世界キリスト教情報 第1054信(2011.04.04)
- 聖書訳出の難しさ、米国でまた関心高まる
- 中国で教皇と政府双方の承認受けて新司教
- フロリダの牧師がコーラン焼却、アフガニスタンで抗議デモ
- 離婚者を「真理と慈愛で」受け止める、とバチカン高官
- 「解放の神学」のコンブラン神父死去
- 《短信》
- 《メディア展望》
◎聖書訳出の難しさ、米国でまた関心高まる
【CJC=東京】新約聖書ヨハネの第一の手紙4・20。『「神を愛している」と言いながら兄弟を憎む者がいれば、それは偽り者です。目に見える兄弟を愛さない者は、目に見えない神を愛することができません。』と日本語新共同訳は訳出している。米国のプロテスタント諸教会で、現在広く使われているのが新国際訳(NIV)は『誰でも「わたしは神を愛す」と言いながら、彼の兄弟を憎むなら、彼は嘘つきである』(仮訳、以下同)としていたが、今年に入って刊行された最新訳では「兄弟」を「兄弟または姉妹」と性的に中立のニュアンスを盛り込んだ訳にした。これでは神学的な意味を変えてしまう、と保守派が反発している。
ややこしいのは、古代ギリシャ語やへブル語では両性に当てはまる語を英語では伝統的に男性形で訳していること。他言語への訳出では、常につきまとう問題だ。「兄弟」という単語を見ても、日本語では、原語なり英語にはない「兄」と「弟」という関係性がつねに付きまとっている。ただ日本人で今それを意識する人がほとんどいないことも、訳語問題の複雑さを示している。
1965年以来、聖書学者による独立グループが、毎年会合して、聖書学の進展や、英語用法を議論して、NIVが編集された。
NIV最新訳では、神については「彼」や「父」をこれまでと同様に使用しているが、原語で特定の人物を指していない場合に「彼」(he)や「彼の」(his)を使うことを避けている。
しかし最新訳が書店に並ぶ前から、『聖書の男性・女性評議会』(CBМW)から批判の声が上がっていた。CBМWは、家庭にあって女性は夫に従うべきであり、教会では男性だけが指導的な役割を果たすことが出来る、と信じている人たちで結成されている。
CBМWは、今回の変更が「神学的方向とテキスト(本文)の意味」を変更しているとして、最新訳を推奨しないという声明を発表した。2005年版が出された時には、南部バプテスト連盟が同様の懸念を示し、採用しなかった。
NIVの取り組みをマルコによる福音書4・25で見ると...。
現在、最も広く採用されている1984年版では、イエスが「持つものは誰でもさらに与えられ、持たないものは誰でも、彼が持っているものまで、彼から取り去られる」と、「彼」があった。それが『今日の新国際訳』(TNIV)と呼ばれる2005年版は、「持てる人はさらに多く与えられ、持たない人については、彼らが持っているものまで、彼らから取り去られる」に変わっている。「彼」から「彼ら」(they)と表記しているが英語の「彼ら」には性的指向がない。
2011年版は、「持つものは誰であれ、もっと与えられ、持たないものは誰でも、彼らが持っているものまで、彼らから取り去られるであろう」と訳出した。
CBМWは、2005年、文節の主語を複数形にすることは、それが1人の男なり1人の女を同等に扱うためにするのであれば、それは「個人と神の間の個人的関係に関する聖書的思考の重要な側面を潜在的に隠ぺいした」と言う。
CBMW会長のランディ・スティムソン南部バプテスト神学校教会宣教学部長は、訳語の変更は、特に福音派にとって無視出来ない、と述べている。
「福音派は聖書の言語完全霊感を信じている。すべての単語は、神だけでなく、広範な思想に影響にされるものではなく、神の霊感によるものと、信じているのだ」と言う。
そこで、元のヘブル語で「兄弟姉妹」を意味することが分かっていても、英語では「兄弟」と読むべきだ、とする。原義については注釈を付ければ良いとの主張だ。
◎中国で教皇と政府双方の承認受けて新司教
【CJC=東京】中国天主教(カトリック)広東省江門(ジャンメン)司教にポール・リャン・ジャンセン神父(46)が叙階された。中国では今年初めての司教誕生。
昨年後半に北京政府がバチカン(ローマ教皇庁)の意向に反して独自に司教を任命、両者間の緊張が高まっていたが、ジャンセン神父の司教選任は双方の承認を得てのもの。
