世界キリスト教情報 第934信(2008.12.08)
- ロシア正教会モスクワ総主教アレクシー二世死去
- 米聖公会の分裂が公然化
- クラスター爆弾禁止合意、世界教会協議会が評価
- 宗教と気候問題、スウェーデンで国際会議
- 教皇、アルメニア教会のアラム一世と会見
- バチカン近くで同性愛支持者が抗議
- オバマ氏に投票した信徒は告解を、と1司祭が指示
- ヨルダン川西岸で家屋占拠のユダヤ教徒入植者を強制排除
- 違反には「説教」、ロシア正教会が交通取り締まりに協力
- カナダで防寒強化ジャケット配布キャンペーン
- 《メディア展望》
◎ロシア正教会モスクワ総主教アレクシー二世死去
【CJC=東京】ロシア正教会の最高指導者、モスクワ総主教のアレクシー二世が12月5日、モスクワ郊外の自宅で死去した。同教会が発表した。79歳。死因は明らかにされていないが、心臓手術を受けたといわれていた。ノーボスチ通信によると死因は心不全。正教会は6カ月以内に新しい総主教を選出する。
1929年2月、エストニアの首都タリン生まれ。正教聖職者だった父の影響で信仰を深め、スターリン体制下の47年、レニングラード(現サンクトペテルブルク)の神学校に入学。61年に聖職者になり、86年レニングラード・ノブゴロド府主教。ソ連崩壊直前の90年6月に第15代のモスクワ総主教となった。
ソ連崩壊後は故ボリス・エリツィン、ウラジーミル・プーチン両政権と、「正教会は政権の一機関」ともいわれるほどに良好な関係を築き、「大国復活」を掲げたプーチン政権が国民の精神的求心力として正教会をてこ入れするなかで影響力回復に努めた。スターリン時代に破壊されたモスクワ中心部のキリスト救世主大聖堂の再建も果たした。
2007年にはプーチン前大統領の仲介でロシア革命をきっかけに分裂した国内外のロシア正教会が80年ぶりに和解した。
カトリック教会に対して強い警戒感を示し、前教皇の故ヨハネ・パウロ二世や現教皇ベネディクト十六世には「改宗意図がある」と非難し、会談には消極的だった。
インド訪問中のメドベージェフ大統領は6日からのイタリア訪問を延期し帰国を決めた。プーチン首相は「国家に大きく貢献した人物だった」と述べている。
◎米聖公会の分裂が公然化
【CJC=東京】女性や同性愛者の聖職任命など性に関わる問題で揺れていた米聖公会(英国国教会)に正式な分派が誕生した。米国とカナダの保守派主教、司祭、信徒たちで結成する『コモンコース・パートナーシップ』が、シカゴ郊外ホイートンの福音自由教会を会場に、『アングリカン・チャーチ・イン・ノースアメリカ』を12月3日発足させた。700教会、会員約10万人が加盟する米聖公会に代わる組織、「管区」と自認している。
当面は米聖公会を離脱したカリフォルニア州フレスノのサンウォーキン教区、ピッツバーグ教区、イリノイ州クインシー教区、テキサス州フォートワース教区で構成される。
同日発表された声明は、「北アメリカに英国国教会を登場させるものと自らを位置づけている。「教憲草案」の公表は、聖書的、宣教的な北アメリカの英国国教会を目指す確固とした1歩だ」と、ロバート・ダンカン前ピッツバーグ主教は言う。同氏はこの9月に米聖公会を離脱、主教職を罷免されている。
聖公会の霊的最高指導者カンタベリー大主教のローワン・ウイリアムズ氏は、管区設立には特定の手続きがあり、手続きは一度開始されても終了までに時間が掛かる。今回のシカゴでの『コモンコース・パートナーシップ』に関してはその手続きはまだ始まっていない、と語った。同派の通信エピスコパル通信が報じた。
