世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第943信(2009.02.16)

  • 英国国教会が女性主教問題でようやく一歩
  • 英国国教会がキャタピラー社への投資撤回
  • 進化論のダーウィン生誕200年 英で記念行事
  • ぺトリー看護師、復職へ
  • 混迷するロバート・シュラー牧師のテレビ伝道
  • 70人訳聖書のドイツ語版が刊行
  • 独福音教会次期監督候補出揃う
  • ポーランド聖職者の半数は「独身制」を望まず、と調査
  • 豪山火事の犠牲者に教会で祈り
  • ハビタットの創始者フラー氏死去
  • 《メディア展望》

◎英国国教会が女性主教問題でようやく一歩

 【CJC=東京】英国国教会は総会で2月11日、女性主教問題について、検討継続を前提に教規改定草案と実施要領を改正委員会に送付することを決めた。賛成281票、反対114票、棄権13票。今回の草案には女性主教に反対する人は女性主教の裁知下に入らないことを認めている。
 ただ教規改正が最終的に実現するのは2010年以後となり、14年以前に女性主教が実現することはないと見られる。それでもリッチフィールドのジョナサン・グレッドヒル主教は「進展がゆっくりだとしても、前進しなければならないと思う」と述べている。
 世界聖公会共同体の中ではカナダ、米国、ニュージーランド聖公会が女性主教制を実現している。


◎英国国教会がキャタピラー社への投資撤回

 【CJC=東京】英国国教会は2月9日、問題企業への投資を撤回する、と発表した。神学者ら23人が同教会の道徳的倫理的に責任のある投資を行うとの方針を実行していない、と指摘する書簡がガーディアン紙に掲載されるのを阻止した形となった。
 しかし同教会が問題のがあると指摘された鉱山企業に投資していることも明らかになり、さらにその投資によって2008年に数千万ポンド(1ポンドは約130円)の損失を受けているとのニュースも報じられた。。
 教会は、米キャタピラー社への投資を引き揚げるのは「経済的に十分な情報の上の決断」だとし、政治的、倫理的に考慮したものではない、としている。
 教会は、経済上の考慮から2008年12月にキャタピラー社への投資220万ポンドを引き揚げたことを明らかにした。イスラエルが、パレスチナ自治区の家屋を取り払うために、同社から購入したブルドーザーを使ったという。
 しかし下院で8日、前国際開発相のクレア・ショート議員がスポンサーとなって提出した新たな報告書が、フィリピンで操業している鉱業2社の有害な影響を強調した。それら企業に教会はキャタピラー社への40倍も投資しているという。


◎進化論のダーウィン生誕200年 英で記念行事

 【CJC=東京】『種の起源』で進化論を唱えた英国の博物学者チャールズ・ダーウィン生誕200年の2月12日、ゆかりの地、英中部シュルーズベリーなどで記念行事が行われた。
 さらに今年11月には『種の起源』発表から150年を迎える。英国各地では11月までさまざまな催しが開かれる。
 13日には『種の起源』が執筆されたロンドン郊外の旧宅も改修を終えて公開された。
 進化論は発表当時、神が人間を創造されたとする創世記の教えに背くと受け取られ、英国国教会では、神の教えに反するという批判が出るなど、科学界や社会の注目を集めた。
 英国国教会は08年9月15日、ダーウィンに対し、進化論発表当時の対応は、17世紀にガリレオの天動説に対して犯した錯誤を繰り返した感情的な反発で、過剰防衛的なものだった、と公式サイト上で謝罪した。バチカン(ローマ教皇庁)も文化評議会議長ジャンフランコ・ラヴァージ大司教が、記者会見で「進化論と聖書のメッセージの間に相反するところはまったくない」との見解を示し、教皇ベネディクト十六世や最近の先任教皇が進化論に興味を示していることを明らかにした。進化論はキリスト教と両立すると表明している。


◎ぺトリー看護師、復職へ

 【カンタベリー=ENI・CJC】患者の自宅で処置を行った後で、祈ることを申し出たことが問題とされ、停職処分を受けていたキャロライン・ぺトリー看護師(45)に、国家保健省(NHS)ノースサマセット地区の報道担当は「本人が復帰出来る状況ならすぐにも可能」と2月9日語った。


