世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第905信(2008.05.19)

  • 中国四川省地震被害に教界団体も始動
  • 四川省大地震で教会堂被災、信徒も多数消息不明
  • ドイツではキリスト者減少の一方で、教会が資金難
  • カナダで初、同性愛者の牧師誕生へ
  • イラク大司教殺害事件、被告に死刑判決
  • アインシュタインの手紙競売、「宗教は"子供じみた迷信"」
  • ガンティン枢機卿逝去、教皇庁司教省元長官
  • 《情報レムナント》
  • 《メディア展望》

◎中国四川省地震被害に教界団体も始動

 【CJC=東京】中国の教会やキリスト教団体も、四川省での大地震災害への対応を始めている。すでに初動チームを派遣したが、現在の最優先課題は、被災地域へ通じる道路を開通させ、家を失った人たちに食糧と避難シェルターを提供すること。
 プロテスタント系の『愛徳基金』とカトリック系の『進徳公益』は地元の教会ネットワーク、協力団体、さらには国内のNGOと連絡を取り災害への緊急対応に動いている。両団体ともこれまでの緊急救援での経験を生かし、地震被災者のために食糧、水、薬品、衛生資材、キルト布団、シェルターなどの提供に努力している。
 教皇ベネディクト十六世は14日、恒例の水曜日の一般接見で、大地震による多数の死者・行方不明者、大規模な被害状況を憂慮、震災下の厳しい試練に置かれた人々への精神的一致を示されると共に、救援活動にあたる人々に神の支えを祈った。
 世界162の国・地域のカトリック救援団体『カリタス』の連合体『国際カリタス』も救援を始めたが、中国の『進徳公益』は公認教会系の団体であることも考慮してか、香港カリタスと豪カリタスを通じて活動を展開している。
 ジュネーブに本拠を置くプロテスタント各派の救援組織の連合体『国際ACT(教会共同行動)』は、中国の愛徳基金から災害情報を受け取っているが、それによると、被災地への通信・交通手段が破壊され、連絡をとるのが非常に困難という。愛徳基金は震源地から160キロ離れた成都にスタッフを派遣、地震発生の5時間後には到着した。香港聖公会(英国国教会)と基督教協議会は、救援活動のための資金を愛徳基金を通じ拠出した。
 中国の公認カトリック教会系信徳通信は、四川省各地で教会も被害を受け、日曜日のミサのために他の場所を探さなければならないと報じている。


◎四川省大地震で教会堂被災、信徒も多数消息不明

 【CJC=東京】5月12日に中国四川省を中心に発生した大地震で、各地のキリスト教会堂も破壊したほか、信徒の消息不明も多数に上っていると見られる。その中で聖職者や海外から入国している活動家も遭遇していたことが明らかになった。
 中国の公認カトリック教会系信徳通信は、甘粛省平凉教区のハン・イデ司教は、四川省各地の村訪問の最中で、地震発生の時には3分間もの揺れを体験したという。天水教区の司祭は、教会堂は破壊され、そこに住んでいた少年が負傷したと語った。重慶では、ヘ・ゼキン=補佐司教がベッドから起きあがった時、「窓の近くに掲げてあった十字架が激しく揺れていたので、外に出て多くの人といっしょに走った」と言う。
 教会員の1人は子どもを抱えながら、足が骨折しているのに逃げようと懸命だった、と同司教は信徳通信に語っている。
 メノナイト中央委員会から派遣されていた活動家8人も遭遇していたことが明らかになった。米国7人、ニュージーランド1人は英語教師として四川省と重慶市に滞在中だったが、全員無事と同委の北京駐在カスリーン・スーダーマン氏は言う。


◎ドイツではキリスト者減少の一方で、教会が資金難

 【CJC=東京】ドイツのキリスト者は減少する一方で、教会が資金難に陥っている。元来、教会の事業は非課税とされ、運営費は「教会税」でまかなわれ、牧師や司祭は「公務員」扱い。「宗教はキリスト教」と申告しなければ、所得税の1割弱の「教会税」は徴収されないから、それも減少の理由とされている。とにかく学校や幼稚園の経営や国内外の伝道・布教、さらには老人ホームなど社会福祉・奉仕の活動費をまかなうのは容易なことではなく、コスト削減のためスタッフを削減し、会堂を他の用途に宛てたり、リースに出した教会もある。
 独立系のIPS通信が、ついに「身売り」してレストランとなった教会も出たと報じた。
 ドイツ国内約3万5000の教会の敷地は合計700万平方メートルに達する。しかし、今後全国の教会の30~40%が閉鎖される可能性があるという。
 2000年の教会収入は、総額88億ユーロ(1ユーロは157円)だったが、03年には85億ユーロ、04年には70億ユーロに減少している。信者数も、1990年には2800万人から、カトリックで約200万人、プロテスタントで400万人減少している。
 IPS通信によると、ベルリン、ハンブルグ、ケルンなどの都会で資金難が目立ち、ベルリンでは、1894年に建設されたルーテル教会の取り壊しを避けるため2002年、ベルリン・アメリカン教会(ACB)へのリースを決定、現在ではACBの所有となっている。
 アーヘンでは、スタッフの3分の1を削減した教会もあり、ビールフェルトでは、1897年建設の聖マルチン教会がレストランに変身したという。


