世界キリスト教情報 第958信(2009.06.01)
- 米カンザス州の教会で後期中絶クリニックの医師殺害
- 米クリスチャニティ・ツデーが不振
- 北朝鮮の核実験にWCC総幹事が「大きな衝撃」
- ツツ大司教の演説にスコットランド教会総会は喝采
- ウィキペディアが「サイエントロジー教会」項目の編集禁止
- オバマ大統領、駐バチカン大使に解放の神学者起用
- バチカン放送が設立80年後にCM開始
- 教会救援・開発2団体が来年3月に統合
- 《メディア展望》
◎米カンザス州の教会で後期中絶クリニックの医師殺害
【CJC=東京】米カンザス州ウィチタの『レフォメーション・ルーテル教会』(ELCA=福音ルーテル教会)で5月31日午前10時過ぎ、ジョージ・ティラー医師(67)が礼拝中に殺害された。ティラー氏は全米でも数少ない後期中絶を取り扱う診療所を運営しているところから、1986年には診療所の屋根に爆弾を仕掛けられたり、91年には反対派によって数週間封鎖されるなど攻撃され、93年には自身銃撃を受け負傷している。
犯行の3時間後に51歳の男がカンザスシチーで逮捕された。当局はその身元を明らかにしていない。
妊娠中絶の合法化を支持する立場のバラク・オバマ大統領は「教会で医師が殺害されたことに衝撃を受け、激しい怒りを感じている。中絶は大きな意見の違いがある問題だが、暴力で解決することはできない」との声明を発表した。
◎米クリスチャニティ・ツデーが不振
【CJC=東京】著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏が1956年創設した福音派出版社『クリスチャニティ・ツデー・インターナショナル』(PTI=本社イリノイ州キャロル・ストリーム)が経済危機のあおりを受け、『ツデーズ・クリスチャン・ウーマン』『キャンパス・ライフ・クリスチャン・カレッジ・ガイド』の2雑誌、付録雑誌『グリンプス』、ニュースレター『チャーチ・オフィス・ツデー』の廃刊を決めた。従業員30人も解雇する。
CTIのハロルド・スミス社長は「廃刊は必要な決定」として「出版界の大嵐の最中に企業であることを直視した。賜物として受け止めていた従業員に与えた衝撃、また教会全体に与えた衝撃は、私と残された全員にとって真剣に受け止めなければならない現実だ」と語った。
昨年秋、『ツデーズ・クリスチャン』誌を『シグニフィカント・リビング』社に売却、この1月には『イグナイト・ユア・フェイス』と『マリッジ・パートナーシップ』の2誌を廃刊するなどの対策を打ち出していたが、ついに『ツデーズ・クリスチャン・ウーマン』という有力誌の廃刊にまで追い込まれた。これで発行部数15万の旗艦誌『クリスチャニティ・ツデー』など有料メディアは9になる。同社のウエブサイトには月間250万のアクセスがあるという。
◎北朝鮮の核実験にWCC総幹事が「大きな衝撃」
【ジュネーブ=CJC】国際社会で核兵器廃絶構想が再燃している最中に北朝鮮が核実験を行なったことは多大な懸念を引き起こした、と世界教会協議会(WCC)のサミュエル・コビア総幹事が5月25日語った。
「WCCは北朝鮮の核実験は大きな衝撃を受け、北朝鮮と周辺国の人々のことを深く懸念する。国際問題で核兵器を用いる余地はない」と言う。
◎ツツ大司教の演説にスコットランド教会総会は喝采
【CJC=東京】南ア聖公会のデズモンド・ツツ引退大司教は、エジンバラでのスコットランド教会総会で演説し、同性愛者も教会に場がある、と語った。
同派は23日に公然同性愛聖職の任命を阻止する提案を否定、スコット・レニー氏(37)の任命を326票対267票で承認しているように、同性愛聖職の問題で深刻な対立に直面している。反対派の中には離脱して『スコットランド自由教会』への加盟を検討する動きも出ている。
ノーベル平和賞受賞者でもあるツツ氏が15分間の演説が終えると、会場は喝采の渦に巻き込まれた。「私は、人々が性的志向のように、自らは何もなし得ないような問題のために抑圧される時には、それに加担することは出来ない」と語った。
◎ウィキペディアが「サイエントロジー教会」項目の編集禁止
【CJC=東京】参加者が項目を編集したり作成することで内容を真実に近づけることをうたったインターネット百科事典サイト『ウィキペディア』。「サイエントロジー教会」関連の項目について編集が禁止された。
同教会に支持的か批判的かで、書き換えのたびに内容が大きく変化する、いわゆる「編集合戦」が長く続いていた。ウィキペディアの仲裁委員会が5月28日、同教会やその関連団体などのコンピューター・アドレス、また反対派からのオンライン編集を不可能にする決定を下した。
同教会をめぐる「編集合戦」は、賛否の立場の見解の押し付け合いで、ウィキペディアが目指す中立的な編集方針が揺るがせた、というのが仲裁委員会の判断。さらに同教会に関して中立的な書き込みをすると賛否両派から攻撃され、編集が思うように進まない事情も今回の判断の背後にあったと見られる。
同教会はトム・クルーズやジョン・トラボルタといったハリウッド・スターも入信していることで知られている。ただフランスでは組織的詐欺の罪で同教会フランス支部幹部の公判が始まっており、同教会活動の全面禁止命令が下される可能性もある。
◎オバマ大統領、駐バチカン大使に解放の神学者起用
【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領は5月27日、駐バチカン大使にキューバ出身の解放の神学者ミゲル・H・ディアズ氏(45)を起用する、と発表した。ハバナ生まれ、ミネソタ州カレッジビルの聖ヨハネ大学と聖ベネディクト大学准教授。イタリア語、スペイン語、フランス語に堪能という。神学校協会の認可基準検討タスクフォースにも任命されている。神学者カール・ラーナーの研究で知られ、著書は『人間であること=ヒスパニック系のそしてラーナー派の展望』(オービスブック、2001年)など多数。