◎混迷するロバート・シュラー牧師のテレビ伝道

 【CJC=東京】米国のテレビ伝道者ロバート・H・シュラー牧師の宣教活動が混迷している。カリフォルニア州オレンジ郡ガーデングローブに建設した総ガラス貼りの教会堂「クリスタル・カテドラル」は米国の代表的なメガチャーチとして有名になった。シュラー氏は伝道放送「力の時」で知られているが、ここへ来て大不況のあおりを受け、また家族間の不和もからまって宣教活動が危機に見舞われている。
 借入金返済のために6500万ドル(約59億円)以上ものオレンジ郡内の不動産売却も検討中。昨年11月29日には子息で後継者と目されていたロバート・A・シュラー氏(54)がクリスタル・カテドラルの主任牧師を辞任した。
 H・シュラー氏が、教会財政の3割を支えている多額献金者の集団である『イーグルズ・クラブ』のメンバーに宛てた最近の手紙によると、収入は昨年ほぼ500万ドル減少した。このままでは伝道番組も継続出来ない、と支援を要請している。「2008年の最後の月は私たちの宣教にとっては破滅的だった」と言う。
 景気後退の影響を受けたことは確かだが、この10年間、慎重に計画されたH・シュラー氏の子息へのリーダーシップ移管が大きくつまずいたことは明らかだ。個人の力で推進されて来た宣教に共通の問題でもある。創立者が引退したり、死去すると、勢いを急速に失うか、場合によっては崩壊する。
 ボストン大学の宗教社会学者ナンシー・アンマーマン氏は、教会員が献金を教会といった組織にではなく、牧師個人に結び付けて捉えている、と指摘する。伝道番組の視聴者は「献金を普段ささげている牧師以外の人が出ている時には、おそらく献金も少ないのではないか。番組には視聴者が特に忠実に見るようになる何かがある」とアンマーマン氏。
 強烈な出演者に導かれて教会が大きくなり、同時にそこに基盤を置くテレビ伝道は1980年代には盛んだった。しかし現在目立つのは、オーラル・ロバーツと故D・ジェームズ・ケネディの「コーラルリッジ・アワー」など一握りに過ぎない、と言うのはキリスト教メディア専門のカルヴァン大学クエンティン・シュルツェ教授。「もうテレビ番組と連動したメガチャーチを維持出来ない。シュラー氏やジミー・スワガート、オーラル・ロバーツ各氏が代表だった時代はもう終わった。『力の時』がやって来られたことすら、驚くべきことと思う」と言う。
 H・シュラー氏、その家族、さらにはカテドラル側もコメントを断っており、A・シュラー氏は、インタビューを求めるAP通信の電子メールにも応答していないという。
 シュラー家は教会を家業と考えており、子息のA・シュラー氏が2006年に後継者とされた時も、クリスタル・カテドラルが属している米改革派教会は承認している。
 しかしカテドラルは昨年11月29日、A・シュラー氏が主任牧師を辞任した、と発表した。教会関係の放送局から解任されてちょうど1カ月後のことだった。当時H・シュラー氏は、ニュースリリースで「私たちは、宣教の方向と理念についてそれぞれの考えがあり、苦闘して来た」と述べている。
 教会のウエブサイトには、心配する教会員やテレビ番組のファンなどが多数、混乱に抗議するコメントを書き込んでいる。中には献金を止めることを示唆したり、教会自体から離れると言う人まで出ている。


◎70人訳聖書のドイツ語版が刊行

 【トリーア(独)=ENI・CJC】「70人訳」(セプトゥアギンタ)と呼ばれる古代ギリシャ語で書かれた旧約聖書のドイツ語訳が完成、プロテスタント、ローマ・カトリック、正教会の担当者によって1月28日、ベルリンで献呈式典が行われた。10年間の協力の成果。「このようなプロジェクトは、聖書に関係した超教派の働きが成果を挙げられるという明らかな徴だ」と、独司教会議司牧委員会議長のヨアヒム・ワンケ司教は式典で語った。
 70人訳聖書は、紀元前3世紀半ばから前1世紀の間に、70カ所の庵にいた70人が709日かけて訳出された、と言われている。
 当時、地中海周辺での共通言語だったギリシャ語に訳出されたものの中では最も古い。
 プロテスタント、カトリック、正教会などの翻訳者80人以上が、翻訳と解釈の問題についてユダヤ教学者とも打ち合わせを行った。その結果はキリスト者とユダヤ教徒を結び付け総力をあげてのものとなった。
 ヨーロッパ文化の基礎とみなされている70人訳聖書だが、ヘブライ語聖書にはない文書(外典)を含んでいる。
 プロテスタント教会の聖書はヘブライ語聖書だけを旧約聖書正典とする例が多いが、カトリックではそれ以外のものもいくつか「第二正典」として受け入れ、正教会は70人訳全部を聖書としている。
 ドイツ在住の正教会信徒は、ドイツ語で旧約聖書全部を初めて容易に読めるようになった。
 翻訳計画は主にラインラント福音教会とドイツ聖書協会が資金を提供、ドイツ司教会議も協力した。
 今回シュツットガルトの独聖書出版社から刊行されたのは1巻本で全1500ページ。今後、注釈付きの2巻本も刊行の予定。
 ※参考=70人訳聖書の日本語への訳出は、秦剛平氏のモーセ五書が河出書房新社から刊行された。また新共同訳聖書・旧約聖書続編のうち「エズラ記(ラテン語)」を除く部分は七十人訳聖書からの翻訳とされている。


