KOHARA BLOG

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山室信一教授の講演会(九条の会)

080607.jpg 6月7日(土)、山室信一氏(京大教授)による講演会「明日につなぐ憲法9条の水脈」に出かけてきました。これは、私の地元にある堅田「九条の会」が設立3周年を記念して行ったものです。
 私はこの会の「呼びかけ人」の一人でありながら、これまで土曜日の会合にはほとんど出席できないでいました。今回は、3周年であり、かつ、山室先生の講演ということもあり、万難を排して出席した次第です。

 2時間にわたり、緻密な思想史的紹介、憲法論議を展開してくださり、大いに刺激を受けました。田中正造をはじめ戦前の非戦主義者をとりあげ、それが9条の思想的水脈となっていることを紹介してくれました。
 とても全体をまとめることはできませんが、印象に残った言葉の一つは「憲法は器であり、問題はそこにどのような内容物を入れるかだ」という言葉です。
 憲法前文から導き出される「平和的生存権」は、護憲派にとっては戦争放棄を意味しますが、改憲派は自衛隊の存在根拠とします。同じ文面から、まったく異なる意味解釈を引き出すことができるからこそ、条文に安心しないで、論理を戦わせ続ける必要がある、とのことでした。

 講演の後の質疑応答では、真っ先に手を挙げて、質問しました。9・11以降のグローバル・テロリズムの脅威や中国の軍事大国化などの時代状況の中で、9条を解釈する文脈が大きく変わってきていることを指摘しました。そのあおりをもっとも強く受け、また、ゲーム感覚で戦争を見ている若い世代に対し、どのように9条のリアリズムを伝えることができるのか、という自問自答のような質問を投げかけました。
 もう一つの質問は、天皇制、ナショナリズム、愛国心との関係で、9条をどのように位置づけるべきか、というものでした。
 非常に丁寧に、また時間をかけて質問に答えてくださり、また、私が先日『朝日新聞』の「60歳の憲法と私」に書いた文章もご覧いただいていたということで、恐縮しきりでした。

 全体が終わった後、持って行っていた山室先生の『憲法9条の思想水脈』(朝日新聞社)にサインをしてもらいました。
 「水脈不断」との一筆があり、山室先生の信念の一端をかいまみた思いがしました。

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