世界キリスト教情報 第917信(2008.08.11)
- ランベス会議閉幕、一致を念頭に
- 作家ソルジェニーツィン氏死去 精神的指導者と正教会も評価
- あのカイザー・ヴィルヘルム記念教会跡も補修迫られる
- オーストリア修道士の聖歌CDが異例のヒット
- 牧師が銃を振りかざし「殺してやる!」
- 《メディア展望》
◎ランベス会議閉幕、一致を念頭に
【CJC=東京】英国国教会(聖公会、信徒約7700万人)のランベス会議が7月16日から8月3日まで英ケント州カンタベリーのケント大学で行われた。最高指導者カンタベリー大主教、ローワン・ウィリアムズ氏は、一致と相互理解を訴えた。
今回のランベス会議は、同性愛聖職者の叙階問題、同性間カップル結合の祝福、女性主教叙階といった問題をめぐり、伝統重視の教会がボイコットするなど、さまざまな波紋が広がる中での開催となった。
閉会講演でウィリアムズ氏は、「今回は、共に問題を克服できず、機構一新もならなかった。それにはなお時間が必要だろう」と認めた。アングリカン・コミュニオンは一つの盟約を必要としているとして、ウィリアムズ氏は首座主教会議を出来るだけ早く、2009年中にも開催したい、と述べた。
今回会議は、公然同性愛者の主教叙階、同性愛者間の「結合」祝福などをめぐる伝統派と革新派の対立が各国聖公会内で発生、教会分離に至りかねない状況の中で行われることになったため、招待されても出席しない主教がケニア、ナイジェリア、ルワンダ、ウガンダなどアフリカで230人に上った。
結果的に見て今回出席した約670主教の多くはカンタベリー大主教の一致を目指す路線を支持する意向のようだ。英紙『タイムズ』によると、参加者100人を対象にした調査でも9割が支持を表明、困難はあっても聖公会共同体に留まる意義を認めている。共同体のあり方についても、より緩やかな連合が良いとするのは25%、より強固な組織を望むものが大多数を占めた。
英国国教会第5位の指導者、ウィンチェスターのマイケル・スコット=ジョイント主教は、『サンデー・テレグラフ』紙に、カンタベリー大主教の一致路線には切迫さを欠いており、うまく行かないのではないか、と語っている。「ランベス会議は、欠席した主教に対し最も悪い事態まで進むことを期待されている。共同体内のフェローシップ(友愛)をどうしても残すためには、遅かれ早かれ、共同体を分割する取り決めを結ぶ必要がある」と言う。
エクセターのマイケル・ラングリッシュ主教も、より寛容な教会を排除する一つの核となる共同体であるべきだとする「不変の論理」がある、と語った。
カンタベリー大主教は、新・司牧会議、新しい盟約か信仰に関する一致声明、教義を定める『新・アングリカン信仰職制委員会』、教会法の改定草案などを構想している、と言う。
ランベス会議は1867年に第1回、78年に第2回が開催され、以来、二度の世界大戦中を除き、10年に一度行われることになっている。教会を取り巻く情勢が切迫する中で、開催頻度を高めることを望む意見も出ている。ただ会議開催の経済的負担は大きい。今回の経費500万英ポンド(約10億円)では200万ポンドの赤字に終わった。会議運営の不手際もある。参加主教たちが会議の討議内容について知らされたのは開催の僅か3週間前、カバンに入りきれないほどの資料を手にしたのはケント大学に到着してからだった、とも伝えられている。
◎作家ソルジェニーツィン氏死去 精神的指導者と正教会も評価
【CJC=東京】旧ソ連時代の反体制作家で1970年にノーベル文学賞を受賞したアレクサンドル・ソルジェニーツィン氏が8月3日深夜、モスクワ郊外の自宅で死去した。89歳。死因は急性心不全。「収容所群島」など旧ソ連の全体主義を告発した著作で知られ、反体制派の象徴的な存在だった。