ディアズ氏は大統領選挙に際しオバマ氏に1000ドル(約10万円)を献金するなどオバマ支持は明確。ディアズ氏の選定は、オバマ政策を無条件に支持したカトリック者に対する最初の見返りと見られている。ディアズ氏自身は「神学についての助言者として招かれたことに答えた」としているものの、民主党の活動家アレクシア・ケリー氏がオバマ支持のために組織したグループ『コモン・グッドのために連帯するカトリック者』のメンバー。
カトリック系CNA通信は、ディアズ氏が「わが国と聖座(バチカン)との間の外交的な懸け橋になりたい。上院で承認されれば、前任者の働きを引き継ぎ、聖座との間の25年にわたる優良な関係を維持する」と語った。
ディアズ氏の主要な関心は「インクルーシビティ」(包括性)にあるところから、カトリック左派の支持があり、今回の指名に際しても、『カトリック・ユナイテッド』などオバマ支持のカトリック者が即座に歓迎の意向を表明している。「あらゆる段階での生命の守り手」とされ、妊娠中絶を強く支持するカスリーン・セベリウスの厚生長官指名を支持する声明に署名している。
◎バチカン放送が設立80年後にCM開始
【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)のラジオ放送『バチカン放送』が1931年の設立以来、初めてコマーシャルを流すことになった。
2006年にフェデリコ・ロンバルディ報道官はラジオ聴取者は地域的に散在し、言語も多様で、民族的にもさまざまだから、広告主への訴求力がないのではないか、と語っていた。しかし同報道官は5月22日、広告を受け入れる、と発表した。イタリアのANSA通信が報じた。
26日に行われた記者会見では、広告は試験的なもので、通常番組の間に放送される、と明らかにされた。最初の広告はイタリアの電気器具『ENEL』社のもので、7月6日から9月27日まで5言語で放送される予定。
バチカン放送はジャーナリスト約200人と契約、ニュースの他、宗教行事や音楽番組を全世界に47言語で放送している。ANSA通信によると、年間約2140万ユーロ(約28億円)に上る経費がバチカン財政を圧迫していた。
◎教会救援・開発2団体が来年3月に統合
【CJC=東京】キリスト教会を基盤にした救援・開発団体が並立し、しかも名称まで似通っていたことから、一本化への声が高まったのを受け、2010年3月、マラウィで『ACT・アライアンス』として発足することになった。
問題の団体は『ACT・インターナショナル』と『ACT・デベロップメント』。両者に共通する「ACT」は「アクション・チャーチ・ツゲザー」(教会一致行動)の略。本部もジュネーブにあり、プロテスタント各派と正教会の関係団体によって構成されている。
新設される『ACT・アライアンス』は教会や機関・団体150以上で構成され、20億米ドル(約1800億円)規模の募金を行う。スタッフはボランテアを含め4万人という大組織。
ジンバブエの救援団体『クリスチャン・ケア』のエリザベス・カセケ氏は「興奮している。エキュメニカル運動のために旗を掲げる時だ。ACT・アライアンスでは南半球からの声が聞かれ、そこのテーブルに私たちも座るのだ」と語った。
これまで『ACT・インターナショナル』は全世界規模で人道援助活動を行ってきたが、最近はスリランカ、ガザ、ジンバブエ、アフガニスタン、コロンビア、インドなどの活動を強化している。『ACT・デベロップメント』は長期開発問題に力を入れ、マラリア発生地域などで活動している。
『ACT・インターナショナル』のジョン・エンドゥナ氏は「ACTのすばらしいところは全世界で教会と協力していることだ。ほとんどの社会基盤が崩壊したところでも、私たちの活動に協力してくれる教会が残っている。独特なネットワークなのだ」と言う。
《ですくめも》
◇このほど列福されたペトロ岐部の殉教をめぐる話を聞く会を日本基督教団中目黒教会(東京)が6月20日(土)午後2時から同教会で開催する。同教会員の小中陽太郎氏が上智大学の川村信三教授に聞く形。同名のオペラ(原加寿子作曲)の一部も鑑賞する。
《メディア展望》
=カトリック新聞(5月31日)=https://www.cwjpn.com
★新潟教区=列福の喜びあらたに=山形・米沢の殉教地で感謝ミサ
★ハンセン病医療の先駆け=神山復生病院=創立120年祝う
★内戦のスリランカで司教ら=「戦争は終わっていない」
★大阪教区=「国際協力の日」に1500人="雨にもインフルにも負けず"集う
★群馬・太田教会=失業者の生活支える=不況、多国籍信徒が協力
★長崎=茶道表千家の家元=大浦天主堂で献茶
=キリスト新聞(5月30日・休刊)=https://www.kirishin.com
=クリスチャン新聞(5月31日)=https://jpnews.org
★集会自粛判断は教会が=日本同盟基督教団が事前対応=新型インフル国内感染拡大
★同盟基督=集会自粛要請に備え=ガイドライン諸教派に公開
★エジプト=豚 全頭処分開始
★日本プロテスタント宣教150周年記念大会まで40日=「諸派が一つに」決起祈祷
★宣教師の活動まで管理?=入管法改定案反対で共同声明=国家が宗教介入 警戒
★難局に日銀総裁就任=神の召しと受け止め=速水優氏逝去=礼拝で神と対面し仕事
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