世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第922信(2008.09.15)

  • 教皇がフランス訪問、サルコジ大統領と会見
  • 「ヨーロッパ文化の源泉は神の追求」教皇、パリで講演
  • 中東紛争は「もう一つのアパルトヘイト」とコビア総幹事
  • ロシアに強い軍隊が必要、と正教会首脳が発言
  • 韓国仏教界が宗教差別、と李明博政権に抗議
  • 韓国大統領がキリスト教偏向で仏教界に謝罪
  • 米合同キリスト教会が航空運賃高騰でハワイ会議キャンセル
  • サイエントロジー教会、フランスで詐欺訴訟
  • 《メディア展望》

◎教皇がフランス訪問、サルコジ大統領と会見

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は9月12日、4日間にわたるフランス司牧訪問を開始した。
 教皇は、パリのオルリー空港に現地時間午前11時過ぎに到着、政府要人や、パリ大司教アンドレ・ヴァン・トロワ枢機卿ら教会関係者の歓迎を受けた。教皇は、ニコラ・サルコジ大統領と挨拶を交わした。
 教皇は、歓迎式典が行なわれるパリ市内の大統領官邸エリゼ宮殿に向かい、正午頃、パリ市内の大統領官邸で歓迎式典に臨んだ後、サルコジ大統領と個人会談を行なった。教皇とサルコジ大統領の会談は、昨年12月同大統領のバチカン訪問時に続いて2度目。
 教皇はサルコジ大統領の歓迎の言葉に答えると共に、すべてのフランス国民に挨拶をおくり、今回の訪問がルルドの聖母出現150周年を機会としている旨を紹介、今回のフランス滞在が信仰と愛を記念するものとなるよう、抱負を述べた。
 教皇はまた、フランスの政教分離に言及。同国の教会が過去とは違い現在自由を享受していることを評価しながら、いっそうの対話を望み、さらに「前向きな世俗性」と呼ばれる政策において真の世俗性とは何かを考える中で、宗教の持つかけがえのない役割についても意識を深めて欲しいと希望した。


◎「ヨーロッパ文化の源泉は神の追求」教皇、パリで講演

 【CJC=東京】フランス司牧訪問中の教皇ベネディクト十六世は、フランス司牧訪問初日の9月12日午後、パリ市内のコレージュ・デ・ベルナルディンで学術文化界の人々との集いを持った。バチカン放送(日本語電子版)が報じた。教皇は「西洋神学の起源とヨーロッパ文化の源泉」というテーマで講演を行なった。
 教皇との集いには、クリスティーヌ・アルバネル文化相、バレリー・ジスカールデスタン元大統領、ジャック・ルネ・シラク前大統領をはじめ、フランス文化界からの約700人、およびユネスコ関係者、イスラム教代表者らが参加した。
 中世建築様式のコレージュ・デ・ベルナルディンは、1245年、クレルヴォーのシトー会修道院長エティエンヌ・レキシントンが神学研究所として創立した。現在はパリ教区の文化研究センターとなっている。
 修道生活が貴重な伝統文化の宝庫としての役割を果たしてきた時代を思い起こされた教皇は、西洋修道文化の本質とは何かを再考することで、ヨーロッパ文化の源となっているものに光を当てた。教皇は修道生活の目的を一言で「神の追求」と述べ、神の追求とは、時代の潮流の中で永久に変わらないもの、命そのものを追求することであると述べた。
 また、み言葉は自分だけでなく他の人々への注意を促し、同じ信仰を歩む人々との交わりに導くことから、神の追求は共同体への関心へとつながっていったとも指摘し、さらに、み言葉は人を神との絶え間ない対話に招くが、特に詩編は神との対話に適した、祈りに欠かせないものとして、それに伴う音楽的発展が続き、その音楽は天上の音楽と調和するべく崇高なものへと昇華されていった様子を語った。
 一方で、祈りと共に修道生活のもう一つの柱である「労働」にも言及された教皇は、創造される神、その創造のみ業に共に参加するという意味で、手仕事、作り出すということはキリスト教修道生活の基本をなすものであったことを紹介、修道生活に代表される、み言葉の文化、そして労働の文化の双方が、ヨーロッパ世界の発展と形成に欠かせないものであったと説いた。
 教皇は、同日夕、パリのノートルダム大聖堂で教会関係者と共に夕べの祈りを行った後、大聖堂前に集った若者たちに挨拶した。聖堂前広場の参加者はおよそ1万5千人、広場に入りきれなかった若者たちはセーヌ沿岸に集った。
 教皇は、若者たちに信仰の宝として、先の世界青年の日大会の主題であった「聖霊」、生誕2000年を記念する使徒聖パウロの人生の中心であった「十字架」の二つのテーマについて話した。


