世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第892信(2008.02.18)

  • WCC設立60周年、独教会が負担軽減示唆
  • カンタベリー大主教、シャリア法発言への批判に応答
  • 英国国教会がインターネット上にニュースレター
  • 教皇、4月に米国を司牧訪問、国連本部へも
  • ポーランド・カトリック教会、召命者が急減
  • シンガポールで「キリスト」化粧品シリーズを販売中止
  • 《情報レムナント》
  • 《メディア展望》

◎WCC設立60周年、独教会が負担軽減示唆

 【CJC=東京】世界教会協議会(WCC)は今年60周年を迎えた。創設された1948年は第二次大戦直後。それから今日まで、WCCを取り巻く世界、またWCCの抱える課題は大きく変化した。
 南アのアパルトヘイト(人種隔離)政策反対闘争や、東西対立の仲介役としてWCCは、70年代と80年代には目立った存在だった。しかし近年、WCCが注目されることが少なくなっている。それは、そのような大きな課題がないことにもある。さらに収入減少に直面して、WCCの存在感が薄れている。
 ENI通信によると、創立60周年記念の中央委の直前、WCCへの負担金が高額なドイツ福音教会のマーチン・ヘイン監督(WCC中央委員)はこう指摘した。
 サミュエル・コビア総幹事は「何十年間も、エキュメニズムは、資本主義と社会主義との闘争と二十世紀の超大国2国間のいわゆる冷戦に大きく影響された」と語っている。しかし二十一世紀に「最も活力があり、最も急増している教会は欧州や北米にではなく、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ(中南米)にあり、それらの多くはカリスマ派かペンテコステ派に属している」と、コビア総幹事は言う。自身はメソジストでケニア出身。
 ヘイン監督は「WCCが、政治的な課題と今後も取り組むこととなろうが、共通の目的がないのではないのでは、という印象を持つことが問題だ。WCCは、あらゆることに関わろうとしているが、ミニ国連になる必要はない」と、EPD通信とのインタビューで語った。
 WCCに加盟したのは、元来ほとんど北米と欧州のプロテスタント教会や英国国教会(聖公会)だった。それが現在、英国国教会、プロテスタント、正教会の347教会に達している。ローマ・カトリック教会は正式メンバーでないが、多くの問題でWCCと協力している。
 中央委員会はWCCの新しいコミュニケーション戦略を検討することになる。2006年の会議で、この分野への展開強化が決められた。ブラジルのポルトアレグレで開催された総会で、WCCは「活動を少なく、それを効率的に」という方向が定まった、とヘイン氏は指摘する。
 しかし「多くの領域で批判的に見る必要がある。ジュネーブの本部では多くのことが行われるが、それが外の世界に発信されない。発信出来るだけのビジョンや見解を持てなければ、WCCの広報に反応が少ないと非難することは不当だ」と言う。
 中央委は、7年毎に開かれる総会の間、WCCの最高執行機関であり、1年から1年半ごとに開催される。中央委は、総会決議を執行、プログラムを見直し、予算案を承認する。
 ドイツのプロテスタント教会はWCCの収入の3分の1を負担しているが、今後は負担額を減らしたい、としてヘイン氏は「他にも豊かな教会が北半球にはある。アメリカの教会や正教会は負担を強化出来る立場にある。資金的負担を軽減する仮会員資格などと言うものはあってはならない」と述べた。
 WCCマーク・ビーチ報道担当はENI通信に「ドイツの教会の貢献とそれらが全体としてWCCの活動を支えていることに非常に感謝している」と述べた。EKDなど加盟教会と問題を協議中であり、今回の中央委でも討議される、と言う。
 2月13日からの60周年記念会議前に、ヘイン氏がWCC事務局を批判したことについて質問されて、ビーチ氏は「あらゆる組織が自己検討を迫られている。WCCは加盟教会の声を聞かなければならないし、そうする。WCC執行委員会は、スタッフがプログラムに優先順位を付けるべきだ、と指摘しており、その結果を中央委に提出する予定だ」と答えた。


