世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第918信(2008.08.18)

  • 世界改革派とディサイプル派の関係緊密化
  • メキシコ市で第17回国際エイズ会議
  • 宗教関係組織にエイズ対策で「連帯」をIAS新議長求める
  • ブッシュ大統領、米中首脳会談前に北京の公認教会で礼拝守る
  • 教皇、南オセチア紛争に平和的解決を訴え
  • 教皇、聖職者に「若年層への秘跡を寛容に」
  • 教皇、ブレッサノーネ滞在終えカステルガンドルフォへ
  • ジンバブエ聖公会が抑圧に参加、とカンタベリー大主教非難
  • キリスト教団体がオバマ・マケイン両候補の初顔合わせ実現
  • 米のがん患者6割が祈りなど代替医療も
  • 占領下で国家神道を解体したウィリアム・バンス氏死去
  • 《メディア展望》

◎世界改革派とディサイプル派の関係緊密化

 【ジュネーブ=ENI・CJC】世界改革教会連盟(WARC)とディサイプル・エキュメニカル協議会(DECC)が、関係緊密化に進んでいる。
 「世界中のいくつかの合同教会が既に双方に加盟しており、より一層の緊密化を奨励する声になっていることが重要だ」と、DECCのロバート・ウエルシュ総幹事は言う。
 WARCは8月11日、両グループの指導者がこの7月末、米テネシー州ナッシュビルで会合、「教会の目に見える一致の追求において包括的なパートナーシップを展開する」ことに関して合意に達した、と声明で明らかにした。
 WARCのセトリ・ニョミ総幹事は、ナッシュビルでの会合がキリスト一致の追求において「重要なものとなる可能性」を持つものだ、と語った。「私たちはこの重要な動きを歓迎する」と言う。
 WARCはジャン・カルヴァン、ジョン・ノックスなどに指導された16世紀の「宗教改革」や、ワルド派やヤン・フスの追随者などの初期教会革新運動に起源を持ち、214教会が加盟、信徒総数は7500万人を数える。
 DECCは『キリストの使徒』(キリストの教会)や合同教会など19教会によって1979年に設立、全世界450万人のキリスト者を擁している。『キリストの使徒』派は、19世紀初めに英米で成長した。
 2007年10月、WARCは、加盟教会が重複している改革派エキュメニカル協議会(REC)と合同し2010年に『世界改革教会コミュニオン』(WCRC)を結成することで同意した。
 DECC加盟教会は、DECCがWCRCの准加盟組織として、その計画や決定に参画するという提案の検討に入る。


◎メキシコ市で第17回国際エイズ会議

 【CJC=東京】第17回国際エイズ会議が8月4〜8日、「普遍的な行動を」を主題にメキシコ市で開催された。科学者、政策立案者、医師、キリスト教活動家など2万2000人が参加、エイズ拡大阻止の方策を検討した。会議は2年に1回開催だが、中南米で開かれるのは初めて。
 エイズに影響を受け、感染している人たちにキリストの愛を示すべく、キリスト教関係団体や個人活動家も世界各地から多数参加した。


