世界キリスト教情報 第999信(2010.03.15)
- ナイジェリアでイスラム教武装グループがキリスト者虐殺
- 宗教間衝突、軍が知事の事前警告を無視か
- 衝突は「宗教的対立でなく民族の対立が原因」とアブジャ司教
- 世界教会協議会と世界福音同盟指導者がジュネーブで会談
- マレーシアのカトリック教会冒とくでイスラム教誌が謝罪
- アイルランドのブレイディ枢機卿は「辞任しない」
- イスラエルが入植地計画発表の経緯を調査へ
- グルジアが服役は修道院で、という新制度導入
- 《短信》
- 《メディア展望》
◎ナイジェリアでイスラム教武装グループがキリスト者虐殺
【CJC=東京】アフリカ中西部ナイジェリア中部プラトー州の当局者によると、州都ジョス南郊のキリスト者が多数を占めるベロム族の村3カ所で3月7日早朝、イスラム教武装グループとみられる集団の襲撃があった。同州当局者は8日、200人以上が死亡、32人が負傷し、容疑者26人が拘束されたと述べた。
虐殺された人の数は正確に把握されてはいないものの、ドゴハハウワ、ゾット、ラットサットの各村でイスラム教武装グループに500人近くが殺害されたと見られる。生き残った村民は自宅を離れ避難し、隣接するバウチ州の赤十字キャンプには約600人が収容されている。
プラトー州は、ナイジェリアでイスラム教徒が優勢な北部とキリスト教が優勢な南部との中間に位置している。ナイジェリアでは人口を二分するイスラム教徒とキリスト者の対立に、数百にも分かれる民族同士の紛争が絡み、住民間の衝突が後を絶たない。
病気療養中のウマル・ムサ・ヤラドゥア大統領の代理を務めるグッドラック・ジョナサン副大統領は、同州と近隣の州に厳重な警戒を呼び掛けるとともに、治安部隊に犯人の追跡を指示した。
武装グループは、家屋に放火、3時間にわたって逃げ出す住人にイスラム教徒が使うフラニ語で「誰だ」と問い、答えがないと殺した。女性と子どもが狙い撃ちされた。
逮捕された20歳の青年は、家族への迫害に対する報復行動と主張している。現地警察署長は、加害者は殺害実行で報酬を受けていたとしたものの、詳細は明らかにしなかった。
政府が問題に関与しないと信じている住民と警察との間で緊張が高まっている。首都アブジャでは10日、政情破局から失業までに政府の行動を要求して、数千人が抗議行動を行った。ジョスでは、黒衣に身を包んだ女性数百人が聖書や木製の十字架、マンゴーの枝などを持って行進した。
ナイジェリアの警察や軍はイスラム教徒が支配している。キリスト者青年は、ナイフや自製の刀、ナタ、弓矢で自衛し、バリケードも築いている、という。
米英など各国政府は、国際テロ組織アルカイダの影響力を懸念、国際人権団体も正義のために責任ある行動を関係当局に要請している。
◎宗教間衝突、軍が知事の事前警告を無視か
【CJC=東京】アフリカ中西部ナイジェリア・プラトー州のジョナー・ジャン知事は3月9日、同州内で7日に発生した数百人が殺害されたとされるキリスト者の襲撃事件について、事前の警告を無視したとして、軍司令官らを非難した。AFP通信が報じた。
同知事は、武装集団が近隣州からプラトー州に入り、襲撃を受けたキリスト者の村周辺で目撃されたとの情報を6日夜に入手し、軍司令官らに警告した。その際、軍司令官は部隊を派遣すると語ったという。
AFP通信によると、知事の自宅は、襲撃があった村の一つから約5キロの場所にあるが、その自宅前を1台の戦車が通過していったため、同知事はキリスト者の村に向かったものと思っていた。
その3時間後、知事はキリスト者の村が襲撃されているとの報告を受けたという。「司令官らと連絡を取ろうとしたが、まったくつかまえることができなかった」。
襲撃の生存者は、当局は襲撃を防ぐことはしなかったと証言している。ジャン知事は、軍部の過失がなければ、襲撃は避けることができたはずだと指摘した。
◎衝突は「宗教的対立でなく民族の対立が原因」とアブジャ司教
【CJC=東京】ナイジェリア中部・プラトー州の州都ジョス近郊で3月7日、住民間の激しい抗争で500人以上が犠牲となった。
イスラム教徒からなるフラニ族の武装グループが、キリスト者が多数を占めるベロム族の村を襲撃したことで引き起こされた。
首都アブジャのジョン・オロルンフェミ・オナイエカン大司教は、この衝突の原因は古くからの民族的対立にあり、宗教的性質によるものでない、と指摘した。バチカン放送(日本語電子版)が報じた。
