世界キリスト教情報 第913信(2008.07.14)
- 英国国教会総会、女性主教を認める決定
- 英国国教会の「女性主教」にカトリック警告
- 「女性主教」は関係をさらに遠ざける、とロシア正教会主教
- 教皇、オーストラリアを初訪問 世界青年の日に出席へ
- 教皇庁列聖省新長官にアマート大司教、教理省局長にラダリア神父
- イエスの前に「メシア3日目」復活の伝承存在か
- 《メディア展望》
◎英国国教会総会、女性主教を認める決定
【CJC=東京】英国国教会は、ヨークで行った総会で7月7日、女性主教を認める決定を下した。英紙『タイムズ』が報じた。
投票に先立つ討議は6時間を超えた。主教、司祭、一般信徒代表それぞれで賛否を集計する総会での決定方式に従い行われた投票では、主教が賛成28票、反対12票、司祭で同124対44、一般信徒代表では111対68で、いずれも賛成が多数を占めた。棄権は7票あった。来年2月の総会に規則として提案され、採択されれば各教区の同意を求めることになる。
これまで自由派主教の下にいることを拒否する司祭などに『フライング・ビショップ』(巡回主教)制度が実施されており、今回それを格上げした形の『スーパー・ビショップ』を設ける提案もあったが、主教が21対21、棄権1票で賛否同数、司祭は92対84で反対、一般信徒代表は98対87票で賛成と分かれ、採択されなかった。
女性主教や同性愛聖職者をめぐり、国教会保守派グループは「聖書の解釈に反する」として強硬に反対してきた。今回の投票結果から 女性主教に反対する教区の中で英国国教会を離脱を図る動きも出て来そうだ。
◎英国国教会の「女性主教」にカトリック警告
【ローマ=ENI・CJC】バチカン(ローマ教皇庁)は、英国国教会の女性の主教叙階支持の決定を、カトリック教会との対話への妨げだとする声明を7月8日発表した。「そのような決定は、最初のミレニアム(千年期)以来、今日も、教会のすべてによって維持されている使徒的伝承の中断を意味するものであり、したがって、カトリック教会と英国国教会の和解にとってさらなる障害だ」とキリスト教一致推進評議会の声明は指摘している。
女性が英国国教会で司祭に最初に叙階されたのは1994年のこと、当時の教皇ヨハネ・パウロ二世は「使徒的書簡」で、「教会には、女性を聖職に叙階する権威はない」と指摘している。
ロシア正教会モスクワ総主教座も、対外教会関係部門のイーゴル・ビュザノフ師が「この決定はキリスト者相互の対話にとってはもちろん苦痛である。英国国教会の共同体を使徒的伝承からさらに遊離させることになる」と、インターファクス通信に語った。
一方、1992年に世界で初めて女性でルーテル派監督になった独ハンブルクのマリア・イェプセン氏は、英国国教会の決定を「期限切れ」と見なしている、とドイツのプロテスタント通信『epd』は報じた。「ただ当然ではある。女性は長年にわたって聖職者として仕えてきたのだから」と、言う。イェプセン監督は、1994年に英国国教会の最初の女性叙階式に出席している。
◎「女性主教」は関係をさらに遠ざける、とロシア正教会主教
【CJC=東京】英国国教会が7月7日、女性主教に道を開く決定をしたことは、正教会との関係をさらに遠ざけることになる、とロシア正教会の『ウイーンとオーストリアのヒラリオン主教』がロシアのインターファクス通信に語った。いわゆる「女性聖職」が対話の障害だったが、「女性主教」となると、これは別の問題で、国教会と正教会の間の壁をさらに厚くする、と言う。
ヒラリオン主教によると、ロシア正教会は今回の決定を「国教会があらゆる面で女性を平等に扱う、最近の世俗的基準に向かう譲歩の1段階」と理解している。「何世紀にもわたるキリストの教会の伝統が、またもや政治的正当性のために否定されるのだ」と指摘した。
◎教皇、オーストラリアを初訪問 世界青年の日に出席へ