叙階式は江門の聖心のマリア大聖堂で行われた。新司教は神学校の同級生を式に招待、さらに南昌のジョン・バプテスト・リ・スグアン司教始め司教・司祭40人がミサを共同司式した。
香港やマカオからも信徒が参集、大聖堂には400人しか入れないところから、約1000人が中庭に導かれた。入場券を持たない人は敷地外側に設けられたテレビで中継を見守った。
中国教会観測筋は、双方の承認による今回の叙階を前向きのメッセージだとしながらも、最近の流れから、緊張緩和の徴と見ることには懐疑的だ。
江門教区は、中国のカトリック教会史上、独自の地位を占めている。
1552年に中国に来たフランシスコ・ザビエルの墓も市内にあり、マテオ・リッチも1583年から89年まで教区内で活動、教会も建設した。
◎フロリダの牧師がコーラン焼却、アフガニスタンで抗議デモ
【CJC=東京】2001年の同時多発テロへの対抗策としてコーラン焼却を昨年9月に宣言して話題となった、テリー・ジョーンズ牧師。世論の反対の前に断念したと思われていたが、米フロリダ州ゲインズビルで3月20日、「模擬裁判」を行い、イスラム教の聖典を「有罪」とし、ウェイン・サップ牧師によってコーランが焼却された。
今回焼却に至ったのは、同氏がイスラム世界に対し聖典コーランの正当性を擁護する機会を設けていたのに、何の返答もなかったからだという。
ただコーラン焼却の現場に集まったのは30人ほどしかいなかったというのに、米メディアが注目、大きく取り上げて。事態が一変した。
アフガニスタン各地で、4月1日からコーラン焼却に対する抗議デモが発生した。
北部マザリシャリフでは、暴徒化したデモ参加者が国連事務所を襲撃、国連の外国人職員7人、警備員4人、民間人3人の計14人が死亡した。
現地当局は襲撃に関わった30人近くを拘束。北部バルフ州のヌール知事は、反政府武装勢力がデモに乗じて攻撃したとの見方を示した。名指ししていないが、反政府武装勢力タリバンに言及したと見られる。南部カンダハルでも2日、抗議デモが行われ、ロイター通信によると少なくとも市民9人が死亡、70人以上が負傷した。
一方、タリバンの報道官は2日、ロイター通信に「タリバンは関係していない」と述べ、抗議デモに乗じて攻撃を実行したとする政府当局者の見方を否定した。さらに3日、コーラン焼却について、「この反イスラム的な行動を許さない。命を懸けて戦う」との声明を発表し、アフガン人に決起を呼びかけた。
抗議するデモがアフガニスタン国内で相次いだことに、ジョーンズ氏は、暴動から市民を守る責任が国連にある、と語ったものの、自分に責任はないとしている。
◎離婚者を「真理と慈愛で」受け止める、とバチカン高官
【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)家庭評議会議長のエンニオ・アントネッリ枢機卿が、カトリック教会が常に、離婚した人、再婚した人を、「真理と慈愛をもって」受け止める、と確言した。コロンビアのボゴタで3月29日から4月1日まで開かれた、家庭宣教に関する中南米司教会議の席上、述べたもの。
「離婚し、新たな結合に入った人は。キリスト教の結婚が要求していることに反する状態に留まっている限り、聖体を受けることも免罪の秘跡に預かることも出来ない」が、他の方法で神の憐れみを見出せるよう、手を差し伸べられるべきだ。教会はその人たちと共にあり、「謙虚さを保ち、神の意思を理解し、より従うように祈る」ことを勧める、と言う。
◎「解放の神学」のコンブラン神父死去
【CJC=東京】「解放の神学」の推進者として知られるホセ・コンブラン神父が3月27日、ブラジル・サルバドルの病院で心臓疾患のため死去した。88歳。
1923年ベルギー・ブリュッセル生まれ。
47年、司祭に叙階、教皇ピオ12世が、司祭の足りない地域に自発的に宣教するようにと司祭へ呼び掛けたのに応え、58年ブラジルを訪問した。
主にサンパウロ州カンピナスに居住、『青年カトリック労働者』運動に協力した。その後、チリに移動し、神学生を指導した。両国から国外退去を命じられたこともある。
ブラジルで人権問題と「貧者のための教会」に力を注ぎ、「赤い司教」と呼ばれたヘルデル・カマラ司教の助言役として、またその後継者として「解放の神学」を推進した。
遺体は故人の遺志により、パライバ州の貧困地帯の町に埋葬される。
≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。
≪アジア≫
▽反政府文書を執筆したとして10年間も投獄されているリュー・シャンビン氏は、犯罪者ではなく、良心の囚人だ、と国際アムネスティが早期釈放を中国当局に要請している。
≪欧州≫
▽英語聖書の基本ともされている欽定訳は初版1000部と推定され、現存しているのは200部しかない、と見られている。その1冊が英国南部ヒルマートンのセントローレンス教会礼拝堂の最後部座席そばのテーブルに置かれていることが分かった。
▽カザフスタン南部タラズのバプテスト教会指導者アンドレイ・パナフィディン氏が無許可集会を理由に月収の100倍の罰金が課された。これで7回目という。
▽カトリック・メリノール宣教会は3月18日、会員のロイ・ブージョワ神父に、15日間の期限付きで女性の聖職叙階支持を「公式に撤回」しなければ、同会を退会させる、と通告した。
▽イースター前の1週間、ロンドンのグローブ劇場で、俳優たちが欽定訳聖書全巻を通読する。
≪北米≫
▽オーディオ聖書宣教団体『フェイス・カムズ・バイ・ヒヤリング』(FCBH)が携帯電話やパソコンなどで聞くことの出来るアプリ(ソフト)『Bible.is』が当初の7言語から96言語で聞けるように拡張した、と発表。
▽英国の資産家ジョナサン・ラファ氏(59)が、17世紀の宗教画を英国国教会から1500万ポンド(約20億円)で購入したものの、それを寄付したことで話題となっている。
▽世界キリスト教コミュニケーション連盟(WACC)のサラ・マチャリア氏は、メディアが女性を公正にバランスのとれた描写をすることで、より公平な世界を創り出せる、と語った。
▽米カトリック神学会会長のエリザベス・ジョンソン修道女の著作「生ける神の探求」について司教協議会神学委員会が批判を公表した。
▽カナダ聖公会と福音ルーテル教会が4月1〜3日、初めて合同会議をオンタリオ州ミシサガで開催。
▽世界教会協議会(WCC)などが設立したENI通信は、ソランヘ・ドサンティス暫定編集長を1年契約で編集長に任命した。
▽女性叙階を提唱していた米カリフォルニア州サンジエゴのノーマ・ジーン・クーンさんが、改悛し、バチカン(ローマ教皇庁)の命令に従ってカトリック教会と完全に和解した、と3月25日発表。
▽カトリック教会『世界青年の日』を記念して米国のプロデューサーが教皇ベネディクト16世を主題にした漫画を製作した。
▽米福音ルーテル派のメンバーが、東日本大震災の犠牲者救援に75万ドル(約6000万円)を献金した。
≪中南米≫
▽アルゼンチンの諸教会が「キリスト教信仰とエコロジー=エコエキュメニカル神学を目指して」を主題に、3月28〜29日、プロテスタント新学校『ISEDET』で会合した。
《メディア展望》
=カトリック新聞(4月3日)=https://www.cwjpn.com
★高松・大分に新司教=溝部司教が引退
★臨時常任司教委=東日本大震災受けて司教協の対応話し合う
★各地からボランティア到着=津波被災地を援助=仙台教区サポートセンター
★茨城・福島の被災地=神学生、助祭らが支援=さいたま教区=サポートステーション立ち上げ
★関東地区カトリック小中高連盟教員ら宗教部会発足
=キリスト新聞(4月2日)=https://www.kirishin.com
★"一人は万人のために"今こそ=必要なのはマンパワー=現地レポート
★恵泉女学園大=学生主催の「エア卒業式」に400人=震災を機に"激励"拡散
★ファーストリテイリングとUNHCR=難民問題の解決向け提携
★仙台で「連合」が正式に立ち上げ=NCCも連携して支援へ
★世界各地から支援の手 キリスト教指導者らが激励
=クリスチャン新聞(4月3日)=https://jpnews.org
★瓦礫の山に募る無力感=被災地派遣の消防士=「だがここにも神はおられる」
★仙台の諸教会の連合が「被災支援ネットワーク」を設置=避難所に行けない高齢者に助けを
★北海道・青森の教会が協働=支援手薄な岩手沿岸部へ
★JIFH:集めた物資 運べない!=JIFH=トラック不足 八尾市に協力=噴火被災地の野菜も活用
★WVJ=南三陸町で支援物資配布=物資届かない自宅避難者も視野に
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