世界キリスト教情報 第960信(2009.06.15)
- 米改革派教会が『ベルハル告白』を採択
- 韓国で「旅する神学」が生まれるか
- 米聖公会で選出された主教が批准の必要数得られず
- ネパールのキリスト者は過激派の国外退去要求を拒否
- 米のメガチャーチ、45歳未満層に人気
- クリスタル・カテドラルはシュラー氏長女が主宰
- ナチに反発したジャーナリスト、クローカー氏死去
- 《メディア展望》
◎米改革派教会が『ベルハル告白』を採択
【CJC=東京】米改革派教会(RCA)は6月8日、24年にも及ぶ検討の後に『ベルハル告白』を一致の基準の一つとして採択した。ハイデルベルク教理問答、ドルト信仰箇条、ベルギー告白などの歴史的な基準に合わせることになる。
総会は、同告白と関係した様々の提案への認識を深めるため分科会に分かれ協議した。その後2時間にわたって賛否両論が交わされ、立ち上がり黙祷した後に投票した。
これで同派の『教憲書』に『ベルハル告白』も加えることになるが、それにはクラス(教区)46の3分の2以上の批准が必要とされている。総会では「ベルハルと私たちの召し」という文書を教会、クラス、大会に推奨する提案も採択された。
総会は次期総会議長にニューヨークのブライトン・ハイツ改革派教会牧師のジェームス・シーウッド氏を、副議長にオハイオ州ブルンスウィック改革派教会牧師のドン・ポースト氏を選出した。
◎韓国で「旅する神学」が生まれるか
【CJC=東京】韓国慶山の嶺南神学大学(長老派系)のジョン・ギョンホ教授は、学生たちをモンゴルの遊牧民の生活に触れさせたり、ベトナムの都会の貧困層と生活を共にさせたりする中で、「旅する神学」とでもいった新しい潮流を生み出せるのかも知れないと思うようになった。世界教会協議会系のENI通信が報じた。
「これは生活の場から学び取るもので、観光ではない」とジョン氏は、5月21〜31日にジュネーブで開かれた世界改革教会連盟(WARC)常議員会で述べた。改革派教会が経済・環境問題に応答する姿勢の中でその神学教育手法を説明したもの。
モンゴルでは、学生たちは、その地域のエコロジーを重んじる遊牧民の生活様式から学んだ。「彼らが出すゴミは6カ月で小さなビニール袋一つに収まってしまった」とジョン氏。「米を料理する時には、幾粒かを地に蒔いていたが、それは祖母なる地球に感謝することだった」。
ジョン氏は、学生たちが文字通り手を汚すことで神の創造に対して配慮することを学んだ、と報告した。「現地の人たちが、私たちは馬に乗れず、牧畜には役立たないと分かると、土地を肥沃にするために馬糞を集める役を私たちに課した」と言う。
そのような環境への配慮にも関わらず、飲用水の汚染が進み、腎臓に障害を持つ人が急増している。学生たちは専門家を連れて来る、と誓って現場を離れた。
ベトナムのホーチミン市に向かったグループは、現地の教会に、ベトナム戦争で果たした韓国の役割について謝罪するという使命を担っていた。
ジョン氏は、1968年から71年にかけて韓国の将兵が米国と共に戦ったことが韓国ではあまり知られていない、として「戦闘への参加が韓国が経済的に発展するのに貢献した」と言う。「私たちは今では富裕国になったが、それは私たちがやって来たことのためだ。だから私たちは謝らなければならない」。
学生たちはベトナムの教会に招かれ、そこで謝罪したが、韓国のキリスト者が謝罪したのは初めてのこと。
訪問先の地域社会での貧困を見て、学生たちは食事を減らし、食費を貯めて、困窮者のための住宅建設計画に1500米ドル(約15万円)相当額を捧げた。それで3棟建設出来る。
ジョン氏は「私の仕事は未来の世界で働く神学生を訓練することだ、これらの経験は、彼らの神学がこれから展開して行くのに役立つだろう」と語っている。
◎米聖公会で選出された主教が批准の必要数得られず
