世界キリスト教情報 第969信(2009.08.17)
- 米聖公会は世界共同体で準会員的役割に、とカンタベリー大主教
- イスラム教との関係重視、とWCC次期総幹事候補トゥヴェイト氏
- 教皇が一般謁見でアジアの台風・日本の地震被害に見舞いの言葉
- ホロコーストへの米国務省対応をバチカン紙批判
- バチカン紙がスイスと米国の銀行取り決めを歓迎
- 『平和のための牧師』会長がカストロ前国家評議会議長と会見
- イタリア中部地震で崩壊した教会のがれきの下からフレスコ画
- 創造博物館が「無神論者」を招待
- 《メディア展望》
◎米聖公会は世界共同体で準会員的役割に、とカンタベリー大主教
【CJC=東京】英国国教会(聖公会)の霊的最高指導者カンタベリー大主教のローワン・ウイリアムズ氏が、米聖公会が同性愛主教の叙階と同性間の結合祝福を容認する決定をしたのを受け、聖公会共同体の中で準会員的な役割を担うことを認めることになろう、と自らのブログに7月27日掲出した声明で示唆した。
米キリスト教週刊誌クリスチャン・センチュリーによると、ウイリアムズ氏は声明で、聖公会がカリフォルニア州アナハイムで開催した総会で同性愛賛成の決定をしたことに「非常に重要な不安がすでに表明されている」と述べた。
「外側の闇に投げ捨てられる懸念はない」が米聖公会などは、同性愛に関する見解が世界共同体を代表するものとはならず、エキュメニカルなまた教派間の対話では後列に座らなければならないことになる、とウイリアムズ氏は語った。
世界共同体の中で多くの教会は同性愛を罪とし聖書的でない、として反対している。
「これらのことを、近い将来に明確にすることに役立つ。ただ考えればそれだけ理想から遠ざかる。それらを分裂とか破門といった破滅的な用語ではなく、単にあるがままに、アングリカンであることの二つのスタイルとして語るのだ」と言う。
ウイリアムズ氏は、2路線型の仕組みは「確実にやり遂げる必要がある」が、共同体内の姉妹教会の間で最近担われたような「宣教と奉仕の協力」といったものも含まれる、と語った。
ウイリアムズ氏の声明に、米聖公会側の反応はまだないものの、常議員のマーク・ハリス氏は自らのブログ「プレリューディアム」で、大主教は「上手に、いつもの含みのあるスタイルで、誰もごまかされないこと、すなわち米聖公会は囲いからさまよい出た、と語った」と述べている。
◎イスラム教との関係重視、とWCC次期総幹事候補トゥヴェイト氏
【ジュネーブ=ENI・CJC】世界教会協議会(WCC)次期総幹事候補の1人、ノルウェー・ルーテル教会のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト牧師(48)が、WCCはイスラム教との関係とイスラム教が優勢な地域のキリスト者を支援することにもっと注意を払うべきだと思う、と語った。「イスラム教が支配的な国で、イスラム教との関係を維持しなければならない教会を孤立させてはいけない」と同氏が8月13日付けの独週刊紙ライニッシャー・メルクールとのインタビューで述べたもの。
「欧州でも、イスラム教徒の隣人との対話の重要性は増している」と言うトゥヴェイト氏はノルウェー教会のエキュメニカル国際関係協議会の総幹事を2002年から務めている。「軽率なコメント」で緊張を増すことのないようにするのが重要だと言う。同氏はWCC次期総幹事候補として調査委員会が指名した2人の中の1人。もう1人の韓国のパク・ソンウォン牧師
WCC・パレスチナ・イスラエル・エキュメニカル・フォーラムの中核グループの共同議長を務めるトゥヴェイト氏は、中東のような地域のキリスト者にとっては、イスラム教徒との交渉では世界教会の支援が重要だ、と指摘した。
◎教皇が一般謁見でアジアの台風・日本の地震被害に見舞いの言葉
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、カステルガンドルフォの離宮で8月12日、水曜恒例の一般謁見を行なった。
