世界キリスト教情報 第976信(2009.10.05)
- 台風・地震・津波、キリスト教団体も救援活動
- イスラエルが『メシアニック・ジュー』抑圧、と英タイムズ紙
- イスラエルのラビがパレスチナ市民への振る舞いで許し求める
- 教皇「イエスに関する著作の第2部、来春完成目指す」
- 教皇、チェコ司牧訪問終える
- 教皇、パキスタン大統領と会見
- 米テレビ伝道者ベニー・ヒン氏が英入国出来ず
- スウェーデン牧師が酒気帯びで葬儀
- 《メディア展望》
◎台風・地震・津波、キリスト教団体も救援活動
【CJC=東京】フィリピンのルソン島を襲った台風16号(現地呼称「ケツァナ」「オンドイ」)の豪雨災害による死者は、9月29日に240人を超えた。行マニラ首都圏と周辺地域で被災した人は約61万人に上っている。
国家災害調整協議会(NDCC)議長のギルベルト・テオドロ国防相は28日、グロリア・マカパガル・アロヨ大統領の名によって国際社会に緊急人道援助を呼びかけた。
すでにユニセフ(国連児童基金)から食糧など1530万ペソ(約2890万円)が寄せられた。米政府も現金5万ドル(約450万円)やヘリコプター、ゴムボートなどを提供した。
フィリピン赤十字社も寄付呼びかけを繰り返している。避難者には食糧以外に、マット、ブランケット、蚊帳、テント、歯磨き、石鹸、衛生ナプキン、シャンプー、タオル、アルコールなどが必要という。
カトリック教会マニラ大司教区の社会活動部門の中心となっている救援組織『カリタス・マニラ』も寄付を呼び掛ける一方、1万家族5万人を対象に、教会、聖職者、社会活動部門やボランテアを動員して援助活動を展開している。
英国に本拠を置く援助団体『クリスチャン・エイド』も食糧、飲料水、薬品などをマニラなどに送った。
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【CJC=東京】台風・地震・津波が相次いで東南アと南太平洋を襲った。フィリピン、サモア、米領サモア、インドネシアなどで死者多数を出し、被災者も正確な数を把握出来ないまま増え続けている。
日本など各国政府や救援組織が緊急活動を展開する中で、キリスト教団体も救援活動を展開した。
マグニチュード7・6の地震に見舞われたインドネシアの西スマトラで、被害の大きかったのはパダン・パリアマン地区(人口38万7500)とパダン市(同90万)と同市北方のパリアマン市(同7万7500)。パダン市では倒壊したビルの下敷きになった人も数千人と推定されている。
パダン・パリアマン地区では1万戸以上が倒壊した。公共施設19箇所も被害が大きく、学校も50以上が破壊された。宗教施設も88箇所が損壊した。
パダン市では家屋の半数が全半壊している。電話は不通、停電、空港も一時閉鎖された。再開後もジャカルタからの便は満員。
同市最大で手術設備も完備していた病院も被害を受けた。救援団体のスタッフは、患者が廊下にまで溢れており、死体置き場も屋外に設けられた、と言う。医療援助が最重要だ。
救援に協力しているアフスティヌス・ムデイハルトノ神父は、生存者の置かれた状況も深刻だとし、さらに北方50キロのパリアマン町では全戸が地震で破壊されている、と言う。
『国際カリタス』は、パダンに向けて『カリタス・インドネシア』と共に救援・調査団を派遣する準備を進めている。ただ各地で道路も寸断され、被害調査もままならない。
主要団体の各地での活動状況はCJC通信調べでは次の通り。
▽国際カリタス=『カリタス・フィリピン』はマニラ首都圏始め今回の台風で被害を受けた地域に救援を開始した。当面の目標を1万家族(5万人)に定めた。救援米650袋を買い付けたが、それでは全く不十分と見ている。
台風はフィリピンに大被害をもたらした後、ベトナムをも襲撃した。『カリタス・ベトナム』は被害の大きかったクアンナム、ビンデイン地区に援助を集中している。
『カリタス・サモア』は、「津波が襲来してから5〜6時間で、救援活動を始めたが、被害はこれまでになく大規模だ」とスタッフのピーター・ベンディネッリ氏、生存者のために安全な場所を確保し、臨時のシェルターを提供している。「水不足が深刻だ。この温度と太陽の下、水なしでは長時間活動できない」と言う。大量の飲料水を買い付け、現地に輸送中。「トラックは食糧、水、衣料を満載して行き、帰りは病人やけが人を乗せてくる。ヴァン6台とトラック2台を動かしている。遠隔地には道路が不通でたどり着けない。被害はもっと大きいだろうが分からない」とベンディネリ氏。