【CJC=東京】米聖公会ノーザンミシガン教区ではケヴィン・スー・フォレスター氏がこの2月、主教に選出された。同派では主教と111の地区常置委員会の多数が選出を批准するまでは選出が有効とされない。
6月5日、『アーカンサス・デモクラット=ガゼット』紙が報じたところでは、56番目の常置委員会が「同意しなかった」。全体の意向が明らかになるのは7月末となっているが、同教区常置委員長のリンダ・パイパー氏は「こうなることは分かっていた。だめになっても驚かない」と、必要な批准を得るには苦戦だったことを認めた。
◎ネパールのキリスト者は過激派の国外退去要求を拒否
【CJC=東京】カトリック系CNA通信は、ネパールで過激派が国内のキリスト者約100万人に国外退去を要求していると報じた。教会は暴力の脅しに屈しない構えを強めている。同国で教会に課された使命に何も変化はない、と教会側は強調している。
先ごろ、武装派が首都カトマンズ近郊ラリットプルのカトリック大聖堂を5月23日爆破、死者2人、負傷者14人を出したが、教会側が抗議デモを31日に行った際、『ヒンズー・ネパール防衛軍』は犯行の責任を認めた声明を配布していた。それには「100万のキリスト者は出国せよ」と書かれていた。
キリスト者は全人口の2・4%を占めているが、カトリック者は7000人。カトリック教会は貧困者、病者、疎外された人々への社会奉仕を行っており、市民からは歓迎されている。
◎米のメガチャーチ、45歳未満層に人気
【CJC=東京】米国では「メガチャーチ」が若手成人層にとって魅力的な存在になっており、礼拝に来る人が増えている。「メガチャーチ」のほとんどがプロテスタント、特にペンテコステ派系だが、特定の教派に属さないものが多い。
メガチャーチ12教会に出席している2万4900人の回答を元にした調査をテキサス州ダラスの『リーダーシップ・ネットワーク』とハートフォード神学校宗教調査研究所(コネチカット州)が行い、その結果を6月9日発表した。
2000人以上が毎週礼拝に出席する所を「メガチャーチ」と規定すると、その礼拝に参加する成人の約62%が45歳未満。全教会規模の35%と比較して、若手のメガチャーチ指向が目立つ。また3分の1近くが未婚の独身者。プロテスタント全体では10分の1に留まっている。
「メガチャーチ」出席者の6%はこれまで礼拝に出たことがない。地域の他の教会から替わった人が44%、遠い教会から転会した人が28%、しばらく礼拝から遠ざかっていた人は18%だった。
「これまでの礼拝ではなく、現代的、大規模、順序も専門的でハイテクも駆使しているような新しい体験をしたい人をメガチャーチが引き付けている」とスコット・スンマ氏。ハートフォード神学校で宗教社会学を講じている。メガチャーチの急成長ぶりに着目して研究を進めて来た。「あなたの思っている人ではない=アメリカのメガチャーチに出席する人の真相」という本の著者。
「3割近くは以前には遠くにある教会から来ている。コミュニティに加わり、伝道、小グループなどにすぐにも関わりたい人たちだ」と」言うスンマ氏。メガチャーチの参加者の多くが他人を一緒に礼拝に誘うことに驚かされたと言う。この1年間に誰も誘わなかったと言う人は13%に留まっている。
『ハートフォード宗教調査研究所』の調査では、いわゆる主流派のプロテスタント教会出席者の45%は誰かを誘うことはしない。
一方で、メガチャーチに接触した人は、理念として作られた計画に従うよりも個人的なニーズを充足させようとしており、その例としてメガチャーチ出席者の半分近くはそこでボランテア活動には加わらず、また4割弱は教会活動の『中心』にはならないことが分かった。」
スンマ氏はハートフォード神学校で宗教社会学を講じている。メガチャーチの急成長ぶりに着目して研究を進めて来た。今回の調査は、メガチャーチ12箇所に出席している2万4900人の回答を元にしたもの。
