世界キリスト教情報 第904信(2008.05.12)
- ミャンマー救援へキリスト教団体も準備
- 中国フィルが教皇の前で演奏
- 北京五輪に外国人チャプレンを、と香港スポーツ宣教師
- マレーシアでカトリック紙の「アラー」表記は裁判へ
- 国際宣教神学院閉校へ司教団が教皇と会見
- 《メディア展望》
◎ミャンマー救援へキリスト教団体も準備
【CJC=東京】ミャンマー国営テレビは5月11日、同国を2日から3日にかけて襲ったサイクロン「ナルギス」による死者は2万8458人、行方不明者は3万3416人と報じた。
国連食糧計画(WFP)などと共に世界中のキリスト教救援団体は、援助準備を開始したが、軍事政権が8日に空輸された国連援助物資7トンを押収したと伝えられ、国連は9日物資救援を中止した。
軍事政権は、外国からの援助は受け入れるが、活動家の入国は認めずビザを発給しないという。これには西側諸国だけでなく、影響力のある中国も受け入れを促している。
タイを拠点とするアジア・キリスト教協議会は9日、スタッフ・チームをミャンマーに送る計画を明らかにしたが、「ミャンマー大使館が閉鎖されたため、ビザがなかなか出なかった」と言う。
6日、世界教会協議会(WCC)のサミュエル・コビア総幹事は、ミャンマー教会協議会に「この自然災害がもたらした壊滅的な衝撃を克服するために出来ることは何でもする用意がある。そしてミャンマーの犠牲者の受難を軽減するために貢献する準備がある」と書き送った。
コビア総幹事は、WCCが支援する人道援助組織『アクション・バイ・チャーチズ・トゥゲザー』(ACT)が被災地域の人たちに可能な人道援助を行う手はずは整ったとして、「ミャンマー政府が、国際援助活動家や人道援助団体に、援助が有効に行えるよう被災地への通行など必要な支援を提供することを願う」と語った。
ヤンゴンに駐在しているACTメンバーが報じるところでは、水と電力の供給がなくなり、食糧とシェルターの需要が急増、必需品の価格が急騰している。
カトリック教会の援助・福祉活動を担当する国際カリタス会長のオスカル・ロドリゲス・マラディアガ枢機卿は「世界規模の私たちのネットワークは、ビルマの人たちに出来ることは何でもする。孤立しているのではないということを伝えたい」と言う。まずニュージーランドの『カリタス・アオテアロア』が募金を開始した。
ルーテル世界連盟のチャンドラン・ポール・マーティン総幹事代行も、ミャンマー当局に、人道的援助活動家の入国と国内移動を容易にするよう求めた。それによって大規模災害にも備えが出来ると言う。
国連児童基金(ユニセフ)は8日、ミャンマーのサイクロンで被害を受けた子供たちへの緊急支援資金として820万ドル(約8億5000万円)の拠出を国際社会に要請した。またヤンゴンとイラワジ地方に緊急調査チームを派遣、ワールド・ビジョンや『セイブ・ザ・チルドレン』などのNGO組織と協力して活動を進めている。
スコットランド教会(長老派)世界宣教評議会のコリン・レンウイック担当は、地域共同体に援助を呼び掛けている。「聞きしに優る状況だ。これほどの規模の災害の実態を把握することは難しい。救援が出来るのなら皆が応じるべき時だ」と言う。
バプテスト世界連盟は、オーストラリア、ハンガリー、米国などの加盟教会のメンバーが隣国タイのバンコクで、ミャンマー入国のビザ発給を待っている、と語った。
◎中国フィルが教皇の前で演奏
【CJC=東京】中国フィルハーモニーオーケストラが5月7日、バチカン(ローマ教皇庁)のパウロ六世ホールで教皇ベネディクト十六世出席の下、公演を行った。同オーケストラ芸術総監督の余隆(ユー・ロン)氏が指揮、上海歌劇院合唱団と共に教皇のためにモーツァルトの「レクイエム」や中国の民謡「茉莉花(ジャスミン)」を演奏した。同オーケストラは2005年にローマで公演したことはあるが、バチカンではこれが初めて。