集まった巡礼者への挨拶で、教皇は台風による豪雨で深刻な打撃を受けたフィリピン、台湾、中国南東部、そして日本に見舞いの言葉を述べた。特に日本の地震による被害に気遣いを示した。
教皇は、困難な状況に置かれたすべての被災者たちと、亡くなった人々のために祈ると共に、被災地への連帯と援助を呼びかけた。
バチカン放送(日本語電子版)によると、謁見中のカテケーシス(教会の教えの解説)で、教皇は典礼暦で15日に祝われる聖母の被昇天と、現在開催中の「司祭年」を踏まえ、「司祭たちの母」としての聖母マリアをテーマに講話を行った。
教皇は聖母と司祭職の結びつきが受肉の神秘に深く根ざしていると強調、第2バチカン公会議がマリアを「最高永遠の司祭の母、使徒の女王、司祭的役務の保護者」(『司祭の役務と生活に関する教令、18』)として示していることを指摘した。
◎ホロコーストへの米国務省対応をバチカン紙批判
【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)機関紙ロッセルバトレ・ロマノは8月14日付け、ラファエレ・アレッサンドリニ署名論文で、米国務省の官僚主義的な無関心と、ホロコースト(ナチ政権によるユダヤ人虐殺)が行われていることが明らかになってからも18カ月もの間、行動を起こさなかったことを強く批判した。
1948年にイタリアで発行されたユダヤ系雑誌の論文と、故ヘンリー・モーゲンソー財務長官の日記を引用して、論文は、ユダヤ人数百万人を絶滅するというナチの計画について42年8月には国務省は知らされていた、と指摘している。
教皇ピウス十二世を「ヒットラーの教皇」とするのは「根本的な誤り」だとして、アレッサンドリニ論文は、ユダヤ人がバチカンの援助の下で修道院に匿われていた時に、米国務省が行動しなかった、と指摘した。
◎バチカン紙がスイスと米国の銀行取り決めを歓迎
【CJC=東京】バチカン機関紙ロッセルバトレ・ロマノは8月13日、銀行に厳格な守秘義務を課すスイスの銀行に、脱税者の情報提供を求めていた米国とスイス政府が「倫理的金融」契約を締結したことを歓迎した。
同紙は、契約を「税金逃れへの戦いと、管理強化された財務への方向へ大きな進展」と評価している。教皇ベネディクト十六世が示した倫理的金融のモデルへ向けての一歩だ、と言う。
教皇はこの7月、回勅「カリタス・イン・ヴェリターテ」を発表したが、そこでも「しばしば株主の指示のみに答える経営者」に対し、教皇は金融資産の投機的利用を避けるよう呼びかけている。
契約の詳細は明らかにされていないが、税務当局である米内国歳入庁(IRS)は5万2千人の米国人がスイス大手銀行UBSの協力を得て脱税した疑いがあるとして、UBSを提訴していた。UBSは12日、米司法省と和解した。スイス政府の了解の下に行われたと見られる和解には、顧客名簿の一部をIRSに提出することが含まれ、1万人程度の情報が開示されるという。
◎『平和のための牧師』会長がカストロ前国家評議会議長と会見
【CJC=東京】中南米で抑圧されている人たちの正義と自決を支援するキリスト教人権擁護団体『コミュニティ組織のための超教派基金』(IFCO、本部ニューヨーク)/『平和のための牧師』を創設、会長を務めるルシアス・ウォーカー牧師が、フィデル・カストロ前国家評議会議長と会見したことが、同団体の公式ウェブサイトで明らかになった。同牧師は第20回「平和のための牧師キャラバン」がキューバで開催されるのを機会に訪問したもの。ラウル・カストロ議長とも会談した。
フィデル氏が13日に83歳の誕生日を迎えたことを記念してか、カストロ氏の近影2枚も同サイトに掲出された。写真のカストロ氏はほほえみを浮かべ、健康状態も良好な様子だが、以前よりやせた感じ。
今回のキャラバンには130人が参加、市民に人道援助物資132トンを届けることが出来たと言う。
『平和のための牧師』はIFCOの活動の一環。IFCOは1967年以来、人種、社会、経済各面での正義実現のために活動している。92年からは米国のキューバ経済制裁の解除を働き掛けるとともに、同国へ人道援助を始め、これまでに累計3132トンを超えている。
