CISMORシンポジウム「表現の自由と宗教的尊厳は共存できるのか?」(3/14)
3月14日、CISMOR公開シンポジウム「表現の自由と宗教的尊厳は共存できるのか? ── パリ、コペンハーゲンでの襲撃事件を踏まえて」を以下のような講師・コメンテーターを迎えて、開催しました。
講師:
近藤 誠一(元・文化庁長官、ユネスコ大使、デンマーク大使/同志社大学客員教授)
菊池 恵介(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科 准教授)
コメンテーター:
会田弘継(共同通信社・特別編集委員)
パリ、デンマークに大使として滞在したことのある近藤先生からは、ヨーロッパがもつリベラルデモクラシーの伝統と、それと結びつきがちな(暗黙の)ヨーロッパ至上主義の問題などが指摘されました。
菊地先生はさすがにフランスの専門家だけあって、シャルリー・エブドの社会的位置づけや近年の変化に加え、反移民の歴史的背景、近年のレイシズムの変容、ライシテ理解の変化などについて、わかりやすく説明して下さいました。
かつて移民排斥は人種差別に基づいて行われていましたが、フランスでは様々な規制(反レイシズム法、歴史修正主義の禁止法、国旗・国家の冒涜禁止)が作られてきた結果、現在では「人種的差異」ではなく「文化的な差異」に基づく反移民の言説が主流になってきているとのことでした。つまり、西洋はリベラル(表現の自由あり)、世俗主義で男女平等な価値を持っているが、イスラームはどうだ?という議論に傾きがちだということです。こういった単純な図式を繰り返すと、表現の自由の大合唱が、反イスラーム感情を増幅させることにもなりかねない、というのが菊地先生の主張の一つでした。
会田さんは政治思想およびジャーナリズムの視点から問題を分析し、政教分離問題の多様性(特にアメリカとの比較)、風刺画を適切に掲載し、問題に向き合うことの必要性を提起してくれました。
パネルディスカッション、フロアーとのディスカッションとも、中身の濃いものとなり、全体として、このテーマを深く掘り下げることができたように思います。