消息筋は、中国側が国際的なイメージ向上を意図していることをバチカン(ローマ教皇庁)が理解はしており、外交関係の改善に役立つことを期待していることは確かだ、と指摘したが、ただこれですぐに復交に道が着くというものでもない、と警告している。
教皇は、北京政府との関係改善を重視しており、昨年6月には55ページもの書簡を発表したが、その中で、1949年の共産主義政権樹立以来断絶している外交関係の修復を目指すことを明らかにしている。
中国のカトリックは、公認の教会と、バチカン(ローマ教皇庁)に忠誠を示す地下教会とに分かれている。
今回の演奏は、イタリア以外の国で中国の外交使節がバチカン側に接近し、提案したものだという。元々は数ヶ月前に提案されたが、実現へ向けての調整が成立しなかった。「再度、申し入れがあったことが重要だ」と、関係した聖職者は指摘する。
◎北京五輪に外国人チャプレンを、と香港スポーツ宣教師
【香港=ENI・CJC】香港スポーツ宣教団体のジョニー・イウ・ユクヒン総幹事は、8月に開かれる北京五輪の内容強化のためにも、オリンピック村にボランテア・チャプレンとして外国人の牧師が入ることを認めるべきだ、と5月5日語った。「私たちはその用意があるが、これまでのところ前向きの回答がない。私たちの提案は通らないのではないかと思う」と言う。
「全回のアテネ大会では様々の国籍の牧師30人が奉仕した。しかし北京では外国人ボランテアは認められないのだと理解している」と同総幹事は語った。
◎マレーシアでカトリック紙の「アラー」表記は裁判へ
【CJC=東京】マレーシアで、神に関する表現に「アラー」をイスラム教徒以外が使うことを、国内治安省(内務省)が2月、「イスラム関係者のみ使用できる表現」とし、禁止を命令したことに対し、カトリック教会の機関紙『ヘラルド』が「イスラム関係者以外の者にも使用が認められる」と主張。撤回を求めて裁判で争う方針を表明した。
政府側は、「アラーという表現を使用する権利の問題裁判になじまない」と主張したが、ラオ・ビーラン判事は、裁判で争われるべき権利として5月5日、クアラランプールで政府側の請求を退け、提訴を認めると判示した。原告は2週間以内に提訴手続きを進めることになった。
マレーシアは総人口2500万の3分の2がマレー人でほぼイスラム教。残りが中国系、インド系でほとんどがキリスト教、仏教、ヒンズー教、シーク教。
◎国際宣教神学院閉校へ司教団が教皇と会見
【CJC=東京】カトリック教会日本司教協議会の代表4人は4月25日、教皇ベネディクト十六世と約1時間、『新求道共同体』(ネオカテキュメネイト)と同団体が高松教区内に設立した高松教区立国際宣教神学院『レデンプトリス・マーテル』が引き起こしている「深刻な問題」について会見した。
バチカン(ローマ教皇庁)を訪問したのは岡田武夫・東京大司教(司教協議会会長)、池長潤・大阪大司教(同副会長)、高見三明・長崎大司教、溝部脩・高松司教の4人。
日本から司教がバチカンを訪問し、協議したのはこの5カ月では3回目。「そうたびたび来ることは好ましくないが、問題の重要さからして解決しなければならないことだ」と岡田大司教は、ローマでUCAN通信に語った。
昨年12月のアドリミナ(定期訪問)の際、司教団は自らの問題意識を教皇だけでなく福音宣教省(長官=イヴァン・ディアス枢機卿)の高官にも提起した。日本は宣教地とされ、司教は同省の管轄下にある。英カトリック週刊誌『タブレット』は同省の長官イヴァン・ディアス枢機卿が新求道共同体に好意的で、その活動を守るために介入した、と見ている。この4月にも司教団代表は、福音宣教省関係者と議論したが、新求道共同体を支持する雰囲気が感じ取れたところから、教皇に再度直接訴えることにしたようだ。
