アメリカの原理主義
ようやく採点が終わりました。これから少しは夏休みモードにはいれそうです。
さて、Yokoさんがコメントで紹介してくださっていた『アメリカの原理主義』を読み終わりました。さすがに記者の方だけあって、最近の出来事をインタビューや統計データなどを用いて、細かく描写しています。読みやすい本です。
アメリカ宗教史がご専門の森先生も、この本を読まれ、互いの感想を交わしました。森先生は「文章がへただな~」との第一印象を語っておられました。
確かに、ぐいぐいと引き込んでいくような文章展開はありません。いろいろな事実を取材経験を軸にしながら、淡々と語っていっているという面はあります。しかしそれゆえに、あまり引っかかりを感じることなく読み進めていくことができる、とも言えます。
事実の相関関係をまとめあげる肝心なところで、著者自身の言葉ではなく、その道の大家に語らせることによって、うまくすり抜けているという点が少々気になりました。概念の整理が少し弱いかなという印象を持ちました。
ちなみに、タイトルにもなっている原理主義についての説明は、何と最終ページになって初めて出てきます。それも辞書からの引用です。やっかいな概念であることは理解できますが、もう少し手前で出して、その概念を事例を通じて吟味していくという手法を取った方がよかったのではないかとも思いました。
また、欲を言えば、宗教右派とユダヤ・ロビーとの関係に言及して欲しかったです。宗教右派とネオコンとの関係については、かろうじて触れられています。しかし、昨今のイスラエルと取り巻く情勢においていっそう明らかになってきたように、なぜアメリカは、これほどまでイスラエルに肩入れするのかは、多くの人の関心事であると思うからです。
ちょっと辛めの評価をしてしまったかもしれませんが、全体としては、近年のアメリカの宗教性や、それと政治との結びつきなどを生き生きと教えてくれる好著であると言えます。