世界キリスト教情報 第938信(2009.01.12)
- 中国のプロテスタント実数は4000万か
- 教皇、新年の挨拶交換で日本の列福式にも言及
- 「避妊用ピルが環境汚染」とカトリック医学協会がバチカン紙に見解
- ジンバブエから南アへコレラ拡大、対応に教会協力
- イタリアのスーパーマーケットにチャペル
- カトリック神学者リチャード・ニューハウス氏死去
- 《メディア展望》
◎中国のプロテスタント実数は4000万か
【CJC=東京】「中国にキリスト者はどのぐらいいるのか」誰もが知りたいこの数字に、米国の中国宣教団体『チャイナ・パートナー』の創設者ウエルナー・バークリン氏が、これまで算出しようとした例がないから、誰も答えられないのだ、と論文で指摘した。ASSIST通信によって紹介する。
問題は算出方法自体にある。「可能な方法がない。というのは、正確な統計がないか、社会的なり宗教関係の組織のデータがあるわけでもない。少なくとも私には心当たりがない」と同氏は言う。そこで、推定が幅をきかすことになり、少ないところで1600万人から2億人という数字が出て来る。誰も実際に数えた訳ではないから、分かってはいないのだ、とバークリン氏は言う。
「当局紙『新華』で、政府高官が中国のキリスト者は1億3000万人と語ったと報じられた」と福音派のブログに書かれていた、とバークリン氏は言う。その結果、複数の福音派指導者が「中国のキリスト者1億3000万人という数字は正式なものだ」と伝えた。
政府高官というのは、バークリン氏の知人の国務院宗教事務局のイェ・シャオウェン局長。「そこでその事務所に連絡をとったが、イェ局長は中国にキリスト者が1億3000万人いる、などと指摘したことはないとのことだった。これは北京を最近訪問した際に会った外務部のグォ・ウェイ部長が示したことと符号する。国営新華社通信にも当たったが、そのような報道はしていない。
本当の所を知りたい、と『チャイナ・パートナー』は中国の省、直轄市、自治区など31に調査チームを派遣した。西蔵(チベット)だけは行けなかったが、15歳から92歳までの7409人に聞き取りした。回答者数としては一般的な調査より多い、とバークリン氏。
調査チームは、無作為に、信じているなら、どの宗教かを聞いた。主に街頭や公園で聞いたが、列車、飛行機、地下鉄、タクシー、バス、ホテル、青空市場、百貨店や小さい商店などでも様々な人々に調査した。補充調査もした結果、中国のプロテスタント・キリスト者は3900万〜4100万人(誤差0・46%)と算出した。プロテスタントの比率が高いのは、福建、安徽、浙江、河南、陝西、江蘇、山西、広東の各省。
バークリン氏によると、回答者の大多数は仏教徒か無信仰者だった。無信仰者の多くは、無神論者ではなく、いかなる宗教も選ばないだけだとしている。共産党員と答える人も多い。道教、イスラム教(主に西部)の名も挙がっている。
同氏は、回答者の中に、中国では厳禁されている法輪功の会員だと答えた人がいたと言う。キリスト者だと明らかにした人も、プロテスタントやカトリックの公認教会の会員だと言う例もあれば、非公認教会員もいたが、調査では、そこは区分していない。
バークリン氏は論文で、調査が容易で、回答者が積極的だったのが印象的だったと述べている。「答えるのをためらった人はまずいないし、ためらった人も、中国の真ん中で普段聞かれることのない、変わった質問に驚いたのが理由だ。さらにキリスト教を信じている人はすぐに笑顔を見せるのが印象的だった。教会堂の存在を知らない人にはほとんど出会わなかったし、キリスト者も非キリスト者も同じようにそこの教会への道を教えてくれた。中国人はとても親切で助けてくれ、不安そうな感じはなかった」と言う。
調査を、厳密な意味で科学的な基準を満たすとは言わないものの、大きな意味がある、とバークリン氏は言う。「事実が何であるかは理解と洞察に役立つ。調査は都市部と農村部の双方で実施された。農村部で事前に予想された以上のキリスト者が見つからなかったのにはびっくりした。そこはほとんどが"福音派の観測者"が非公認の教会員がいる、と主張していた所だった」。
西側世界の人の多くは、非公認教会や「地下教会」(家の教会)の会員の多く(特に農村部の教会員)が現在では福音派のキリスト者と見なされている可能性に気づいていない、とバークリン氏は言う。その信仰は「異教的だったり、民間信仰と混じっている。『キリスト教信者』と呼ばれる人の多くは、全部ではないが、教育を受けてはいないものの特別な能力を持つと主張するカリスマ的な宗教指導者に従っている。そのような指導者の中にはイエス・キリストの兄弟だとか、再臨のキリストだと自称するものもいる」。
