宗教倫理学会 公開講演会「西洋の生命倫理は日本人の死生観に合うのか?」(10/03)
10月3日、キャンパスプラザ京都で宗教倫理学会主催の公開講演会「西洋の生命倫理は日本人の死生観に合うのか?」が開催され、カール ベッカー・京都大学こころの未来研究センター教授が話をしてくださいました。私はコメンテーターとして参加しました。
ベッカー先生は、自己決定権に代表される西洋の生命倫理の特徴と、伝統的な日本人の死生観を比較し、両者が簡単には重ならないことを指摘されました。
生命倫理の具体的な問題(胃ろう、呼吸器、心肺停止、臓器移植等)に入っていく前に、農業やエネルギーをめぐる課題に触れられ、我々が生きていく上で欠かせない食糧・水・各種のエネルギーと生命倫理の問題を関連づけて話されたのは示唆的でした。
私が質問したことの一つは、以下のようなものでした。ベッカー先生が列挙された日本の伝統的な価値観はたしかにユニークなものであるが、それは今や失われつつあり(特に都市生活において)、日本に生まれたからといって自動的に身につくものではない。それを再発見することができるのか、それを可能にするような教育が考えられるのか、といったものでした。
この質問に対するベッカー先生の応答は、若者が農業や病院などで義務的な社会奉仕活動(National Service)をすべき、といったものでした。ベッカー先生の目から見ても、この20年で若者の価値観は激変したとのこと。社会奉仕という体験的な学び・奉仕を通じて、価値を継承できる、という考えをベッカー先生は示してくださいました。
これは若い人には歓迎されない提案かもしれませんが、ここまで具体的にやらなければ、伝統的な価値観(とりわけ共同体的な価値観)を継承していくことは難しいかも、と感じました。
論点すべてをあげることはできませんが、刺激的なやり取りを通じて、課題を整理するよい機会となりました。