▽ACT(教会行動一致)=フィリピンでは『国際ACT』は政府機関などからの援助が遅れている地域を中心に活動を展開している。洪水によるぬかるみが貧困層の衛生状態を悪化させる中で活動している。
ベトナムではスタッフ3人が政府や地方組織に協力して活動している。飲料水を提供するほか、健康相談に当たっている。緊急援助がひとまず行き渡ったことから、早期復興に協力する。
インドネシアでは、ACT加盟団体のYTBI、『ヤックム・救援ユニット』(YEU)と『教会世界奉仕』(CWS)の西スマトラ駐在スタッフが、地震発生から3日後には現地で救援活動を展開した。
『ACT・インドネシア会議』が政府、国連機関、教会やNGO団体と救援活動を調整している。『プレスビテリアン災害援助』(PDA)のジャカルタ駐在レベッカ・ヤング氏が情報・連絡を担当している。世界各地からの援助連絡もある。『ルーテル世界救援』と『クリスチャン・エイド』の現地スタッフも協力している。
▽ワールド・ビジョン=国連やキリスト教救援団体と協力、アチェやジョクジャカルタ駐在の救援スタッフをペンガレンガンやタシクマラヤに派遣した。現在100万米ドル(約9000万円)募金を計画中。
◎イスラエルが『メシアニック・ジュー』抑圧、と英タイムズ紙
【CJC=東京】イスラエルがユダヤ教超正統派集団を『メシアニック・ジュー』抑圧に利用し、イスラエルに居住することを阻止しようとしているのではないか、と英紙タイムズが報じている。
イエスを救世主と信じ、ユダヤ人をキリスト教に改宗させようという「ユダヤ人をキリストへ」運動を展開することがイスラエル政府から非難され、嫌がらせや脅迫を受けてきた。
内務省当局者は、ヤドエルアキムという反融合団体が、ユダヤ教の霊的本拠地であるイスラエルにメシアニック・ジューが居住することを阻止ししようと、同省と協力していることを認めた。「ヤドエルアキムが内務省と直接協力していることは前から知られている。市民規定の決定に明確な役割を果たしている」と言う。
◎イスラエルのラビがパレスチナ市民への振る舞いで許し求める
【CJC=東京】イスラエルの『人権のためのラビ』代表ラビ・アリク・アッシャーマンが9月27日、ユダヤ教以外の信仰者い対する振る舞いを反省し、ユダヤ教の名において人々への対応を誤ったことで神に許し求めるようユダヤ人に呼び掛けた。
「非ユダヤ人に対する振る舞い方を、神と私たちの宗教に掛けて反省する」とラビ・アッシャーマンがENI通信に語ったもの。「ユダヤ教の名において人々に対する扱いを間違うなら、それは神の名を傷つける」と言う。
◎教皇「イエスに関する著作の第2部、来春完成目指す」
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世はチェコ訪問途上の9月26日、機中で同行記者団に、イエスに関する著作の第二部に取り掛かっており、2010年春までには完成させたい、と語った。
教皇は、この夏の手首の骨折が完治してはいない、として「右手も使っており、大事なことは出来る。食べることも出来るし、書くことも出来る。考えは書くことでまとまる。だから6週間も書くことが出来なかったことは本当につらく、忍耐の時だった」と言い、著作についてはなお手を入れなければならないので、来春にまで完成出来ればと、ただこれは希望!」と語った。
◎教皇、チェコ司牧訪問終える
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、チェコ司牧訪問最終日の9月28日、同国の保護聖人・聖ヴァーツラフの殉教地、スタラ・ボレスラフを訪問した。この日は同国の国民祝日。
バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は聖ヴァーツラフが殉教した場所の上に建てられたバジリカを訪問。地下聖堂の同聖人の聖遺物の前で祈った後、郊外の緑地帯で、およそ4万5000人の巡礼者と共にミサを捧げた。
チェコ国内だけでなく近隣のスロバキア、ポーランド、ドイツ、オーストリアなどから多数の青年が前日から現地入りし、ゆるしの秘跡を受け、聖体礼拝などに出席、テントで一夜を明かしてミサに参加した。
教皇はミサの説教で、今日においても聖性は可能なのか、むしろ現代の人が求めているのは地上的な成功と栄光ではないのかと問いかけながら、しかし、こうした目的の追求は長くは続かず、歴史が証明しているように、多くの権力者は、その成功の絶頂の後、突然それを失うことになった、と語った。