UCAN通信によると、岡田大司教は12月15日、司教団を代表して教皇に「一つの問題は、新求道共同体と高松教区立国際宣教神学院だ。これは深刻な問題だ。日本の小規模なカトリック教会では、新求道共同体のような強力なセクト的な活動は、分裂と対立をもたらす存在だ。それは教会の中に鋭い痛みである分裂と抗争を引き起こした。私たちは、問題を克服するため、全力で闘っているが、もし解決策が見出されるとすれば、それは日本の教会に関する聖下(教皇)の考えが最も重要であり、強く望まれる」と述べた。
新求道共同体は1964年にスペインで設立された。現在は2万を越える「共同体」が世界105国に存在し、会員は100万人と言われる。高松神学校は共同体が設立した世界中の73校の一つで、いずれも教区司教の下にある。アジアでは香港、インド、日本、パキスタン、フィリピン、台湾に全6校ある。
UCAN通信によると、高松の溝部司教は、自らもアドリミナで、教皇と個人的に接見した際、教区の問題について話したと言う。しかし教皇は12月15日に訪問した日本の全司教に演説した時、その件について言及しなかった。それから4カ月後の4月25日、教皇は岡田大司教たちと詳細に討議した。
神学校は前任者の深堀敏司教が設立に同意したが、深刻な問題が相次いで、緊張が高まり、後任として2004年に着座した溝部司教が閉校を決めた。司教協議会は溝部司教を支持したことを岡田大司教はUCAN通信に確認した。
共同体側は別の司教の支援を得ようと動き、初めに1人が、学校支援に同意したものの、他司教との議論の後に、反対を決め福音宣教省と共同体に通知したという。
4月25日の会見の際、池永大司教は、実態に関する詳細な概要を教皇に提出した、とUCAN通信は報じている。岡田大司教は「教皇は非常に注意深く私たちの言うことを聞いた。私たちを理解しようとしており、非常に真剣だ」とUCAN通信に語った。「教区立神学校は閉校になる。教皇庁は、今年閉鎖されることに同意した」と言う。
司教たちは、共同体の「思考方法」と日本文化、典礼などの問題への「態度」に関して、その動きに「重大で深い」問題をなお感じている、と岡田大司教はUCAN通信に説明した。バチカンがそのことを理解しているか、との質問に、岡田大司教は、「まだ、私たちとはギャップがある」ものの、事態は「進展している」と感じる、と語った。教皇が聴いてくれたことが大きな励ましになったと言う。
《メディア展望》
=カトリック新聞(5月11日・休刊)=https://www.cwjpn.com
=キリスト新聞(5月10日)=https://www.kirishin.com
★キリスト教性教育研究会=「人格と性」多角的に議論=医師・研究者ら 初の公開大会
★"福音的社会改革を"=日本福音同盟40周年=記念感謝会で峯野龍弘理事長
★トルストイ生誕180年=子孫のトルスタヤ氏 ロシア大使館で絵画展
★伝道の障害は"牧師中心主義"=日本キリスト教連合会=古屋氏が「宣教150年」で講演
★パラグアイ大統領選 中道左派のルゴ元司教勝利
=クリスチャン新聞(5月11日)=https://jpnews.org
★日本クリスチャンアカデミー関東活動センター新所長・薛恩峰氏講演=中国のキリスト者急増 共産党政権の脅威にも
★ホーリネス教団=「人権問題としてのセクシャル・ハラスメント」をホームページに掲載
★世界福音同盟=米紙に声明「ユダヤ人に福音を」の全面広告
★世論調査結果で「米国人は聖書が好き」
=リバイバル新聞(5月11日)=https://www.revival.co.jp
★父が生きると、家庭が生きる=「父の学校」横浜4期を開催
★十字架の七つの言葉=大阪でクリストファー・サン国際大会
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