KOHARA BLOG

KOHARA BLOG

中国プロテスタント教会の歴史と課題

20120117.jpg
 多忙な日々が続き、すっかり報告が遅くなってしまいましたが、1月13日に立命館大学の金丸裕一先生にお誘いいただき、中国プロテスタント教会を主題とする研究会に参加しました。
 一つ目の発表は、松谷曄介先生(八幡鉄町教会牧師、写真右)による「日中キリスト教関係史」。この分野の専門家で、非常に詳しく戦前の日中の人物関係を説明してくださいました。占領政策の中で、日本のクリスチャンや牧師が果たした役割を客観的に評価するのは、なかなか難しいですが、宣撫工作だけに還元することのできない人間模様を学ぶことができました。
 二つ目の発表は、南京神学院の副院長のワン・アイミン先生(写真左)による「中国プロテスタント教会の歴史と課題」でした。昨年6月、南京大学で行われた国際シンポジウムに参加した際、ワン先生とはお会いしていました。昼食や夕食の際によく話をしましたので、今回、ぜひ再会したいと思い、この研究会にも参加した次第です。
 三自愛国教会(中国の公認プロテスタント教会)で働く牧師たちを養成する神学校の副院長でありながら、三自愛国教会の現状を厳しく批判したり、家の教会(非公認のプロテスタント教会)を対等に評価しようとする姿勢は、ただ者ではありません。
 孫文の革命理論とキリスト教の関係を精力的に研究しているというあたりも関心を引かれるところです。
 三自愛国教会の問題点の一つとして、悪い意味での「聖書主義」(Biblicism)に陥っているという指摘がありました。聖書直解主義と言い換えてよいのかもしれませんが、神学的な省察を欠き、聖書の言葉を絶対視してしまうような傾向として、私は受けとめました。牧師が国家の役人以上に役人的になってしまっている、という辛辣な言葉もありましたが、それも、現状をなんとかしていきたいという気持ちのあらわれであると思いました。
 公認教会の場合、国家への忠誠と国家からの管理が前提になっていますので、神学的な自由が十分にあるとは言えない状況にあります。そのような制限の中で、積極果敢に西洋の神学から多くを学び、それを中国に伝えようとするワン先生は、中国の教会や神学にとって貴重な存在であると言えます。
 今回、再会の喜びを分かち合いながらも、十分な時間が取れませんでしたので、いずれ、ワン先生を再度京都にお招きして、本格的な研究会を持つことができればと考えています。

月別の記事一覧