同大司教によれば、襲撃した側のフラニ族は放牧を仕事とする遊牧民族でイスラム教徒からなり、一方でベロム族は定住型の農耕民族でキリスト者が多い。
同大司教は、この争いが古くから見られる放牧者と農民の間の土地をめぐる対立、民族・文化・社会・経済的相違に端を発しているもので、今回の事件を安易に宗教対立として括るべきではない、と述べた。また、こうした暴力の背景に武器が簡単に手に入る環境があることにも憂慮を示した。
教皇ベネディクト16世は、今回の暴力衝突で、無防備な子どもたちをも含む非常に多くの人々が犠牲になったことに苦しみを表し、暴力は対立の解決にはならず、悲劇的な結果を増すだけであると、すべての人々の平和的共存を強く訴えている。
◎世界教会協議会と世界福音同盟指導者がジュネーブで会談
【ジュネーブ=CJC】世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事と世界福音同盟(WEA)のジェフ・タニクリフ国際部長は3月3日、ジュネーブのエキュメニカル・センターで会談、キリスト教をめぐる共通の関心を討議した。
2人は、2007年にケニアのリムルで開催された『グローバル・クリスチャン・フォーラム』で顔を合わせてはいるが、トゥヴェイト氏がこの1月にWCC総幹事に正式就任してからは最初の会談となった。
両者は、宣教、伝道、継続中の活動、カトリック教会も対象にした改宗に関する行動基準など共通の関心と協力の分野について討議した。
トゥヴェイト総幹事は、「わたしたちは、すべてのキリスト者が一つとなるように共通の召しがあり、互いの関心に敏感になりたい、と確信した」と述べた
タニクリフ部長は、「この重要な会議は、伝道、信教の自由、弱者に対する思いやりなどへの理解を共通にするために役立った。わたしたちは、WCCとの継続的な対話を期待している」と語った。
また両者は、『グローバル・クリスチャン・フォーラム』を、正教会、カトリック教会、聖公会、プロテスタントの間の出会いと対話の機会を提供する場として、WCCとWEAが支援を継続することを確認した。
◎マレーシアのカトリック教会冒とくでイスラム教誌が謝罪
【CJC=東京】マレーシアのカトリック教会側は3月7日、イスラム教誌『アル・イスラム』からの謝罪を受け入れた。同誌が昨年5月号に掲載した記事によると、記者2人が、クアラルンプールの聖アントニオ・カトリック教会のミサに参列、聖体のパン(ウェハス)をを受け、半分噛んだものを吐き出し、写真を撮った。教会に入ったのは、イスラム教徒が不法にキリスト教へ改宗している、との声を調査するためだったという。
同誌は、「キリスト教信仰を侮辱する意図はなく、押し入って妨害しただけ」と発行者『ウツサン・カリャ』社のサイトに、記事掲載を謝罪する声明を6日掲出した。
謝罪は、クアラルンプールのマーフィー・パキアム大司教が、事件に対する政府の「対応のミス」を批判したことから、緊張緩和のために行われたものと見られる。
「わたしたちは、公式謝罪を受け入れる。称賛に値いする」と、カトリック系『ヘラルド』紙の編集長ローレンス・アンドリュー神父は語っている。
イスラム教徒圧倒的多数のマレーシアでは、この所、宗教紛争に悩まされている。イスラム教徒以外が「神」を表す時に「アラー」を使うことをめぐって、教会やモスクに火炎瓶が投げ込まれるなどの事件も続発した。
マレーシアの総人口2800万の内でキリスト者は約9%。カトリック信者は85万人とされている。
◎アイルランドのブレイディ枢機卿は「辞任しない」
【CJC=東京】アイルランド・カトリック教会首座司教のショーン・ブラディ枢機卿は、1970年代に起きた聖職者の性的虐待問題の隠蔽を画策していたことを指摘され、辞任を要求されていたが、それを拒否した。「率直に言って、これが辞任すべき問題だとは思えない」と枢機卿は語った。
枢機卿は、ブレンダン・スマイス神父による虐待の被害者、10歳台の少年2人が沈黙を守るとの誓約に署名する場に同席していたことは認めた。同神父は90年代に有罪とされ投獄された。
スマイス神父は、子どもの性的虐待常習者として知られ、40年間にわたってアイルランド全島にわたって20人以上に虐待を加えたとされ、最終的に有罪とされた。しかし問題提起者側は、教会が同神父を各地に転任させたため、犠牲者は数百人に達すると推定している。
