世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第963信(2009.07.06)

  • 歴史ある教会も不況には勝てず?、米で閉鎖相次ぐ
  • 米長老教会、信徒数減少で新記録
  • 「修道女は修道院に」バチカンが実態調査?
  • バチカン財政は2008年度も赤字
  • パウロの遺骨の破片か、墓の調査で発見、と教皇
  • 比南部のカトリック教会付近で爆発、5人死亡
  • オバマ大統領一家が礼拝守る教会は?
  • 「英国がイスラム国家になる」とジャーナリスト
  • ソマリア過激武装勢力が子ども2人の首はねる
  • 改宗ユダヤ人所有の製パン会社を、イスラエル最高裁が「認証」
  • 《メディア展望》


◎歴史ある教会も不況には勝てず?、米で閉鎖相次ぐ

 【CJC=東京】米テキサス州ダラスの『マンガー・プレイス合同メソジスト教会』が6月28日の礼拝を最後に閉鎖された。96年前に教会が立てられた時、ダラスは活気ある町で、教会も一時は市内最大規模の一つに数えられた。。
 欧州に発注したステンドグラスや精巧に作られた木製の講壇を誇りにしていた。
 これまでにも難局に直面したこともあったが、今回の不況の打撃が大きかった。教会員の中に職を失い、家も手放さなければならなくなり、教会に顔を見せなくなったのだ。一時は2000人いた信徒が100人にまで減っている。
 建物も古くなれば修繕費もかさむ。空調施設は3年前にに壊れたままだ。
 少数とは言え、残された会員の中には3世代にわたって礼拝を守り、結婚式や子どもの洗礼など教会に結び付いた生活を送って来た人もいる。
 ハイランド・パーク教会が改修に乗り出し、1年掛けて修復、再利用しようとしているが、空調関係だけで30万ドル(約3000万円)必要だという。
 一方、オハイオ州ローズローンの『悲しみの聖母カトリック教会』も同日最後のミサを捧げ、68年の歴史に幕を閉じた。教会から遠ざかっていた信徒たちも集まり名残を惜しんだ。
 2003年には241人いた教会員が今では166人に減り、ミサ出席者も100人を割っている。司祭不足もあいまって、シンシナチ大司教区は教会員の意見も聞き、閉鎖を決めた。
 同大司教区では2005年から教会閉鎖が始まり、これで4件目という。


◎米長老教会、信徒数減少で新記録

 【CJC=東京】米長老教会(PCUSA=本部ケンタッキー州ルイビル、信徒数230万人)は2008年に信徒数が6万9000人減少した。宗教専門RNS通信が報じた。
 同派が1983年に結成されて以来、最大の減少幅。


◎「修道女は修道院に」バチカンが実態調査?

 【CJC=東京】米紙ニューヨーク・タイムズは7月1日付けで、バチカン(ローマ教皇庁)が米国の修道女の実態について調査を始めている、と報じた。異端審問の対象とされるのではないか、と驚き、戸惑いが広がっているという。
 同紙は『イエズスの聖心の使徒』会の総長メアリー・クレア・ミレア修道女が女子修道会の調査をするよう任命された、と報じた。
 修道女は米国でもカトリック教会形成の陰の働き手。学校や病院を開設し、小教区(各個教会)を活気付ける存在。ただその数は1965年の18万人から今では6万人にまで減少している。
 今回の調査を、バチカンが米国の教勢減退に注意を払ってのこと、と歓迎する向きもあるが、現代社会に対する自らの召し理解を締め直そうとするのが狙いではないか、との懸念が広がっている。
 第2バチカン公会議以後、修道女の中には制服着用を止め、修道院を出て自活したり、学界などで専門職に就いたり、特定の社会・政治運動、貧困者への奉仕団体、霊性推進団体などに関係する人も出ている。中には、女性や既婚者の聖職叙階など教会改革を目指す組織で活動する人もいる。
 今回の調査は「使徒的訪問」と呼ばれるが、バチカンは女子修道会の運営の質を調査するという説明に留まっている。2011年半までに340修道会の実態と改善提案をクレア修道女は提案する予定で、すでに127修道会の総長と1対1で会談したという。
 調査は、教皇庁奉献・使徒的生活会省長官のフランク・ロデ枢機卿が指示した。同枢機卿は昨年、米国の修道女の中に、教会から離れた道を選んだものがいる、と非難していた。
 「使徒的訪問」は重大な逸脱行為があると判断された時に行われている。性的虐待がらみで米国の神学校、創設者の性的非行や金銭上の問題で修道会『レジョナリーズ・オブ・クライスト』などがその例だが、米国の修道女を対象にしたことには驚きの声が上がっている、とタイムズ紙は報じた。
 カリフォルニア州バークリーのイエズス会神学校で新約聖書と霊性を講じていたサンドラ・M・シュナイダーズ修道女は、バチカンが修道女を「教会の労働力と捉えている」と見ている。同氏は調査に協力しないよう友人に訴えた。初めは電子メールで少数への要請だったが、すぐに複写、流布され公開の形となった。 