また教皇はミサの後半、若者たちへのメッセージで、幸せの追求と不安の入り混じった青年たちの気持ちを理解しつつ、聖アウグスティヌスの経験のように、本当に確かなもの、すなわちイエス・キリストと出会い、心を開くことで、人生に新しい地平線を開いて欲しいと要望した。
教皇は同日午後、プラハのルズィニエ国際空港で行なわれた送別式で、3日間の訪問を振り返り、ヴァーツラフ・クラウス大統領はじめ同国関係者に心からの感謝を述べた。
教皇は同日夜、ローマ郊外カステルガンドルフォに帰着した。
◎教皇、パキスタン大統領と会見
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、ローマ近郊カステルガンドルフォで10月1日、パキスタンのアーシフ・アリ・ザルダリ大統領と会談した。
バチカン放送(日本語電子版)によると、会談では、パキスタンの現状、特にテロに対する闘いと、国民全体の調和を目指した寛容な社会の構築がテーマとなった。また、教育・医療・福祉活動などを通した同国でのカトリック教会の社会的貢献にも話題が及んだ。
教皇は、パキスタン各地で最近発生しているキリスト教共同体に対する暴力行為について、宗教を理由としたあらゆる形の差別をなくし、すべての市民の権利尊重を推進するよう、求めたものと見られる。
ザルダリ大統領はバチカン国務長官タルチジオ・ベルトーネ枢機卿および外務局長ドミニク・マンベルティ大司教とも会見した。
◎米テレビ伝道者ベニー・ヒン氏が英入国出来ず
【CJC=東京】米テキサス州のテレビ伝道者ベニー・ヒン氏が自家用機でロンドン近郊のスタンステッド空港に10月2日着陸したが、入国を拒否された。宗教聖職者の入国に関する新規則による、という。伝道集会開催には英国の教会の同意書が必要だが、それを得ていなかったのが理由とされている。
ヒン氏は、同空港を飛び立ち、今度はロンドン北方のルートン空港に着陸を試みたが、ここでも拒否され、フランスに向かった。
同氏は同日夜から3日間、イーストロンドンのドックランドで大伝道集会を行う計画で、すでにペンテコステ派キリスト者数千人が英国内だけでなく欧州各地から集まり、ホテルも満員の所も出ていた。
会場に集まった数千人に、主催者側はヒン氏が姿を現わさない理由を明らかにしないまま、別の牧師が説教し、献金を求めた。
ブリストルから来た参会者の1人は「これまで何回も来たのに、今度はダメというのはおかしい。ホテル代もかかっているのに」と不満顔。
昨年11月に施行された新規制の目的は、過激主義を排除し、宗教的憎悪を教える人の入国を阻止することにある、という。
◎スウェーデン牧師が酒気帯びで葬儀
【CJC=東京】スウェーデンで、酒気を帯びた牧師に親族の葬儀を執り行われた遺族が30万スウェーデン・クローナ(約380万円)の慰謝料を求めている。スウェーデン教会(ルーテル派)が10月2日明らかにした、とAFP通信が報じている。
遺族がスウェーデン教会に宛てて送った手紙によると、この牧師は故人の娘の手にキスをした上、20歳になる孫娘をおおげさに抱きしめたといい、遺族はこの行動も非難している。
親族は慰謝料のほか、葬儀費用の返却も要求している。スウェーデン教会はAFP通信に、この訴えを受理したことを認め、現在調査中だと語った。
《メディア展望》
=カトリック新聞(10月4日)=https://www.cwjpn.com
★宣教再開から150年=函館・元町教会=創立時振り返り、感謝
★深堀敏司教が逝去=最期まで「神のみ旨」思い
★関東でも同時期に東京・神奈川で「教会復活」
横浜教区の歴史家 高木一雄さんに聞く
★長崎=カンタベリー大主教迎え=共に 平和祈る集い
★「信頼の安らぎ」大切に=トラピスト=吉元邦彦・新大修道院長の祝福式
★カトリック学校教職員の養成目的=「東北塾」を設立
=キリスト新聞(10月3日)=https://www.kirishin.com
★日本の賛美歌に一石=南米・アルゼンチンの作家 パブロ・ソーサ氏来日講演=日本賛美歌学会
★「"正しい戦争"ではなかった」=帰還米兵、イラクでの体験を証言
★カトリック神学会=「日本の思想からキリスト教へ」=黒住眞氏、大学での信仰形成問う
★WCRP日本委 理事・評議員会で決定 「公益財団法人」目指す方針
★米プロテスタント諸派=女性牧師の"勢い"倍増
=クリスチャン新聞(10月4日・休刊)=https://jpnews.org
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