世界キリスト教情報 第939信(2009.01.19)
- 香港の陳枢機卿、本土の司教に決意促す
- 『新共同体の道』が創設40周年記念式典
- イスラエルがガザ攻撃を一方的に停止
- オランダの"無神論"牧師が神の存否議論を教会に要求
- 英国国教会は女性主教を正式認知へ
- 米の神学生は性問題扱うには訓練不足
- グラハム牧師が自宅近くの教会に転籍
- 米キリスト教映画祭で「ファイアプルーフ」が最優秀賞
- 《メディア展望》
◎香港の陳枢機卿、本土の司教に決意促す
【CJC=東京】カトリック教会(天主公教会)香港大司教の陳日君枢機卿が、中国本土の司教に、妥協策を永久に続けることはできない、として教会のために責任を勇敢に果たすよう呼びかけた。これは教区機関紙「公教報」1月4日号に「聖ステパノ殉教の示唆」との標題で掲載された。UCAN通信によってその間の事情を紹介する。
陳氏は12月24日、現地メディアに、自分の引退要請を日付は確定していないが、教皇ベネディクト十六世が09年前半中にも受け入れることを明らかにし、今後は中国の教会のために全力を捧げる決意を述べた。
陳氏は、本土の司教への呼び掛けの中で、06年以来の事態を分析、「中華人民共和国の兄弟」に「恐れるな。歴史が課した責任を負いなさい。この危機にあって、教会を復活させられず、長い間、衰えさせた。あなたがたは歴史に責任があり、神の裁きの前に汚点なしにしっかりと立つ心構えをしなければならない」と呼びかけた。
中国のカトリック教会を指導する最高組織「中国天主教司教団」(BCCCC)と「中国天主教愛国会」(CCPA)の全国規模の会議が今年行われると見られるが、そこでの議長選挙に、バチカン(ローマ教皇庁)の同意も得られた政府公認教会の司教の参加も予想されることを意識したもの。
天主教愛国会の第6回(1998年)と第7回(2004年)大会で選出された北京のマイケル・傅鉄山司教は98年から07年の死去まで愛国会のトップだった。南京のジョセフ・劉元仁司教は98年から05年の死去まで中国天主教司教団の主席を務めた。2人ともバチカンの認知を得られなかった。このポストはその後空席のまま。
公認教会は07年に「愛国会」50周年を、08年には司教の「自選自叙」を祝っている。
中国の教会は1958年にバチカンの承認なしに司祭の叙階を始め、それ以来「自選自叙」の司教が170人誕生している。
07年6月30日に公表された、教皇の中国カトリック者宛て書簡は、カトリック教会の原則を述べ、司牧指針を示したもの。
陳枢機卿は、本土の司教に聖ステパノの例に倣うよう勧め、立場を明らかにすることで「全てを失う」ことにはならない、と断言した。陳枢機卿は、ある人が「地下」聖職者に妥協が賢明なこと、なぜなら「私たちは教皇ともつながりがあり、政府にも認められているので、カトリック者への対応も出来る」と語ったことを紹介した。「それに引き換え、あなたは投獄されることを選び、命を犠牲にし、あなたの信者たちは誰からも世話をされなくなる」と語ったと言う。
しかし枢機卿は「妥協は妥協だ。それを何時までも続けることは出来ない」と警告、「福音のために、信仰という真理を永遠に断念するべきではない」と強調した。
バチカンが同意した公認教会の司教10人以上が06年に、バチカンの同意なしに行われた司教3人の叙階に参加したことは遺憾だ、と枢機卿は言う。
バチカンが中国の教会事情に関する会議を開催、教皇が中国のカトリック者に書簡を送るという「僅かばかりの希望」が2007年には見られたが、ただ全員が教皇書簡の内容を理解すべきだった、と枢機卿は指摘する。そうでなかったからこそ08年12月の「自選自叙」司教の式典に参加したことに「当惑を覚える」のだと言う。
枢機卿は、司教が教皇の教えの下に立つことを勧める別の書簡をバチカンが送った、と付け加えた。国務長官タルチシオ・ベルトーネ枢機卿が署名した08年4月22日付けの書簡は、中国本土の、バチカンが任命に同意した全司教に宛てたもの。
◎『新共同体の道』が創設40周年記念式典
【CJC=東京】カトリック宣教団体『新共同体の道』は1月10日、創設40周年記念式典をバチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂で開催した。会員2万5000人が参加した。
