ドーハ会議3日目
ドーハでの会議の三日目が終了しました。今日は全体会議を中心に進められましたが、私が注目していたのはタリク・ラマダーン氏のスピーチ。
期待していたとおり、きわめて現実的かつ批判的な言葉が会議そのものに対して向けられました。宗教指導者同士が集まると、自分たちが世界の中心にいるように錯覚し、現実には世俗化が進む社会におけるマージナルな存在であることを自覚できなくなること。宗教同士の対話よりも、臓器売買など生命倫理にかかわるような社会の現実的な問題に向き合うことの方がはるかに大事であること、などが述べられました。
宗教間対話を主題としている会議であるにもかかわらず、全体としては圧倒的にイスラーム中心の議論が多く、特に中東イスラームを中心とした世界観が支配的なので、中東以外のイスラームの位置づけや、一神教以外の宗教の存在については、残念ながら十分に視野に入ってきません。
このあたりの事情は仕方ないと諦めつつも、タリク・ラマダーンのようにヨーロッパ・ムスリムの現状や、啓蒙主義的価値観との対決を踏まえた立場から、シャープな批判が投げかけられると、非常に気持ちがすっきりしました。自画自賛型の対話強調路線は聞いていると、疲れがたまってきます。
終わったあと、ラマダーン氏と軽く会話を交わしました。彼はCISMORで二度、同志社に呼んでいます。フランシス・フクヤマ氏とのがちんこ勝負が、今も記憶に残っています。ヨーロッパ・ムスリムを代表する論客と言ってよいでしょう。
彼は、ムスリム同胞団の設立者ハサン・アル=バンナーの孫にあたるので、いまだにアメリカからはにらまれているようですが、目を付けられるだけのカリスマ性を持っています。
今日、彼から新しい名刺をもらったところ、昨年、できたばかりの新しいセンターの所長の肩書きが記されていました。カタールにあるらしいのですが、Research Center for Islamic Legislation and Ethicsというもの。非常に関心をそそられます。