◎バチカン財政は2008年度も赤字

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所は7月4日、2008年度は収入2億5390万ユーロ(1ユーロは約135円)、支出2億5480万ユーロ、差し引き91万ユーロの赤字だった、と発表した。ただ聖座部分の赤字幅は前年の906万ユーロから大きく改善している。支出の多くは教皇庁の事務経費が占めているが、バチカン報道などメディア部門の支出が負担になっている。
 バチカン市国の部分は、特に経済不況の影響を受け、1530万ユーロの赤字。07年の670万ユーロ黒字から大きく後退した。文化財の修復や保安関係支出など削減出来ないものが多かったと見られる。
 世界の教会から教皇のために直接捧げられる「教皇献金」も5400万ユーロと前年より減少した。主な献金は米、伊、独の信者だが、AFP通信は献金者の数が多い国として韓国と日本を挙げている。


◎パウロの遺骨の破片か、墓の調査で発見、と教皇

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は6月28日、ローマ城壁外のサンパウロ大聖堂で夕べの祈りを行った際、説教の中で、使徒パウロの墓とされている石棺から古代の人骨の破片が発見されたことを明らかにした。
 教皇は、1年間に及ぶ聖パウロ祝賀行事の最終日にあたる同日、同聖堂の祭壇の下にある墓で行われている科学的調査について触れたもの。
 これまで一度も開けられたことのなかった石棺に、微小な穴を開け、特別な機器を通して調査、金糸を織り込んだ緋色の高価な麻布と、青い麻布の形跡、および少量の赤色の香と、たんぱく質と石灰質の成分が検出された。また非常に小さい骨の破片は炭素14による年代測定の結果、1〜2世紀に生きた人のものと診断されたという。
 調査結果は、墓に葬られているのは使徒パウロであるという言い伝えを確認するものと思われる、と教皇は述べた。
 使徒パウロの遺体はペテロと共にアッピア街道の地下墓地に埋葬され、サンパウロ大聖堂が建てられたときにその下に移されたとされ、祭壇の下に遺骨があると信じられてきた。
 調査をバチカン(ローマ教皇庁)は2002年に許可、06年12月に祭壇の下に石棺があることをバチカンの考古学者が発表、なお科学的な調査を行っていた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はパウロ年の終了にあたり、使徒パウロを通してイエスを知り、彼のように福音に照らされ変容させられることは、常にキリスト者の生活に必要なことであると説き、これからも同使徒と共に歩んでいくよう信者を励ました。


◎比南部のカトリック教会付近で爆発、5人死亡

 【CJC=東京】フィリピン南部ミンダナオ島コタバト市中心部にあるカトリック教会『無原罪の御宿り大聖堂』脇で7月5日朝、日曜朝のミサの直後に爆発があり、国軍によると5人が死亡し、40人が負傷した。死者の内2人は大聖堂の警備員。
 地元の国軍報道官は、イスラム武装勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」による犯行として非難している。ただMILF側は犯行を否認している。
 MILFと国軍は昨年8月からミンダナオ島中部で武力衝突を断続的に続けている。


◎オバマ大統領一家が礼拝守る教会は?

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領一家が日常礼拝を守る教会が、大統領の別荘があるキャンプデービッドの『エバグリーン・チャペル』だ、と米週刊誌タイムが報じたのをきっかけに、全米のメディアの報道合戦が過熱した。
 ホワイトハウスは6月29日、大統領一家は家族で通う教会を捜してはいるが、まだどこと決めたわけではない、と反論した。
 ただ『エバグリーン・チャペル』は教派に属していない単立の小教会で、礼拝の出席者数も少なく、一家が静かに礼拝を守るのには適している。キャンプデービッド自体が都会から離れた閑静な所。タイム誌は、大統領がさらしものにならない形で礼拝を守りたいと考えている、と伝えた。
 大統領が就任直後にワシントンのバプテスト教会を訪れた時には、寒さをものともせず、3時間も前から列が出来た。大統領を見たいという「よそ者」に会堂を占拠され、古くからの教会員は文字通り厳寒の戸外に締め出された。大統領が聖餐を受けに立ち上がると、携帯電話のカメラで撮影する人もいた。
 大統領は7月2日、ホワイトハウスでの記者会見で、「今年後半には」決めたいとして、キャンプデービッド滞在中の礼拝出席は続けるが、ワシントンで適切な教会を見つけるのは困難だ、と語った。「1教会に加入するより、いくつかの教会に順次出席することになるだろう」とも述べている。