◎イタリア中部地震で崩壊した教会のがれきの下からフレスコ画
【CJC=東京】4月のイタリア中部地震の震源に近く壊滅的な被害を受けたオンナ村で8月11日、崩壊した聖ピエトロ=アポストロ教会のがれき除去作業中に15世紀のフレスコ画が発見された。近郊ラクイラの文化財保護当局が12日、発表した。
フレスコ画は修復作業のため崩れた壁を撤去していた際、彩色された部分が見つかったのだ。調査の結果、石こう壁の下に4平方メートル以上にもなる大きなフレスコ画が隠れていたことがわかった、とAFP通信が報じている。
イエス・キリストの上に聖母マリアを配置し、周りを天使たちが舞って2人の血を集めているという構図・図柄ともに珍しいもので、専門家らは強い関心を寄せている、と言う。
◎創造博物館が「無神論者」を招待
【CJC=東京】米ケンタッキー州ピーターズバーグにある創造博物館は、世界が創世記の記述通りに創造された、という創造説を普及する目的で2007年5月に開設されたが、いわゆる無神論者を見学に招待することを企画した。「世俗学生連合」(SSA、本部オハイオ州コロンバス)がこれに応じ、科学者、学生、世俗論者など304人が8月7日に同博物館を訪問した。
宣教通信ANSによると、同日に発表された声明で、創造博物館の共同設立者マーク・ローイ氏は「誰でも歓迎する。世界史(起源を含め)の、他のほとんどすべての自然史博物館や公立学校の科学授業で示されるものと違う見方を提供しており、キリスト教信仰に懐疑的な人たちの訪問を特に促進する」と指摘、「彼らが創造博物館を見学し、反対側の証拠を調べる批評の能力で、独断的な見解の再評価につながるだろうと確信する」と述べた。
訪問はほぼ順調に進んだが、一部の撮影を止めるようにとの博物館長の要求を拒否したビデオカメラマンが退去を命じられた。また展示物や天体物理学者ジェイソン・ライル氏の講演にあざけりの声も上がったという。
ローイ氏は「その人たちは、たぶん教会に出席することを考えさえしないだろう。彼らはここで福音のメッセージを受け取った!」と述べている。
2700万ドル(約26億円)掛けて設立された創造博物館は開館以来入館者は82万人を超えたという。
《メディア展望》
=カトリック新聞(8月16日)=https://www.cwjpn.com
★64年目の祈り 共に=広島へ 全国、海外から巡礼者
★命の大切さ伝えたい=長谷川神父ら"被爆証言"
★長崎の願い 1000の光に=被爆マリア像先頭に行列
★教皇庁諸宗教対話評議会議長トーラン枢機卿来日=比叡山で平和祈る
★宣教最前線に立つ使命=幼稚園連盟=東京で教職員研修大会
★短期契約社員らが組合(千葉・船橋)=日系 ブラジル人に退職金=きっかけは教会での労働勉強会
=キリスト新聞(8月15日)=https://www.kirishin.com
★田母神氏講演「ヒロシマの平和を疑う」=広島県宗教連盟=市長の「日程変更」要請に賛同
★日本YWCA=「選挙に行こう」呼びかけキャンペーン=「9条」で各政党が回答
★VIP東大=だんな雄作氏、進藤龍也氏らが講演
★国連=キリスト教団体のオブザーバー資格拒否=「会員数非公開」で論議
=クリスチャン新聞(8月16日)=https://jpnews.org
★横浜開国博Y+150=つながりの森開催中=「国内の自然素材=竹を見直そう」=「環境保全に一役」=プロデューサーの牧師提案
★今年も配布=「ムスリム世界のための30日の祈り」=新疆ウイグル地区のためにも=YWAMアジアセンター大阪が発行
★次期政権は拉致問題解決を=横田早紀江さん囲み祈る
★「戦争の神」靖国合祀は恥辱=訴訟支援の弁護士が韓国人遺族の心語る
★02日韓W杯組織委員長 朴世直氏急逝=文化・宣教交流の架け橋に
★バイブルキャンプに新型インフルの影響
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