◎クリスタル・カテドラルはシュラー氏長女が主宰
【CJC=東京】米カリフォルニア州ガーデングローブの『クリスタル・カテドラル』は教会員1万人の「メガチャーチ」。1955年に同教会を設立したロバート・H・シュラー牧師(82)が、その全宣教活動を長女のシーラ・シュラー・コールマン氏に委ねる、と6月7日の礼拝の際に発表した。
コールマン氏は、シュラー氏の説教で有名となった伝道番組「アワー・オブ・パワー」にも毎日曜登場することになるが、説教をどの程度担当するかは未定、とマイク・ネイソン報道担当は語った。同番組は今では世界中に数百万人の視聴者がいるという。
シュラー氏は2006年に後継者としてロバート・A・シュラー・ジュニア氏(54)を指名したが、親子間の対立から息子が昨年に突然独立、独自のテレビ番組を立ち上げる準備を進めている。
シュラー氏は南カリフォルニアのドライブイン劇場で伝道を開始、マーケティング戦略を駆使した伝道と魅力的な説教で、米国最初のメガチャーチと呼ばれるまでに成長させた。本拠にしたクリスタル・カテドラルは、設計を著名な建築家フィリップ・ジョンソンに依頼、ガラス張りの巨大な建築としても話題になった。
◎ナチに反発したジャーナリスト、クローカー氏死去
【CJC=東京】ナチが支配した第三帝国時代にドイツを脱出したジャーナリスト、ブルーノ・クローカー氏(93)が米ニュージャージー州スコーカスの病院で6月11日死去した。1916年ベルリン生まれ。
ジャーナリストとして活動する一方、反ヒトラー集団に入っていることが秘密警察ゲシュタポに知られていたことが分かり、デンマークに脱出、その後は中国に渡り、南京でロンドン・デイリー・エクスプレス、INS通信の特派員を務めた。
第二次大戦後の1950年に渡米、『教会世界奉仕』に協力、さらに米教会協議会、世界教会協議会などの報道担当として活躍した。
「その生涯は、書かれなかったが、偉大な小説そのもの」と友人のフレッド・マイヤー氏は言う。
《メディア展望》
=カトリック新聞(6月14日)=https://www.cwjpn.com
★静岡・浜松教会=ブラジル人子弟50人受け入れ=信徒会館に学校開設
★『教会の社会教説綱要』出版へ=M・シーゲル神父に聞く=社会とのかかわり 信仰に不可欠
★「司祭年」開幕へ=司祭への愛と敬意示す年に
★日本女子修道会総長管区長会総会=社会と教会の現状見直す
★北朝鮮の核実験に抗議声明=正平協
★大阪教区立聖トマス大学=来年度 学生募集停止へ
=キリスト新聞(6月13日)=https://www.kirishin.com
★大正大学=宗教教育の可能性探る=『世界の宗教教科書』DVD制作
★第3回神学フォーラム今月開催=日韓に加え中国からも参加
★外務省主催「難民」シンポで緒方貞子氏=「人道的精神で対応を」
★金城学院大・同志社女子大が包括協定=学生、ゼミ、教職員の交流も
★朝祷会全国大会=北海道・函館="祈りで一つに"
★スウェーデン教会=教区監督に公然同性愛者選出=世界のルーテル派教会で初
=クリスチャン新聞(6月14日)=https://jpnews.org
★四川震災1年=「愛心大使」熱烈歓迎=被災地コンサートで「心の支援」
★気候変動で移住の脅威に声明=太平洋教会協議会「行動」呼びかけ
★第24回JEA総会=伝道会議7年ごと開催に=継続性を重視、常設準備室を設置
★「伝道する教会」が「世界政策」を=東神大学長近藤勝彦氏講演=現代の社会倫理にも福音が中心
★日本イエス・キリスト教団=新委員長に鎌野善三氏
★日本ナザレン教団=牧師謝儀水準を引き上げ=委員会予算は10%削減
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