◎カンタベリー大主教、シャリア法発言への批判に応答

 【ロンドン=ENI・CJC】英国国教会(聖公会)の霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏は、イスラム法の一部であるシャリア法を英国の司法制度の中に取り込む必要があるとした自らの「発言に批判が集中したことに、「並行司法制度」を提唱したものではない、と応答した。
 2月11日、英国国教会総会での演説で、ウイリアムズ氏は、シャリア法に英国で同等の扱いをすることを提案してはおらず、英国の司法制度にイスラム法を持ち込もうとする試みは「女性の地位と特権」を危うくする、と指摘した。「批判の中には、実際の発言から非常にかけ離れたものもある。しかし、一般に、また仲間のキリスト者に誤解を招いたような、あいまいな所や誤った言葉使いがあれば、もちろん責任は取る」と言う。それでも、「私は、英国国教会の牧師が、他の宗教共同体の抱える問題について発言して、それを公共の問題とするように努力することは不適当ではないと強く信じている」と語った。
 ウイリアムズ氏の見解には、前任者のジョージ・ケアリー氏始め多くの人から批判の声が上がった。「民主主義と人権のための戦いの中で磨かれて来た私たちの国法に例外があってはならない。英国の法律の中にイスラム法の一部を受け入れるという主張は英国にとって悲惨なものとなる」とケアリー氏は『ニュース・オブ・ザ・ワールド・サンデー』紙に寄稿した。
 ドイツのプロテスタント福音教会(EKD)のウォルガング・フーバー監督も「イスラム教からの信仰転換は死によって罰せられるような法制度を間接的にせよ支持するなど考えられない」と批判した。ただ英国の合同改革派教会はカンタベリー大主教支持を表明している。
 「重要な討論であり、私たちは大主教の問題提起を歓迎する。コメントが誤り伝えられ、誤解されたことは遺憾だ。これは明らかに複数宗教の傾向を強める社会の課題なのだ」と、同派のレイ・アダムス総幹事代行は述べている。


◎英国国教会がインターネット上にニュースレター

 【CJC=東京】英国国教会(聖公会)本部事務局がインターネット上に、ニュースレター『アングリカン・ワールド・ニュース・アンド・ノーツ』(英語)の掲出を始めた。同派内の課題や事業、本部の活動に関する情報を提供する。
 最近号では2008年ランベス会議の内容などを紹介している。PDF版をダウンロードして複製、印刷することは自由という。不定期刊行のため、登録すれば刊行時にメールで連絡を受けられる。
 ※サイト=https://aco.org/resources/aw/online/ 


◎教皇、4月に米国を司牧訪問、国連本部へも

 【世界キリスト教情報】教皇ベネディクト十六世は4月15日(火)から20日(月)までの1週間、米国を司牧訪問する。
 現在、15日にワシントンを訪問、18日にニューヨーク入りの予定。ニューヨークでは国連本部訪問も計画されている。
 教皇は、16日にジョージ・ブッシュ大統領と会談することが明らかになった。会談はホワイトハウスで行われる。
 ホワイトハウスの声明によると、大統領と教皇は中東など不安定地域における和平達成に向け、異なる宗教間の理解促進や人権、信仰の自由などについて意見を交換する。
 ベネディクト十六世としては8回目の海外司牧訪問となる。


◎ポーランド・カトリック教会、召命者が急減

 【ワルシャワ=ENI・CJC】ポーランド・カトリック教会は全国に84神学校を設置しているが、入学者が24%減少した。神学生総数も10分の1になった。聖職担当ウォイチエク・ポラク司教は、最近のスキャンダルが急減の原因とは思えない、として「現代文化が生涯の献身に水をさしている。しかし聖職への召命が激減したわけではなく、聖職者が不足していると感じてもいない」と語っている。
 1月31日のインタビューで、ポラク司教は、長期的傾向が明確になるまで教会が「十分な結論」を描けない、と語った。
 ポーランドのメディアでは、神学生の減少は、共産主義政権下で教会が秘密警察に協力したとか、カトリック放送『ラジオ・マリヤ』の愛国主義が嫌気されたなどと伝えているが、司教はそれらに証拠がない、としている。
 「ポーランドは欧州全体の人口動向にも影響される。とにかく聖職候補の数は減少している。これまでより少ない聖職者でやって行くことに慣れるべきなのだ。しかし司教会議は、若年層への司牧に努め、聖職と献身生活への関心を高める新しい方法を見つけるために一生懸命だ」と言う。
 カトリック教会の召命は、ポーランド生まれの教皇ヨハネ・パウロ二世が1978年選出されたのを受けて倍増、80年代半ばピークに達した。最近でも欧州全体の2割、全世界の7%を占めている。
 教会の発表によると、神学生総数は2006年の4612人が07年には4257人に、10月段階の新入神学生は同じく1029人から786人に減少した。また修道会入会者も男女とも減少している。