ロシア革命の翌年の1918年生まれ。スターリンを批判したとして45年逮捕され、8年間強制収容所で過ごした経験をもとに「イワン・デニーソビッチの1日」などを発表した。74年、市民権をはく奪されて国外追放となり、76年に欧州から米国に移住、スタンフォード大学フーバー研究所を経て、母国に気候の似たバーモント州で過ごした。旧ソ連崩壊後の94年に20年ぶりに帰国した。
「彼は母国や西側の統治者にも率直に語ることが出来、人間に対しても、真実を語ることを恐れず、流行や世論の奴隷にもならなかった」とモスクワ総主教座対外教会部門のフセフォロド・シャプリン副議長は、インターファクス通信に語った。
同主教座の公式サイトでは同氏を「愛国的な正教組織の精神的指導者の1人」と評価している。
同氏が国外追放期の大半を過ごした米国では、主要紙が長文の評伝を一斉に掲載した。いずれも東西冷戦下で、ソ連共産党による独裁政治の実相を文学を通じて告発した文学的な功績と同時に、米国など自由主義陣営に文明批評を加えたことなどに焦点を当てている。
米国に向けられた批評として、各紙は78年に行われたハーバード大学での演説を取り上げている。物質文明の退廃を批判した演説で、同氏は「道徳的な規範によってのみ、西側は共産陣営の世界戦略に対抗し得る」と警告していた。
ロシア大統領府が6日明らかにしたところによると、メドベージェフ大統領はソルジェニーツィン氏の名前を冠した奨学金を設けるよう政府に命じる大統領令に署名した。大統領はまた、モスクワ市に対し、通りの一つにソルジェニーツィン氏の名前を付けるよう勧告した。
葬儀は6日、モスクワのロシア正教会ドンスコイ修道院で行われ、市民約1000人の市民が集まった。メドベージェフ大統領も休暇を中断、参列した。プーチン首相は5日に弔問。遺体はソルジェニーツィン氏の生前の希望に従って、修道院の墓地に埋葬された。
◎あのカイザー・ヴィルヘルム記念教会跡も補修迫られる
【CJC=東京】ベルリンの繁華街クアフュルステンダム通りにあるカイザー・ヴィルヘルム記念教会は、1943年のベルリン大空襲で破壊された。戦争の悲惨さを伝えるために、高さ68メートルの鐘楼などが崩れたままの姿で保存され、「虫歯」とあだ名を付けられるまでになった。同じ敷地内に62年、現代様式の新会堂も完成した。
しかし保存部分は破損が進み、2年間にわたる調査で、鐘楼の石造外壁に割れ目が見つかり、内壁も損壊が進み、構造的にもゆがみが出ていることが分かった。
緊急補修のため募金が開始され、昨年暮以来45万ユーロ(約7400万円)が集まった。募金運動を担当するカイゼルウエッテル社のカスリン・ドスト報道担当は、総額330万ユーロが必要と8月5日、一層の支援を訴えた。AP通信が報じた。
ドスト氏は、工事は数カ月前に始まる計画だったものが、今だに始まっていないと言う。ベルリン市の助成も実現していない。教会側は、冬場に水が割れ目に入って凍ると損害が悪化するかもしれない、と専門家が懸念している、と言う。
◎オーストリア修道士の聖歌CDが異例のヒット
【CJC=東京】カトリック修道会『シトー会』修道士の聖歌隊が歌った「聖歌=天国の音楽(仮訳)」が、欧米で思わぬヒットとなっている。英ユニバーサル・ミュージックから発売されたCDはすでに40万枚売り上げたとも伝えられる。
全英ヒットチャートで2カ月も20位以内にランクイン、ついに8月には9位と異例のヒットになった。本国オーストリアでもポップとクラシックの両部門でランクイン、米ビルボード誌でも2日現在、クラシック部門1位を続けている。
聖歌隊はウィーンの森に12世紀に建てられたハイリゲンクロイツ修道院の修道士により結成された。カトリック専門週刊誌『タブレット』などに掲載された、「グレゴリオ聖歌のアルバム収録に参加できる聖職者求む」というレコード会社の広告を見た修道士の1人の親類から知らされ、応募したところ、100以上のグループの中から選ばれたという。修道士が動画共有サイト『ユーチューブ』にビデオを投稿したのがきっかけで人気が出た。
