世界キリスト教情報 第973信(2009.09.14)
- WCCの指導層には女性が絶対的に不足
- ENI通信にWCC中央委が非難と応答
- 韓国政府、イスラム圏での改宗活動規制を検討
- ダーウィン描いた映画、進化論への批判強い米では上映見送りへ
- シナイ写本の一部、学生が聖カタリナ修道院で偶然発見
- イスラエル考古学者が反ローマ拠点跡から貨幣など発見
- 《メディア展望》
◎WCCの指導層には女性が絶対的に不足
【ジュネーブ=CJC】8月27日から9月2日までジュネーブで開催された世界教会協議会(WCC)中央委で、メアリー・タンナー、オフェリア・オルテガ、バーニス・パウエル・ジャクソンの女性議長三人が、指導層に女性が絶対的に不足していることに懸念と不満を表明した。
10月1日現在では全員が男性になる、として、選考委員会報告書に「地域的、信仰的、性別のバランスを取るよう、そして特に指導層のあらゆるレベルで女性が存在するよう、中央委が意識する」という趣旨を盛り込むよう提案した。
◎ENI通信にWCC中央委が非難と応答
【CJC=東京】エキュメニカル(教会一致)運動を主体に、プロテスタント教会の情報を伝えてきたENI通信が、創設主要団体の世界教会協議会(WCC)中央委員会で9月1日に非難の放火を浴びた。米長老教会(PCUSA)通信のジェリー・L・ファンマルテル氏が中央委の会期中にENI通信に寄稿した記事からその経緯を見た。
中央委は8月26日から9月2日まで、ジュネーブで開催されたが、WCC批判は9月1日のサミュエル・コビア総幹事通常報告に対する発言の中で出された。
ENI通信は1994年に、ジュネーブのエキュメニカル・センターに本部を置くWCC、ルーテル世界連盟(LWF)、世界改革教会連盟、欧州教会会議が出資して発足した独立通信社。
「ENI通信についての多くの不満を聞いている」としてカナダ長老教会牧師のウイリアム・イングラム氏は、「多くの記事は全く不正確...WCCに関して不十分で、歪んだ展望を与える」と断言した。ただ同氏は具体例を全く挙げていない。
これに対しENI通信常議員会議長でもあるデンマーク福音ルーテル教会牧師のアンデルス・ガデガアルド氏は、「こういった批判をこれまで聞いたことがない。それが一般的な感じというのなら、それを知りたいし、常議員会で協議出来る」と答えた。
今年末に総幹事を退任するコビア氏は、「長らくENIのWCC報道に懸念を持っていたが、この18カ月は非常に悪くなった」と語った。
2008年2月、前回の中央委会合の時に、ENI通信は、コビア氏が米国の資格のない大学から博士号を受けた、と報じたが、それは元来ドイツのキリスト教通信EPDが報じたもの。
それを受けた形で、コビア氏は、「個人的な理由」のために、WCC総幹事として2期目を務める意図はない、と述べたことから後継者探索が始まり、8月27日にノルウェー教会のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト氏が次期総幹事に選出された。
「ENIは、その報道が不正確で刺激的だというWCCの懸念に関心を払わなかった」とコビア氏は言う。一例として、同氏の後継者候補の氏名を報じたことを挙げている。
探索委員会は、その手続に従い、氏名を明かさなかった。コビア氏は中央委で、WCC役員によって表明されたENI報道についての懸念はピーター・ケニー「編集長の偶然の不在」に遭遇した、と語った。
しかし、米合同キリスト教会議長のジョン・トーマス牧師(中央委員)は、「私たちを不快にする時でさえ、私たちを分析、評価する独立メディアによってよいサービスを受けている」と発言した。「単なるマウスピースとしてでなく、私たちに責任があると考えている。正確さと客観性を求めるにしても、私たちへの批判を真剣に受け止める必要がある」として、ENI通信はWCCの信頼性に貢献していると言う。
