世界キリスト教情報 第940信(2009.01.26)
- ヘロデ王の墓、さらに確証求める考古学者
- 米オバマ政権の中絶権利擁護にバチカン早くも反発
- 教皇がユーチューブに公式チャンネル開設
- 第43回世界広報の日に向け教皇メッセージ
- ロシア正教会次期総主教候補は3人
- モーツァルトの未発表曲、仏ナントで一般に初披露
- 《メディア展望》
◎ヘロデ王の墓、さらに確証求める考古学者
【CJC=東京】イエス・キリストの生涯に深い関係を持つことになったユダヤのヘロデ王。その墓と見られる遺跡が発掘されたのは2007年のこと。エルサレムのヘブライ大学の考古学者は、さらなる確証を求めて発掘を続けている。
問題の場所は、エルサレムの南方約15キロのヘロディウム。イエスの生誕地ベツレヘムにも近い。07年の発掘の際の出土品から、学者たちは、円錐形の屋根を持つ2階建てのものと結論を出した。
発掘を指揮している同大学のエフド・ネツエル教授は「墓の位置が、ここに埋めよと王が誓ったことについて分かっていることと一致する」とENI通信に語った。発掘している場所が荒野のただ中にあり、周辺に町や村が存在していなかったことに注目している。
イエスが生まれたころのベツレヘムはとても小さな村だった。「ヘロデ王の天才的な思考と建設術が、ここに巨大な離宮を作ろうと思い立ったのだ。エルサレムとユダヤのエリートたちがやって来て楽しめるカントリークラブのようなものだ。そしてここが有名になると、王自身もここに葬られることを当然と思うようになった、と教授は言う。
「ユダヤの歴史学者ヨセフスの記述と私たちが発見したものの考古学的年代決定法の双方ともが、ここがたしかに王が葬られたいと意図した場所であることを示し、発掘が進めば、ここがその場所だとする調査は完結する。私たちはこの1年半の間、出土品を研究して、記念碑を復元すれば8階建て相当の高さ25メートルのものとなる、との結論に達した」とネツェル氏は言う、さらにこの記念碑式の建造物はヘロデ王の好みにあっている、とも指摘する。石棺かそれに類したものが見つかる、と同氏は確信している。
これまでの発掘で、王の親族のものと見られる石棺の破片も見つかっている。
ヘロデは当時のローマ帝国から、紀元前37年から同4年までユダヤ王に任命されていた。エルサレムの第2神殿修復、マサダ宮殿やカエサレア港、ヘロディウム建設などで知られている。
ネツェル教授は、ヘロディウムが人工の丘の上に造られ、浴場、庭園、プール、座席650の劇場もあった、と言う。ロッギアと呼ばれる部分は劇場の最上部に置かれ、VIP用の展望台や応接室があった。当時のイスラエルでは知られていなかった壁画やプラスター(しっくい)も発見されている。ローマやイタリア南西部カンパニア地方で紀元前15〜10年頃に取り入れられていたものだ。そこでヘロデ王が職人をイタリアから呼び寄せた、と見られている。
この離宮は、当時のローマ世界の中では最大規模のもので、数千とは行かないものの、毎年数百人の訪問者があった、とネツェル教授は言う。離宮は紀元66年頃の第1次ユダヤ反乱の際に破壊された、ようだ。
発掘は、米ナショナル・ジオグラフィック協会の支援で行われており、その間の事情が同協会の雑誌『ナショナル・ジオグラフィック』の08年12月号に掲載されている。
◎米オバマ政権の中絶権利擁護にバチカン早くも反発
【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領が人工妊娠中絶の権利を擁護する方向に政策を転換させたことについてバチカン(ローマ教皇庁)が早くも反発の姿勢をあらわにしている。
米司教会議は1月13日と16日の二度にわたって、大統領就任直前のオバマ氏に宛て、フランシス・ジョージ会長(シカゴ大司教)が署名した書簡で、新政権と建設的に協力する意向を示したものの、「人類の中の胎児や障がい者、末期病者など、最も無防備で無言の命を守るために働く」と述べていた。
オバマ大統領は23日、海外で人工妊娠中絶を含む家族計画指導などに当たる民間団体への連邦助成金支出を認める大統領令に署名した。
それを受けてかバチカン生命アカデミー議長のリノ・フィジケラ大司教は24日付のイタリア紙コリエレ・デラ・セーラでのインタビューで、「失望する日は近い」と批判した。
生命アカデミー前議長のエリオ・セレッシア大司教もオバマ氏の妊娠中絶容認決定を批判している。同大司教は引退後も生命倫理問題ではバチカンの意向に強い影響を与えている。同氏はイタリアのANSA通信に「この処置は、私たちカトリック者に対してだけでなく、全世界の、中絶という罪のない生命の虐殺に反対している人たちにとって大打撃だ」と語っている。
米新政権登場後、初のバチカン側の反応を見る限り、バチカンはブッシュ前政権の同性婚や中絶反対の姿勢を支持していたが、オバマ政権との間では、ぎくしゃくした関係が続きそうだ。
◎教皇がユーチューブに公式チャンネル開設
【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)が1月23日、動画共有サイト「ユーチューブ」に教皇ベネディクト16世(81)の公式チャンネルを開設した。米グーグル傘下の「ユーチューブ」も同日、バチカンが公式チャンネルを立ち上げたと発表した。