聖歌隊のカール・ワルナー神父は、「グレゴリオ聖歌は祈りの一つで、霊性を表現した音楽。私たちはロビー・ウィリアムスやマイケル・ジャクソンのようなポップスターではなく、毎日祈り歌うことを習慣としているただの修道士」と語っている。
聖歌隊のヨハンネス=パウル・シャバンヌ修道士は25歳。居室にはコンピューターがあり、インターネットにもつながっている。「修道院の伝統は守らなければならないが、"第三千年期"に生きるものとして、現代のメディアも活用しなければ」と言う。
ハイリゲンクロイツ修道院は観光名所にもなっており、製造しているワインの売れ行きも好調な所から、CD売り上げは、ベトナムやナイジェリアからの留学生の支援に充てる、と余裕を見せている。修道士たちは気をよくしたのか、11月にはクリスマス聖歌を集めたアルバム第2弾の発売を予定しているという。
◎牧師が銃を振りかざし「殺してやる!」
【CJC=東京】米オハイオ州シンシナチに住むトマス・ハウエル牧師(71)が車で教会に行く途中、別の車に行く手を遮られ激怒、銃を振りかざし女性ドライバーを罵倒、悪質な脅迫の容疑で起訴され、8月4日有罪となった。9月の量刑判決で懲役6カ月の実刑を科せられる可能性がある。AP通信が報じた。
ハウエル牧師は6月23日、イーストウォルナットヒルズの『生ける神の第一戒教会』に行こうとしていた時に、エイプリル・エバンスさんが運転する車に行く手を遮られた。ハウエル牧師は銃所持は認めたが、ホルスターから取り出してはいないと主張した。
しかし同州ハミルトン郡裁判所は「ハウエルが車で追いかけてきて銃を出し、殺してやると脅した」とするエバンスさんの主張を認めた。
《メディア展望》
=カトリック新聞(8月10日)=https://www.cwjpn.com
★夏の休息持てない人のため=教皇、特別に祈りささげる
★来春開校の日本カトリック神学院=養成の諸事項を審議=準備司教委員会
★大分キリシタンの歴史残そう=「南蛮文化を語る会」=地元の信徒らが発足
★長崎=列福に向け展示続々=史料・美術=県や教区が企画
★加害者被害者=向き合うために=出会いを考える会 「オーシャン」創立1周年
=キリスト新聞(8月9日)=https://www.kirishin.com
★"ヒロシマを伝えたい"=あるキリスト者の証言=若者の涙に問い直された
★コルベ神父描いたペン画初公開="最後の姿"を今に=福島アウシュヴィッツ平和博物館
★真生会館が月刊誌「Vital」創刊="一つのしるしとして"
★世界最古の聖書=ネットで公開
=クリスチャン新聞(8月10日)=https://jpnews.org
★「作品は子どものよう」=星野富弘さん「花の詩画展」=軽井沢=町ぐるみで開催サポート
★岩手北部地震=被害は小規模=二次災害を懸念
★福音讃美歌協会=新しい讃美歌集具体化へ=伝道会議にパイロット版=イムマヌエル加盟
★いま宗教を問う講演会=「ジャーナリズムに求められる批判精神」
★「本当の希望は神様から」=ラブ・ソナタ横浜に6千人=決心者258人
=リバイバル新聞(8月10日)=https://www.revival.co.jp
★「変革は内側から」=沖縄=ユース・トランスフォーメーション集会
★中国・北京=オリンピック直前、北京で宣教=18人がホテルで次々に受洗
★「力の祈り」を学ぶ=聖霊刷新協議会第5回教職研修会
●世界キリスト教情報●ご案内
☆活動のご紹介は https://homepage2.nifty.com/cjc-skj/
☆既刊号をご覧頂くには https://cjcskj.exblog.jp/
☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用願います。
https://www.kohara.ac/news/