中央委での議論を受けて、ENI通信のケニー編集長は、問題の通信社が、総幹事に予想される候補の名前を報じた後で、すでに秘密でなくなっているのは明らかなのに、WCC役員との会合に呼び出されたと語った。出席したのはWCCの議長、副議長2人、コビア総幹事と広報部長だった。
ケニー編集長は、「総幹事の"偶然の不在"という言葉遣いに驚いた。私は1時間も会談し、彼らの懸念を注意深く聞き、WCCのような国際機関の選考過程における透明性と秘密の問題を議論したのだから」と述べている。
◎韓国政府、イスラム圏での改宗活動規制を検討
【CJC=東京】韓国政府外交通商部が、イスラム圏でプロテスタント各派が行っている積極的な宣教活動の規制を検討している、とカトリック系UCAN通信が報じている。
この7、8月にイラン、ヨルダン、イエメンで韓国民約80人が国外退去処分を受けているが、そのほとんどがキリスト教伝道が理由になっている。これら各国では禁止行為とされている。
外交通商部は8月21日、韓国世界宣教協議会(KWMA)に書簡を送ったが、微妙な問題だとしてUCAN通信に内容を明らかにしなかった。
しかしUCAN通信は、国外退去処分を受けた人、特に中東で活動している宣教師の旅券を無効にするか、再発行を規制する、と書簡で警告したものと見ている。カトリック教会は同様の書簡を受け取っていない。
日刊紙『朝鮮日報』は8月27日、外交当局筋が、積極的な宣教活動の結果、韓国人旅行者まで襲撃されることを懸念している、と述べた、と報じている。
◎ダーウィン描いた映画、進化論への批判強い米では上映見送りへ
【CJC=東京】進化論を確立したとして著名なチャールズ・ダーウィン生誕200年に当たり、その生涯を描いた映画『クリエーション』が英国で制作された。世界各国で上映が予定され、今年のトロント映画祭にも出品されたが、米国では上映される見込みが薄い。
映画は、『種の起源』の筆者ダーウィンが、10歳の愛嬢アニーに死なれ信仰を失うなどの苦悩を描いたもの。キリスト教右派の影響が大きい米国では進化論も厳しい批判にさらされており、上映した際の反発の強さを理由に配給会社は「米国民にとって矛盾が多過ぎる」と配給を拒否した。 この2月にギャラップ社が行った調査では、米国で進化論を信じるのは39%に留まっている。ダーウィンにも「人種差別主義者」との批判があるという。
キリスト教の観点から映画を評論するサイト『ムービーガイド』は、ダーウィンを「人種差別主義者、偏見を持つ人、大量殺人を後世に残した1800年代の自然主義者」と決め付け、その「未熟な」理論がアドルフ・ヒットラーに影響を与え、「残虐行為、人道への犯罪、クローニング、遺伝子工学」などを生み出した、と指摘している。他にも進化論を「1世紀以上にわたる試みにも関わらず、それを支持する証拠のない馬鹿げた理論」と否定するなど米国のキリスト教サイトは盛り上がりを見せている。
製作者ジェレミー・トーマス氏は『種の起源』が公刊されてから150年経ってなおこのような態度が示されることに「これが直面していることだ。2009年に、驚きだ」と語った。
◎シナイ写本の一部、学生が聖カタリナ修道院で偶然発見
【CJC=東京】現存する聖書写本としては最古のものの一つとされるシナイ写本の一部が、エジプトのシナイ半島にある聖カタリナ修道院でこのほど偶然に発見された。
ギリシャの学生ニコラス・サリス氏(30)が、18世紀の文書に関する博士課程の研究のため同修道院で調査をしていた際、綴じ込みの中に隠れていた断片を発見した。
シナイ写本は、大英博物館などの提唱で、断片をつなぎ合わせた写本をネット上に公開する計画がこの7月実現したが、同氏がこの計画に参加していたことから、断片がシナイ写本の一部であることがすぐに判断出来たという。書体と各欄の高さが決め手となり、未発見の部分であることも分かった。
