世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第977信(2009.10.12)

  • オバマ米大統領のノーベル平和賞受賞に期待と懸念
  • オバマ米大統領が聖公会聖ヨハネ教会の礼拝に
  • 第2回アフリカ特別シノドス開幕
  • アフリカ系ローマ教皇誕生もあり得る、とタークソン枢機卿
  • 教皇、ハンセン病救済につくしたダミアン神父らを列聖
  • 米カトリック医療施設ではレイキ禁止
  • フィリピンで高齢神父誘拐される
  • 《メディア展望》

◎オバマ米大統領のノーベル平和賞受賞に期待と懸念

 【CJC=東京】ノルウェーのノーベル賞委員会は10月9日、2009年のノーベル平和賞をバラク・オバマ米大統領(48)に贈ると発表した。同氏が進める国際協調外交と「核なき世界」に向けた姿勢を評価し、「より良き未来に向けて人々に希望を与えた」ことを授賞理由に挙げている。
 「核なき世界」待望の国際世論のうねりが欧州を中心に広がりつつある中で、今年1月に就任したばかりのオバマ氏を選んだのは、核超大国が対話重視の国際協調路線を追求するという理想の実現を、小国ノルウェーの委員会が熱望していることの表れとも見られる。
 しかし核軍縮・不拡散に向けた動きは始まったばかり。アフガニスタンでの米国の対テロ戦争は泥沼化しつつあり、国内的には医療保険改革や雇用対策など難題に直面している中で高い支持率も、政治の現実を前に陰りが見え始めていた時だけに、受賞で「オバマブーム」復活となるか注目される。いずれにしてもオバマ氏への期待は、重圧としてのしかかることは必至。
 米国内では「オバマ政権は全世界の人々の希望を体現している」(カーター元大統領)などと歓迎の声が上がったが、保守派からは「大統領は受賞を辞退しろ」「ノーベル賞委員会は自らの権威を失墜させた」など強硬な批判が相次いだ。
 国際的にもキューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が受賞を賞賛、ノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ十四世もオバマ大統領に同賞受賞を祝うメッセージを送るなど好意的な意向を示す一方、アフガニスタンの武装勢力タリバンは「(アフガンでの)暴力を激化させ、多くの民間人を殺害した」と厳しく非難している。
 ロシアの極右政党、自由民主党のジリノフスキー党首はオバマ氏に受賞を辞退するよう勧める書簡を送った。時がたてば米軍主導のイラク、アフガニスタンでの戦争などのため、平和賞ははく奪されるからだと説明している。
 キリスト教界では、バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所受賞を歓迎する声明を発表した。「この最も重要な認知が、とても困難ではあるが、人類の未来に向けた基本的な関わりを最高に勇気付けるものであり、期待できる結果を生み出すことになろう」と言う。
 世界教会協議会(WCC)のサミュエル・コビア総幹事は、大統領に宛て歓迎の書簡を送った。「来年1月に就任する後継総幹事のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト氏と共に、ノルウェーのノーベル委員会の決定に深く満足している」として、大統領の実父がケニア出身で、自らもケニア人であること、またトゥヴェイト氏もノルウェー人であることから、両国が今回の授賞に特別な関係があることを指摘した。
 書簡は、全能の神の祝福が続くように、との挨拶で締めくくっている。


◎オバマ米大統領が聖公会聖ヨハネ教会の礼拝に

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領一家が10月11日、首都ワシントンの聖公会聖ヨハネ教会の礼拝に出席した。
 同教会はホワイトハウスから道路1本隔てた所にあり、警備面からも大統領の出席する教会になるのではないか、と見られている。
 教会側も第4代ジェームズ・マディスン大統領以来、歴代大統領が礼拝に来た、として「大統領席」と銘板を貼った座席を設けている。


