世界キリスト教情報 第952信(2009.04.20)
- 香港の陳日君枢機卿が引退、後任は湯漢協働司教
- 中国が人権行動計画、「法に基づく正常な宗教活動の保護」も
- ベトナムとの国交樹立にバチカンは意欲
- カラチYMCA不法占拠にキリスト者が抗議
- 死後の世界を信じるのは英国人の53%
- 教皇の復活祭メッセージがユーチューブに
- 建築界のノーベル賞「プリツカー賞」がツムトール氏に
- フィンランドでは携帯電話で献金も
- 《メディア展望》
◎香港の陳日君枢機卿が引退、後任は湯漢協働司教
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は4月15日、香港のジョセフ・ゼン・ゼキウン(陳日君)枢機卿(77)が教会法401-1の規定による年齢制限に達したとして提出していた辞任を受理した。後任はジョン・トン・ホン(湯漢)協働司教。
協働司教は、司教座が空位になったとき、直ちに後継司教として、教区司教に着任する。湯氏は1939年香港生まれ。66年にパウロ六世によって聖職に叙階された。
就任に際しての記者会見で湯氏は4月16日「カトリック者全てが教会の社会に関する教えを学び、正義の問題には声を上げ、政治に参画することを勧める。生命は今日では社会から切り離せないからだ」と語った。
陳枢機卿は2年前、枢機卿定年の75歳に達した際に辞表を提出していたが、教皇は昨2008年12月になって受理する意向を明らかにした。中国本土の教会が置かれた事情を考慮して、教皇が任務継続を要請していたもの。司教任命など教会内部の問題に国家が介入することに反対、宗教の自由擁護のために陳氏は闘ってきた。
陳氏は、中国本土の司教に、妥協策を永久に続けることはできない、として教会のために責任を勇敢に果たすよう呼びかけた。その中で、06年以来の事態を分析、「中華人民共和国の兄弟」に「恐れるな。歴史が課した責任を負いなさい。この危機にあって、教会を復活させられず、長い間、衰えさせた。あなたがたは歴史に責任があり、神の裁きの前に汚点なしにしっかりと立つ心構えをしなければならない」と述べている。
湯氏は昨年1月、就任の際、「中国のカトリック教会の様々なグループの間の一致と、関係者の間の建設的な対話」を促進したいと述べ、香港が「中国への教会の橋として不可欠な役割を果たしている」と指摘した。「中国の教会に宛てた教皇の最近の書簡の指示に従って、全力を注ぐ」として「中国政府が本土の上のカトリック者のために完全な宗教の自由を保証することが私の大きな期待である。それが社会への貢献であり、そしてこの方法で母国が国際的な地位を強化することになる」と述べている。
◎中国が人権行動計画、「法に基づく正常な宗教活動の保護」も
【CJC=東京】中国政府は4月13日、国民の政治的権利や少数民族対策の改善などをめざす国家人権行動計画(09〜10年)を公表した。人権をテーマにした国家計画が策定されるのは初めて。
行動計画の「公民の権利と政治的権利の保障」の項目では、法に基づく正常な宗教活動の保護、も挙げられている。
計画の対象は幅広いものの、既存の政策の範囲内が大半で抽象的な表現が多い。
ただ人権支援団体の反応は好意的なものが多い。弱点を指摘しながらも、さらなる変革への期待を込めている。
国際アムネスティは、計画公表が人権保護の重要性と国際基準の順守を示したもの、と指摘している。特に目標年度として2010年を掲げたことは、それが達成されれば人権への重要な進展だ、と見られている。
◎ベトナムとの国交樹立にバチカンは意欲
【CJC=東京】香港に本拠を置くカトリック系UCAN通信の報道によると、ベトナムとの外交関係樹立に関する両国の合同委員会がこの2月16〜17日にハノイで行われ、協議は同国の教会について「開放的、率直、相互尊重」の雰囲気で進められた」という共同声明が発表された。
2008年8月から09年1月にかけてベトナム政府と教会との関係が、ハノイ市内の教会資産をめぐる紛争によって緊迫化したのを受けて行われたもの。
