世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1008信(2010.05.17)

  • 米聖公会に2人目の公然同性愛主教、対立深刻化へ
  • 中国政府とバチカン双方が認めた司教3人目が誕生
  • ミュンヘンで第2回『エキュメニカル教会大会』
  • 教皇、ポルトガルを司牧訪問
  • 米教会報道協会がRNS通信やENI通信を表彰
  • 米国に「キリスト教」打ち出したソーシャル・ネットワーク
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米聖公会に2人目の公然同性愛主教、対立深刻化へ

 【CJC=東京】米聖公会ロサンゼルス教区は5月15日、公然同性愛者の女性メアリー・ダグラス・グラスプール氏を補佐主教に任命した。
 式典には約3000人が出席、「喜びと歓迎の雰囲気に包まれていた」と教区広報担当者。式を阻止しようと、成人男性と少年が、参加者に悔い改めを促し、同性愛は罪だと呼び掛けるなどの事件もあったが、それ以外は予定通りに進んだ。
 公然同性愛主教は2003年のニューハンプシャー教区主教に就任したジーン・ロビンソン氏以来のこと。女性同性愛者としては今回が初めて。
 性問題では寛容な西海岸にあることが影響してか、ロサンゼルス教区は今回補佐主教にさらに女性ダイアン・ジャーディン・ブルース氏を任命している。
 世界のキリスト教では、カトリック教会、正教会に次いで信徒数は第3位の英国国教会(聖公会)。2003年に最初の同性愛主教が誕生した時から、保守派、特にアフリカの聖公会に不満が高まっていた。
 今回の任命は、各国聖公会が加盟している『アングリカン・コミュニオン』(世界聖公会共同体)の自粛要請を振り切って行われた。それだけに全世界の7700万人の信徒に与える影響は大きく、『アングリカン・コミュニオン』内の対立を深刻化することは必至だ。
 保守的なアフリカの教会は抗議姿勢を強め、同性愛聖職に対して伝統的な姿勢を守る動きを強めるものと見られる。
 米聖公会とカナダ・アングリカン教会でも、改革派の動きに抗議して、保守派の一部が離脱、『北米アングリカン教会』結成に動き出している。
 また女性主教に反対する英国国教会の伝統派は、今回の同性愛主教登場を、離脱してカトリック教会に加入する意向を固める根拠の一つに加えることも確かだ。
 米国では、今回のグラスプール主教任命で、米聖公会が抱えている、同性愛者の結婚、養子縁組、軍隊内での同性愛者の地位などの問題に新たな論議を呼ぶことになろう。
 世論調査は一貫して、ゲイやレズビアンが米国社会に受け入れられるようになっていることを示している。一方で、急成長している福音派プロテスタントやモルモン教会は同性愛関係を罪とし、聖書で否定されている、と見なしている。


◎中国政府とバチカン双方が認めた司教3人目が誕生

 【CJC=東京】中国アモイ教区司教に叙階された蔡ビンルイ神父は、バチカン(ローマ教皇庁)と中国政府公認の天主教愛国会双方の承認を得た司教としては3人目。
 中国本土に共産党政権が成立以来、バチカン(ローマ教皇庁)との関係は断絶した。この間に修復を模索する動きも断続的に続けられて来た。復交の障害の一つが、カトリック教会司教の任命にかかるもので、バチカン側はもっぱら教皇の問題だとして来たのに対し、中国側は、「自治、自養、自伝」という自主を原則とする、バチカンから独立した教会だけを認める政策に出た。
 その間、政府の呼び掛けに従わず、教皇に忠誠を誓い「地下教会」が組織されたものの、しばしば当局の抑圧の対象になってきた。その中で、公認教会と「地下教会」との一致への動きもあり、その成果として、公認教会の司教叙階に際し、バチカン側も同意するという動きが、和解への動きの中で出てきたのが、今回の叙階にまでなったものと見られる。
 バチカンはなお台湾との外交関係を維持しており、中国側が復交の前提として台湾との外交関係断絶を要求していることが、次の課題となっている。
 蔡司教に続く動きも見られており、近く複数の司教が政府、バチカン双方の承認の下に叙階される模様。これらの司教は30歳代後半から40歳代初めの人たちで、80歳代、中には90歳代に入った現司教と交代することとなろう。この世代間ギャップは、毛沢東時代の宗教抑圧策の結果でもある。
 中国政府とバチカン双方の認可については、傅鉄山・北京司教の後任として着座したジョゼフ・李山司教を教皇が2007年9月に教皇が承認、同年12月には事前に承認を得られた甘俊丘・広州司教が着座した。今回の蔡司教はそれに次ぐもの。