◎第2回アフリカ特別シノドス開幕

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)で10月4日、第2回『アフリカのための特別シノドス』(代表司教会議)が、聖ペトロ大聖堂で教皇ベネディクト十六世司式のミサによって開幕した。今回のシノドスは「和解・正義・平和に奉仕するアフリカの教会『あなたがたは地の塩...世の光である(マタイ5・13〜14)』」をテーマに25日まで開催される。
 シノドスにはアフリカ大陸全土を代表する枢機卿・司教、神学や宣教、典礼、司牧、経済、医療、女性問題など諸分野の専門家、またカトリック以外のキリスト教各派の使節が参加している。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、会期中に20の全体会議、9回にわたる分科会が行なわれ、提案書採択を経て、最終日の教皇による閉会ミサをもって終了する。
 開会ミサの説教で、教皇は、創造主である神を称えるアフリカは、信仰と希望の危機にある世界に精神的息吹を送り出す「肺」であると述べた。一方で、この「肺」が今日、物質主義・相対主義・虚無主義や、政治経済的関心の混ざった様々な形の宗教的原理主義に脅かされていることを指摘した。
 第1回目のアフリカ特別シノドスは、教皇ヨハネ・パウロ二世によって1994年4月に行なわれた。


◎アフリカ系ローマ教皇誕生もあり得る、とタークソン枢機卿

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の主にアフリカ出身者が着座する可能性はある、とガーナのピーター・コドゥウォ・アッピア・タークソン枢機卿が語った。
 同枢機卿は第2回アフリカ特別シノドス(代表司教会議)に参加するためバチカン(ローマ教皇庁)を訪問、10月5日の記者会見の際、黒人教皇の可能性に関する質問に答えた。バラク・オバマ米大統領や、コフィ・アナン前国連事務総長など世界の指導者に黒人が就任していることに触れ「神が教皇として黒人を望まれるなら、ありがたいことだ」と応じた。
 同枢機卿は第2回アフリカ特別シノドス(代表司教会議)の報告者を務めるが、ベネディクト十六世や故ヨハネ・パウロ二世も、教皇の座に就く前にシドノス報告者を経験しているところから、同枢機卿も現教皇ベネディクト十六世の有力な後継候補の1人と取り沙汰されている。


◎教皇、ハンセン病救済につくしたダミアン神父らを列聖

 【CJC=東京】キリストの愛の「輝かしい例」として、教皇ベネディクト十六世は10月11日、ダミアン・デ・ヴェウスター神父、ジャンヌ・ジュガン修道女ら5人を聖人に列した。
 サンピエトロ大聖堂で行われた当日のミサには世界各地からの巡礼が集まった。入りきれなかった人たちのために大広場に巨大スクリーンが設置され、それに見入る人も4万を越えた。
 5人の略歴が読み上げられた後に、教皇は列聖を発表、全体教会にとって聖性のモデルである、と宣言した。
 聖人に列せられたダミアン神父は1840年、ベルギーのトレメロ生まれ。24歳の時にハワイに派遣され、33歳からモロカイ島カラウパパにある聖フィロメナ教会の神父になった。カラウパパはハンセン病患者の隔離地。ダミアン神父は、献身的にハンセン病患者と接する内に自分も感染し、1889年死去。
 教皇は、最後まで「患者と共にいた患者」であることに「やすらぎを覚えていた」とし「彼は私たちを、私たちの目を、私たちの兄弟姉妹の人間性を損ない、そして今日もなお、私たちの奉仕という寛容と思いやり以上のものを必要とする『ハンセン病』を直視するよう招いている」と語った。
 ダミアン神父は、ハンセン病患者の、そして近年ではHIV/エイズの「仲裁者」と評価されている。バチカン(ローマ教皇庁)の列聖準備段階では、ダミアン神父を「あらゆる種類のはじき出された人たち、すなわちエイズなど治りにくい病気の患者、見捨てられた子どもたち、将来の見えない若者、搾取される女性、放置される高齢者、抑圧される少数者」の声と評価している。
 ジャンヌ・ジュガン修道女は高齢者への奉仕が評価された。高齢者の独特の場と貢献を現代社会が今も再発見している、として教皇は、同修道女が高齢者に人としてのキリストを認めることに優れていたとして、現代社会にとっての「灯台」だったと評価している。
 ジュガン修道女は『貧者のための小さな姉妹会』の創設者。1972年、北フランス生まれ。1839年に病気や視力を失った高齢女性の家を始めた。1879年死去。同会は現在も世界各地に「家」202箇所を設置、1万3000人以上の高齢者に奉仕している。
 その他、ジグムント・フェリンスキー元ワルシャワ大司教(『マリアの家族のフランシスコ姉妹会』の創設者)、フランシスコ・コル・ギタルト神父(スペインの『祝福された処女マリアのお告げのドミニコ姉妹会』の創設者)、ラファエル・アルナイズ・バロン神父(謙遜と祈りの生活で知られたスペインのトラピスト修道会士)が列聖された。
 教皇はまた、日本から訪問した広島・長崎の原爆被災者を祝福、「世界が、罪のない人の生命をあのように大量破壊することを決して二度と見ることのないように祈る」と語った。


