水俣を訪問
9月18〜19日、同志社大学の人権研修会「水俣病と徳富兄弟ゆかりの地をめぐる(熊本県水俣市)」に参加しました。今回の研修会では、有機水銀を含む工場廃液により、身体的健康だけでなく人間としての尊厳をむしばまれた水俣病患者の現況に触れることにより、日本の近代化・産業化の中で人権がいかに軽視されてきたかを知ることができました。
一日目、水俣病患者の支援団体である相思社の方から説明を受けながら、水俣病に関連する重要な場所を車で回りました。当日は晴天に恵まれ、不知火海の美しさ、自然の豊かさが、ひときわ際立っており、かつて、その美しい海に致死的な工場廃液が流され続けたことに心が痛みました。夕方、相思社にある考証館で、水俣病の背景や深刻さを生々しく伝える資料の数々に触れました。その後、水俣病患者の方から話を聞く機会があり、水俣病が多くの人の人生に影響を与え、今なおそれが続いていることを痛感させられました。夕食は、相思社のスタッフの方々と共にバーベキューを楽しみ、くつろいだ雰囲気の中で貴重な意見交換をすることができました。
二日目、徳富蘇峰・蘆花の生家を訪ねました。館長から丁寧な説明を受ける中で、徳富兄弟たちが同志社や日本社会に及ぼした影響の大きさを、あらためて考えさせられました。その後、水俣病歴史資料館に移動し、そこでも水俣病患者の「語り部」の話を直接に聞く機会に恵まれました。水俣病から「逃げ、戦い、向き合う」人生が赤裸々に語られる中で、「弱さ」が「強さ」へと変えられ、人としての尊厳が回復される可能性を垣間見ることができました。
私は、授業などで水俣病に触れる機会はたびたびあるものの、水俣を訪れたのは今回が初めてでした。石牟礼道子さんの『苦海浄土』で描かれていた世界に少し近づくことができた思いがしましたが、同時に、新たに考えるべき課題も多く与えられました。