◎ミュンヘンで第2回『エキュメニカル教会大会』

 【CJC=東京】ドイツのとカトリックとプロテスタントは5月12日から5日間、ミュンヘンで「あなた方は希望を持つ」を主題に、第2回『エキュメニカル教会大会』を開催した。
 プロテスタントとカトリックはこれまで長年の間、別個に参加者数千人規模の教会大会を開催してきた。2003年にベルリンで行われた第1回大会には20万人が参加したことから、その再現を目指し準備されたもの。
 大会主催者は、5日間で延べ12万5000人以上の参加を見込んでいる。大会では聖書研究からコンサートまで多彩なプログラムが3000以上が行われる。
 世界教会協議会系のENI通信によると、大会のプロテスタント側の会長エックハルト・ナーゲル氏は、「もはや対話はカトリックとプロテスタントの間のものではない」と記者団に語った。宗教間の対話は、今大会が『特別な場所』を意味することになったと言う。それはミュンヘンがその町の信仰のために『宗教の市』と呼ばれたことがあるため、と指摘した。
 ミュンヘン人口の136万のうち、約3分の1がカトリックであり、7分の1がプロテスタント。さらにユダヤ教徒9000人、イスラム教徒11万人の市でもある。同市のカトリックとプロテスタントはそれぞれ全ドイツの中で3割を占めている。
 カトリック側のアロイス・グルック会長は、聖職者による性的虐待の問題が大会に影をさしたことを認めた。主催者は、この問題を大会で取り上げることにし、4プログラムを追加した。
 双方の主催者は、エキュメニズムへの取り組みを強調、バイエルン州のルーテル派ヨハネス・フリードリヒ監督は、教会が「社会の中で力ある存在」であり続けるためには共に行動する必要がある、と語った。
 ただ指導者は、プロテスタントとカトリック教会がなお聖体(聖餐)共有の問題では一致出来ていないことをが分かれている認めている。この問題は、ベルリン大会の際、プロテスタント教会が行った聖餐式をカトリックの司祭が司式したことで表面化した。問題の司祭はトリーア教区のラインハルト・マルクス司教によって聖務停止処分を受けた。同司教は現在はミュンヘン大司教で、今回大会主催者の1人。
 マルクス氏は記者会見で、聖体の問題が、カトリックとプロテスタントだけでなく正教会にも影響する、と指摘した。「カトリックと正教会は、聖体共有には教会の見える一致が必要という点で一致している」と言う。
 ナーゲル、グルック両会長とも、大会では双方が他派の聖体(聖餐)に参加するように、との呼び掛けを批判している。
 大会で最も注目されるのは14日夕にミュンヘン市心で行われる正教会の礼典。準備されたテーブル1000箇所には祝福されたパンが配られる。ただこれは聖体ではない、と大会主催者は強調している。
 ただナーゲル氏は、「食卓は、共に交わろうという深い欲求の目に見える印だ。それは、すべての人が、その教派や社会的地位に関わらず、キリストに招かれ、歓迎されることを象徴している」と語った。