◎米カトリック医療施設ではレイキ禁止

 【CJC=東京】米カトリック司教団は、教会が運営する病院や老人ホームなどで「レイキ」(霊気療法)実施を禁止する指針を発表した。カトリック者でレイキを実行している人もあり、米国で盛んになっている療法の禁止は混乱を招くことになりそう。
 「キリスト教信仰や自然科学から正当化されていない中で、レイキを信用するカトリック者は迷信の領域、信仰でも科学でもない領域に踏み込むことになる。迷信は、その人の宗教的感情を転換させることで神を拝むことを破壊し、誤った道を歩ませる」と指針は指摘している。
 指針を作成した教理委員会のロバート・マクマナス司教は、調査の結果、レイキが治癒を促進する医学的な根拠はないとの結論に達した、と言う。


◎フィリピンで高齢神父誘拐される

 【CJC=東京】フィリピン南部パガディアンで聖コロンバン宣教会のマイケル・シノット神父(78、アイルランド出身)が10月11日、同会本部前で誘拐された。
 銃を持った6人が押し入り、同神父を自動車に押し込めたという。居合わせた人は何も出来なかった。その後、海上をモーターボートでタクラン方向に連れ去られるのを猟師が見ていた。犯行声明はまだ出されていないが、同地で優勢なカトリック教会に反感を持つイスラム教過激派によるもの、と警察は見ている。
 聖コロンバン会は、同神父が庭を散歩中に誘拐されたことを確認、心臓疾患があるのに服用薬を所持していないことから、健康状態を懸念している。
 同神父は1957年に初めてフィリピンに派遣され、98年からは障がいを持つ子どもたちの学校に関わっている。
 フィリピン南部ではこれまでも外国人宣教師や旅行者が誘拐されているが、いずれもアルカイーダと連携しているアブサヤフ・グループによるものという。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(10月11日)=https://www.cwjpn.com
★南太平洋・アジアで相次ぐ自然災害=カトリック援助団体 被災者支援急ぐ 
★教皇、チェコを訪問=キリスト教的価値の再発見促す
★4月に完成した「新カトリック大事典」最終巻を教皇に献呈
★軍都被爆都市 広島で「九条の和」=教団教派超え シンポジウムと平和巡礼
★仙台中央地区=インターナショナル・ミサ=30カ国の500人参加
★千葉寺教会=3カ国の出会いを記念=千葉・御宿=メキシコ塔前で野外ミサ

  =キリスト新聞(10月10日)=https://www.kirishin.com
★日本聖公会=宣教150周年=カンタベリー大主教来日=青年信徒らと対話=「平和の実現は可能だ」
★ショーリ主教=米聖公会と政府の関係語る="正義と平和"強調
★聖公会=「東アジアの平和」めぐりシンポ=韓・比・日の主教が教会の役割問う
★ルーテル学院=創立100周年で式典・礼拝="神と人とに生きる"原点に
★ペシャワール会=中村哲氏、25年の現地活動を報告=アフガンに用水路完成
★米福音ルーテル=保守派が新組織憲章

  =クリスチャン新聞(10月11日)=https://jpnews.org
★第5回日本伝道会議=危機の時代こそ宣教協力を=「協」教派的伝道 模索を提言
★コロンビア=暴漢3人が牧師殺害
★フィリピン豪雨禍=ゴミ山の教会も被害深刻
★西本誠一郎めぐみ堂社長=強制わいせつで逮捕=和解成立し 不起訴
★「アイヌ文学の入り口」=知里幸恵記念館=10年開館へ=登別市
★プサンでWCC次期大会=韓国紙の社説が期待表明


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