教皇ベネディクト十六世は、「使命の十字架」を共同体の14グループに授与した。各グループは30人から40人の会員で構成され、ローマ周辺の世俗化が進み布教が困難な地域で司祭を助ける業につく。
『新共同体の道』は、スペインのキコ・アルグエロととカルメン・エルナンデス、イタリアの聖職者マリオ・ペッジによって設立された。
◎イスラエルがガザ攻撃を一方的に停止
【CJC=東京】イスラエルは1月18日午前2時から、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに対する攻撃を一方的に停止した。侵攻した地上軍はしばらく駐留を継続する。
12月27日からの空爆から始まった大規模攻撃が3週間ぶりに停止した。パレスチナ人の死者は1200人を超えた。
ハマス幹部は17日、中東の衛星テレビに軍が撤退しない限り攻撃を続けると表明しており、今後の対応が焦点になる。
イスラエルのエフード・オルメルト首相は17日の国民向けテレビ演説で、大規模攻撃でハマスのメンバー多数を殺害し密輸ルートを破壊するなど深刻な打撃を与えたとして一方的攻撃停止を発表した。首相は、攻撃停止後にハマスが攻撃をやめなかった場合は「われわれの市民を守るために行動を続ける」と述べ、攻撃を再開する考えを示した。
◎オランダの"無神論"牧師が神の存否議論を教会に要求
【ユトレヒト(オランダ)=ENI・CJC】「無神論者」宣言を公表して有名になったオランダ・プロテスタント教会(PKN)のクラアス・ヘンドリクセ牧師が、神が存在しているかどうかを教派総会で議論するよう要求している。牧師や一般信者にとってその議論が有益なことだとして、同派のアルジャン・プライジエル総幹事に1月5日に公開書簡を送った。
2007年11月に出版された著書「存在しない神を信じる=無神論牧師の宣言」で、ヘンドリクセ氏は「神」を信じるのに、神の存在を信じることは必要ではない、と主張した。
書簡でヘンドリクセ氏は2006年にオランダのキリスト教放送IKONが実施した調査を想起している。放送に関係していた牧師6人に1人の割合で、神の存在を信じていないか確信を持てていないことが判明したのだ。
プライジエル総幹事が教会誌で、ヘンドリクセ氏の著書に触れ、神信仰の問題を議論したのに応答したもの。プライジエル氏は、オランダでキリスト者として育てられた人の多くが、神の存在を信じるのが難しいとしていることを認めた。「若い時に教えられた神を信じることが難しいのだ。それは天にいる父のイメージ、あなたを個人的に知っており、あなたが友として祈る神なのだ」として同氏は「私たちが皆たとえ自分の疑問についてさえ隠さないものなら、神について語り、彼を信じることの意味を語るため、キリストの名のもとに来たれ」と信者に勧めていた。
ヘンドリクセ氏は、プロテスタント教会が伝統的に自らを幅広い教派と見なしていることを認めるものの「あなたの主張を読むと、PKNでは、現在の信仰告白に同意する人に場があるだけで、無器用な質問をしたり疑いを示すようなことの余地はないように見える」と、プライジエル総幹事へ応答している。
ヘンドリクセ氏は、オランダ南西部ミデルブルフと近郊の村の教会で20年以上にわたって牧師を務めた。
オランダでは2004年にルーテル派と改革派の2派が合同してプロテスタント教会を形成している。ヘンドリクセ氏が牧会した2教会も属している。両教会は自由プロテスタント連合にも所属している。
著書の中でヘンドリクセ氏は、神が存在していないという信念がどのようにして強くなったかを述べている。「神の不存在は私にとって障害ではなく、神を信じることへの前提条件だ。私は無神論者の信仰者なのだ」と言う。「神は、私にとって、存在ではなく、人々の間で起こり得ることのための言葉である。例えば、誰かがあなたに『私はあなたを見捨てない』と言い、そしてその言葉が実現する。その"関係"を神と呼ぶことに全く問題はない」と述べている。
◎英国国教会は女性主教を正式認知へ
