世界キリスト教情報 第914信(2008.07.21)
- 教皇、オーストラリアを初訪問 世界青年の日に出席
- 聖職者による性的虐待で教皇が謝罪の意
- 教皇が豪政府のアボリジニへの謝罪を称賛
- 世界青年の日に出席した教皇、オーストラリア訪問終える
- 世界聖公会のランベス会議開幕
- ジンバブエの現状は道徳的な挑戦、とノコ総幹事
- エルサレムの住民にとって、YMCAは許しの場所
- 教皇訪問でシドニーの売春クラブが大盛況?
- 《メディア展望》
◎教皇、オーストラリアを初訪問 世界青年の日に出席
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は7月13日、カトリック教会の公式行事「世界青年の日」に出席するため、オーストラリアを2005年の着座以来、初めて訪問した。教皇は20日、シドニーのランドウィック競馬場で行われた「世界青年の日」のミサを行った。教会側の発表では、40万人がこの野外ミサに参加した。
教皇はミサの中で、若者らに、現代世界に広がる「精神の砂漠化」を食い止め
るよう訴えた。
AFP通信によると、教皇は、若い信者の力はカトリック教会を活気づけると
述べるとともに、若者らに対し、精神の不毛が広がっている世界に立ち向かう
「愛の使者」になることを求めた。
教皇は「われわれの住む多くの社会で、物質的繁栄が進む一方で、内面的な空
虚さや言いようのない不安、忍び寄る絶望感など、精神の砂漠化が拡大してい
る」と指摘した上で、「世界は再生することが必要だ」と述べている。
教皇はシドニーで17日、内外から集まった青年のカトリック教徒ら15万人を前に演説、、現代の大衆文化や商業主義、「偶像崇拝」などを批判した。
教皇は、「今日の世界は、物欲、搾取、分裂に加え、偶像崇拝や世界が抱える問題への不統一な反応にあふれ、偽りの約束による苦しみなどで疲弊している」として、病める現代の顕著な例にアルコール依存と麻薬中毒を挙げた。
教皇は、環境問題にも言及、「海岸の侵食、森林破壊、どん欲な消費を賄うための鉱物・海洋資源の無駄遣いなど、地球上にさまざまな傷跡が刻まれていることを認めなければならない」と述べた。
◎聖職者による性的虐待で教皇が謝罪の意
【CJC=東京】カトリック教会「世界青年の日(WYD)」記念行事のためオーストラリアを訪問した教皇ベネディクト十六世は7月19日、シドニーで行った聖職者のためのミサで、スピーチ原稿から離れ、オーストラリアの教会で発生した聖職者による未成年者への性的虐待について直接言及し、全面的に謝罪した。
教皇は被害者への償いを呼びかけるとともに、聖職者には被害者が立ち直れるよう手を差し伸べ、虐待事件に責任がある者を法の裁きにかけるよう求めた。
◎教皇が豪政府のアボリジニへの謝罪を称賛
【CJC=東京】カトリック教会「世界青年の日(WYD)」記念行事のためオーストラリアを訪問した教皇ベネディクト十六世は7月17日、マイケル・ジェフリー総督やケビン・ラッド首相が出席してシドニーで行われた公式歓迎式典の演説で、オーストラリア政府が、先住民のアボリジニに対して過去の政策が過ちだったと公式に謝罪したことを称賛した。
「過去に先住民に対して不当な扱いを行ったことを認めたオーストラリア政府の勇気ある決断に感謝する。相互尊重に基づく和解に向けて確かな一歩が踏み出されている」として、「この和解の実例は、自分たちの権利が認められ、社会への貢献が認知・奨励される日を切望している世界の人々に希望を与える」と述べた。
ラッド首相は2月、2世紀にわたる白人入植の過程で政府がアボリジニに対して行った不当な政策について国会で謝罪している。
◎世界青年の日に出席した教皇、オーストラリア訪問終える
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は7月21日午前10時半、カト
リック教会の公式行事「世界青年の日」に出席するため1週間にわたったオース
トラリア訪問を終え、空路帰国の途についた。
シドニーのランドウィック競馬場で行われた「世界青年の日」のミサに40万
