KOHARA BLOG

KOHARA BLOG

平和憲法の担い手

 5月3日(憲法記念日)に、朝日新聞に「96歳・私の証 あるがまま行く」を連載している日野原重明氏(聖路加国際病院理事長)が憲法記念日にちなんだパンチの効いた文章を書いていました。
 18歳以上の若者にも選挙権を与え、そうした若者たちに改憲阻止の力になってほしいという主張が述べられていました。
 文章の最後は、さすが日野原氏と思わせられる確信と情熱に満ちた主張で閉じられていました。以下、引用しておきます。

 将来は安保条約も破棄して、米国に提供したすべての国内基地から米軍に撤退してもらい、軍備のない真の意味で独立した新日本を作ることを熱望します。私はその運動の最前線に立つ覚悟もできています。
 国同士の武力のバランスに守られた不戦状態ではなく、人の命を奪うことを最大の悪とし、戦争を全面的に放棄することによって実現するのが真の世界平和といえましょう。こうした平和を最終的なゴールとする日本であってほしいと思っています。
 クリスチャンとしての信仰的確信に裏付けられたメッセージとして読むこともできます。キリスト教平和主義の王道をいく主張だと言えるでしょう。それが、信仰の有無を超えて、普遍的メッセージとして共有されるポテンシャリティを持つ点に、9条の特異性があると思います。

 日野原氏が18歳の若者に期待する気持ちには、十分共感できます。しかし反面、不安な点もあります。今のままでは、18歳の若者が自動的に戦争放棄の精神を身につけるとは思えない状況もあるからです。
 はっきり言うと、「人の命を奪うことを最大の悪とし、戦争を全面的に放棄する」精神は、もっと幼い内から養っていかなければ、18歳の時点でそれを意思表示することはできません。

 現状はどうでしょうか。多くの小中学生がゲームに夢中で、その中には、モンスターが相手とはいえ、より強い武装・武器をゲットし、相手をやっつけることが当たり前になっています。
 バーチャルな経験が、そのままリアルな日常の判断に直接的に反映するとは思いませんが、バーチャル経験がリアルを侵食する可能性は十分にあります。
 近くに脅威を感じたとき、より強い武装によって自らを守ろうとすることは、ゲーム的にはまったく正しい判断でしょう。相手に決定的なダメージを与える強力な武器を手にしたいという欲求を持つことも、ゲームの世界ではごく当然のことです。
 小中学生の頃から、こうした子どもたちの日常経験を見据えた平和教育をしていくことが、どれほど大切か! それを怠ると、今時の小中学生が18歳になったとき、やはりゲーム的な感覚で、軍事的な脅威に対応することになると思います。

  明日は「9条世界会議・関西」が大阪で開催されます。子ども向けの企画(映画など)も予定されています。よいことだと思います。子ども向けの企画を一発ものにするのではなく、継続していくことが大切です。近年は、学校の先生方のテンションも下がり気味なので簡単ではないでしょう。
 しかし、平和憲法の担い手として大人だけでなく、将来の18歳、今の小中学生たちに期待すべきところは大です。9条の会をはじめ、護憲運動の方々が、しっかりと運動の裾野を広げていきたいと思うのであれば、未来の有権者をがっちりサポートしていくのが、長期的に見て有効であると思います。

月別の記事一覧