「宗教と国際社会──バングラデシュで学ぶ国際社会の課題」のフィールドワーク(8/24〜31)
この科目「宗教と国際社会」は、バングラデシュにおける社会問題や環境問題と向き合うことにより、国際的な視点で物事を見る力を養い、また、国際社会における宗教の役割を考える力を身につけることを目標として開講されました。バングラデシュは、近年,めざましい経済発展を遂げながらも、児童労働、児童買春、児童結婚、環境問題、少数民族差別など、多くの深刻な社会問題を抱えています。現地のキリスト教系NGO デライト・ファウンデーションの協力を得ながら、 8月24 日〜31 日、現地でのフィールドワークを行いました。4 月から7 月までは、教室での事前授業を通じて、バングラデシュのことや、国際社会と宗教の関係について学びました。神学部の教育の最新情報を知っていただくために、フィールドワークの様子を簡単に紹介します。今年度は私が6名の参加学生を引率しました。
首都ダッカから宿泊地のゴバルガンジに向かう途中で、バングラデシュの喧噪著しい都市の風景から、日本ではもはや見ることのできないような、ヤギ、牛、犬などの動物と人間が共生している集落の風景までを連続的に見る中で、人々の生活の多様性を知ることができました。
ゴバルガンジのデライトファウンデーションの施設では、バングラデシュの各地から家族を離れて共同生活している子どもたちと交流しました。朝の礼拝の時間も共にしました。家庭環境の悪化や児童売買など、様々な理由により、故郷を離れざるを得なかった子どもたちとの出会いは、学生たちに多くのことを考える機会を与えてくれました。
宿泊場所は川の近くにありましたが、その周辺の集落は、日本ではもはや失われたような風景が広がっていました。様々な野生動物との出会いも新鮮でした。牛の乳搾りをし、翌日、それを飲むことを通じて、我々が普段口にしている牛乳がどのように作られているのかを実感し、消費者としてのみ生活し、生産者の視点を失っている日常に思いをはせることができました。
バングラデシュ南部のシュンドルボンへのボートツアーでは、さらに多様な野生動物や雄大な自然と出会い、また、天候の急変により川の水かさが一気に上昇し、突風に吹かれる中、自然の厳しさも経験することができました。
デライトファウンデーションを離れる際には、学生たちも子どもたちも涙を流して別れを惜しんでいました。子どもたちの人生に、自分たちが忘れがたい記憶を残したことを学生たちはかみしめていたのではないかと思います。
帰国の日、ダッカで、縫製産業が集中する川岸のエリアを観察しました。縫製産業はバングラデシュの基幹産業であり、多くの人がそれにより所得を得ていますが、工場からの排水が河川汚染を引き起こしていること、また、児童労働なども後を絶たないことを学ぶことができました。
学生たちは短い期間の中で、密度の濃い異文化体験をすることができ、今後、考え続けるべき課題を見出すことができたことを、帰国後の成果発表会でも感じ取ることができました。