世界キリスト教情報 第911信(2008.06.30)
- 聖公会保守派が『エルサレム宣言』発表
- 北京五輪で聖書配布可能に
- 教皇、28日「パウロ年」を開幕
- ローマ教区教皇代理司教ルイーニ枢機卿引退
- 教皇、香港とマカオ司教団と接見
- 聖書翻訳促進へ世界福音同盟が国際ウィクリフと協力
- 伊政府がロマ人全住民の指紋採取へ、人権団体は反発
- ショパンの死因追究へ研究者が心臓のDNA鑑定要求
- 《情報レムナント》
- 《メディア展望》
◎聖公会保守派が『エルサレム宣言』発表
【CJC=東京】全世界約8000万人の英国国教会(聖公会)信徒のほぼ半数を代表する『GAFCON』(グローバル・アングリカン将来会議)運動と呼ばれる保守派が、6月22日から29日までエルサレムで集会、最終日に声明と『エルサレム宣言』を発表した。
会議は保守派の首座主教たちに、宣言に沿って「教会の中の教会」とも言える協議会の結成を呼び掛けた。ただ「アングリカニズム」(英国国教会主義)から完全な離脱、分裂をするものではなく、信仰の基盤を守ろうとしているだけだとしており、カンタベリー大主教との関係は否定せず、世界聖公会共同体の交わりの中に留まるものとしている。
ただ聖公会の最高会議である『ランベス会議』は7月16日から8月4日まで開催されることになっており、それを目前に控え、同派の霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏に対する重大な「挑戦」となった。
エルサレム会議には少なくとも英国国教会の主教2人が加わっているほか、アフリカ、南米、オーストラリアの教会指導者など1148人が参加しており、「カンタベリーの植民地的」支配の終わりを指向するものと見られている。
協議会は、『GAFCON』に参加したケニア、ナイジェリア、ルワンダ、ウガンダ、西アフリカ、南アメリカの首座主教によってまず結成されることになろう。
『GAFCON』は各国の「正統派」に、米国とカナダの教会との連携を強めるよう働きかけている。両教会の「自由派」指導者が、聖書の教えから逸脱し、公然同性愛者を主教に叙階したり、同性間の「結婚」祝福などを行っていることに対抗しようというもの。
エルサレム声明は、共同体の中に、自由派の路線に沿って、聖書を書き直すという「誤った福音」を用いる動きがあり、アメリカとカナダで幾つかの教区が離脱して、アフリカと南アメリカの聖公会に加わることを余儀なくされた、と主張、また英国国教会主義の「植民地的な構造」が、同性愛の聖職叙階と同性間の結合を祝福することで規則を破った教会に制裁を課さなかった、としている。
◎北京五輪で聖書配布可能に
【ロンドン=CJC】中国で印刷された聖書と福音書パンフレットが今夏の北京五輪の選手村で配布可能になった、と英聖書協会が発表した。これまで中国政府が五輪大会中での宗教活動を禁止すると伝えられていただけに注目される。
英聖書協会が各国聖書協会の協力を得て経費40万ドル(約4200万円)を支援、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの福音書5万冊が中国語と英語で印刷される。中英両語併載の旧新約聖書1万冊と新約聖書3万冊も提供することが北京五輪組織委員会で承認されたという。また組織委は福音書に五輪ロゴを使用することを無償で認めた。
今回の決定は、南京の愛徳印刷所の新施設開設式の際、中華基督教会(プロテスタント)三自愛国運動全国委員会のフー・シャンウエイ委員長によって発表された。新印刷設備は、年間1200万冊の聖書印刷が可能。五輪に間に合うよに福音書を印刷するという。
英聖書協会のジェームズ・キャットフォード代表は、「北京五輪のために聖書や福音書を刊行することで、中国の教会を支援出来る。スポーツの偉大な祭典は、全中国と全世界から集まる多数の選手と観客に、生命を変える聖書のメッセージを届ける特別な機会だ」と語った。
8月8日に始まる五輪大会には観客200万人、選手1万6000人と見積もられている。
礼拝所も、選手村の中に設置された。北京の教会が、礼拝や祈りのために協力を依頼されている。
福音書は北京の他、各種競技の行われる青島、上海、瀋陽、天津、秦皇島の教会でも提供される。
◎教皇、28日「パウロ年」を開幕
【CJC=東京】バチカン放送によると、聖ペトロ・聖パウロの大祝日前日の6月28日夕、教皇ベネディクト十六世はローマの城壁外の聖パウロ大聖堂で第一晩課を行い、それと共に異邦人の使徒・聖パウロの生誕2000年を記念する「パウロ年」を開幕した。