会談はグエン・コク・コン外務副長官ら5人のベトナム側とピエトロ・パロリン外務局次長ら3人のバチカン側代表との間で行われた。
バチカン筋はUCAN通信に、外交関係樹立の前に問題を全て解決する必要はなく、結びつきが強くなればそれが解決に役立つ、と説明している。
◎カラチYMCA不法占拠にキリスト者が抗議
【CJC=東京】パキスタン南部シンド州の州都カラチでキリスト者数百人が抗議デモを計画している、と米宣教専門ANS通信が報じた。都心部に1913年に建設されたYMCAのホステルがイスラム教徒の有力政治家に不法占拠され、約3500平方メートルの土地と建物が売却される可能性があるのに反対するもので、前シンド州議会議員のマイケル・ジャヴァイド氏が計画した。
YMCAは64年に社会福祉局の登録団体になっている。YMCAの運営をめぐって現地のキリスト者の間で合意できなかったことから、イスラム教側の介入が始まった。
パキスタン教会のサディク・ダニエル主教は、カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏に訴え、不法占拠は終わったものの、それは一時的なものだった。またYMCAのキリスト者の執行部は横領がらみで追放されている。
YMCAの運営をめぐってはキリスト者の間で対立があり、訴訟に持ち込まれたが、シンド州高等裁判所はこの1月、関係者はいずれも運営に不適当として、高裁書記官モイヌッディン氏を運営管理者に任命した。
ジャヴァイド氏は、この措置では不法占拠自体の解決にならない、と指摘している。
不法占拠者は敷地内にモスク建設を図っているが、それは不法占拠を正当化しようとするものだ、としてジャヴァイド氏はアーシフ・アリ・ザルダリ大統領とユースフ・ラザ・ギラーニ首相に、敷地内からの不法占拠者追放保証を訴えている。
◎死後の世界を信じるのは英国人の53%
【ロンドン=CJC】英国の神学シンクタンク『セオス』が2060人を対象に行った調査で、幽霊や超自然を信じる人の多いことが分かったと4月13日発表した。
コムレス調査社に委託して2008年10月から11月にかけて行ったもの。人間の魂の存在を信じると答えた人が70%、天国を信じるのは55%、死後の世界を信じると回答した人は53%だった。
39%が幽霊の存在を信じており、27%が霊魂の再生を信じている。星占いを信じる人は22%、占いやタロットを信じる人も15%だった。
1950年のギャラップ社調査では、幽霊の存在を信じると答えたのは10%、幽霊を見たことがあると答えたのは2%だった。51年にはカード占いを信じる人は僅か7%、星占いは6%だったことから、『セオス』は半世紀の間で人々の意識が著しく変化したことに着目している。
1998年の調査では、カード占い18%、星占い38%、幽霊40%、幽霊と接触した人15%、また2004年では幽霊を信じる人が若干増え42%。
『セオス』のポール・ウーリー代表は「科学の力ですべての説明を済ませようとする動きはもはや過去のものとなった。今回の調査結果は、人々がより多様かつ、型にはまらない信仰を持つようになったことを示している。この10年間で見ると、超自然的なものへの懐疑が僅かながら強まっている」と語った。
『セオス』は2006年、政治・社会問題が信仰に与える状況などを調査するため設立された。英国国教会のローワン・ウイリアムズ・カンタベリー大主教、カトリック教会のコーマク・マーフィー=オコナー・ウエストミンスター大司教などの支持を受けているという。
◎教皇の復活祭メッセージがユーチューブに
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世の復活祭メッセージがユーチューブに掲出された。バチカン(ローマ教皇庁)へ、電子メールなどで多数の要望が寄せられたことから、27言語の字幕付きとなった。