◎独福音教会次期監督候補出揃う

 【CJC=東京】独福音教会(EKD)協議会議長でベルリン・ブランデンブルグ地区のウォルフガング・フーベル監督が任期16年を務め年内に引退することになっているが、2月13日に後任候補3人が発表された。
 ベルリンのプロテスタント・アカデミーのルディガー・ザーカウ校長、コブレンツのマルクス・ドゥルゲ牧師、EKDの前放送監督のヨハンナ・ハベレル氏。監督の任期は10年、11月14日就任予定。


◎ポーランド聖職者の半数は「独身制」を望まず、と調査

 【ワルシャワ=ENI・CJC】ポーランドカトリック教会の指導者は、聖職者の半数以上が、妻子を持つことを望んでいると指摘した調査を批判している。「私が言えることは、説明が一般化されており、解釈と結論に同意することは難しい」と、教会召命協議会議長のウォイチェフ・ポラック司教は2月7日、ENI通信に語った。
 調査はポズナニ大学のヨーゼフ・バニアック教授が行った。それによると、司祭の54%が独身制の廃止を望んでおり、12%はすでに女性と同棲していると言う。
 調査結果は1月30日に『ガゼータ・ウィボルツァ』紙に掲載された。バニアック氏は同紙に、回答者823人の半数以上が「聖職者としてのアイデンティティに深刻でいつ果てるとも知れない危機」がある、と回答している、と語った。
 司祭たちは、最大の問題として、教会の上長との衝突や信仰に関する疑いよりも独身制を挙げている。
 ポーランドのカトリック神学校84校への入学者は2004年には1500人だったのが08年には953人と36%減少している。女性の修道誓願者も362人だったが、4年前の半分だ。


◎豪山火事の犠牲者に教会で祈り

 【CJC=東京】2月7日に発生以来、オーストラリア南東部のビクトリア州を中心に大被害を出した山火事では、焼失面積が3900平方キロに達し、すでに家屋1800戸が焼失、180人が犠牲となった。15日の日曜日、全国の教会は礼拝で犠牲者のために祈りをささげた。
 救援募金も9000万豪ドル(約60億円)が公的救済基金に寄せられている。
 ジェニー・マックリン自治相は、家屋が焼失した場合、再建には1万豪ドルを助成する、と発表した。連邦政府とビクトリア州政府も助成を約束している。


◎ハビタットの創始者フラー氏死去

 【CJC=東京】100カ国以上で活動する『国際ハビタット・フォー・ヒューマニティ』の創設者ミラード・フラー氏が2月3日死去した。74歳。
 1935年1月3日、米アラバマ州ラネット生まれ。実業家として成功したものの、キリスト教信仰から貧困住居問題の解決のために、自らの財産を売ることを決意、住居を低所得者が手ごろな値段で購入できるよう、非営利で無利息を原則とした住居を建築した。
 住居所有者になる家族がほかの家族の住居建築にボランティアとして労働参加する「スウェット・エクイティ」や、ローン返済金が次の住居建築の資金に活用される「回転資金」などのアイデアが、ハビタット運動の基本原則となった。
 1976年に『ハビタット・フォー・ヒューマニティ』を設立した。現在では世界中で30万戸以上の家の建築・修繕を行うNGO(非政府組織)になっている。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(2月15日)=https://www.cwjpn.com
★「教会を強め刷新する」=教皇、一般謁見の講話で聖パウロの教え語る
★新神学校開校に向け 閉校式と感謝の集い=福岡・東京・那須
★大阪教区=「司祭による被害」訴え受け=教区内の信者に書簡=「事実に基づく対応」を言明
★教皇=スリランカ内戦激化で=一般市民の保護訴える
★「虐殺否定の撤回を」=バチカン=破門赦免司教に要求

  =キリスト新聞(2月14日)=https://www.kirishin.com
★"教会の回復"求めて=卞在昌氏は「セクハラ」認めず=信徒・牧師らが緊急声明
★"人間の精神は普遍的"=クリスチャン・アカデミーが「銀座の父」を講師に
★単立小岩四恩キリスト教会=小学生の手紙が契機=日野原氏が礼拝で講話
★バチカン=聖ピオ十世会司教4人の破門解除=1人はホロコースト否定論者
★「解放の神学」のボフ氏=環境問題で警告=世界社会フォーラム

  =クリスチャン新聞(2月15日)=https://jpnews.org
★「小牧者訓練会」外部牧師ら緊急声明=セクハラ 教派を超え戒規機能を=「側近教職陣に自浄能力なし」判断
★卞在昌氏支援を一切廃止=韓国・サラン教会国際弟子訓練院
★「セクハラ判明していない」=国際福音キリスト教会代表牧師会が反論
★小牧者出版の責任も追及=性的不祥事を憂う牧師会
★定額給付金は外国人労働者支援に=外キ協全国集会=「共生の天幕広げよう」


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