ストレス対策の柱として、転職を掲げている。
ハドソン川の対岸ニュージャージー州ショートヒルズのクライスト教会では、転職支援を21年間も行っているが、普段なら40人ほどの参加者のところ、9月20日には、10代を中心に出席が急増したという。
◎WCCがコビア総幹事の任期延長
【ジュネーブ=CJC】世界教会協議会(WCC)はドイツ北部リューベックで開催した執行委員会で9月25日、後任の就任まで、サミュエル・コビア現総幹事との契約を延長する、と発表した。
後任総幹事は、来年8月26日から9月2日までジュネーブで開催される中央委員会で選ばれることになっている。
今年2月の中央委員会で、コビア氏が、総幹事としての再任を求めない、と発表したのを受け、後任選考委員会が組織されたが、加盟協会からの総幹事職務に関する質問への応答や、スタッフとの協議をこれまで行ってきたとされ、具体的な選考には入っていない。
「コビア氏が任期延長を受け入れてくれたので、新総幹事選考を十分に行える」とアルトマン・ウォルター中央委員会議長は語った。
総幹事職の内容が改めて10月に発表されることになっており、それを受けて具体的な選考に進むことになる。
◎中国は米国務省の「宗教の自由」報告書に強い不満
【CJC=東京】中国政府は、米国務省が9月19日発表した、各国の宗教の自由に関する2008年版報告書で、侵害が特に深刻な国として中国など8カ国を昨年に続いて指定したことに反発している。「中国は強い不満を持ち、断固、米国の非難に反対する」と外務省の姜瑜報道官は23日の声明で明らかにした。国営新華社通信が報じた。
米国務省の報告書は、中国について、8月の北京五輪期間中、当局が政府非公認の「地下教会」を閉鎖させたり、数人の外国人活動家を「違法な宗教活動をした」などとして拘束、ビザを取り消したりしたと報じられていることを指摘した。またこの1年で、チベット自治区や新疆ウイグル自治区の弾圧が強まり、3月にチベット自治区で起きた大規模暴動をきっかけにチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ十四世への批判が強化されていると指摘。寺院閉鎖、チベット仏教僧への愛国教育、追放などの弾圧にも言及した。キリスト教の伝道に対する干渉にも触れている。
◎オリッサ州の迫害にWCCが政府の介入要請
【ジュネーブ=CJC】世界教会協議会(WCC)とルーテル世界連盟(LWF)は、インド東部オリッサ州で、ヒンズー教徒による教会迫害が続発している事態を終息させるよう、連邦政府の介入を求める共同書簡を9月4日送った。
マンモハン・シン首相に宛てた書簡でWCCのサミュエル・コビア総幹事とLWFのイシュマエル・ノコ総幹事は、暴力の即時停止、法と正義の再確立、難民化した人たちの保護を訴えている。
◎ドイツでプロテスタント教会がユダヤ教礼拝堂に
【ユトレヒト(オランダ)=ENI・CJC】(アンドレアス・ハビンガ記)ドイツで初めて、プロテスタント教会がユダヤ教礼拝堂に衣替えした。
ドイツ北部ノルトライン=ヴェストファーレン州ビーレフェルトで9月21日、「バイト・ティクワ」(希望の家)と言う名のユダヤ教礼拝堂の献堂が行われた。
ヴェストファーレン福音教会のアルフレッド・バス牧師は、新礼拝所がプロテスタント・キリスト者のための「希望の家」でもあると挨拶した。
ビーレフェルトのかつてのユダヤ教礼拝堂は、1938年11月9日、ナチがドイツ全土でユダヤ教礼拝堂などユダヤ人の住宅、店舗などを襲撃した「クリスタルナハト」と呼ばれた事件の際に破壊された。バス牧師は「悲しみと深い恥」をもってそれを想起した。
600万人ものユダヤ人が殺されたとされる「ホロコースト」の時に、ヴェストファーレン福音教会はそれに直面することをしなかった、としてバス牧師は、かつてのプロテスタント教会がユダヤ教礼拝堂に転換したことの意味がますます深まる、と言う。
ドイツ・ユダヤ人中央協議会のシャルロッテ・ノブロック委員長は、新しいユダヤ教礼拝堂が「ビーレフェルトのユダヤ人生活の再生」を示すスもの、と評価した。
ビーレフェルトのユダヤ教徒は約300人。ノルトライン=ヴェストファーレン州には礼拝堂が19カ所あり、信徒総数3万2000。