◎中東紛争は「もう一つのアパルトヘイト」とコビア総幹事

 【ジュネーブ=ENI・CJC】世界教会協議会(WCC)のサミュエル・コビア総幹事は中東紛争の現状を「もう一つのアパルトヘイト」と評価、中東の「正義の平和」のために働くことを教会に求めた。
 WCCがスイスの首都ベルンで9月10〜14日に開催した「約束の地」会議は、イスラエル・パレスチナの現状に関する神学的な展望を議論するためのもの。「紛争の核心は、単なる宗教対立ではなく、深層における宗教の次元の抗争である」とコビア氏は開会式で語った。
 中東紛争の当事者は、自らのポジションを、「神からの委託でありつつ全くの善と全くの悪の対立」だと考えられる、とコビア氏は参加者に語った。それでも、キリスト者は、「具体的な政治的なプロジェクトや制度を神の意志に帰する理念的は試みに挑み、それを解体しなければならない」と言う。
 会議には世界各地から神学者や教会指導者約65人が参加した。
 「中東で全ての宗教が正当な地位を占めることを重んじる一方、宗教支配の神秘性を除去し、その実態を明らかにするという役割を教会が担っている」とコビア氏は語った。
 コビア氏は今回の会議を、かつての南アで少数白人政権によるアパルトヘイト(人種隔離)政策と戦う「人種主義反対プログラム」の中でWCCが組織した会議と対比させた。「1970年代と80年代の南アのアパルトヘイトに対する苦闘の時以来、WCCが開催する会議にこれほど積極的な反応があったことはない」とコビア氏は言う。


◎ロシアに強い軍隊が必要、と正教会首脳が発言

 【ワルシャワ=ENI・CJC】ロシア正教会の首脳が西欧諸国を厳しく非難、他の国に自らの基準を課すべきではないと語った。
 モスクワ総主教座対外教会関係部門の責任者フセフォロド・チャプリン師は「私たちは強力な国家と強い軍隊を持つべきだ。私たちの生き方や利益を侵害するものをはねつけ、世界で展開される出来事に影響を与える意思と力をそれで持つことが出来る」と言う。
 ソユーズ・テレビとのインタビューで、チャプリン師は、「自由で独自の政治的な選択」を守り、西洋のモデルを拒否し、「私たちの国、その運命、国民性、歴史にあった法令を定める」を拒絶することを奨励した。
 西欧諸国について、チャプリン師は、「国際法や自決を尊重すると言いながら、各国は常に自らの利益のために行動し、まったく逆の原則を適用する」と述べた。
 チャップリン師は、世界教会協議会(WCC)、欧州教会会議の中央委員を務め、欧州安全保障機構宗教の自由専門家パネルのメンバーでもある。


