CISMOR講演会「現代中国におけるキリスト教」
8月27日、薛 恩峰氏(日本クリスチャンアカデミー 関東活動センター所長)を講師に「現代中国におけるキリスト教──無神論社会を生きるクリスチャンたち」というCISMOR公開講演会を行いました。
CISMORの講演会で中国をメインに扱ったものは、今回が初めてです。
薛 恩峰氏は、私の学生時代からの知り合いであり、中国にも一緒に行ったことがあります。彼は中国のプロテスタント教会(中国基督教協会, CCC)と日本の教会の交流に長く関わってきており、また、中国教会の事情を知る人物としては第一人者と言ってよいとでしょう。
文化大革命の時代における教会迫害期を乗り越え、同志社大学の神学部で学び、現在、日本クリスチャンアカデミー 関東活動センター所長と同時に、日本基督教団の牧師もしています。
中国の教会について知るチャンスは、それほど多くありませんので、来場者の方々にとっても新鮮な学びの機会になったのではないかと思います。以下、簡単なメモをつけておきます。
「現代中国におけるキリスト教──無神論社会を生きるクリスチャンたち」
薛 恩峰
■中国とキリスト教
中国共産党の宗教政策の分析が必要。マルクス・レーニン主義(史的唯物論)は、国家の指導原理とされている。中国は社会主義なので、土地はすべて国家のもの。国家のイデオロギーは無神論。
中国の憲法(1982年改正)
第1条(要旨):社会主義制度は根本的制度である。これの破壊を禁止する。
この原則がすべての大前提とされ、宗教の問題もこの前提のもとに処理される。社会主義は無神論であるが、宗教は現実的に存在している。宗教は社会主義に適応しなければならないと考えられている。
■キリスト教の前史
第1回 景教の宣教(7世紀)
第2回 景教の宣教(13世紀)
第3回 カトリックの宣教(16世紀)、マテオリッチ
第4回 プロテスタントの宣教(19世紀)
1807年、ロバート・モリソンが中国に宣教。聖書を中国語に翻訳。1823年に最初の中国語聖書がマラッカで刊行される。
その後、アメリカを筆頭に、多くの宣教団体が活動する(1917年まで)。
義和団事件で宣教師が殺害される。
19世紀の中葉になって、キリスト教と武力(軍艦)がセットになってイメージされるようになってきた。キリスト教は西洋の宗教(洋教)として警戒されるようになった。教会の土着化への努力はなされたが、教会の主導権は外国人にあった。プロテスタントの宣教活動は、教育・医療の面でも大きな影響を残した。
■キリスト教に対する共産党の態度
1949年(中国建国)はキリスト教に対する転回点となった。外国ミッションを完全に排除し、クリスチャンたちは国内で孤立し、苦しい時期を過ごす。
帝国主義による文化侵略の道具として教会が用いられることへの批判が出てくる。
周恩来:キリスト教は帝国主義的侵略とつながっていたと主張。
1941年、主要なキリスト教団体が北京に集まり、会議を行う。自立のために。アメリカ等、外国ミッションとの分離を決断。自治、自養・自伝を方針としてかかげる。
1958年、様々な教派のプロテスタント教会が合同。今日の中国の教会では「教派」は存在しない。
教会への迫害の時代、秘密集会を開かざるを得なかった時代があった。
1978年、共産党が文化大革命の誤りを認める。
1982年、憲法で信教の自由が認められる。
■三自愛国運動
教派がないのが中国の教会の特徴。
中国は社会主義であるため、聖書は一般の書店で売ることはできない(教会内では可能)。
文化大革命で、ほとんどの宗教組織が破壊されたが、そこから中国の教会はよみがえった。「復活」は中国のクリスチャンの経験をもっともよくあらわしてる。