『コモンコース・パートナーシップ』は、アメリカン・アングリカン・カウンシル、アングリカン・コーリション・イン・カナダ、アングリカン・コミュニオン・ネットワーク、アングリカン・ミッション・イン・ザ・アメリカズ、アングリカン・ネットワーク・イン・カナダ、コンボケーション・オブ・アングリカンズ・イン・ノースアメリカ、フォワード・イン・フェイス・ノースアメリカ、リフォームド・エピスコパル・チャーチなどの8グループとケニア、ウガンダ、南半休(南ア)聖公会と連携する主教や教会の連合体が加盟している。
◎クラスター爆弾禁止合意、世界教会協議会が評価
【CJC=東京】非政府組織(NGO)が主導した形で世論を動かした「クラスター(集束)爆弾禁止条約」がノルウェーのオスロ市庁舎で12月3日調印式が行なわれ、各国代表のほか80カ国以上のNGO関係者約500人も参加した。
世界教会協議会(WCC)のサミュエル・コビア総幹事は、100を超える国家による調印を「人道的で、歴史的な勝利」とし「世界の大多数の政府」が、小型爆弾を広範に散布することで「無差別に殺人をする」の爆弾の使用を禁止する条約に調印したことを評価した。
「クラスター爆弾禁止という、長年にわたる問題解決へ国際社会が動き出すのを促進するために、教会も含め300を超える市民社会グループが結束したことはすばらしい」と、5億5000万人のキリスト者が属す349教派で構成されるWCCの指導者として指摘したもの。ENI通信が報じた。
コビア氏は「オスロ条約を実施する全政府は、米、ロシア、中国、インド、パキスタン、イスラエル、ジンバブエなど調印しなかった国に圧力をかける」よう呼び掛けた。
オスロでは、バチカン市国も調印した。代表のドミニク・マンベルティ大司教は、各国に「強い政治的なシグナル」を送るために、バチカンは条約に署名、批准したと述べた。爆弾を生産、輸出したり、使い続ける国は、多数の民間の犠牲者の声に耳を傾けるべきだ、と語った。
条約非参加国が保有するクラスター爆弾は、世界の保有数の7〜9割との推定もある。
クラスター爆弾禁止条約は、ノルウェーなど有志国とNGOが08年中の条約作りをうたうオスロ宣言を採択したのが07年2月、今年5月にアイルランドのダブリンで111カ国代表の協議で合意に達した。1997年の対人地雷禁止条約に続くもの。
批准国には条約発効から8年以内に保有爆弾の廃棄を義務づけている。30カ国の批准を経て、2009年後半にも発効する見通し。
◎宗教と気候問題、スウェーデンで国際会議
【ウプサラ=ENI・CJC】環境運動が宗教と関わるべき理由が、スウェーデンのウプサラで11月28〜29日開かれた国際気候サミットで話し合われた。問題提起したのは『宗教と維持連合』のマーチン・パーマー事務局長。サミットは、スウェーデン教会(ルーテル派)のアンデルス・ウエイリド監督の招請で開催されたもので、各宗教から約1000人が参加した。
「信仰共同体は、気候変動問題について重要な役を果たせる」と欧州委員会のマルゴット・ウォルストローム副会長は言う。宗教は政治から分離されるべきであるけれども、気候問題については政府と宗教団体は協力しなければならないと強調している。
サミットは世界の政治と宗教指導者に呼びかける宣言を採択した。富裕地域での二酸化炭素排出の広範、急速な削減を要求している。宣言には各宗教の指導者や学者30人が署名した。
ウエイリド監督と世界教会協議会(本部ジュネーブ)は宣言を、12月1日からポーランドのポズナニで開かれた気候変動に関する国連の国際会議に提出する。
◎教皇、アルメニア教会のアラム一世と会見
【CJC=東京】アルメニア使徒教会のキリキア総主教(カトリコス)アラム一世が11月23日から27日までローマとバチカン(ローマ教皇庁)を訪問、24日には教皇ベネディクト十六世と会見した。
アラム一世は、中東やキプロス、カナダ、米国などのアルメニア教会の代表者からなる使節団と共に訪問したもの。
アラム一世は1997年、バチカンで前教皇ヨハネ・パウロ二世と会見している。ベネディクト十六世との出会いは今回が初めて。
バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はアラム一世らを歓迎し、レデンプトリス・マーテル礼拝堂でエキュメニカルな祈りの集いを行った。
教皇は挨拶で、世界の平和と和解の推進のために、諸キリスト教教会間の対話がますます重要であることを強調した。また、中東をはじめ世界のいくつかの地域におけるキリスト者への迫害と暴力を深く憂慮して、教皇は、様々な民族・宗教共同体が互いに受け入れあうことによってのみ、連帯と正義に満ち、すべての人の権利が尊重される平和な社会を築くことができると述べた。
◎バチカン近くで同性愛支持者が抗議
【CJC=東京】同性愛の権利支持者約200人がバチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場付近で12月6日、同性愛者に対するバチカンの方針に抗議するデモを展開した。
イタリアの政治家も参加したこのデモ、各国で進められている同性愛容認の動きにバチカンが反対していることに抗議するもの。
バチカンの国連駐在代表セレスティノ・ミリオレ大司教は、同性愛容認を国連が宣言することに、聖座(バチカン)は反対すると語った。
バチカンは、差別という不正な形は避なければならないとするものの、性差別に対する国連決議は、同性婚を容認を各国に強いることになると懸念している。
カトリック教会は、同性愛行為が罪だと教えている。
◎オバマ氏に投票した信徒は告解を、と1司祭が指示
【CJC=東京】米大統領選挙の争点の一つが妊娠中絶。カトリック教会は反対の立場だが、容認派のバラク・オバマ氏(民主党)に票を入れた信徒も少なくないと見られている。
カリフォルニア州ストックトン教区モデストのセント・ジョセフ教会では主任のジョセフ・イージョ司祭が、オバマ氏に投票した信徒は、次のミサを受ける前に、告解することを考えるべきだ、と1万5000人以上いる信徒に伝えた。教区全体では20万人の信徒がいる。妊娠中絶する権利を擁護するオバマ氏の姿勢は、全米のカトリック教会に反発を呼んでいるが、司祭がこのような意思表示をしたのは、今回が初めて。
ストックトン教区のスティーブン・ブレア司教は、イージョ司祭とは別の意見で、どのように投票したかを司祭に明かすべきだ、と思う必要はない、と言う。
中絶支持を理由に投票したのなら問題だが、候補者が全ての問題で私たちの立場と同じなわけではないし、カトリック者のほとんどは経済問題で態度を決めたと思う、と同司教は語った。「オバマ氏に投票した司祭も多いだろうし、司教の多くもそうだったと思う」そうだ。
◎ヨルダン川西岸で家屋占拠のユダヤ教徒入植者を強制排除
【CJC=東京】イスラエルの軍と警察は12月4日、占領地ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ヘブロンで、1軒の建物を違法に占拠していた約200人から250人の過激なユダヤ人の入植者らを強制排除した。入植者は投石などで抵抗。当局は催涙ガスで応戦し、双方の計約35人が負傷した。
入植者らはこの建物をパレスチナ人所有者から購入したとして、07年3月から住み着いていた。ただパレスチナ人側は売却を否定している。イスラエル最高裁は11月中旬、所有権を認めず明け渡しを命じていた。
入植者の多くはユダヤ教正統派で、入植を「神に与えられた『祖先の地』への帰還」と正当化。付近のパレスチナ人住民と衝突を繰り返す一方、最近では強制排除を阻止しようとして、当局に対しても暴力を激化させていた。
入植者たちの暴力や家屋占拠が頻発するヘブロンで、入植者の強制排除が行われたのは06年5月以来。