同チャンネルでは、教皇の活動やバチカンや教会でのイベントでの様子を約2分間の映像にまとめたものを英語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語の4カ国語で毎日配信する。
バチカンはこのチャンネルを「今日の世界の主要問題に対するカトリック教会の立場を示すもの」と位置づけている。
AFP通信によると、現地時間23日午後5時半(日本時間24日午前1時30分)現在、チャンネルの再生回数は1万4606回で、登録者数は528人。ユーチューブの人気動画一覧では下の方に位置している。
バチカンはテレビ(CTV)とラジオによって教皇の活動や教皇庁での重要な行事について報じてきた。1995年にはインターネット上に公式サイトを開設しており、今回はこれに続くニューメディアへの参入となる。
ユーザーは「ユーチューブ」の機能を利用して、公式チャンネルにメッセージを送ったり、コメントをつけることができる。
◎第43回世界広報の日に向け教皇メッセージ
【CJC=東京】この5月のカトリック教会第43回世界広報の日に先立ち、教皇ベネディクト十六世がメッセージを発表した。
カトリック教会の「世界広報の日」は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、映画などのメディアを通して行なわれる広報の重要性を認識し、これらの広報機関を用いて行う福音宣教について教会全体で考えることを目的としている。
バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇が今年の広報の日のために選んだテーマは、「新しい技術、新しい関係:尊重・対話・友情の文化の推進」。
新しいデジタル技術がコミュニケーションと人間関係のあり方を変えつつある現代、教皇は若者たちをはじめとする新通信時代の人々に、これらの技術を人類への贈り物として、世界の連帯と奉仕のために活用していくよう呼びかけている。
そして、これらの新しい技術を使用する人々が尊重と対話、友愛の文化を推進するよう努め、またその内容製作と普及に関わる人々が人間の尊厳と価値の尊重に配慮するように、との願いを表明している。
◎ロシア正教会次期総主教候補は3人
【CJC=東京】ロシア正教会幹部は1月25日、次期総主教候補3人を選出した。アレクシー2世総主教の死去を受けて、次期候補の選考が進められて来たが、ソヴィエト体制崩壊後初めての総主教誕生とあって教会内外の注目を集めている。
現在、総主教代行を務めているスモレンスクとカリーニングラードのキリル府主教(62)が近代化派と目され、25日の主教会議では総数197票のうち97票を獲得した。カルーガとボロフスクのクリメント府主教(59)が32票、ミンスクとスルツクのフィラレ府主教(73)が16票だった。
モスクワの救世主キリスト大聖堂で全教会会議が開催され、29日までに新総主教が選出される予定。
◎モーツァルトの未発表曲、仏ナントで一般に初披露
【CJC=東京】AFP通信によると、仏西部ナントの市立図書館で2008年9月に発見された、オーストリアの作曲家ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの直筆による楽譜の未発表曲が、初めて一般の前で演奏されることになった。
楽譜は、1787年からモーツァルトが死亡した1791年の間のものとみられ、1枚の紙に楽譜が2点書かれていた。1点は完成しており、「クレド」と呼ばれるミサ用の楽曲で、演奏時間は約90秒。もう1点は未完成の草稿で、やはりミサで唱えられる「キリエ」に着想を得たものだという。
ナントでは1月22日、報道関係者向けに、楽曲の一部がバロック音楽団『ストラディバリア』のダニエル・キュイエ音楽監督によって演奏された。公開演奏は29日にナントで開催される音楽祭で行われる。
《メディア展望》
=カトリック新聞(1月25日)=https://www.cwjpn.com
★厳しい労働者の"現場"で8教区の司教らが研修=大阪・釜ヶ崎
★カトリック児童福祉の日献金=昨年は45万ドルを各地に送付
★教皇=「貧困撲滅と信教の自由を」=各国外交官への年頭あいさつで
★ハヤット神父逝去=心のともしび運動を創立=メディア駆使し宣教に尽くす
★小グループで聖書を通読=『聖書百週間』=点字版手引き完成
=キリスト新聞(1月24日)=https://www.kirishin.com
★キリスト教界=「期待」と「切望」の声=オバマ米大統領就任に
★中国のプロテスタント信徒実数4千万か=米宣教団体創設者が論文で指摘
★"暴力の即時停止を"=ガザ侵攻でWCRP日本委らが声明
★日基教団東京教区西南支区 初の信徒大会=500人参加で盛況 次回へ期待も
★映画「ふうけもん」=資金不足で公開中止=年内の配給目指す
=クリスチャン新聞(1月25日)=https://jpnews.org
★逆境に立つブラジル人教会=不景気だからこそ神に帰る人も=解雇で信徒ら帰国続出
★宣教150年で12教派500人が初週祈祷会=年始の祈りが日本を変えた=「初代宣教師らの志つなげよう」
★自らもケアされる真の牧会者へ=牧会塾プレスクール注目
★FEBCが特別番組「今日を問う」=自殺や"カルト化"題材に
★"敵"非難より悔い改めを=和解運動ムサラハ=ガザ戦闘でアピール
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