◎韓国仏教界が宗教差別、と李明博政権に抗議

 【CJC=東京】韓国の李明博政権に仏教界が"宗教差別"を訴えている。李政権が大統領をはじめキリスト教に偏重していると反発、李大統領に謝罪や是正策を要求し、全国的に集会やデモを繰り広げた。
 8月27日には、曹溪宗、天台宗、太古宗、真覚宗、観音宗など仏教27教団や団体などで構成される『韓国仏教宗団協議会』と『汎仏教徒大会実行委員会』が主催して「憲法破壊や宗教差別を行っている李明博政権を糾弾する汎仏教徒大会」を開いた。同日午後2時、ソウル市庁前の広場で、僧侶約1万人と仏教信者など20万人あまり(主宰側発表、警察推定では6万人)が出席した。
 大会のウォンハク常任実行委員長(曹溪宗総務部長)は、「かつて類のないほどの大規模な法会を開くのは、社会的な対立や分裂を終わらせるためのものである」と挨拶、「この席が現政権との対決を宣言する場とならないことを切に願う」と述べた。
 韓国キリスト教教会協議会(NCCK)の代表として出席した大韓聖公会の金グァンジュン司祭は、同じキリスト教信者である李大統領が宗教差別を行っていることに対し謝罪を述べ、「宗教の自由や平等権が保障される国において、いかなる理由であれ偏向的な宗教政策はあってはならない」と述べた。そして「今、われわれは現政府が再び過去の権威主義時代に回帰するのではないかという憂慮をぬぐいされない」としながら、「この大会を通じて現実が正されるよう願う」と述べた。
 大会に出席した僧侶や仏教徒約2万人は午後4時過ぎ、広場を出発、「公職者による宗教差別がまかり通る大韓民国は滅びる」といった文言を書いた旗を数百本掲げ、「釈迦牟尼仏」と叫びながら世宗路や普信閣(鐘閣)を経て曹渓寺まで行進した。主催者によると、全国の仏教寺院でも鐘を同時に鳴らしたという。
 31日には、韓国全土の約1万の寺で、キリスト者の李明博大統領が、プロテスタントを優遇する政策を進めているとして、信徒らによる抗議法会が開かれた。
 人口約5000万人の韓国で、キリスト者はカトリック・プロテスタント合計で1370万人とされているが、仏教徒も1000万人以上いる。キリスト者は上層階級や各界の指導層に多く、社会的に影響力が強い。李承晩初代大統領から李明博現大統領まで歴代大統領はキリスト者が圧倒的という背景もある。
 韓国のキリスト教は、近年の海外活動でも明らかなように、仏教界に比べ積極さが目立つ存在。プロテスタント長老派系の『所望教会』の長老の李氏が2月に政権の座について以来、仏教徒は、キリスト教を優遇しているとして懸念を示してきた。「政権人脈は教会人脈」とか「キリスト教共和国を目指している」といった声も聞かれる。
 曹渓宗は、ウェブサイトに、政府要職にプロテスタント系のキリスト教徒を起用するなど、キリスト教を優遇している可能性のある23件の事例を掲載した。
李大統領はソウル市長在任時、ソウル市を「神様に奉献」したと発言、大統領就任初期に政府の主要閣僚任命に際してもキリスト教偏重人事が目立った。3月にキム・ジノン・ニューライト牧師と大統領府で礼拝を行ったり、5月には純福音教会の朝食会祈祷会に参加しても、釈迦生誕日は無視したなど、仏教界の反発を招いたと見られる。
 チュ・テジュン前大統領府警護処次長が「すべての政府部署の福音化が私の夢」と発言があり、6月末、国土海洋部が管理・運営している首都圏の公共交通情報サイト「アルゴガ("知ってから行こう"の意)」が教会の情報は詳しいのに、曹渓寺のような寺社情報が脱落していることが分かり、仏教界の反発が激化し始めた。オ・チョンス警察庁長官が広告ポスターに汝矣島純福音教会のチョー・ヨンギ牧師と並んで登場してもいる。
 7月には米国産牛肉の輸入再開への抗議で指名手配されていた活動家が逃げ込んでいた曹溪寺で、警察が曹渓宗の高僧の車を寺院の外で止めてトランクなどを調べるなどしたため信徒が反発した。その後、警察庁長官が謝罪し、警察幹部2人を懲戒処分としたが、仏教側は、仏教指導者を犯罪者として扱ったとして警察を非難。長官の辞任を要求していた。


◎韓国大統領がキリスト教偏向で仏教界に謝罪

 【CJC=東京】韓国の李明博大統領は9月9日、現政権がキリスト教に偏っているとする仏教徒の抗議活動を受け、謝罪した。AFP通信が報じた。公務員による宗教的差別を禁止する政令を承認する閣議で発言したもの。
 李大統領は「意図的でないにしても宗教的偏向についての誤解を招く言動で仏教界の怒りを招いた政府高官がいたことは非常に遺憾だ」と述べた。