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は7月13日、カトリック教会の公式行事「世界青年の日」に出席するため、オーストラリアを2005年の着座以来、初めて訪問した。青年の日には、海外からの巡礼者10万人を含む、50万人が参加するとみられている。また教皇は、同国の聖職者による性的虐待について謝罪することになっている。
教皇は、専用機でシドニーのリッチモンド空軍基地に13日午後到着、ローマから約20時間にわたる長旅にもかかわらず、教皇は笑顔で特別機から降り、ケビン・ラッド首相やシドニー大司教のジョージ・ペル枢機卿らの出迎えを受けた。教皇は17日から公式行事に参加するため、空港で歓迎式典は行なわれず、教皇は直接、シドニー近郊のケントハースト・スタディ・センターに向かった。
オーストラリアでは、カトリック聖職者による性的虐待問題が再び報じられ、この問題に絡んでカトリック教会の問題解決能力に対して懸念が再燃していた。
教皇は、4月の米国訪問時、聖職者による性的虐待について謝罪を行い、被害者と異例の面会を行っているが、今回のオーストラリア訪問でも性的虐待問題についての演説を行う意向を明らかにしている。
教皇はシドニーへ向かう機内で記者団に対し、聖職者が犯した過去の罪についてカトリック教会が「予防し、癒やし、和解する」方法を検討していきたいとした上で、「このことが、われわれが謝罪する際に述べる最も重要な内容だ」と語った。
バチカン放送(日本語電子版)によると、シドニーで行なわれる教皇の主な公式行事の予定は次の通り。
17日(木)午前、シドニー市内の旧総督邸ガバメント・ハウスでの歓迎式典に出席。続いて、総督公邸アドミラルティ・ハウスにマイケル・ジェフリー連邦総督を表敬訪問し、総督とラッド首相とそれぞれ会見。
同日午後、シドニー湾のローズ・ベイから参加者代表らと共に船でバランガルー突堤に向かい、同地で若者たちによる歓迎式に出席。
18日(金)午前、教皇はシドニーの司教座大聖堂の地下聖堂で、カトリック以外のキリスト教教会関係者らとエキュメニカルな集い。続いて、同大聖堂参事会員室で、諸宗教代表者と会見。
午後、世界青年の日参加者らによる十字架の道行きがで、教皇は開始部分の祈りを先唱。また、薬物中毒などからの社会復帰を目指す若者たちと会見。
19日(土)午前、シドニーの司教座大聖堂で、オーストラリア司教団とミサ。神学生や修道会志願者らが参加。
同日夕、ランドウィック競馬場で行なわれる世界青年の日の前夜祭に出席。
20日(日)、世界青年の日を迎え、教皇は同競馬場で若者たちのためにミサ。
21日(月)、教皇は世界青年の日大会のボランティアの人々に挨拶、シドニー国際空港での送別式を経て、ローマへ向け出発。
◎教皇庁列聖省新長官にアマート大司教、教理省局長にラダリア神父
【CJC=東京】バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇ベネディクト16世は7月9日、教皇庁列聖省長官ホセ・サライヴァ・マルティンス枢機卿の定年による引退を承認、後任に教理省現局長アンジェロ・アマート大司教を任命した。
また、教皇は教理省の新局長に、教皇庁立グレゴリアン大学教理神学教授および国際神学委員会局長のルイス・フランシスコ・ラダリア・フェレール神父(イエズス会)を任命、これと共に同神父を大司教(ティビカ名義大司教)に任命した。
列聖省新長官のアンジェロ・アマート大司教は、1938年、イタリア・モルフェッタ生まれ。サレジオ修道会に入会し、67年、司祭叙階。教皇庁立サレジオ大学神学部教授、学長代理、副学長を務めた。2002年12月より教皇庁教理省局長。03年1月、司教叙階(シラ名義大司教)。
◎イエスの前に「メシア3日目」復活の伝承存在か
【CJC=東京】ヨルダン川近くで発見された紀元前1世紀のものとされる石碑に「メシアの3日目の復活」についての文言が記されていると、ヘブライ大学のイスラエル・クノール教授(聖書学)が米『ジャーナル・オブ・レリジョン』誌4月号で主張した。