人が参加したことに、主催者の教会側は喜びを隠さない。ジョージ・ペル枢機卿
は「カトリックであることが素晴らしい時」だったと、この1週間のことは忘れ
られない、と述べている。
教皇は次回2011年の「世界青年の日」開催地をスペインのマドリッドと発
表した。
◎世界聖公会のランベス会議開幕
【CJC=東京】世界各国の英国国教会(聖公会)で構成される『アングリカン・コミュニオン』の主教が協議のため10年に1回、20日間一堂に会するランベス会議が、英国南東部カンタベリーで7月16日開幕した。アングリカン・コミュニオン、は女性と同性愛者の聖職など役割や地位をめぐって分裂が取りざたされており、今会議でも激論が交わされることは確か。
今回会議には、アングリカン・コミュニオンの母体である英国国教会が、女性主教を容認する決定を下したことを受け、ケニアやナイジェリア、ルワンダ、ウガンダの主教を中心とするアングリカン・コミュニオンの約4分の1の主教が欠席している。
◎ジンバブエの現状は道徳的な挑戦、とノコ総幹事
【ジュネーブ=ENI・CJC】ルーテル世界連盟のイシュマエル・ノコ総幹事は、ジンバブエの現状を「すべてのアフリカ人に対する道徳的な挑戦」として、同国での人命安全の推進へさらに積極的な役割を果たすよう、各国指導者に要請した。
ジンバブエ出身の神学者であるノコ氏はアフリカ連合、南アフリカ開発共同体、南ア政府などの指導者に宛てた書簡で、「ジンバブエに本格的な民主主義を回復するのを助け、人々がこれ以上の苦難を受けることのないよう」努力を強めるよう訴えている。
南アのターボ・ムベキ大統領宛の書簡で、ノコ氏は、ジンバブエで仲介の労をとる場合には、それが指導者の願いに沿うのではなく、人々の福祉に貢献するものでなければならない、と述べている。
◎エルサレムの住民にとって、YMCAは許しの場所
【エルサレム=ENI・CJC】(ユディス・スディロフスキー記)忠実なユダヤ教徒モシェ・ゴラン=ガランティさんは13歳の時に初めて出かけたエルサレム国際YMCAが、それ以来、第二の家になってしまった。近くの貧困層居住地区で育った子どもたちは、冬の寒さを逃れるためには暖房のあるYMCAは格好の場所だったのだ。
それから半世紀、12キロも離れた所に転居した64歳のゴラン=ガランティさんは、YMCAまで週に2〜3日は通って来てプールや体育館で友人と一緒に汗をかく。「私たちは、運動で1日を始めるのが好きだ。ここにいる友人は人種や宗教もさまざまだし、男も女もいる。みなよく知り合っている。政治は私たちには関係ない。YMCAの外でもここでのように生きて行くことを学べればなあ」と言う。
YMCAのプールは1960年代まではエルサレム唯一だった。今では非常に混雑するので、ゴラン=ガランティさんのように通いつづけているエリス・サピラさん(72)は早朝の水泳もあきらめている。
エルサレム国際YMCAは、オスマン帝国支配下の1878年、旧市街ヤッファ門内のキリスト教書店裏に開設以来、今年で130周年を迎えた。また中心街ダビデ王通りに1933年完成した画期的な会館の75周年でもある。会館には年に50万人がやって来る。
会館はニューヨークのエンパイア・ステート・ビルを手がけたアーサー・ルーミス・ハーモン設計。正面にユダヤ教、キリスト教、イスラム教の碑文が刻まれている。右側はヘブライ語で「主なる神、主はひとり」、中央にはアラム語で「私は道である」、左側はアラビア語で「神以外に神なし」と読める。
その始まりから、キリスト教青年会の使命を記述した「ミッション・ステートメント」は、改宗を意図するものでないことを強調、エルサレム住民が持っていた懸念を鎮めた。実際に、宗教的に敏感な人、特にユダヤ教徒やイスラム教徒の女性がYMCAの施設、特にプールを利用している。男女別の使用が評価されている。
「歴史を通じて、エルサレムのYMCAはキリスト者のもてなしの想いで、あらゆる信仰の人に開かれた場を提供してきた。皆入り口で政治を脱ぎ捨てるのだ」と、ノリス・ラインウイーバー総主事は言う。
第2次インティファーダ(パレスチナ人による暴動)の際、観光客が激減して、エルサレムのキリスト教関係団体も閉鎖されるなど、YMCAの受けた影響も大きかった。