◎米合同キリスト教会が航空運賃高騰でハワイ会議キャンセル

 【CJC=東京】ハワイ紙『ホノルル・アドバタイザー』によると、航空運賃高騰を理由に、米合同キリスト教会が2011年にホノルルで約3000人の参加者を集めて行なう予定の会議計画をキャンセルした。
 「ちょうど1年前から約5割も旅費が上昇したことなど経済的な不安」から常議員会が9月3日決定した、と同派のサイトが伝えている。
 ハワイ・コンベンションセンターのジョー・デイビス事業部長は、合同キリスト教会の役員に電話で再考を要請したと言う。
 訪問客の減少とホテルの客室占有率も低下しており、観光業関係者にとってはさらなる打撃となった。
 この所、原油価格の低下で、航空運賃の見直しも進むと見られるものの、長期的には原油価格の高止まりも予想されている所から、教会が再びハワイ開催に踏み切るか、は予断を許さない。


◎サイエントロジー教会、フランスで詐欺訴訟

 【CJC=東京】米国に拠点を置く宗教団体『サイエントロジー教会』が、詐欺容疑により、フランスで起訴された。また同教会の信者7人も、違法な薬物処方を行った疑いで訴えられている。AFP通信が報じた。
 元信者の女性1人が、同教会のプログラムの受講料やテキスト代、薬代、人間の精神状態を計測できると教会が宣伝している「エレクトロメーター」代として、計2万ユーロ(約300万円)を支払ったとの証言から、起訴につながった。
 サイエントロジー教会は1954年、米国でSF作家のロン・ハバード氏が創設。米国では宗教団体として認定されており、トム・クルーズなど大物スターも入信している。しかし、欧州各国では、信者の財産を搾取しているとして起訴される例が多く、フランスをはじめベルギー、ドイツ、ギリシャなどで訴えられてきた。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(9月14日)=https://www.cwjpn.com
★日本カトリック神学院=「輪郭見えてきた」=来年4月開校に向け=全教区の養成担当者ら集う
★インド=反キリスト者暴動=抗議の学校休業に=ヒンズー教徒反発
★海外支援7団体の信徒が呼び掛け=「教会の視点で平和考えよう」=横浜教区・藤沢教会
★関東大震災の「朝鮮人等犠牲者」="ミサ集会" 開き追悼=埼玉
★「灯油注ぎ、手にマッチ」=インド=神父、暴行の様子語る

  =キリスト新聞(9月13日)=https://www.kirishin.com
★"崔昌華アボジのメッセージまっすぐに"=次女の善恵さんが記録写真をパネル50点へ
★WCC=創立60周年祝う=コビア総幹事「先達の志継いで」
★「死海文書」ネットで公開
★エイズ対策で「連帯」を=IAS新議長、宗教関係組織に求める
★オバマ、マケイン両大統領候補=教会の集会で初顔合わせ

  =クリスチャン新聞(9月14日)=https://jpnews.org
★「和解」が証明 イエスが救い主=イスラエル-パレスチナの懸け橋「ムサラハ」理事証言
★「母が生きれば家庭も生きる」=日本でも母親学校スタート
★日本CEOフォーラム設立=日本宣教を担う場に=オンヌリ教会のビジョンに動かされ始動
★全キリ会長関田寛雄氏が意見書を最高裁に=「世情でなく事実に即した裁判を」
★第9回地方伝道シンポ=自給伝道、信徒説教者育成が焦点に

  =リバイバル新聞(9月14日)=https://www.revival.co.jp
★仙台=創造論の集中講義=クリエーション・カレッジ2000
★"レイクランドⅡ"を提唱=ピーター・ワグナー氏が声明
★ヒルマン監督が証=邦人向け伝道集会=「私は宣教師」


           ●世界キリスト教情報●ご案内
 ☆活動のご紹介は ........................ https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/
 ☆既刊号をご覧頂くには  .............................. https://cjcskj.exblog.jp/
 ☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用願います。
             ........................... https://www.kohara.ac/church/

月別の記事一覧