キリスト教とユダヤ教の関係が再定義される可能性も出てきたことから、死海文書が発見されて60周年を記念してこのほどエルサレムのイスラエル博物館で開かれた会議でも議論が交わされた。
高さ約90センチの石碑には、へブル語の文書87行以上が2段にわたりインクで記載されている。その大半は風化し消えかかっている。80行目には「3日間」という言葉と「生きる」という動詞の一部が見えることから、「メシアの死から3日後に大天使ガブリエルがつかわされ、メシアをよみがえらせた」と教授は解釈している。石碑の文字が彫り込まれたものがほとんどの中で、インクで記された例は非常に珍しい。
十字架に付けられたイエス・キリストが3日後に死者の中からよみがえった、と使徒信条は言明する。メシアの死者の中からの復活がユダヤ思想の中で知られていたとしても、「3日」という数字がイエスの誕生前に予知されていたことを裏付ける発見と言える。
米カリフォルニア州立大学バークレー校のダニエル・ボヤリン教授(タルムード文化学)は、イエスは当時のユダヤ教の伝承を綿密に読むことによって理解される、として「キリスト者の中には、キリスト教神学の独自性が脅かされると衝撃を受ける人も出て来る」と言う。
古代言語の専門家、アダ・ヤルデニ氏は、消えかかった文字が「生きる」と読めないことはないとしつつも、クノール教授の説は受け入れられないと言う。ただテルアビブ大学のユヴァル・ゴレン考古学部長は、死海文書の文字には細工の跡が認められないとしている。
これまで知られている死海文書は羊皮紙などに記されていた所から、今回の発見を「石の死海文書」と呼ぶ向きもある。石碑は10年も前に発見され、ヨルダンの古物商からスイスの収集家が買い取り、チューリッヒの自宅に保管していたものという。
死海文書も発見以来、その所有、保管、研究などをめぐって学者間にも対立があり、内容自体の研究が十分に進んでいるとは言えない状況の中で、「石の死海文書」をめぐっても様々な思惑が交錯しそうだ。
《メディア展望》
=カトリック新聞(7月13日)=https://www.cwjpn.com
★高松教区=国際宣教神学院=教区立としては閉鎖=教皇が決定 書簡で伝える
★世界の宗教指導者ら集い=G8サミットに提言=北海道・関西
★聴いてよ! 司教様!!=京都教区 青年の集い=「居場所」「ストレス」「仕事」テーマに
★全国カトリック学校校長・教頭合同研修会=カト校の存在意義とは=仙台
★移動する図書館、喫茶店、花店...病者を励ます多彩な働き=笑顔で奉仕=病院ボランティア―ランパス=神奈川
=キリスト新聞(7月12日)=https://www.kirishin.com
★米長老教会総会="世に証する教会として"=「21世紀の社会信条」を採択
★在日大韓教会=李仁夏氏、逝去=エキュメニズムに貢献
★京都=「ユダヤ思想」研究へ学会=京大・同大の交流から発足
★日基教団教区総会=沖縄は三役一新、複数の告白へ=今期も教団総会議員選ばず
★牧会続けながら教育に尽力=青山学院=深町正信院長=退任講演で亡弟との誓い語る
=クリスチャン新聞(7月13日)=https://jpnews.org
★西日本宣教セミナー40年=牧師は地域住民の霊的指導者=中国5県の教会が教団教派超え協力
★食の危機に「エデンの園」から警鐘=有機野菜栽培の研究会誌とおして
★若者の育成テーマにシンポジウム=大学教育から初等教育を見上げる=発達段階に合わせ適正な教育を=第32回西日本宣教セミナー
★学問領域にも働くキリストの主権=ホイートン大学長D・リトフィン氏講演
★日本語の変化に対応した翻訳を--新改訳聖書刊行会が特別講演会
=リバイバル新聞(7月13日)=https://www.revival.co.jp
★「大群衆を求めよう」=G12セルチャーチ東京大会2008
★香港=ラインハルト・ボンケ氏が伝道集会=1万4000人が参加
★聖公会保守派=『エルサレム宣言』発表
★WEAとウィクリフ=聖書翻訳の促進で提携
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