◎イスラエルが入植地計画発表の経緯を調査へ
【CJC=東京】イスラエル政府が、ジョゼフ・バイデン米副大統領の同国訪問中に東エルサレムでの入植者住宅1600戸の建設計画を発表した。これに米国など関係各国が強く反発したことから、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は3月13日、経緯の調査を命じた。
政府報道官によると、ネタニヤフ首相はバイデン副大統領訪問中の経緯を調査し、再発防止のための規則を作るため、政府幹部による委員会の設置を決めた。
ヒラリー・クリントン米国務長官はネタニヤフ首相と電話で会談し、米・イスラエル関係に対する「非常に否定的なシグナル」だと語ったほか、米CNNテレビで、バイデン副大統領の滞在中にイスラエルが計画を発表したことは「侮辱だ」とも述べた。ネタニヤフ首相は発表の時期については謝罪している。
◎グルジアが服役は修道院で、という新制度導入
【CJC=東京】AFP通信によると、グルジアの刑執行・保護観察省は3月12日、服役囚が修道院で刑期を務める新制度の導入を発表した。服役中の受刑者は2009年で約2万人。04年以降4倍に増え、多くの刑務所で定員を超えているという。
検察総庁、刑執行・保護観察省、グルジア正教会の代表からなる委員会を設置し、対象となる受刑者を選ぶ。
新制度は「刑事訴追のリベラル化」と「受刑者の社会復帰の革新」を目指す政府の方針に沿って導入されるが、刑務所の過剰収容を緩和する目的もあると見られる。
《短信》CJC通信Twitter速報から。
▽パキスタン北西部にある救援団体『ワールドビジョン』の事務所が3月10日襲撃され、イスラム教徒従業員6人が殺された。
▽83歳の教皇、今年は夏休みはローマ近郊のカステルガンドルフォで過ごすことにした。アルプスには行かない。
▽司祭は「社会活動家」になってはならない、と教皇が3月12日語る。▽世界20国の聖公会から、『アングリカン正義と平和ネットワーク』(APJN)のメンバー約35人が13日から20日まで、ジュネーブに集まる。同地の国連機関に意見を反映させる狙い。
▽エジプト北部で3月12日、キリスト者とイスラム教徒の間で抗争があり、少なくとも24人が負傷した。
《メディア展望》
=カトリック新聞(3月14日)=https://www.cwjpn.com
★日本聖書協会新たな聖書翻訳開始へ=「新共同訳」に続く超教派事業=2016年出版予定
★難民移住移動者委=札幌で東京教会管区セミナー=子どもたちの育成考える
★キリスト教学校教育懇談会=キリスト教教育の魅力=公開講演会で力説=「1人1人が大切」
★カトリック・プロテスタントの神学生=超教派で交流=京都
★とりくみ拝見=挙式した夫婦を招待=東京・目黒教会=ことしは43組参加
★米国のマイナーリーグ選手=野球辞め 修道院に=司祭目指すと発表
=キリスト新聞(3月13日)=https://www.kirishin.com
★日本聖書協会=2016年に新たな聖書刊行=全18教派・団体が参加、6月から翻訳開始=「新共同訳」見直し要請に応え
★都教委要請="教師の痛みに寄り添って"=「超教派キリスト者の会」賛同署名が1300筆超
★キリスト教学校教育懇談会 公開講演会="かけがえのない存在"として
★秋葉原で記念イベント岩渕さんらが出演=CD「世界中に祝福を」
★マザーズ・カウンセリング・センター特別公演=錦織充氏「たいせつなきみ」熱唱
★独EKD=初の女性監督 マルゴット・ケースマン氏=信号無視・飲酒運転で辞任
=クリスチャン新聞(3月14日)=https://jpnews.org
★日本聖書協会=聖書新翻訳に着手=カトリックと共同で「標準訳」
★第26回ペンライト賞選考結果=奨励賞に殺人犯の手記
★「健康な教会」の秘訣伝授=米国から指導者来日、3ヵ年のワークショップでトレーニング=米サドルバック教会のセオリー=日本の中・小教会に適用めざす
★アキバに神の祝福を!=「God Bless You」プロジェクト=都心で発売記念ライブ
★ハウツーではなく視座与えられた=「牧会塾」2年目へプレスクール
★卒業式前に「信教の自由を求める」祈り会=「主よ、許して...」心と体バラバラに=私が逃げてる間も子らは歌わされる=現場教員ら悲鳴
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