◎教皇、ポルトガルを司牧訪問

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は5月11日、4日間の日程で、ポルトガルを司牧訪問した。
 教皇は最初の訪問地リスボンに到着、アルバル・カヴァコ・シルヴァ大統領の出迎えを受け、空港での歓迎式に臨んだ。挨拶で教皇は、ポルトガル共和国の成立100周年を祝うこの年に同国を訪問した喜びを述べた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は93年前、ファティマに聖母が出現した出来事を想起し、人々が神に扉を閉ざしていた時に、まさにポルトガルに開いたその天は、神が開いた希望の窓であり、聖母は、愛に乏しく希望を持たない人類に救いと希望の源を与える福音の真理を示すためにやって来られたと述べた。
 空港での歓迎式後、教皇はリスボン市内のジェロニモス修道院を訪問した。16世紀に大部分が建設され、ユネスコの世界遺産にも登録されている同修道院は、現在は主に外国からの賓客もてなしに使用されている。
 修道院の前庭で大統領夫妻に迎えられた教皇は、歓迎の儀式に続き、院内の教会や回廊を見学、その後、大統領官邸であるベレン宮殿を表敬訪問した教皇は、大統領と個人会談を行なった。
     ◇
 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、ポルトガル司牧訪問2日目の5月12日午前、リスボンの文化センターで講演した。
 文化人や研究者、芸術家をはじめ、在ポルトガル外交団、カトリック以外のキリスト教教会代表者、諸宗教指導者ら約1000人が集まった。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はこの講演で、教会の使命は現代の文化において真理の追求に人々を目覚めさせ続けることにあると述べ、相互の尊重に基づく真摯な対話の推進に期待を表明した。
 同日午後、教皇は今回のポルトガル司牧訪問の中心となるファティマ巡礼に向かった。 ファティマの聖母巡礼聖堂到着後、教皇は「出現の礼拝堂」で祈った。教皇は3人の牧童に聖母が現れた場所と同じ位置に立つ聖母像の前で跪き祈った。
 続いて、三位一体教会で夕べの祈りを行った教皇は、特に「司祭年」にあたり、司祭たちが喜びをもってその奉献を生き、キリストへの忠実を証しできるよう、そして助祭、修道者、神学生、信者ら教会の成員がそれぞれの召命を忠実に生きることができるよう、聖母の保護を願った。
 ポルトガル司牧訪問3日目の13日、教皇はファティマで巡礼者たちと共にミサを捧げた。ポルトガル始めヨーロッパ、世界各国から訪れた巡礼者約50万人は、旗やバンダナを振り、聖母賛歌を歌った。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はミサの説教で、この巡礼を通し、苦しみに覆われた人類のために聖母と共に祈り、イエスを愛する深い心を聖母に託し、「司祭年」の終わりに当たりすべての司祭と奉献生活者を聖母の保護に委ねたいと述べた。
     ◇
 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世はポルトガル司牧訪問最終日の5月14日、巡礼地ファティマから、同国第2の都市ポルトに向かい、同地でミサを行った。
 中心街のアリアドス大通りで行われたミサには約12万人が参加した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はミサの説教で、キリスト者とは、教会において教会と共にキリストによって派遣された宣教者であると強調、復活のキリストを神から受け取り世にもたらすよう、またイエスに信頼し、そのみ言葉に照らされて、現代の人類に奉仕するよう、すべての信者に呼び掛けた。
 午後、ポルトの空港で行われた送別式で、教皇は滞在中に受けたポルトガル国民の歓迎に心からの感謝を述べた。4日間のポルトガル司牧訪問を終えた教皇は、同日夜バチカンに戻った。


◎米教会報道協会がRNS通信やENI通信を表彰

 【CJC=東京】米国の『教会報道協会』(アソシエーテッド・チャーチ・プレス)が2009年度の優秀賞授賞式を5月8日、バージニア州アーリントンで開催、『通信部門優秀賞』をRNS通信(本部ワシントン)に授賞した。『宗教通信部門優秀賞』では世界キリスト教協議会(WCC)系のキリスト教専門通信『ENI』が受賞した。
 ENI通信は『編集の勇気』部門でも、世界教会協議会関係の報道を認められ受賞した。同協議会はENI通信を設立した4団体の一つ。「ウォッチドッグ(監視)という伝統の中の偉大なジャーナリズムとして、編集の勇気が最も良く示された。記者にとってリスクは大きいが、読者は評価する」と審査員のアンドリュー・ハーマン氏(シカゴ・サンタイムズ編集長)はコメントしている。


