世界キリスト教情報 第893信(2008.02.25)
- WCCのコビア総幹事が退任へ
- WCCがコビア総幹事辞任後に代行任命へ
- WCCが後継総幹事の選考に着手
- 米主流各派の教勢停滞=『米加教会年鑑』2008年版
- バチカンが列福調査の申請の規範示す、聖人への門狭める?
- バチカン国務長官がキューバを訪問
- ガザ中心部のYMCA襲撃される
- マレーシアで宗教の自由の行方にキリスト教会が懸念
- ルクセンブルク議会が安楽死法案を可決
- 《情報レムナント》
- 《メディア展望》
◎WCCのコビア総幹事が退任へ
【CJC=東京】世界教会協議会(WCC)のサミュエル・コビア総幹事は、2月13~20日の日程で開催された中央委員会で18日、今年12月の任期満了に伴い、同委が再任を求めても受けない意向を明らかにした。理由は個人的なものとしている。同委は長時間にわたり議論したが、コビア氏の意向を受け入れることにし、後任選考委員会を設立した。選出は2009年9月の次回中央委で行われる。
中央委の直前、WCCへの負担金が高額なドイツ福音教会のマーチン・ヘイン監督(WCC中央委員)が、南アのアパルトヘイト(人種隔離)政策反対闘争や、東西対立の仲介役としてWCCは、70年代と80年代には目立った存在だったが、近年はWCCが注目されることが少なくなり、さらに収入減少に直面して、WCCの存在感が薄れている、として「WCCは、あらゆることに関わろうとしているが、ミニ国連になる必要はない」と指摘するなど、コビア氏の指導に疑問が出されていた。
コビア氏はケニア出身のメソジスト派牧師。米フェアファックス大学から哲学博士号を受けたが、同大学には博士号授与の資格がない疑念が高まり、WCCはウエブサイト上のコビア氏の経歴を修正したことも影響したと見られる。
◎WCCがコビア総幹事辞任後に代行任命へ
【ジュネーブ=ENI・CJC】世界教会協議会(WCC)は、サミュエル・コビア総幹事の辞任表明に伴い、ウォルター・アルトマン議長が2月19日、コビア総幹事に今年末までの任期一杯、職務を全うするよう要請した。また9月に開催する常議員会で総幹事代行を選任、コビア氏退任後、後任総幹事が来年9月に選出するまで、任務に当たらせることとした。
アルトマン氏は、後任選考委員会が世界中に候補者を捜す時間が必要であり「諸教会に候補者推薦の機会を与えたい」と語っている。
◎WCCが後継総幹事の選考に着手
【ジュネーブ=CJC】世界教会協議会(WCC)は、サミュエル・コビア総幹事が今年末の任期満了に際し再任を求めないとの意向を2月18日表明したのを受け、後任選考に入った。創設60周年を記念する中央委員会を13日から20日までジュネーブで開催したが、コビア氏の再任を求めない意向はその中で表明された。
中央委は19日、長時間にわたる協議の末、意向を受け入れ、後任選考委員18人を選出、委員会を発足させた。
後任選考委員は10人が中央委の投票で選ばれ、さらに常議員会が地域、性別、教派、年代などに配慮して6人を委嘱、中央委の副議長2人が職権で委員となった。選考委は、コビア総幹事と同じケニア出身の女性アグネス・アブオム氏を委員長に互選した。
18人の委員には青年3人、女性8人、正教会3人、東方正統教会1人が配慮して選ばれている。
地域別ではアフリカ4人(ケニア、西アフリカ・ガーナ、南ア、ジンバブエ)、中東2人(トルコ、レバノン)、アジア2人(パキスタン、インドネシア)、北米3人(米国2人、カナダ)、中南米1人(キューバ)、欧州4人(スウェーデン、スコットランド、ルーマニア、独)、太平洋2人(豪、サモア)となっている。
中央委員の中には、キリスト教の成長が全地球規模で進んでいるのに対応して、総幹事後継者はアフリカかアジアから出る、と予想する人もいる。
◎米主流各派の教勢停滞=『米加教会年鑑』2008年版