バークリン氏は、調査の目的を「それは事実に本当に関心を持っている人のためだ。根拠のない間違った数字が伝えられすぎた。関心を持ち関係のあるキリスト者として、私たちは、誠実に真実を見つけ、その事実を、何を言われようと提供しようとしている」と言う。
同氏は、中国政府教育部門が行った調査についても言及した。
調査を担当したのは上海の華東師範大学宗教文化調査センターのリュウ・ゾンギュ教授。2008年初め、同氏は、中国全省の4500人を対象にした調査結果を発表した。調査は12カ月にわたって行われたもの。ゾンギュ氏が、中国人約3億人が宗教を信じているか、霊的な関心を持っていると結論を出した、とバークリン氏は言う。それまでの公式数字は約1億人だった。
ゾンギュ氏の調査は、中国政府や中国基督教協議会が正式に認めている1600万人をはるかに超える4000万弱のプロテスタントが中国に現存していることを示すもの。同氏はさらに推定1400万人のカトリック者が存在すると明らかにしている。その中でバチカン(ローマ教皇庁)に忠誠を示す『地下教会』に属しているのが約1000万人、400万人が公認教会のミサに出ている。
ゾンギュ氏は、中国人が他宗教に比較してキリスト教に多く転向する理由が多数あると語った。「共産主義者が無神論政府を1949年に樹立して以来、宗教信仰を根絶しようとし、なお威圧的官僚主義的監督の下に宗教支配を続けている。伝統的な宗教をあまりに長く抑圧し、一方であまりに多くのセクトを生み出してきた。多くの若者にとって、(キリスト教をおいて)別の選択はなかった......キリスト教は、人々を改宗させることでは強い伝統があり、同時にキリスト教には入りやすい」。「キリスト教会には司祭や牧師に対する厳格な訓練計画がある。伝統宗教にいるよりも高度な教育や訓練を受ける例が多い」と言う。
道教、仏教、イスラム教も復活しつつある。バークリン氏は、数の問題に関する混乱は、政府が先に発表した、公認5大宗教の信者が約1億人いる、との公式数字にある、と言う。
もう一つの混乱の原因と見られるものは、ゾンギュ氏の調査で、約3億人が「霊的」「宗教的」問題に関心を持っているとしたことにある。「もちろんそれには公認5大宗教と民間宗教を合わせたものだが、必ずしも熱心な信者ではない」とバークリン氏は付け加えた。
バークリン氏は、ゾンギュ氏と『チャイナ・パートナー』の調査が「プロテスタントについては概略4000万人とほぼ同じ数字だったと言う。「だから最低1600万から最高1億3000万から2億という、これまでしばしば引用されてきた推定数も、その間のほとんどの数字もきちんと調査されたものではなく、単なる当てずっぽうだった」。
《注》『チャイナ・パートナー』社=ドイツ人宣教師の子息として中国で生まれたウエルナー・バークリンによって1989年設立された。中国の教会に仕えることを使命としている。
◎教皇、新年の挨拶交換で日本の列福式にも言及
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は1月8日、各国の在バチカン(ローマ教皇庁)大使らと新年の挨拶を交した。
バチカンと正式外交を結ぶ178カ国および欧州連合、マルタ騎士団、さらに特別外交関係にあるロシア連邦、パレスチナ解放機構、そして国連各組織等の代表が出席した。
バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は「多くの努力にも関わらず、望まれる平和はまだ遠い」と述べ、平和の文化を構築し、安全と発展を推進する努力を決して諦めてはならないと強調した。
世界の情勢を展望して、教皇はまず中東に目を向け、中でも市民に計り知れない苦しみを与えている聖地での闘争に、武力ではなく和平への努力を訴えた。このほか、教皇はイスラエルとシリア間の対話、レバノンの国内一致の推進の必要を述べたほか、イラクに民族・宗教の違いを乗り越えた未来の構築、イランの核問題の交渉による解決を願った。
またフィリピン・ミンダナオ島の和平交渉再開や、北京と台北の新しい関係構築など未来に信頼を寄せ、スリランカの闘争にも最終的な解決を希望した。