この第一晩課の集いには、正教会エキュメニカル総主教バルトロメオス一世をはじめ、諸教会の代表者も参加した。
教皇は1年前の6月28日、今年6月28日から2009年6月29日までを「パウロ年」とされることを公式に宣言している。
「パウロ年」には、同使徒が殉教し葬られたローマをはじめ、各国の教会で記念的な司牧行事が予定されている。特にローマの城壁外の聖パウロ大聖堂では、黙想や、パウロの書簡の再考、巡礼、典礼行事、エキュメニカルな集いなどが行われる。
◎ローマ教区教皇代理司教ルイーニ枢機卿引退
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は6月27日、ローマ司教区の教皇総代理カミッロ・ルイーニ枢機卿(77)の定年による引退を承認、後任にバチカン(ローマ教皇庁)最高裁判所長官アゴスティーノ・ヴァッリーニ枢機卿(68)を任命した。
また最高裁判所の新長官にレイモンド・レオ・ブルク大司教(セントルイス)を任命した。
ヴァッリーニ枢機卿は1940年、ローマ県ポーリ生まれ。64年、司祭叙階。教皇庁立ラテラン大学などで教会法の教鞭を取った。89年、ナポリ補佐司教。2004年、最高裁判所長官に。06年、枢機卿任命。
◎教皇、香港とマカオ司教団と接見
【バチカン市=ZENIT・CJC】教皇ベネディクト十六世は6月27日、中国の特別行政区である香港とマカオの司教団と接見した。司教団は5年ごとの定期的訪問「アドリミナ」でバチカン(ローマ教皇庁)を訪れていたもの。
教皇は「あなた方の兄弟である中国本土の司教たちが使徒ペトロとパウロの墓に、ペトロと普遍教会の後継者との一致の徴として巡礼する日がすぐにも来るよう願い、神に祈っている」と語った。
教皇はさらに両教区が「本土の教会形成のために援助すること」を要望、両教区の援助組織『カリタス』が広範に専門的に行っている活動を評価した。
◎聖書翻訳促進へ世界福音同盟が国際ウィクリフと協力
【CJC=東京】世界福音同盟(WEA)は、全世界規模の提携団体「グローバル・パートナー」として国際ウイクリフを選定した。聖書に堅く立つ変革を促進する同盟の努力を強化するものとしている。
WEAのジェフ・タニクリフ国際部長は「世界規模のネットワークとして、ウィクリフは世界で最もよく知られ、尊敬されるキリスト教宣教の一つ。WEAは、神の言葉が訳出されていない世界の言語共同体のため解決策を進めているウィクリフの目的を支持する」と語った。
国際ウィクリフは各国49のウィクリフの連合組織。その4分の1は自国内で聖書翻訳と識字活動を進めている。
現在なお聖書が訳出されていない言語が2200以上あるとして、国際ウイクリフはそれら言語へ2025年までに訳出する「ビジョン2025」計画を打ち出している。
国際ウイクリフのカーク・フランクリン代表は「WEAのグローバル・パートナーとなったことに興奮している。私たちはWEAが世界中に持っている影響力を尊敬する。私たちのねらいは、全ての国に福音を伝え、キリスト中心に社会を変革することで神の国を拡張することだ。WEAと翼下の教会と協力できればすばらしい」と語った。
グローバル・パートナーは、WEAの使命と目的に専門分野で貢献する国際機関から選定される。現在、国際アドボケイツ、クリスチャン・メディア・コーポレーションなど10団体が選定されている。
◎伊政府がロマ人全住民の指紋採取へ、人権団体は反発
【CJC=東京】イタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ政権は、治安強化のための移民規制の一環として、「ジプシー」と呼ばれ、差別されていたがロマ人が集団で住むキャンプの人口調査をして住民全員の指紋を採取することを決めた。数カ月以内に実施する方針。
ロベルト・マロニ内相は強硬な移民規制を唱える『北部同盟』に属しており、約16万人とされるロマ人について「実際より10万人少ない」と、多数の不法滞在者がいるとの見方を示している所から、人権団体は「特定民族からだけ採取するのは明らかな差別」と激しく批判している。
ロマ人の4割弱はすでにイタリア国籍を取得しており、それ以外も多くはルーマニアなど欧州連合(EU)域内からの移民で、滞在許可取得にも指紋採取は必要とされない。指紋採取が条件とされる場合でも、子どもには適用されないところから、今回の措置が「キャンプの住民全員」として子どもも含めていることに反発が広がった。