◎「英国がイスラム国家になる」とジャーナリスト

 【CJC=東京】米宣教専門アシスト・ニュースによると、ジャーナリストのピーター・ヒッチェンス氏がロンドンのプレミア・キリスト教ラジオに、「英国がイスラム国家になる」こともあり得る、と語った。同氏自身は英国国教会の信徒。そう主張する理由は、イスラム教側の問題というより、キリスト教が余りに頼りないからだ、と言う。
 同氏は、英国社会の基盤としてのキリスト教が「攻撃されはなし」で、このままではイスラム教が支配的宗教になる、と放送で予想した。
 「問題は、イスラム教がそのように意図して活動したり、陰謀したから、そうなるのではないことだ。今そのことについて考える人はいても僅かだ。英国のキリスト教が余りに頼りないからそうなるのだ」と言う。


◎ソマリア過激武装勢力が子ども2人の首はねる

 【CJC=東京】ソマリアの過激武装勢力『アルシャハーブ』が子ども2人の首をはねた。同国キリスト教指導者に関する情報提供を拒否したキリスト者ムサ・モハンメド・ユスフ氏(55)の子息。米宣教専門コンパス通信が7月1日報じた。ユスフ氏は現在も拘束中という。
 子息フセイン・ムサ・ユスフ(12)、アブディ・ラーマン・ムサ・ユスフ(11)、アブドゥラヒ・ムサ・ユスフ(7)の3人は2月21日、アルシャハブがソマリアのキズマヨ郊外のヨンデイ村の自宅を襲撃した際に拉致された。年長の2人はすぐに首をはねられ、年下のアブドゥラヒさんは事態を知らせるためか釈放された。


◎改宗ユダヤ人所有の製パン会社を、イスラエル最高裁が「認証」

 【CJC=東京】イスラエル西部アシドッドでキリスト教に改宗したユダヤ人(メシアニック・ジュー)が所有している製パン会社が、ユダヤ人に向けてパンを製造することが認められた。宣教団体『国際キリスト教大使館』(ICEJ)が伝えた。
 イスラエル最高裁が6月29日、ユダヤ教正統派の主任ラビに、問題の製パン会社に「コーシャー」を与えるよう命じた。
 「コーシャー」は、ユダヤ教の食事規定により、「食べてよい」と認定された食品を意味する。ただ今回の裁決に至るまでの争いは長期にわたっており、今後正統派側と司法との対立が激化する可能性もある。
 メシアニック・ジューは米国に25万人、イスラエルには6000人から1万5000人が存在する、と見られている。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(7月5日)=https://www.cwjpn.com
★沖縄慰霊の日=過去教訓に平和の道を=戦跡巡礼し、祈りと誓い
★G8サミットに司教協が書簡=「貧しい人守り、援助を」
★自立促す「人」を育てる=支援先でのアニメーター養成=カリタスジャパン 成井神父に聞く
★若者の「性の悩み」と実態=カトリック校教師らが勉強会=カリタスジャパン
★若手俳優らの新劇団=「蟻の街のマリア」=旗揚げ公演に選ぶ
★強制連行の歴史を掘り起こす=金蓬沫さんへ=アロイジオ賞

  =キリスト新聞(7月4日)=https://www.kirishin.com
★カトリック司教協議会が公式見解="聖職者は裁判員辞退を"=信徒は「良心に従って対応」
★本紙連載「出逢い」出版で教え子ら祝う=武田清子氏="出会いの恵みに感謝"
★キリスト教出版関係者と牧師が懇談=東京=出版不況の波にどう対峙
★『旧(異字体)新約全書』=日本最初の1卷本発見=聖書協会が確認=山上弘氏の所蔵=150年大会でも展示
★ヴォーリズ建築=有形文化財へ答申=関学時計台など116件
★CCC修了生が「クラブ」発足で記念会="老いの生き方"探る

  =クリスチャン新聞(7月5日)=https://jpnews.org
★エリヤ会(日本変革プロジェクト推進協議会)=6年間の活動報告資料集を出版
★アジア最大のゴミ山の下で生きる人たち=フィリピンのジュリアス牧師が現状を来日講演
★ハンセン病差別は消えたか?=元患者の名誉毀損が課題
★ホーリネス弾圧記念聖会=カトリック平林冬樹司祭を講師に、殉教者に注目
★日本YWCA=改憲へのシナリオ強権的推進に抗議
★「北米アングリカン教会」創設=米聖公会離脱グループ10万人が新組織


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