聖書のことば(マルコ4:39-40)、『チャペル・アワー案内』No.210、2010年11月30日
イエスは起き上がって、風を叱り、湖に、「黙れ。静まれ」と言われた。すると、風はやみ、すっかり凪になった。イエスは言われた。「なぜ怖がるのか。まだ信じないのか。」
(マルコによる福音書 4章39─40節)
湖上での突風の中で慌てふためく弟子たちに対し、「なぜ怖がるのか」とイエスは問いかけます。しかし、人間が恐怖にとらわれることは自然なことであり、場合によっては必要なことでもあります。
恐怖の最大の力は何でしょうか。それは、人間を孤立させることです。見るべきものを見失い、聞くべき声に耳を傾けられなくなって、ただ自分の身の安全のことだけが頭の中をぐるぐると巡ります。弟子たちの不信仰は、何より恐れを共有できなかった点にあります。
恐れ・不安の突風が、時に私たちの人生を吹き抜けます。私たちの存在そのものを支えている力への再度の信頼が「静けさ」への糸口となるのです。
(神学部教授・小原 克博)