【CJC=東京】米国の主要25教派の教勢は、多くが停滞か減少のいずれかに陥っていることが、米教会協議会発行の『米加教会年鑑』2008年版で明らかになった。
同年鑑は224の教派、団体などを対象に調査した結果をまとめた。ほとんどのデータは2006年のもの。
主要25教派(1億4738万2460人)では0・24%の微増。教勢増加6教派、横ばい12教派、減少が7教派。
年鑑のアイリーン・W・リンドナー編集長は、20代と30代では地域教会に出席し、献金などで支えているものの、会員になることをためらう、と語っている。
減少が目立つのは、同性愛問題などで揺れる聖公会が最大の4・15%減で会員数215万4572人、15位。米長老教会(PCUSA)も2・36%減。
成長率首位はエホバの証人で2・25%増加し100万人を超えて25位、106万9530人。モルモン教会(末日聖徒イエス・キリスト教会)が1・56%増。
ローマ・カトリック教会、南部バプテスト連盟、アッセンブリーズ・オブ・ゴッド(280万人)、アフリカン・メソジスト・エピスコパル・ザイオン教会(140万人)などがいずれも1%以下ながら増加した。
信徒数で見た上位10教派は次の通り。順位は前年と変わらない。
▽カトリック教会(6751万5016人、0・87%増)、▽南部バプテスト連盟(1630万6246人、0・22%増)、▽合同メソジスト教会(799万5456人、0・99%減)、▽末日聖徒イエス・キリスト教会(577万9316人、1・56%増)、▽キリストにある神の教会(549万9875人、横ばい)、▽全国バプテスト会議(NBCUSA=500万人、横ばい)、▽米福音ルーテル教会(477万4203人、1・58%減)、▽全米バプテスト会議(NBCA=350万人、横ばい)、▽長老教会(PCUSA=302万5740人、2・36%減)、▽アッセンブリーズ・オブ・ゴッド(283万6174人、0・19%増)。
◎バチカンが列福調査の申請の規範示す、聖人への門狭める?
【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)列聖省は2月18日、列福調査手続きの申請段階について説明する文書『サンクトルム・マーテル』を発表した。文書は、列福手続きの中で調査を申請する際の規範を管轄教区の司教や関係者に解説するもの。
列聖省長官ホセ・サライヴァ・マルティンス枢機卿によると、この文書は列福調査の教区レベルにおける現行の規則を、より注意深く理解し適用するのを助けることを目的としている。
文書は6章に分かれ、管轄教区が列福手続きを申請する際、その対象者の正真の聖徳の名声を確認する必要に始まり、教区レベルでのその作業を開始し終了するまでを手順を追って説明している。これまでバチカンに司教から提出された書類に不十分なものがあったことを示唆しており、より慎重な準備を呼び掛けたもの。
前教皇ヨハネ・パウロ二世は、在位27年間に1338人を列福、482人を聖人に列した。それでも英BBC放送によると、列福申請書類は2200件を超えており、数十年どころか百年以上保留のものもある。
◎バチカン国務長官がキューバを訪問
※25日以降の経過は入着次第、速報の予定です。
【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)国務長官タルチジオ・ベルトーネ枢機卿は2月20日、キューバを公式訪問した。同日夜、ハバナ国際空港に到着したベルトーネ枢機卿は、フィリペ・ペレス・ロケ外相をはじめとする政府要人や教会関係者らに迎えられた。
バチカンで教皇に次ぐ地位にある国務長官の訪問はキューバ政府の招待によるもので、前教皇ヨハネ・パウロ二世のキューバ司牧訪問10周年に合わせた記念式典出席が目的。
キューバのペレス外相は13日の記者会見で、「今回の訪問は米ブッシュ政権下で経済制裁が悪化している中で行われる」と述べ、ヨハネ・パウロ2世が10年前の訪問時に制裁を非難したことに触れた。キューバ側には、今回の訪問を米国を含む対外関係改善の足がかりにしたい思惑もあるようだ。