【CJC=東京】カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏が指導する英国国教会は、女性主教の叙階を認める規則草案を12月29日発表した。2月に開催される総会に提出される。英国国教会は1994年に女性を司祭に任命した。
女性や公然同性愛者の主教を認めるか否かは世界聖公会共同体(信徒7700万人)を構成する各管区の間でも、また管区内でも賛否が分かれ、米聖公会では教区レベルでの離脱にまで至っている。英国国教会は世界聖公会共同体の母教会。
国教会総会議員は、女性主教を教会規則に盛り込む方向へ進むことを2008年7月に決定した。
草案では、女性主教に反対する教区には男性の「代替主教」が任命されることになる。ただ規則制定の過程から見て、2014年以前に女性が主教に叙階されることはないと見られる。
女性叙階を働き掛けている『女性と教会』グループのクリスティナ・リース氏は「女性が主教になれる条項を含んでいる。とにかく案文が出てきたのは良いニュース」と指摘している。
バチカン(ローマ教皇庁)は、女性主教制が聖公会とカトリック教会との和解にとって障害になる、と警告して来た。
◎米の神学生は性問題扱うには訓練不足
【ニューヨーク=ENI・CJC】米国のキリスト教各派では性問題への関心が強く、議論も深まっているのに、神学生は性問題を扱うには訓練不足であることが最新の調査で判明した。
1月8日に発表された調査報告書「性と神学校」は、神学校は学生に性問題について信徒を正しく導くには訓練を強化しなければならない、と指摘している。
全米の主要神学校を対象に調査したところ、神学校の9割が性問題の教科を必修にしていないことが分かった。
◎グラハム牧師が自宅近くの教会に転籍
【CJC=東京】テキサス州ダラスのファースト・バプテスト教会は、米国の著名な大衆伝道者ビリー・グラハム牧師の所属教会として有名だったが、同氏も90歳、ノースカロライナ州モントリートの自宅に近いサウスカロライナ州スパータンバーグズのファースト・バプテスト教会に転籍を決意、昨年のクリスマスイブに同教会のドナルド・ウイルトン牧師と会って転籍を申し出、28日に教会員が投票で受け入れを決めた。
グラハム氏は、1953年ダラスのコットンボウルで最初のクルセードを開催した際に、当時W・A・クリズウエル牧師が担当していた教会は広く南部バプテスト連盟内では代表的な教会と目されていた。ただグラハム氏はダラスには居住せず、各地の教会に出席していた。夫人に先立たれ、病いがちになった最近ではスパータンバーグ教会の礼拝をテレビで見ているという。
同教会のウイルトン牧師は、ビリー・グラハム伝道協会の催しで説教もしたことがあり、グラハム氏と親しく、モントリートの自宅を定期的に訪問している。
◎米キリスト教映画祭で「ファイアプルーフ」が最優秀賞
【CJC=東京】米テキサス州サンアントニオで開催された第5回独立キリスト教映画祭の劇映画部門最優秀賞にカーク・カメロン主演の「ファイアプルーフ」が選ばれた。
結婚の失敗を乗り越えようとする消防士の姿を描いたもので、シャーウッド・ピクチュアズの作品。2008年の興行収入が3300万ドル(約29億円)を超えている。
《メディア展望》
=カトリック新聞(1月18日)=https://www.cwjpn.com
★教皇=ガザ情勢に衝突終結、和平交渉を
★即時攻撃中止求め正平協が声明発表
★「ここにとどまる」=神の愛の宣教者会
★2008年 宣教者の犠牲=少なくとも20人=バチカンFIDES通信発表
★経済危機に「いのち守ろう」=社会司教委が緊急アピール
=キリスト新聞(1月17日)=https://www.kirishin.com
★イスラエル軍=ガザ侵攻で死者500人超=和平実現なお多難=教会指導者の声届かず
★ベツレヘムに観光客100万人=各地でクリスマス祝う
★「派遣切り」に教会が支援=各地の実情、地方紙が報道
★朱基徹牧師の伝記 英訳本が日本へ="人間的苦悩に真の殉教者の姿"
★アジア学院に朝日社会福祉賞
=クリスチャン新聞(1月18日・休刊)=https://jpnews.org
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