世界キリスト教情報 第936信(2008.12.22)
- 大統領選関係が米宗教関係ニュースの上位独占
- 教皇が一般接見、「降誕祭は神から贈られた希望のメッセージ」
- リック・ウォレン牧師がオバマ次期大統領就任式で祈祷
- 「ゲイもストレイツも愛している」とウォレン牧師
- バチカン声明、「ES細胞利用や体外受精は罪」
- バチカンは性差別に関する国連宣言案に反対
- シュラー牧師の息子がクリスタル・カテドラル主任退く
- 《メディア展望》
◎大統領選関係が米宗教関係ニュースの上位独占
【CJC=東京】共和党大統領候補ミット・ロムニー氏はモルモン教徒、バラク・オバマ氏がシカゴの母教会を脱会決定、キリスト教保守派有権者への共和党副大統領候補サラ・ペイリン氏の訴え......米宗教記者会の選定した2008年の宗教関係ニュース10の上位を占めたのは、いずれも大統領選挙がらみだった。
宗教記者会の会員約300人の中の約100人が12月8〜10日に投票した。4位以下は次の通り。
▽カリフォルニア最高裁は、同姓間の結婚を合法と判決したが11月の投票で否決、アリゾナ州とフロリダ州でも反対、▽教皇ベネディクト十六世がワシントンとニューヨークを訪問、聖職者による性的虐待の犠牲者と会見、▽性問題で米聖公会を離脱したグループが代替組織を結成、▽インド・ムンバイの宗教テロで犠牲者約200人、オリッサ州でもキリスト教抑圧、▽中国が北京五輪控えチベット独立を求める仏教徒取り締まり、▽経済危機で宗教団体は事業強化と経費削減の板挟み、▽イラクでイスラム教内の抗争激化、キリスト者もターゲットに、カルデア典礼大主教が誘拐、殺害される。
◎教皇が一般接見、「降誕祭は神から贈られた希望のメッセージ」
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は12月17日、バチカン市内のパウロ6世ホールで水曜恒例の一般接見を行なった。教皇は、降誕祭がキリスト者だけでなく多くの人々の心に呼びかける普遍的な祝日としての性格を持っていることを指摘、降誕祭とはいのちの贈り物を喜び祝う日だと述べた。
教皇は、行き過ぎた消費主義のもと、降誕祭がその精神的意味を失い、単なる贈り物の購買と交換という商業的機会に過ぎなくなっていることに懸念を表明、世界規模の金融危機がクリスマスの真のメッセージを見直す良い機会となることへの期待を示した。
教皇は、経済危機をはじめ様々な困難や不安に多くの家族や人類全体が直面している今、降誕祭が皆にとって、簡素さの中の温かさ、友情や連帯といった本来の価値を再発見し、キリストの誕生という神秘から来る希望のメッセージを神からの個人的な贈り物として受け取る機会となる、と語った。
◎リック・ウォレン牧師がオバマ次期大統領就任式で祈祷
【CJC=東京】1月20日、バラク・オバマ次期米大統領の就任式で、カリフォルニア州サドルバック教会を建てたリチャード・D・リック・ウォレン牧師(南部バプテスト連盟)が祈祷を担当することになった。サドルバック教会は毎週2万2000人も集めるメガチャーチ。
歴代大統領就任式で聖職者の祈祷が慣例となっており、近年では著名な大衆伝道者ビリー・グラハム牧師がジョージ・ブッシュ現大統領までの9代にわたって祈祷を担当している。グラハム氏は大統領の霊的相談役も務めていたと理解されており、「米国を代表する牧師」とも見られていたが、高齢のため今回は祈祷しないとの取りざたの中で、誰が後任になるか注目されていた。
ウォレン氏はベストセラー「パーパス・ドリブン・ライフ」(人生を導く五つの目的)の著者として知られる。祈祷担当者がウォレン氏に決まったこと自体、米福音派の世代交代を象徴しているとも言えるが、この人選をめぐり、リベラル系の団体や同性愛者団体から批判の声が上がっている。
ウォレン牧師は、同性婚や人工妊娠中絶などでは保守的な立場を維持しながらも、貧困、エイズ、環境問題の解決に向けた活動に積極的に取り組んでいる。
リベラル系団体『ピープル・フォー・アメリカン・ウェイ』のキャスリン・コルバート会長は「深く失望した」との談話を発表。就任式のような場にこそ「一貫した主流派のアメリカ的価値観」を持った人物が選ばれるべきだった、とコメントした。同性愛者団体『ヒューマン・ライツ・キャンペーン』もオバマ氏にあてた公開書簡で「ウォーレン氏を就任式に招くことにより、同性愛者、バイセクシュアル、トランスジェンダーが政治に参加できるという期待は損なわれた」と述べた。
米聖公会ニューハンプシャー教区のジーン・ロビンソン主教は公然同性愛者だが、「平手打ちを受けたようだ」と言う。一方ウォレン氏は、同性婚を支持する勢力などからの反発を予測した上でのオバマ氏の勇断を賞賛すると表明した。
オバマ氏は、同性婚を支持する自分の立場に変わりはないとした上で、「特定の問題で意見が違っても、結束が重要だ」とし、就任式でも国民の結束をアピールする意向を示している。
◎「ゲイもストレイツも愛している」とウォレン牧師