◎シンガポールで「キリスト」化粧品シリーズを販売中止

 【CJC=東京】シンガポールのファッション店『トップショップ』が、「イエスのために美しく」などという化粧品は、キリスト教を侮辱する、とカトリック信徒が苦情を受け、1月下旬にシリーズの商品を店頭から回収した。「キリストでぴったり」と命名されたものもある。一連の化粧品は、米化粧品メーカーブルーQが製造した。
 シンガポールは人口440万の半分は仏教徒だが、キリスト者も14%いる。面白半分の商品名とは言え、お堅い向きには通じないことを覚ったのか、店側は「顧客を怒らせたくない」と語っている。


《情報レムナント》

▽「祈りの場」江袋教会4月着工 火災から1年復元へ
 二〇〇七年二月に焼失した長崎県新上五島町曽根郷の江袋教会の火災から十二日で一年。信徒は「祈りの場」を失ったが、同教会に隣接する司祭館でミサを営み、信仰を守り続ける。所有するカトリック長崎大司教区(高見三明大司教)は、原則燃え残った材料を使い、創建された明治期の姿の復元に向けて四月着工、二年以内の完成を目指す。これまでに全国から三千五百万円以上の浄財が寄せられたが、長崎大司教区は復元に要する二億円の資金調達に向け、県などと交渉を進めている。
 長崎大司教区が復元を強く望んだため、建築学の専門家らが焼失の翌月から昨年十二月にかけ六回現地入りし、燃え残った柱などが使えるかどうかなどを調査。炭化した柱などの表面を削って新しい木材を張り付けたり、木材の表面を樹脂で覆うなど適切な工法を探ってきた。調査や図面作製を担う長崎市の一級建築士事務所は「三月中旬をめどに設計図を完成させたい」としている。(長崎新聞2月12日)


《メディア展望》

  =カトリック新聞(2月17日)=https://www.cwjpn.com
★正平協担当者代表者会議 環境・死刑の新部会など報告=青年教区代表7人も参加
★教皇 「灰の水曜日」の一般謁見で語る=四旬節は神の抱擁に立ち返る時
★観光客増加見越して準備進む="ながさき巡礼"
★教皇 修道者に呼び掛け=信徒が聖書に親しむ助けを=「世界奉献生活者の日」に
★『ハンセン病問題基本法Q&A』=署名呼び掛けに向け必要性説明

  =キリスト新聞(2月16日)=https://www.kirishin.com
★聖公会×カトリック=エキュメニズムに大きく貢献=『マリア―キリストにおける恵みと希望』刊行=東京カテドラルで記念礼拝
★説教塾20周年迎え活動盛んに=「信州」「西中国」にも
★外キ協=共生社会の実現へ=今夏にも韓国青年との交流を
★アトランタ=バプテスト集会に1万4500人=今後の結集に望み
★JOCSチャリティー映画会=「おばあちゃんの家」=海外での医療活動など支援

  =クリスチャン新聞(2月17日)=https://jpnews.org
★「あなたを永遠にたたえます」=Israel & New Bread初来日ライブ
★米国大統領予備選=故キング牧師の評価をめぐりクリントン・オバマ両氏が舌戦
★全世界に出て行く7年間に=VIPリーダーシップフォーラム
★福田首相の伊勢神宮参拝は違憲行為=バプ連盟東京地方連合会が声明
★「改憲推進」に緊急声明=宗教者9条の会

  =リバイバル新聞(2月17日)=https://www.revival.co.jp
★第43回教役者大会=時代を勝ち取る教会に=ユース意識した内容=講師「雰囲気」の重要性説く
★アトランタ=バプテスト諸派集合


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