長官は24日にキューバ東部グアンタナモで記念式典に出席するほか、26日までの滞在中、ハバナで司教団、聖職者、神学生、修道者らと会見、サンタ・クララ、サンティアゴ・デ・クーバでも教会関係者らと交流、教皇からのメッセージと祝福を伝える。
キューバ新指導部が選出される翌日の25日、フィデル・カストロ国家評議会議長の後継就任が確実視されているラウル・カストロ国家評議会第1副議長と会談する。キューバにとっては「カトリック教会を重んじる姿勢」を示す狙いがあるのではないか、と見られている。
長官はジェノバ大司教であった2005年10月、キューバを訪問し、カストロ国家評議会議長と会見している。
長官は出発前のインタビューで、「キューバの教会、そして政府関係者を含むすべての同国国民のため、複雑な現実の中に前向きな発展があるように祈りたい」と話し、この訪問が実り多いものとなるよう希望を述べた。
◎ガザ中心部のYMCA襲撃される
【エルサレム=ENI・CJC】(ジュディス・スディロブスキー記)パレスチナ自治区ガザ中心部にあるYMCA(キリスト教青年会)に2月15日、武装グループが、警備員2人を排除して押し入り、図書室を爆破した。同YMCAのイッサ・サバ所長が語った。
武装グループは内部に爆薬を仕掛け、図書室と蔵書数千冊を破壊した。隣接している結婚式場も破壊しようとしたが、失敗したと言う。
「イスラエルの攻撃やこちら側内部の問題のため、ここ数年間不安定な生活をしている。状況は複雑だ」とサバ所長。
ロイター通信は、事件がデンマークやスウェーデンでイスラム教の創始者ムハンマドを風刺する似顔絵が新聞紙面に再掲載されたことを侮辱だとしての報復だったのか、は明確でないと報じた。
カトリック教会のマニュエル・ムサラーム司祭は、デンマークで似顔絵再掲載以来、地元メディアが反対を放送し続けていた、と言う。また、ガザでは多くの人々が、少年と少女が自由に出会えるYMCAのオープンなあり方を不快におもっている、と指摘した。「非常に保守的なイスラム教社会では、オープンな生き方は困難だ」と語った。
YMCAはキリスト者とイスラム教徒の双方に開かれており、結婚式場と図書室の他にスポーツ室や教室もある。サマー・キャンプも運営している。
「皆はおびえている。でもYMCAに行った。多くはいなかった。私たちには、他に行く場所がない」と、キリスト者の十代女性は、匿名を条件に語った。YMCAが若ものにとって、退屈と緊張からの避難所と見られていた、として「今、そこでもリラックス出来ない。どうしたら良いのか」と、言う。
サバ所長は「現在、反キリスト教感情が強まっている。若ものたちはいつも木曜日夕にYMCAに集まる。ここでは様々な活動が行われている。皆が一緒に座ることが何で問題なのか。注意することは必要だが、活動は止められない」と言う。
「私たちはアラブ系パレスチナ人だ。全体の状況に不安はあるが、それは宗教問題ではない」としてサバ所長は、襲撃後は警察がYMCA構内をパトロールしている、と語った。
◎マレーシアで宗教の自由の行方にキリスト教会が懸念
【CJC=東京】3月8日の総選挙を意識して、マレーシアのカトリック教会、プロテスタント教会協議会、全国福音派などで結成された「マレーシア・キリスト教連盟」が、投票に際して各政党が宗教の自由をどれほど尊重しているかを見極めるよう促したパンフレットを信徒に渡している。少数派宗教の権利が損なわれつつある、との懸念からだとしているが、AP通信は、イスラム教国で少数派のキリスト教会が慎重にではあるが政治問題に取り組んだと報じている。
ハーマン・シャストリ連盟代表幹事は、「宗教の権利擁護を表明しない候補者には票が集まらないと思う」と語った。キリスト者は「イスラム化」の高まりを感じており、選挙を真剣にとらえているという。連盟は、仏教徒、ヒンズー教徒とも協力している。