映像には、教皇がサンピエトロ広場で語った62言語による祝福場面も含まれている。
字幕27言語はアジアでは日本語、中国語、ベトナム語、さらに人工国際語エスペラントなど。
◎建築界のノーベル賞「プリツカー賞」がツムトール氏に
【ロサンゼルス=CJC】米ハイアット財団は4月12日、建築界のノーベル賞とも呼ばれる「プリツカー賞」を、2009年はスイスの建築家ぺーター・ツムトール(ピーター・ズントー)氏(65)に授与すると発表した。
同財団は「明確で厳格な思想と詩的次元を組み合わせ、常にインスピレーションを湧かせる作品を作り上げている」と授賞理由を説明している。
スイス南部ヴァルスの温泉施設「テルメルバード・ヴァルス」(1996年)が同氏の最高傑作とされることが多いが、2007年に完成した独ケルン近郊の聖ニコウラウス・フォン・デア・フルーエ教会野外会堂やケルンの聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館が高く評価されたと見られる。
授賞式は5月29日、アルンゼンチンのブエノスアイレスで行われる。賞金10万ドル(約1000万円)とメダルが手渡される。
◎フィンランドでは携帯電話で献金も
【CJC=東京】携帯電話機の大手ノキア社の本拠フィンランドで、礼拝に出席しなくても、携帯電話のメッセージで献金できるよう規制解除が検討されていることが明らかになった。ロイター通信が報じた。
同国中部オウルの福音ルーテル教会マッティ・ピッカライネン主任牧師は、来月開催される全国教会会議でこの問題を提議すると述べた。「教会内の指導的地位にある人とも法改正の可能性について話したが、問題は教会よりも議会にかかっている。教会は近代化に対応可能と思う」と言う。
同牧師は、礼拝の終わりに他の信者の邪魔をしないように献金できるとして「ラジオやテレビ、インターネットで礼拝を聞いていれば、自宅から献金できる。このごろは人々はほとんど教会に来ない」と語った。
フィンランド国民の8割は福音ルーテル教会(国教会)に属している。
《メディア展望》
=カトリック新聞(4月19日)=https://www.cwjpn.com
★「連帯で難局克服を」=イタリア中部地震=葬儀ミサへ教皇メッセージ
★正義と真理、いつくしみで紛争の終結を=教皇の復活祭メッセージ
★幸福、仏教徒に学ぶ=教皇庁諸宗教対話評議会=「花祭り」でメッセージ
★司教団、聖書配布へ=ベトナム「宣教使命怠ってきた」
★幼稚園教職員の集い=キリスト教精神学ぶ=東京教区
★名古屋・南山学園=国籍超え、一致ときずな=フィリピン人信徒らが集い
=キリスト新聞(4月18日)=https://www.kirishin.com
★改めて「神学」を問う=日本基督教学会関東支部が公開シンポ
★教皇、アフリカ司牧訪問終える="真の和解と平和な未来"に期待
★国連人権理事会=「宗教の中傷」反対決議に懸念高まる
★日本バプテスト連盟「障害」者と教会委員会=地域の信徒と課題共有=初の証し集『まなざし』を発行
★"平和のため南北国交正常化を"=前韓国統一部長官 李在禎氏が講演=NCC主催
★米経済危機で牧師に調査=教会に助け求める人々が増加
=クリスチャン新聞(4月19日)=https://jpnews.org
★ルワンダ大虐殺から15年=進むいやしと和解の働き=日本国際飢餓対策機構がDVD制作
★地域に復活の恵みを=東京・町田市で「しゅろの葉パレード」
★聖和大学、関西学院と合併=幼児教育128年の歴史引き継ぐ
★日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団=5月連休に創立60周年記念宣教大会=宣教力UP、地方伝道・子ども伝道に重点置き
★「福音伝えなければわざわい」遺志継ぎ=5月2日=鈴木留蔵氏追悼記念宣教大会
★国連の「宗教中傷」決議に懸念高まる
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