財政的に見ると、米国などのYMCAからの支援が大きい。2008年予算では42%が国外の姉妹団体からの援助だ。ラインウイーバー総主事によると、35万米ドル(約3700万円)も支出を切りつめたが、09年度はさらに50万ドル節減するという。
米国YMCAは、経費削減のため、ホテルとレストラン経営を第三者に委託することを提案している。リゼク・アブシャル前部長は、これがエルサレムYMCAの性質を変えることになるのでは、と憂慮を隠さない。「私が知っている、またそのように作り上げてきたYMCAの終わりのように感じる」と言う。
ただラインウイーバー総主事は、新たなパートナーが、YMCAの使命達成のため収入安定に貢献してくれることは確信している。「YMCAがホテルやレストランから撤退することが問題なのではない。本当に重要なのはYMCAが、エルサレムと下ガリラヤ地区の共同体の必要に仕えるという使命に集中することだ」と言う。
エルサレムYMCAに求められていることは、コンサート、演劇、授業、クラブ活動、サマー・キャンプ、休日集会、子ども向けプログラムなど、多彩な人々を集めるプログラムだ。それにはアラブ系やユダヤ系の子どもが、一緒に学び、遊ぶ正式就学前のプレスクールも含まれている。
ラインウイーバー総主事は、「今日、喜びを持つことを学ぶ子どもたちは、成人した時に他者を恐れることはない。それが未来に対する私たちの投資なのだ」と語った。
◎教皇訪問でシドニーの売春クラブが大盛況?
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世を迎えたシドニーで、「世界青年の日」向けに料金を「特別値下げ」した売春クラブが大盛況だ、とAFP通信が報じている。
クラブ『エクスクルーシブ』は、教皇の滞在期間となる15日から20日まで料金を10%値下げした結果、連日の大盛況となった。クラブでは女性従業員5人を臨時採用したという。
シドニーには現在、国内外から数千人の信者が集結したが、そのほかにも取材のために世界各国から3000〜5000人のメディア関係者が訪れている、とAFP通信は指摘する。
『エクスクルーシブ』のオーナーも、外人客が増えたが、彼らが信者かどうかまではわからないとしている。
《メディア展望》
=カトリック新聞(7月20日)=https://www.cwjpn.com
★教皇 オーストラリア訪問=性的虐待への謝罪と環境保護呼び掛けへ
★サミット前日 祈りの集い開催=「すべての人が大切にされる世界のために」=札幌
★バチカン=07年=収支赤字に=ドル安と株価低迷が主因
★聖トマ学園 法人の日=教区内12幼稚園1小学校から参加=学び合い支え合う=横浜教区
★常任司教委=「人クローン胚」めぐる国の施策に反対表明=文科省の意見公募に
=キリスト新聞(7月19日)=https://www.kirishin.com
★全国キリスト教障害者団体協議会=「これを見て、良しとされた」=石川栄一氏が講演
★「世界宗教者会議」が提言=WCRP日本委主催=核廃絶の枠組みを
★英国国教会総会=女性主教認める決定=離脱の動きに拍車か
★明治学院大学国際平和研究所20周年でジョージ氏講演="経済システムの転換を"
★日本聖書協会=「新共同訳聖書」刊行21年目=頒布1千万冊で記念式
=クリスチャン新聞(7月20日)=https://jpnews.org
★「聖書に励まされた30年」=横田早紀江さんを囲む拡大祈祷会
★「神との出会い」届け=ミクタムレコード創立30年
★福音派の聖書翻訳事業の前進へ=新法人名称は「新日本聖書刊行会」
★クリスチャントゥデイ疑惑問題=「異端である高度な可能性」=香港教界が調査報告
★北京の三自愛教会がイエス青年会と絶縁
=リバイバル新聞(7月20日)=https://www.revival.co.jp
★祈りの祭典in北海道=完全な一本の剣へ
★拉致被害者全員の救出を祈る=横田早紀江さんを囲む拡大祈祷会
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