マレーシアは総人口2700万の58%がイスラム教徒、仏教徒23%、キリスト者11%、ヒンズー教徒6%。マレーシアは「イスラム化」は世界でも緩やかな方だが、司法制度は二元的で、シャリア(イスラム法廷)がイスラム教徒を、民事裁判所はその他宗教信者を扱っているが、非イスラム教徒の改宗、結婚、離婚、親権問題にまでシャリアが介入するようになっている。
またイスラム教徒以外が「アラー」という言葉を使用することを禁じ、キリスト教会側の反発を呼んでいた。
◎ルクセンブルク議会が安楽死法案を可決
【CJC=東京】ルクセンブルク議会は2月19日、緑の党のジャン・フス議員、社会党のリディ・エア議員提出の安楽死法案を賛成30票、反対26票、棄権3票で可決した。今後、第2読会でも可決されれば、今夏にも成立する。安楽死を認める国としては、欧州連合(EU)ではオランダ、ベルギーに次ぎ3番目となる。
ルクセンブルクの安楽死法案は、患者本人の意思表明を条件とするなど、適用を厳しく制限しているが、安楽死に反対のキリスト教社会党を母体とするジャン=クロード・ユンケル政権には打撃となった。
《情報レムナント》
▽同志社大のシンボル、クラーク館の修理終わる
重要文化財の同志社大クラーク記念館の解体修理が終わり、完工式が21日、京都市上京区の同大今出川キャンパスで開かれた。100年以上の時を経て創建時の姿に生まれ変わった「同志社のシンボル」に賛美歌が響きわたった。
クラーク記念館は米国人クラーク夫妻の寄付などを受け、1894年に神学校として完成した。5年間の大修理で、塔屋の屋根を鉄板ぶきにし、屋根窓や尖塔(せんとう)形の棟飾りを復元して、創建時の欧州風のモダンな姿を再現した。れんが造り2階建てで、内部はチャペルやキリスト教関係の講義で使われる教室など。
式典はアーチ状の「船底天井」にシャンデリアの輝くチャペルで催された。大学の関係者約120人が出席した。(京都新聞2月21日)
《メディア展望》
=カトリック新聞(2月24日)=https://www.cwjpn.com
★バチカン主催の会議=「女性と男性―全体としての人間」 女性への差別と暴力=教皇が強く非難
★四旬節を生きるために=教区典礼委が研修会開く=横浜
★新潟・高田教会=母子寮増築のため地域巻き込みチャリティーコンサート
★東ティモール=大統領・首相暗殺未遂事件=現地司教が平静訴える
★総本部ローマに移転=宮崎カリタス修道女会
=キリスト新聞(2月23日)=https://www.kirishin.com
★江戸、明治の情景今に=新ガウチャー・ホール=レンガ造りの基礎発掘
★カンタベリー大主教 「イスラム法導入」発言で論争
★国際基督教大学 丁光訓氏に名誉人文学博士号="日中友好の象徴"
★熊本バンド結盟記念早天祈祷会=志に思い馳せ
★「日の丸・君が代」不起立訴訟=都の処分に「歯止め」=職務命令の違憲性は認めず
=クリスチャン新聞(2月24日)=https://jpnews.org
★時代に逆行する政府にNO=2・11東京集会「戦争と教育」=「信教の自由を守る日」集会各地で
★「神は唯一」小学生が証し=美濃ミッション事件を検証=日本同盟基督教団新潟山形宣教区ヤスクニ委員会
★外キ協全国協議会全国集会開催=進む外国人管理強化を危惧=「共存社会の実現」宣教の使命に
★「教会も戦争肯定・支持へ」=渡辺聡氏9・11直後の米国教会を語る=日本キリスト教会連合関東三地区2・11集会
★新潟県中越沖地震から6か月=「希望取り戻してほしい」=森祐理さん招きコンサート
=リバイバル新聞(2月24日)=https://www.revival.co.jp
★中国・大連=社内で教会開始=日本人経営者が導く=DVD『十字架』見て奮起
★イスラエル&ニューブリード来日
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