◎ショパンの死因追究へ研究者が心臓のDNA鑑定要求
【CJC=東京】AFP通信によると、19世紀ポーランドの音楽家フレデリック・ショパンは39歳のとき肺結核で亡くなったとされるが、死因が「嚢胞性線維症」であると主張するポーランドの医学研究者らが、文化省に対してショパンの心臓のDNA鑑定を認めるよう要請している。
心臓は、ワルシャワの聖十字教会に埋葬されている。彼の意向により、1849年に姉によってポーランドに持ち帰られたものだ。第二次世界大戦中に教会堂の3分の1はナチスによって破壊され、ショパンの心臓も持ち出されたが、戦後教会は修復され、ショパンの心臓も元に戻された。なお、遺体はパリのペール・ラシェーズ墓地に埋葬されている。
嚢胞性線維症の専門家、ウォイチェフ・シシイ氏は、ショパンの幼少時代からの「虚弱体質、肺感染症にかかりやすい体質、ぜんそく、せき」などの症状は嚢胞性線維症に典型的なものだと言い、「彼が嚢胞性線維症だったことを立証できれば、同じく嚢胞性線維症の患者、特に子どもにとっては、自分だって大きなことを成し遂げられるんだという大きな勇気になる」と語った。
なお、聖十字教会側は、DNA鑑定に関してなんの連絡も受けていないとしている。文化省は、現在行われている研究を考慮して「適切な決定」を下すとしている。
《情報レムナント》
▽宗派超えたが組織まとまらず 宗教サミット2カ所で開催
北海道洞爺湖サミットに合わせ、主要8カ国(G8)首脳に宗教的な寛容や協調の精神を訴えようと、日本の宗教者の呼びかけで二つの宗教サミットが開かれる。一本化も検討されたが、組織づくりや人事などをめぐり意見が食い違い、関西と札幌に分かれて開催することになった。
27〜29日に大阪、京都で開く「G8宗教指導者サミット」には、約30の国や地域から約100人が参加。環境、民族、アフリカをテーマに討論し宣言文をまとめ、G8首脳に提言する。主催の実行委員会には仏教、神道、キリスト教、新宗教などの関係者が宗派を超えて参加し、名誉会長には全日本仏教会の松長有慶会長が就任した。
7月2、3日には札幌市で「平和のために提言する世界宗教者会議」が開かれ、20余カ国からイスラム教、キリスト教、仏教、神道などの宗教指導者100人が出席。気候変動、貧困、テロ問題などを討議し、G8首脳に提言する。ニューヨークに本部を置き、宗派を超えた対話や協力を呼びかける世界宗教者平和会議(WCRP)の日本委員会が主催し、札幌会議の名誉顧問には松長会長も名を連ねる。(朝日新聞)
《メディア展望》
=カトリック新聞(6月29日)=https://www.cwjpn.com
★環境問題と宗教者の役割=世界宗教者平和会議日本委=G8サミットに向け学ぶ
★ペトロ岐部と187殉教者=列福式を控えて広報の「責務」考える=全国広報担当者会議
★社会司教委=G8サミット開催に当たり共同祈願文を発表
★「不安感が敵を決める」=「『死刑を止めよう』宗教者ネット」がセミナー
★路上生活者ら支援の山友会=認定NPO法人に=厳しい審査をクリア
=キリスト新聞(6月28日)=https://www.kirishin.com
★ミャンマー=「共に歩める道」模索=早大YMCA 帰国の学生が現地報告
★四川省大地震=求められる"心のケア"=国際飢餓対策機構=犠牲者の多くは中学生
★世界最古の教会?=ヨルダン北部リハブで
★永井博士生誕100年="核の怖さ伝えたい"=「長崎の鐘」を舞台化=東京・長崎で
★クリスチャントゥデイ=救世軍少佐らへの告訴で日基教団総会議長=「同一の線に立てない」
=クリスチャン新聞(6月29日)=https://jpnews.org
★岩手・宮城内陸地震=教会の課題実感=「山間部に福音届いていなかった」
★オバマ大統領候補=所属教会を退会
★カンバーランド長老=日本で総会を開催=国境超えた教会を具現
★エキュメニカル協会公開研究会=「氷河期」に備え一致を=日本宣教の将来に焦点
★アルファ・ジャパン新事務所開設=新代表に永井信義氏=拡大宣教学院にリソースセンター
=リバイバル新聞(6月29日)=https://www.revival.co.jp
★性的とらわれからの解放=ポルノ、エイズ、同性愛=クリストファー・ユアン氏「証の集会」
★CFNI賛美チームが来日=15箇所で賛美講座と路傍伝道
★会社で賛美と礼拝=オーサカ・ユニークの「ユニークチャーチ」
●世界キリスト教情報●ご案内
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