教皇はアジアのキリスト教共同体について、数の面からは少数派であるが、それぞれの国の共通善や安定、発展のために信念を持って効果的な貢献をし、健全な倫理秩序もたらす神の重要さを証していると述べ、それを雄弁に語るものとして、最近日本で行なわれた188人殉教者列福式に言及した。
◎「避妊用ピルが環境汚染」とカトリック医学協会がバチカン紙に見解
【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)発行の日刊紙「ロッセルバトーレ・ロマーノ」は1月4日、「経口避妊薬は環境を汚染し、男性不妊の原因ともなっている」との見解を示した報告書を掲載した。
報告書では、カトリック医学協会国際連盟のペドロ・ホセ・マリア・シモン・カステルビ総裁が「ここ数年で、経口避妊薬を服用した女性の尿を通じ、数十トンものホルモンが自然界に放出され、環境に壊滅的なダメージを与えている」と警告している。
AFP通信によると、ある避妊薬の研究機関は「経口避妊薬として服用し体内に取り込まれたホルモンは、再び女性ホルモンの特性を持つことはない」とのコメントを出した。イタリア薬理学協会も、「ピル(経口避妊薬)に含まれるエストロゲンなどのホルモンは、プラスチックや消毒剤、食肉など、身の回りのあらゆる所に存在するものだ」との見解を示している。
◎ジンバブエから南アへコレラ拡大、対応に教会協力
【CJC=東京】近年で最悪のコレラ流行を受けて、ジンバブエ政府は12月初め、国家非常事態宣言を発令したが、さらに南アなど近隣諸国にまで拡大した。南ア保健省によると、感染が疑われる患者はこれまでに900人を超えている。
『国境なき医師団』(MSF)は、コレラ流行への対応として、ベンベ地区ムシナとヨハネスブルクですでに活動していたチームを即座に補強すると同時に、活動の中心をコレラ症例の発見・治療、衛生推進へと切り替え、重度の患者を同国保健省に移送している。
MSFは、ヨハネスブルクでは、セントラル・メソディスト教会に診療所を設置、流行に対応している。毎晩2千人前後の避難民、亡命希望者、移民が同教会内部と外の歩道に集まってくる。医療チームは、教会コミュニティ、現地当局と力を合わせ、教会周辺でコレラが大規模に流行するリスクを軽減すべく懸命の努力を続けている。また、衛生推進チームを編成し、ヨハネスブルク中央ビジネス地区の、人口の密集した危険性の高い地域において、コレラに関する情報・教育キャンペーンを展開している。
診療所で医療ケアを提供するほかに、MSFは教会の外にトイレ10台を設置し、教会居住者用の手洗い場を数ヵ所に新設した。食品販売者を対象に衛生についての研修を行い、教会に暮らす人びとのチームとともに毎日の清掃作業を設定し、コレラ感染への危険を減らしている。
◎イタリアのスーパーマーケットにチャペル
【CJC=東京】イタリア・シチリア島メッシナ近郊のトレメスティエーリのスーパーマーケットの店舗に12月30日、チャペルが設置された、とANSA通信が報じた。カトリック教徒が多いイタリアでもチャペルを備えたスーパーマーケットは初めてで、買い物客や従業員に開放され、ミサも行われるという。
開設を祝福した地元のジュゼッペ・ローニャ神父は「ショッピングモールの中であっても心静かに祈ることができる。これは信仰と日常生活の融合を目指す試み」とチャペルの意義を語っている。
◎カトリック神学者リチャード・ニューハウス氏死去
【CJC=東京】カトリック神学者リチャード・ジョン・ニューハウス氏が1月8日、腫瘍のため死去した。72歳。雑誌『ファースト・シングズ』の創刊者。妊娠中絶、幹細胞研究、伝統的な結婚など社会的な問題に関してジョージ・W・ブッシュ大統領への助言者だった。
ルーテル派牧師から1990年にカトリックに改宗、翌年司祭に叙階された。90年に『福音派とカトリック者共に』をチャールス・コルソン氏と設立、同名の著書もある。
米紙ナショナル・カトリック・リポーターは、プロテスタント福音派とカトリック保守派との非公式な対話強化を願っていた、と報じた。
週刊誌タイムは、2005年、アメリカの最も影響のある福音派のリストに名前を入れることで、仲介者としての役割を評価した。
《メディア展望》
=カトリック新聞(1月11日・休刊)=https://www.cwjpn.com
=キリスト新聞(1月10日・休刊)=https://www.kirishin.com
=クリスチャン新聞(1月11日・休刊)=https://jpnews.org
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