断片はヨシュア記の冒頭部分と一致している。発見は修道院ライブラリアンのジュスティン神父によって確認された。
同神父によると、他の綴じ込みの中にも写本がありそうだが、損傷なしに見つけ出す技術が修道院にはない。シナイ写本を使った綴じ込みは他にも18点はある。
シナイ写本は、皇帝コンスタンティヌスの要求で330年から350年の間に書かれた、という伝承がある。バチカン写本とともに、最古の写本と考えられている。ドイツの学者コンスタンティン・フォン・ティッシェンドルフが1844年に同修道院で発見し、10年間にわたって多数の断片を持ち返った。
さまざまな経緯を経て現在は大英図書館、独ライプチヒ大学図書館、聖カタリナ修道院、ロシア・サンクトペテルスブルグの国立図書館の4カ所に分散、所有されている。同修道院では1975年に新たなページが多数発見され、エジプト政府がこれを保管している。
◎イスラエル考古学者が反ローマ拠点跡から貨幣など発見
【CJC=東京】イスラエルの考古学者が、ローマ帝国支配に対するユダヤ人最後の抵抗とされるバルコクバの反乱の際に、ユダヤ側戦士の避難場所と見られる洞穴から当時の貨幣などを発見した。
ヘブライ大学地理学部洞穴調査隊のアモス・フラムキン教授、ボアズ・ラングフォード教授、バルイラン大学のボアズ・ジッス教授、ハナン・エシェル教授らが発見したものでイスラエル政府自然公園局が支援している。
9月9日、ヘブライ大学で行われた記者会見では、発見された貨幣、鉄製の武具、貯蔵用のカメ、灯油ランプ、水差し、銀のイアリング、ガラス瓶なども展示された。
貨幣は金、銀、銅貨合わせて120枚あり、保存状態は良好という。そのほとんどはローマ帝国のものだが、戦士たちはそれに自分たちのしるしを刻印している。
反乱の際、戦士たちは戦場から遠く離れた荒野に逃れたとされていたが、今回の洞穴はエルサレムの西郊にあり、当時も人口が多かったと見られる場所にも戦士が隠れていたことを裏付けるものという。
《メディア展望》
=カトリック新聞(9月13日)=https://www.cwjpn.com
★日本の教会の宣教課題=信徒に「問い掛け」準備へ=常任司教委員会で決定
★大阪教区=カトリック学校盛り上げるため 初の教員養成会開く=時間をかけて意見交換=逆境をバネに、課題に向き合う
★豪雨被災者支援ボランティアチーム=佐用教会に活動拠点=兵庫
★那覇教区=離島の訪問始める=外国籍信徒の司牧に向け
★耳の不自由な人の=教会内の役割について=バチカンが会議開催へ
★カリタスジャパン=現地プロジェクトを視察=栽培法を改良、収入増に=ケニア・ウガンダで農業支援
=キリスト新聞(9月12日)=https://www.kirishin.com
★WCC中央委=新総幹事にトゥヴェイト氏=ノルウェー教会牧師 初代以来、最年少
★米ユダヤ委員会がコビア氏を非難
★性教育は聖書科でこそ=第2回研究大会=キリスト教学校での調査報告
★AIDS文化フォーラ=「病いと死」の意味問う=宗教とエイズ=プロテスタントの牧師が初登壇
★東北アジアの平和のため=韓日基督議員連盟が創立10周年で礼拝
★ドイツ=教会税廃止の方向へ?=教会法専門家の納税忌避が引き金
★世界福音同盟=人身売買で特別委
=クリスチャン新聞(9月13日)=https://jpnews.org
★弱者配慮する公正社会を=民主党・土肥隆一議員=「政権交代後の日本」語る
★大リーガーから洗礼受けた!
★幻に示され歩む伝道=阿久戸光晴・聖学院大学長が講演=日本伝道の幻を語る会
★日本ホーリネス教団=交通事故逮捕の牧師に停職6か月=教団委員会も「連帯責任」謝罪
★キリスト者医科連盟=野田聖子大臣の靖国神社参拝に抗議
★進化論が日本伝道を困難に=創造論啓発で日韓連携セミナー
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