KOHARA BLOG

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『神学の射程と諸相 4──2017年度 同志社大学神学部 小原ゼミ 卒業論文集』刊行

 標記卒業論文集をKindle本として刊行しました。これまでの卒業論文集は下記ページからご覧いただけます。
 
 参考まで、『神学の射程と諸相 4』の目次と序文を以下につけておきます。
 
【目次】
序文(小原克博)
1.総合芸術に流れるテーマの比較──能『隅田川』と教会上演用寓話『カーリューリヴァー』を比較して(平松真由子)
2.教会と演劇──演劇を用いた新しい礼拝へ向けた試論的考察(三好祐輝)
3.スペインにおける世俗化に関する考察──スペイン社会の宗教性を中心として(中本 茜)
4.宮本武蔵に見る合理主義の極致としての宗教性(西原 凱)
5.神道の犠牲文化についての考察──文化比較の視点から(西園 峻介)
 
 本書は、私が2017年度に指導した5編の卒業論文を含んでいる(論文の配列は著者姓のアルファベット順)。いずれも神学や宗教研究に関わるものであるが、それぞれ、芸術、演劇、世俗化、剣術、日本宗教といった独自の視点を持って執筆されている。
 本書に掲載された卒業論文の執筆者のほとんどは、私のゼミで2年間学びを共にした学生たちである。毎学期の発表を繰り返し、また、夏にはゼミ合宿を行い、時にはコンパや旅行を通じて、学びと親交を深めてきた。そのような中で、各人がテーマを決めていくが、最初から決定できる者もいれば、紆余曲折の末、ようやく定まった者もいる。こうした試行錯誤の機会を与えてくれるのも、卒業論文を執筆する大きな意義だろう。
 学部生による卒業論文は、学術的な視点から評価すれば、一般の学術論文と比べるべくもなく、各種の不十分さがあることは認めざるをえない。しかし、それを補って余りあるほどに、自らの関心や経験をストレートに反映させた内容は、論文を魅力的なものにしている。これまでも卒業論文集として『神学の射程と諸相』を刊行してきたが、変化の著しい時代の中で、その時々の若者の関心を照らし出しており、時代の「定点観測」としての役割も負っているように思う。
 また何より、一般的にはその実態を知られていない神学部という学びの場において、どのような学問がなされているのかを読者は垣間見ることができるだろう。同志社大学神学部では、伝統的なキリスト教神学を学ぶと同時に、キリスト教以外の一神教や他の宗教を学ぶ機会にも恵まれており、そうした学びの多様性が卒業論文の多様性にもつながっている。
 今日、学術論文の多くはインターネット上で公開され、自由に閲覧できるようになったが、卒業論文については意外と実物を手にする機会は少ない。これから卒業論文を書こうとする者にとっては、本書がよい手がかりとなることを願っている。
 本書の一つひとつの論文が「神学の射程」の広がりを示しているだけでなく、論文を完成させ卒業していく学生たちのこれからの「人生の射程」をも示しているようである。一つひとつの論文にいとおしさを感じながら、本書を多くの人に読んでいただきたいと思う。
 
2018年3月
同志社大学 神学部 教授  小原克博
 

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