【CJC=東京】バラク・オバマ次期米大統領の就任式に祈祷者として出席することになった、カリフォルニア州サドルバック教会のリチャード・D・リック・ウォレン牧師(54、南部バプテスト連盟)が12月20日、イスラム教徒、他宗教の信者、共和党員も民主党員をも愛しており、彼がまた「ゲイ(同性愛者)もストレイツ(同性愛でない人)」も愛している、と語った。
皆が常にすべてについて合意することを期待するのは非現実的だとして「手に手をとって歩くために意見が一致する必要がない」と言う。同性愛者の権利を主張するグループからの反発に弁明したものと見られる。
◎バチカン声明、「ES細胞利用や体外受精は罪」
【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)教理省は12月12日、ヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)の医学利用や体外受精を、生命倫理な観点から罪とみなすとする声明「ディグニタス・ペルソナエ」(人間の尊厳)を教皇ベネディクト十六世の認可を経て発表した。
クローン技術の人間への応用や、治療やワクチン製造目的でのES細胞利用について、「人間の尊厳を損ねるもので、生命倫理の観点から許容できない」とした。体外受精についても、胚の着床を妨げたり胚の排除につながる行為であり、「中絶の罪に相当する」など、カトリック教会の立場をあらためて示した。
◎バチカンは性差別に関する国連宣言案に反対
【CJC=東京】国連総会本会議に12月18日、同性愛の非犯罪化を求める宣言案がアルゼンチンのホルヘ・アルグエロ国連大使が代表して提出された。加盟国192カ国のうち、日本など66カ国が賛成し署名したが、アラブ諸国の一部やバチカン(ローマ教皇庁)は拒否した。
宣言案は世界人権宣言60周年を記念して提出された。法的拘束力は持たないが、国連の人権機構がこれまでくり返してきた性的指向や性同一性に関する人権を改めて確認した。ナバネーセム・ピレイ国連人権高等弁務官は、提案を歓迎している。
バチカンの国連常駐オブザーバー、セレスティーノ・ミリオーレ大司教は10日、「性的指向と性同一性」に基づいて差別を非難する決議案には反対だ、と語っている。
聖座(教皇庁)は、提案が同性愛者に対する暴力を非難していることを承認し、「彼らに対しすべての刑事罰を科すことを止める」という呼び掛けには同意するが、宣言案は、呼び掛けや、合意の域を越えたものだ、と大司教は言う。
大司教は、「性的指向と性同一性」という用語は、国際法では認められていないし、それを盛り込んだ決議は「法律に深刻な不確定さを生み出し、新たな、また既存の人権会議や基準に踏み込んだり、制定する国家の力を損なうことになる、と説明した。
イスラム諸国会議機構は60カ国の賛同を得て、「反差別と平等の原則は認めるが、普遍的人権は特定の集団の権利に焦点を当てようとするものではない」との声明を公表している。
◎シュラー牧師の息子がクリスタル・カテドラル主任退く
【CJC=東京】米カリフォルニア州ガーデングローブのメガチャーチ『クリスタル・カテドラル』は、ロバート・A・シュラー主任牧師(54)が退任したと12月15日発表した。
同氏は教会の創設者ロバート・H・シュラー牧師の息子。同教会から送り出されるテレビ番組「力の時」からも降板させられている。理由は明らかにされていない。
《メディア展望》
=カトリック新聞(12月21日)=https://www.cwjpn.com
★不況、外国籍信徒を直撃=名古屋教区・豊橋教会=支援体制を強化
★教皇庁教理省=生命倫理で新指針=「道義に反する研究」に警告
★教会学校恒例の取り組み=手話で祝うご降誕=札幌教区・旭川六条教会
★在日の子 日本人の子 共に育つ=京都「希望の家カトリック保育園」
★クリスマス献金で始まった海外教育支援の実り=エスナック
=キリスト新聞(12月25日)=https://www.kirishin.com
★説教塾20周年で全国シンポジウム=私塾乗り越える転換期="わたしの先を歩いてほしい"=主宰・加藤常昭氏が講演
★聖公会神学院=アングリカニズムの世界的神学者ら集う=日本の教会の役割を示唆
★杉岡広子さん「クリスマス聖書人形展」=造形通して聖書伝える=バンコク空港封鎖解除で無事開催
★長崎="イラン人男性に洗礼を"=柚之原寛史牧師が入管に要請
★"「存在は善」の視点を"=日宗連「宗教と生命倫理」シンポで関正勝氏が発題
=クリスチャン新聞(12月21日)=https://jpnews.org
★シルクロードを西へ=イスラム圏への玄関=ウィグルは日本人に開かれた宣教地
★現代日本における伝道の神学=福音主義神学会全国研究会議で私信と内実掘り下げ
★ブラジル移民100周年=20万人集まった「日本祭」=教会協力でトラクト配布
★クリスマスは希望・志・感謝を祝う=国会クリスマス晩餐会
★英国=「ザ・プリースツ(聖職者)」がアルバムチャート5位に
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