◎宗教関係組織にエイズ対策で「連帯」をIAS新議長求める

 【CJC=東京】第17回世界エイズ会議がメキシコ市で8月3日から8日まで行われた。2年に1回の会議を主催した『国際エイズ協会』(IAS)は8日、ペドロ・カーン議長の後任にフリオ・モンターネル氏を任命した。任期2年。
 IASは、185カ国のエイズ専門家1万人を会員とする独立組織としては世界最大。
 モンターネル新議長は、最良の公衆衛生政策を受け入れるなら、信仰を基盤とした組織はHIVとエイズへの対応で重要な役割を果たせる、とENI通信とのインタビューで語った。「私たちは、有効にHIVに応じるために何をなすべきか分かっている。政治的な指導力が不足しているのだ」と言う。
 モンターネル氏はアルゼンチンの医師。カナダ・バンクーバーで、キリスト教系の『プロビデンス・ヘルス・ケア』付属のセントポール病院で対策センター所長を務めている。
 モンターネル氏は、20年にわたる科学的研究の後、HIV/エイズのあらゆる面に関する膨大な知識が利用出来るようになった、としながらも実用化が「カメの歩み」のように遅い、と警告する。流行病への地球規模での対応は10段階評価では3〜4ポイントに留まっている、地域別に見ると、「北アメリカが7ポイントに近く、ラテンアメリカが5ポイント、アフリカは2ポイント止まり」と言う。
 モンターネル氏は『国際エイズ協会』会長としての最重要施策として、「とどまるところを知らない実現ギャップ」に橋渡しを構想している。次に総合防止戦略の推進があり、「流行病根絶に向かう」には防止策を組み合わせなければならない、とENI通信に語った。
 ただこれには、感染者が抵抗なく治療を受けられるように、危険な行為を犯罪視することをやめる必要がある、と言う。コンドーム使用の推奨、清潔な注射針の準備、教育も必要と信じている。「私たちには皆、エイズとの戦いに大きく貢献できるものがあり」、宗教関係組織もそうだと言う。宗教関係組織にとっては受け入れられない方策であっても、「一定の領域では、重要な役割を果たせる」と言う。そのためには宗教関係組織が、他の団体と「連帯」して活動しなければならない。少なくとも「彼らが最良の公衆衛生策を妨げない限り、前進できるのた」と、モンターネル氏は言う。
 HIVとエイズに関し、全地球レベルでの応答が「向上している」が「なおなすべきことは山積している」とモンターネル氏。流行開始以来初めて感染者数が横ばいになったのは事実だが、3300万人という高止まり状況で、「エイズへの全地球的な応答を誇れるものではない」と言う。「まだまだ努力が足りない」と、モンターネル氏。1人が処置を受けている間に2〜3人がウイルスに感染するのだ。「時間との競争なのだ」と言う。
 世界エイズ会議、次回は2010年にウイーンで開催の予定。


◎ブッシュ大統領、米中首脳会談前に北京の公認教会で礼拝守る

 【CJC=東京】ジョージ・ブッシュ米大統領は8月10日、中国の胡錦濤国家主席との首脳会談に先立ち、北京市内の公認プロテスタント教会『寛街教堂』を訪れ、ローラ夫人とともに日曜礼拝に出席した。同教会の牧師は、大統領が2005年の訪中時に聖書をなくしたことを知り、昨年1月に大統領の側近だった当時のヒューズ国務次官(広報担当)を通じ、中国語と英語の2カ国語で書かれた聖書を大統領に贈ったという。
 ブッシュ大統領は礼拝後、国家は信教の自由がもたらす影響を恐れるべきではない、と中国政府により寛容な宗教政策を採用するよう要求した。大統領は非公認教会訪問を検討していたと伝えられるが、中国政府を刺激しないよう配慮、同時に信教の自由尊重の姿勢もアピールした形。
 米政府筋によると、ブッシュ大統領は胡主席との首脳会談で、人権や信教の自由などの問題について率直に話し合い、ブッシュ大統領は胡主席に対し、これらの問題は来年1月に新米大統領に交代した後も米中関係において引き続き重要な課題となる、と語った。


◎教皇、南オセチア紛争に平和的解決を訴え

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、8月10日、北伊ブレッサノーネで日曜正午のアンジェラスの祈りを信者と共にとなえた。今回のブレッサノーネ滞在における最後の公式行事とあって、会場の司教座大聖堂前には大勢の市民が詰め掛けた。バチカン通信(日本語電子版)が報じた。
 教皇は、緊張の続くグルジアの南オセチア自治州の情勢に深い憂慮を示し、多くの無実の犠牲者と家を捨てて逃げざるを得ない市民たちに思いをはせ、共通のキリスト教精神の名のもとに、直ちに武力行為を停止するよう呼びかけた。
 教皇は、闘争の平和的解決のために国際共同体の協力を求めると共に、信者らに正教徒らと心を合わせ、この意向のためにイエスとすべてのキリスト者の母である聖マリアの取次ぎを祈るよう要請した。


