書評「松原正毅ほか編、森孝一ほか著『岐路に立つ世界を語る――9・11以後の危機と希望』」、『同志社時報』No.115
本書は、九・一一テロ事件をきっかけに浮き彫りにされてきた現代世界の問題に迫ろうとしている。多彩な執筆者の論評は、それぞれの専門性を発揮しながらも、わかりやすくコンパクトにまとめられている。編者によれば、九・一一以降の時代状況を読み解く鍵は「文明の衝突」「宗教・民族対立」「地域紛争」にある。こうしたテーマのもと、本書は、イスラーム復興の歴史や現状、アメリカやヨーロッパを舞台とした葛藤の数々、そして、パレスチナやアフガニスタンをめぐる国際紛争の実情に迫っている。
昨今、日本の国際貢献のあり方が論じられているが、編者は国際貢献の前提として「知のインフラ」を築かなければならないという。これは政治・経済だけでなく文化や宗教を含んだ学際的な取り組みにならざるを得ない。日本の論壇では、一神教を独善性の象徴と見なし、多神教的思考にこそ世界平和の鍵があるという安直な主張がいまだに繰り返されているが、こうした平板な文明理解を越えていく認識を本書は提供してくれる。
今、日本において、多元的な文明理解を構築していく作業が求められている。執筆者の小杉泰・臼杵陽・森孝一らは、今年度「イスラームとアメリカ―『文明の衝突』なのか?」という科目を本学において開講しているが、そうした試みを手掛かりとしながら、さらなる展開が期待される。
昨今、日本の国際貢献のあり方が論じられているが、編者は国際貢献の前提として「知のインフラ」を築かなければならないという。これは政治・経済だけでなく文化や宗教を含んだ学際的な取り組みにならざるを得ない。日本の論壇では、一神教を独善性の象徴と見なし、多神教的思考にこそ世界平和の鍵があるという安直な主張がいまだに繰り返されているが、こうした平板な文明理解を越えていく認識を本書は提供してくれる。
今、日本において、多元的な文明理解を構築していく作業が求められている。執筆者の小杉泰・臼杵陽・森孝一らは、今年度「イスラームとアメリカ―『文明の衝突』なのか?」という科目を本学において開講しているが、そうした試みを手掛かりとしながら、さらなる展開が期待される。