◎米国に「キリスト教」打ち出したソーシャル・ネットワーク

 【CJC=東京】米福音派系のANS通信によると、「キリスト教」打ち出したソーシャル・ネットワーク『MyBLAB.com』が登場した。
 『MyBLAB』は英語で「信者としてリンクされた」という言葉の頭字を連ねたもの。世界中のあらゆる所から、また全ての教派のキリスト者個人、伝道・宣教団体を結びつけたいという。
 現在では『フェースブック』と『マイスペース』がソーシャル・ネットワークの世界ではトップ争いをしているが、『MyBLAB.com』は、有名な『フェースブック』や『マイスペース』を組み合わせ、それにキリスト教のひねりを加えた感じに仕上がっている。さらに今、急速に利用者が増えている『トゥイッター』とも連動している。
 『MyBLAB.com』は単にソーシャル・ネットワークの一つとして企画されたものではない。創設者のクリス・バーカート氏は、「世界規模のコミュニティを作るよう、神に命じされていると確信するようになった。インターネットにもう一つ『ノイズ』を加えたいと思っているわけではない」と言う。
 「私は、人々の生活に何かをプラスさせるネットワークを欲していた。私は教会で牧師の子どもとして育った私は、互いに働き掛け、助け合い、ネット上に『教会を作る』ことで、信者のための世界的なコミュニティを作りたい、と強く思っていた」とバーカート氏。
 バーカート氏は3年間で、ソーシャル・ネットワークのために膨大なプログラムを開発し、それは現在有名なものと同様な機能を持つものとなったが、キリスト者のためということで安全性や環境に配慮したと言う。
 「ユーザー、すなわちコミュニティがらみのコンテンツを作りたかった。他のネットワークは、世俗的な会議の場所だが、私たちは『MyBLAB.com』をもっと安心出来る場所にしたかった」とバーカート氏。
 そう言っても、キリスト者以外を排除するものでは絶対にないとして、「『MyBLAB.com』のビジョンは、互いに信仰の旅路で助け合う、地球上の全ての信仰者のコミュニティーを形成することだ。それにはインターネットを利用すること以上の方法を思いつかない」と言う。
 ただいくら「世界規模」と言っても、考案者が米国人であることから、使用言語は現在、英語しか想定されていない。
 ※注:『MyBLAB』=www.MyBLAB.com。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽中国のキリスト者の人権擁護のために活動し、2008年にはノーベル平和賞の受賞候補者にもなった高智晟弁護士が拘束されていたことが分かり、国際社会の反発を呼んだことから4月6日釈放されたが、同月20日からまた所在が分からなくなった。
▽ベトナム・カトリック教会のハノイ大司教ジョセフ・クァン・キエト氏が5月13日辞任した。同氏は、ベトナム政府との緊張緩和を望むバチカンの意向によるものだ、との報道を否定した。
▽インド西部ゴア州ヌヴェム村のカトリック教会のトーマス・レメディオス・フェルナンデス神父(37)州都パナジ南郊のギャルギバガ海岸にピクニックに来たが、教会員の青年3人が荒海に溺れそうになったのを助けようとしたところ、心臓発作で5月9日死去した。
▽ミュンヘンのカトリック教会カテドラルで行われたエキュメニカル集会で、この2月にドイツ福音教会議長を飲酒運転で辞任したマルゴット・ケースマン監督が避妊用のピルを「神の賜物」と見られる、と語った。
▽教皇ベネディクト16世が著作『ナザレのイエス』の第2巻の草稿を完成した。第1巻を受けて、受難と復活を取り扱っている。 
▽バチカン市国は携帯電話2000台分の契約を伊ボーダフォン社と5月14日契約した。
▽バチカン司教省長官にジョージ・ペリ枢機卿が任命される、と消息筋から情報が流れた。保守派の論客だけに、実現すればバチカンの右旋回が現実のものとなる、と関心が高まっている。 
▽米カトリック教会バーモント州バーリントン教区は5月13日、聖職者による性的虐待被害者に対し2000万ドル(約18億5000万円)以上の慰謝料を支払うことに合意した。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(5月16日)=https://www.cwjpn.com
★核廃絶 被爆マリア像と共に=長崎大司教 米国を訪問=NPT再検討会議に合わせ=被爆地の願い訴える
★聖アグネス像に献花=2つの被爆像 米国で再会
★教皇=世界の指導者に=完全な核廃絶へ=取り組みを呼び掛け
★核兵器の非人道性=高見三明大司教=学生らに率直に語る
★混乱期にこそ使命=カト校であり続けるために=東京=学校長・理事長・総長管区長の集い

  =キリスト新聞(5月15日・休刊)=https://www.kirishin.com

  =クリスチャン新聞(5月16日・休刊)=https://jpnews.org


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