◎教皇、聖職者に「若年層への秘跡を寛容に」

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は8月6日、教会は若年層に秘跡を授ける際に寛容になるべきだ、と語り、イエスも同じようにしたことを認めた。CNS通信が報じた。
 教皇は夏季休暇の滞在先である北伊ブレッサノーネの大聖堂で、聖職者約400人と非公開の会合をした際に発言したもの。
 バチカン(ローマ教皇庁)広報局のフェデリコ・ロンバルディ局長がバチカン放送とのインタビューでやりとりを明らかにした。
 聖職者から出された六つの質問の一つが若年層に対する司牧的配慮に関するものだった。教皇は、秘跡の授け方に幅広い対応が必要だと指摘、キリストによって示されたいつくしみ深い姿勢を想起した。
 「教皇は、『私はこのことに関し、かつてはより厳しかったが、キリストの例にならい、成熟し確固とした信仰がなくても、教会での交わりを望む心がかすかにでもあるならば、それを歓迎するようになった』と語った」、とロンバルディ局長は明らかにした。


◎教皇、ブレッサノーネ滞在終えカステルガンドルフォへ

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は8月11日、北伊ブレッサノーネの大神学校で夏期休暇を過ごした後、ローマ近郊の夏の離宮カステルガンドルフォに入った。
 教皇は13日、水曜恒例の一般謁見を行なった。バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、ブレッサノーネでの充実した休暇の間、祈りを託す多くの人々を思い起こし、様々な意向のために祈り続けたことを明かにした。
 「祈る者は、困難で絶望的な状況に置かれた時でさえも、決して希望を失うことがない」と、祈りが多くの聖人たちやキリスト者の歩みを支えてきたことを教皇は説き、その現代の証として、教会暦で先日8月9日に記念された十字架の聖テレサ・ベネディクタ修道女(エディット・シュタイン)と、聖母被昇天祭の前日、8月14日の聖マキシミリアノ・マリア・コルベ神父の生き方を示された。
 教皇は、アウシュビッツ強制収容所で殉教した両聖人の生涯は、一見敗北と捉えられるかもしれないが、まさに彼らの殉教を通して、エゴイズムと憎しみの闇に打ち勝つ愛が輝くのであるとして、この2人の聖人を支えていた静かで力強い祈りの存在を教皇は指摘した。
 迫害の嵐と共に死が迫る日々、「十字架よ、私たちの唯一の希望よ」と心から祈り続けたエディット・シュタイン、餓死牢で毒薬を注射されながら「アベ・マリア」と最期の祈りを唱えていたコルベ神父を教皇は想起した。


◎ジンバブエ聖公会が抑圧に参加、とカンタベリー大主教非難

 【カンタベリー(英ケント州)=ENI・CJC】英国国教会(聖公会)の霊的最高指導者カンタベリー大主教のローワン・ウィリアムズ氏は、ジンバブエ聖公会の一部の行動を、同国のキリスト者にとって「スキャンダル」になった、と非難した。
 「近年、現地の教会が抑圧的な体制と暴力的な文化に結びつき、それが国内すべてのキリスト者にとって、スキャンダルになっている。もちろんそれはジンバブエのことだ」とウィリアムズ氏は、7月16日から8月3日まで開催したランベス会議の閉会演説で述べた。
 ジンバブエを混乱に陥れているロバート・ムガベ大統領の抑圧策の強力な支持者であるノルバート・クノンガ前ハラレ主教を念頭において、カンタベリー大主教が発言したものと、消息筋は見ている。


