[講演] 関根清三「いのちについて──キリスト教倫理と一般倫理のはざまから」
11月5日(土)、日本クリスチャン・アカデミー 関西セミナーハウス活動センター主催の講演会に出席してきました。講師の関根清三先生(東京大学 教授)が「いのちについて──キリスト教倫理と一般倫理のはざまから」というテーマで話をしてくださいました。
旧約聖書(特に創世記)の釈義から、西田幾多郎などの哲学思想を交え、また、新約聖書からイエスの思想的特徴を抽出するなど、非常に幅広い角度から、いのちの問題について問題提起をしてくださいました。
「あなたがたも聞いているとおり、『隣人を愛し、敵を憎め』と命じられている。しかし、わたしは言っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである。」
(「マタイによる福音書」5:43-45)をベースにしながら、「イエスの生前の思想の中心はアガペーと神の支配の思想であって、贖罪思想ではなかった」と論を展開していくあたりは、挑発的でありながら、納得のいくものでした。
キリスト教を「デコード」することによって、より普遍的で開かれた議論へとつなげていきたい、という趣旨を講演全体の中で感じ取ることができました。
旧約聖書学と倫理学の両方を専門とする両刀使いは、きわめて貴重です。聖書学それ自体も、もちろん興味深い分野ですが、それが他の分野や社会的関心とどのようにつながっていくのかを、関根先生ほど雄弁に語れる人は、なかなかいないでしょう。
関根先生の近著は『ギリシア・ヘブライの倫理思想』(東京大学出版会)。お薦めです。