◎カナダで初、同性愛者の牧師誕生へ

 【CJC=東京】カナダ・トロントの聖十字福音ルーテル教会は5月16日、同性結婚をしている同性愛者の男性ライオネル・ケトラ氏を副牧師に任命した。
 教会は、この任命が「ホモセクシャルを公言し実践している」人物は聖職者から除外するという同派の差別的教義に反するとしながらも、ケトラさんを採用する方針を強調した。
 報道によると、同性愛者の牧師の叙任は隣国米国では10例以上報じられているが、カナダでは初めて。


◎イラク大司教殺害事件、被告に死刑判決

 【CJC=東京】イラク北部のモスルで2月29日、カルデア典礼カトリック教会のパウロス・ファライ・ラホ大司教が武装集団に拉致され、3月13日に遺体で発見された事件で、イラク中央刑事裁判所は5月18日、殺人に関与した罪で、アーメド・アリ・アーメド被告に死刑を言い渡した。
 イラク政府によると、同被告は国際テロ組織アルカイダの指導者で、指名手配されていた。刑の執行時期については明らかにされていない。


◎アインシュタインの手紙競売、「宗教は"子供じみた迷信"」

 【CJC=東京】神への信仰は「子どもじみた迷信」、ユダヤ人は「選ばれし民」ではないドイツ生まれのユダヤ人理論物理学者アルバート・アインシュタインが書き記した手紙が5月15日、ロンドンで競売にかけられた。
 古書類競売業者ブルームズベリーがAFP通信に13日明らかにしたところによると、アインシュタインは「神という言葉はわたしにとって言葉以上のものでなく、人間の弱さが作り出したものにすぎない。聖書は、高潔だが原始的な言い伝えをまとめたもので、やはり子どもじみている」「どんなに素晴らしい解釈が登場しようと、この考えは変わらない」などと述べている。
 また、ユダヤ人が神に選ばれた民だという思想についても、「わたしにとってユダヤ教は、ほかの宗教と同じく子供じみた迷信の権化だ」「ユダヤ人であることを光栄に思っているし、強い親近感を抱いていているが、わたしにとってはほかの民族と変わらない」と述べ、否定している。
 英紙ガーディアンによると、この手紙は1954年1月3日に哲学者のエリック・グートキンドあてにドイツ語で書かれた。これまで個人コレクションとして所有されていたという。


◎ガンティン枢機卿逝去、教皇庁司教省元長官

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)司教省長官をかつて務めたベルナルディン・ガンティン枢機卿が5月13日、入院先のパリの病院で逝去した。86歳。
 1922年、ベニンのコトヌー生まれ。51年、司祭。56年、コトヌー補佐司教、60年、同教区大司教。
 71年に教皇庁入りした後は、77年、教皇パウロ六世より枢機卿に任命、84年、司教省長官およびラテン・アメリカ委員会議長(98年現職引退)など要職を歴任した。
 ガンティン枢機卿の逝去により、現在の全枢機卿数は194人、そのうち教皇選挙の投票権を持つ80歳未満の枢機卿は118人、投票権を持たない80歳以上の枢機卿は76人となった。


《情報レムナント》

▽ハンセン病元患者、偽名から解放 9冊目の詩集出版
 草津町の国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」に入所する詩人・長峰利造さん(83)が、普段使っている「桜井哲夫」という偽名ではなく、初めて本名で詩集「鶴田橋賛歌」(津軽書房)を出版した。偽名はハンセン病への偏見が強い時代に付けられたもので、「そんな名は使わないで」という親族の勧めを受けて本名にした。
 詩作は50歳代で始め、これまでに詩集8冊と散文集1冊を出版。昨年2月には詩集の英訳本を手にバチカンに行き、ローマ法王への謁見もかなった。
 バチカン訪問は「クリスチャンだった妻と、子供のため」といい、詩集では法王と謁見して祝福を受けた様子や、ローマ教皇庁からの書簡も紹介している。(読売新聞5月19日)


《メディア展望》

  =カトリック新聞(5月18日)=https://www.cwjpn.com
★混乱と分裂に解決を=4司教、教皇に現状訴える=「20年越しの課題」=高松教区立国際宣教神学院
★ミャンマーのサイクロン被害=教皇が悲嘆表明=「国際社会の支援信じる」
★「危機」をチャンスに=存続の具体策へ動く カトリック学校
★エキュメニカル功労者=アジア学院を顕彰=多教派協力し農業指導者養成
★聖コロンバン会=宣教会本部 香港へ=「召命の現状反映」

  =キリスト新聞(5月17日・休刊)=https://www.kirishin.com

  =クリスチャン新聞(5月18日・休刊)=https://jpnews.org

  =リバイバル新聞(5月18日・休刊)=https://www.revival.co.jp


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 ☆活動のご紹介は https://homepage2.nifty.com/cjc-skj/
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              https://www.kohara.ac/news/

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