ヘブロンでは4日夕から夜にかけ、極右ユダヤ人の若者グループがパレスチナ人に発砲や投石を繰り返し、AP通信によると、パレスチナ人計17人が負傷した。極右グループはまた、パレスチナ人の家屋数戸や車両などに放火した。強制排除に反発し、騒ぎを起こしたと見られる。ヘブロン以外の西岸の数カ所やエルサレムで、極右グループが通行車両に投石し、20人以上が拘束された。
◎違反には「説教」、ロシア正教会が交通取り締まりに協力
【CJC=東京】ロシア各地で、ロシア正教会の司祭らが違反ドライバーに「説教」をするなど、警察と教会が協力した交通啓蒙運動が行われている。AFP通信が報じた。
12月3日のノヴィエ・イズベスチヤ紙によると、正教の司祭と警官が1組になってパトロールと交通違反取り締まりにあたっているのは、モスクワ南東700キロにあるペンザ州クズネツク市。
シベリア地方東部の都市チタ市では11月、旅人の守護神といわれる聖ニコラスの像を、司祭らがドライバーに配るキャンペーンを行った。
極東のカムチャツカ半島でも、「神とともにある生に遅すぎることはない」と題された交通キャンペーンで、危険な交差点に聖水をまいている。
◎カナダで防寒強化ジャケット配布キャンペーン
【CJC=東京】カナダの厳しい冬、路上で生活するホームレスの人びとを支援しようと、特製防寒コートの配布キャンペーンが始まった。名付けて「氷点下15度ジャケット」は防寒防風仕様に加え、新聞紙を詰めて気温の低下をしのげる特別ポケットが腕、胴、フード部分に用意されている。AFP通信が報じた。新聞紙は保温効果が大きい。
この「氷点下15度ジャケット」キャンペーンに共鳴し、オークション用のサインをした著名人は、英ロックバンド『レッド・ツェッペリン』のボーカリスト、ロバート・プラント、俳優のマイケル・ケイン、コメディ俳優のジョン・スチュワートなどがいる。
ジャケットを製作したのは、北米をターゲットとする広告会社TAXI。12月15日まで、ネットオークションで競売にかけ、収益金はジャケット3000枚とともに、救世軍に寄付する。救世軍では11月22日から食糧の無料配布を始めた。
救世軍のアンドリュー・バーディット広報担当は、ホームレスの人たちの尊厳を尊重していないアイデアではないかと懸念したが、「新聞を詰めても見た目が気にならず、着心地も快適なデザイン」になっており、配布に協力することにした」と言う。
《メディア展望》
=カトリック新聞(12月7日)=https://www.cwjpn.com
★世界人権宣言60周年に当たり司教団メッセージ発表
★神学校の新時代を前に=東京カトリック神学院ザビエル祭
★キリスト教一致祈祷週間に向け=中央協・NCC=小冊子とポスター作成
★「宣教地司祭育成の日」=昨年の献金、インドの神学院などに
★「文化的影響」の議論を=教皇、諸宗教対話で指摘
=キリスト新聞(12月6日)=https://www.kirishin.com
★入管収容は人権問題、国際的な責任果たそう=キリスト者・今野東参院議員="東方落語"で難民支援
★「世界人権宣言」60周年で司教団がメッセージ=来年には全国でシンポジウム
★植村正久生誕150周年記念会=東京・富士見町教会=教会形成に果たした役割検証
★日本バプテスト連盟宣教会議・定期総会=新潟地区1教会に合併
★クリスマス・正月をクロアチア聖歌で=病床に"癒しの音楽"=訪問ヴァイオリンコンサート
=クリスチャン新聞(12月7日)=https://jpnews.org
★北朝鮮はなぜキリスト教許容しない?=脱北者が証言=金日成神格化が原因
★国連=「宗教間対話を」会合=各国首脳ら参加
★OCC宣教セミナー=どのように人とかかわるのか=牧会、若者伝道の現場に学ぶ
★米聖公会離脱教区3番目=聖書や同性愛問題で
★早稲田奉仕園100周年記念シンポ=「友愛・奉仕」精神で取り組む福祉の実践=あすなろ会卒業生ら現場の「声」語る
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