ビーレフェルトの礼拝堂はこれまでのものが手狭になり、昨年パウル・ゲルハルト教会を購入した。改修費用は280万ユーロ(約4億3000万円)。改修には州とビーレフェルト市の財政支援があった。
◎使徒パウロと十二使徒の交流をテーマに、教皇一般接見
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、バチカンの聖ペトロ広場で9月24日、水曜恒例の一般接見を行なった。
バチカン放送(日本語電子版)によると、この日のカテケーシス(教会の教えの解説)で、教皇は、使徒パウロと十二使徒との交流について考察した。
パウロはイエスの同時代人であったが、イエスに直接会う機会がなかったため、ダマスコ途上における回心の後、イエスの最初の弟子たちに会う必要を感じていた、と教皇は述べた。
教皇はガラテヤの信徒への手紙に記された、パウロとイエスの弟子たちの何人か、すなわちケファ(ペトロ)、"イエスの兄弟"ヤコブ、そしてヨハネとの出会いに注目、回心後のパウロがイエス・キリストについて、特に聖体と復活について学んだことを指摘した。
パウロは使徒たちから異邦人への宣教に対する認証を得て、使徒たちから受け取ったすべての情報を忠実に伝えた、と教皇は説き、キリスト者の信仰は神話や概念から生まれるものでなく、教会生活における復活の主との出会いによって生まれるものであることを強調した。
◎ギリシャのカトリック大司教、教会の法的な平等扱い要求
【ワルシャワ=ENI・CJC】ギリシャでは少数派のローマ・カトリック教会指導者は、教会の法的認知を要求、数十年もの間、大勢を占める正教会と同等の権利を認められていないことに不満を述べている。
「長年にわたってカトリック教会の認知を拒否していることは、それが法律的な問題としてではなく、場当たり的で政治的なものなのだ」と、司教会議総幹のニコラオス・プリンテシス大主教(67)は言う。
アテネの新聞『エレフテロティピア』とのインタビューで、大司教は、閣僚を含め政治指導者との接触は「不公平ではないにしても、絶対的な無知から来る一方的なもの」になると語った。
カトリック教会は、ギリシャ総人口1040万人の97%を占める正教会とも公式な関係を維持していない。カトリック教会はギリシャには4大司教区を置き、信者は5万人のギリシャ人と在留外国人15万人で構成されている。
大司教は、カトリック教会が「事実上認められている」としながらも、国家との関係な不安な現状では、礼拝場所の新設が妨害されたり、歴史的な教会堂維持への助成もなかなか得られない、と不満を明らかにしたもの。
《メディア展望》
=カトリック新聞(9月28日)=https://www.cwjpn.com
★教皇 フランスを訪問=政治的会談から共同体司牧まで=多彩な日程こなす
★世界難民移住移動者の日=教皇メッセージ=若い難民の権利保障求める
★正義と平和全国集会=「へだての壁」越えよう=大阪教区内の学校も協力
★悲嘆(グリーフ)ケア研究所設立へ=来年4月、兵庫・聖トマス大学
★教会襲撃やまず=現地に漂う「無力感」=インド東部
=キリスト新聞(9月27日)=https://www.kirishin.com
★同志社神学協議会2008=信徒150人も参="会衆主義"の伝統再確認
★インド・オリッサ州=教会・修道院を焼き打ち
★教皇訪仏=発展の源に"み言葉と労働"=サルコジ大統領と会談=政教分離にも言及
★ミュージカル座=文化庁芸術祭にも参加=「ルルドの奇跡」10月に再演
★『うりずんの風』=映画化向け全国で公演="死と共に生を描く"
=クリスチャン新聞(9月28日)=https://jpnews.org
★インド大迫害=教会襲撃、信徒ら殺傷=福音派、カトリックが抗議デモ
★A・マクグラス博士来日=一神教批判への反論など講演
★第5回日本伝道会議1年前=15プロジェクトで課題浮き彫り
★インド大迫害=同盟基督が抗議声明=祈りのアピールも
★プロテスタント宣教150周年記念大会 決起=宣教的視点での使命と責任を
=リバイバル新聞(9月28日)=https://www.revival.co.jp
★インド・オリッサ州=迫害激化=他州へ拡大の危惧も
★教団教派を超え協力=日本プロテスタント宣教150周年記念決起大会
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