◎キリスト教団体がオバマ・マケイン両候補の初顔合わせ実現

 【CJC=東京】政教分離原則とは無関係なのか、米国ではキリスト教会が大統領選挙にまで大きな影響を与えることを実証する集会が8月16日、カリフォルニア州レークフォレストのサドルバック教会を会場に開かれた。
 『サドルバック・シビル・フォーラム』と名付けられたこの集会、同教会の創設者リック・ウォレン牧師が開催したもの。大統領選挙で民主・共和両党の候補となることが確実なバラク・オバマ上院議員とジョン・マケイン上院議員が、初めてそろって姿を見せた。
 ウォレン牧師はバプテスト。フラー神学校で宣教学博士号を取得、1980年4月6日に、ラグーナヒルズ高校講堂で始めたサドルバック教会の礼拝は200人の出席だったが、その後成長を重ね、礼拝場所も移転を繰り返し、28年間で会員数は2万2000に到達するまでになった。現在、同教会はカリフォルニア州では最大、全米でも4位の「メガチャーチ」。
 教会は超教派を表明しているが、ウォレン牧師は、南部バプテスト連盟の活動に協力している。また「健康な教会」を目指す『パーパス・ドリブン』運動の主宰者で、同名のシリーズなど多数の著作もあり、福音派指導者の中でも環境や貧困問題に積極的でリベラルな言動で知られている。
 集会で両者はそれぞれ主催者と対話する形を取ったため、直接対決とはならなかったが、壇上に2人がウォレン牧師と並んだ写真はメディアで大きく取り上げられた。
 オバマ氏は若いころに薬物に頼った経験を告白、中絶問題について「権利は認めるが、賛成ということではない」と強調、中絶の件数を減らすべきだ、と中絶に反対する福音派の理解を求めた。
 マケイン氏は「富裕層からこれ以上税金を取りたくない。皆が豊かになるのが望ましい」と主張、富裕層への減税策を見直すオバマ氏を批判した。


◎米のがん患者6割が祈りなど代替医療も

 【CJC=東京】米国のがん患者の4〜6割ほどが、祈りやサプリメントといった「補完代替医療」を試していることが、米がん協会研究チームが、がんと診断されてから10〜24カ月の患者に郵便や電話でアンケートし、4139人分の回答を分析した結果わかった。朝日新聞が報じた。
 「祈り・霊的体験」を試した人が約61%と最も多く、気功などの「リラクセーション」や、「宗教的癒やし」「サプリメント」の経験者も、それぞれ40%を超えていた。女性、若者、高収入や高学歴の人が補完代替医療を試す傾向が強かったという。


◎占領下で国家神道を解体したウィリアム・バンス氏死去

 【CJC=東京】第二次大戦終了後、米軍を主体に日本を占領した連合国軍(進駐軍)総司令部(GHQ)で宗教課長を務めたウィリアム・バンス氏が7月23日、肺炎のため米東部メリーランド州で死去した。オハイオ州生まれ、100歳。
 1930年代に英語教師として旧制松山高等学校に赴任。43年に海軍の予備役に招集され、44年から海軍学校で地域研究を担当した。14日付の米紙ワシントン・ポストが報じた。
 GHQでは、国家神道を解体する覚書「神道指令」作成に関与した。45年12月15日に日本政府に宛て出された覚書は、信教の自由の確立と軍国主義の排除、国家神道を廃止し政教分離を果たすためのもの。靖国神社は一宗教法人として存続することとなった。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(8月17日)=https://www.cwjpn.com
★ヒロシマ 8・6=「主の平和」願い求めて
★ナガサキ 8・9=心一つに 祈る
★グルジアZロシア=軍事衝突の即刻終結を=教皇、強く訴える
★教皇が指摘=中国は「福音に自らを開くべき」
★今こそ真の カトリック教育を=幼稚園連盟が研修大会開催=仙台

  =キリスト新聞(8月16日)=https://www.kirishin.com
★教団の"公同性"問う=秋の総会控え=牧師・研究者らがシンポ
★米長老教会指導者カークパトリック氏退任="神の召しは数ではない"
★ランベス会議閉幕=「一致と相互理解を」
★NCC靖国神社問題委・平和遺族会全国連絡会など="都知事は参拝やめよ"
★東京国際ブックフェア=バイブルキューブが受賞=造本装幀コンクール

  =クリスチャン新聞(8月17日)=https://jpnews.org
★「禁教国」ネパール様変わり=国教・王制廃止で宣教自由に
★EARC2008:緊張感こそキリスト者の証=東アジア14か国の学生伝道団体参加
★ホーリネス教団=戦責告白に生きる祈祷文を提案
★真夏の夜のハワイアン&ゴスペル=新感覚の伝道を満喫=フィール・ザ・スピリット2008
★クリスチャントゥデイ異端疑惑=北米真相究明委が調査に着手

  =リバイバル新聞(8月17日・休刊)=https://www.revival.co.jp


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              https://www.kohara.ac/news/

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