小倉襄二、他編『EU世界を読む』世界思想社
小倉襄二・有沢僚悦・吉野文雄 編
『EU世界を読む』世界思想社、2001年1月
本体1900円、四六判・242頁、ISBN4-7907-0850-0
目次
はじめに―EU世界を読む......下田尾 誠
第一章 EU統合への経緯......長谷川重四郎
第二章 EU統合の将来......増田 正
第三章 EU戦略......今野昌信
―ヨーロッパは民族と国家を超えられるか
第四章 アジアから見たEU......吉野文雄
―ASEMを中心に
第五章 欧州統合と国民国家......斉藤正樹
第六章 ドイツから見たヨーロッパ統合......荒木詳二
―生活と文化の視点から
第七章 ヨーロッパ市民の誕生......佐藤公彦
―言語の視点から
第八章 EU時代の宗教......小原克博
―宗教多元社会の成熟に向けて
補 論 EU・社会保障システムへのアプローチ......小倉襄二
―パラダイムへの試論
あとがき......有沢僚悦
EU時代の宗教――宗教多元社会の成熟に向けて
小原 克博
はじめに
ヨーロッパの歴史形成において、宗教、とりわけキリスト教が重要な役割を果たしてきたことは論をまたない。しかし、宗教がヨーロッパ史に対し与えてきた影響は決して一様ではなく、とりわけ、近代から現代にかけて、宗教改革が引き起こした激動に比するほどの変化が静かに、そして着実に進行してきた。後に触れるように、それは「世俗化」(secularization)に端を発する宗教的・社会的・文化的な変容であるが、それをどのように受けとめるかがEU各国において問われている。EUの時代に至って、近現代の歴史過程の中で蓄積されてきた問題の輪郭がいっそう際立ってきたと言える。
本章では、次世代の宗教政策をめぐって、EU諸国が今日等しく直面している問題の歴史的背景を探ると共に、それが具体的にどのような形で現れてきているのかを、宗教と国家の関係、宗教教育、宗教の多元化といったテーマを切り口にして述べてみたい。そして、そのような考察をもとにして、EUが今後、本格的な「宗教多元社会」に突入する中で、どのような課題を克服していかなければならないかを描写する。
(以下、目次のみ。ご関心ある方はご購入ください。)
1 EUの宗教事情
キリスト教文化圏の変遷
EU内の宗教勢力
若者の宗教へのかかわり
2 世俗化とは何か
世俗化の進展
世俗化がもたらしたもの
3 今日の問題群
(1)国家と宗教
歴史的経緯
スウェーデン教会の終焉
(2)教会税
ドイツにおける変化
特権的関係への賛否
(3)閉店法
教会から百貨店へ
閉店法の改正をめぐる攻防
(4)宗教教育の変容
宗教教育の位置づけ
ライシテ政策
ドイツにおける宗教教育の実情
イスラム教宗教教育の模索
EUの宗教教育のモデル
4 EU時代の宗教的課題
イスラム脅威論
トランスモダニティに向けて
巨大な実験場