世界キリスト教情報 第903信(2008.05.05)
- 米大統領選でライト牧師の発言で人種問題が改めて浮上
- 教皇、9月にフランス訪問、ルルドの聖母出現150周年記念
- 食糧危機で援助団体も活動規模縮小
- ツツ元大主教が五輪開会式ボイコット呼びかけ
- 豪が同性カップルにも婚姻と同等の権利
- 豪カトリック司教団が司牧書簡『インターネット・セイフティ』
- 英国では携帯メールで「祈り」を呼びかけ
- 多角経営に乗り出す米キリスト教系書店
- 《メディア展望》
◎米大統領選でライト牧師の発言で人種問題が改めて浮上
【CJC=東京】次期米大統領を目指す民主党のバラク・オバマ上院議員が師と仰ぐ黒人牧師ジェレミア・ライト・ジュニア氏(66)が4月28日、ワシントンのナショナル・プレスクラブで講演、人種対立をあおる過激な説教を繰り返し、米国や白人社会を敵視しているとメディアから批判を浴びたことについて説明した。
オバマ氏を支持するライト氏は3月、黒人が虐げられている現状を嘆き「くたばれ、米国」と発言したが、それまでにも「米国は黒人社会に病原菌を拡散した」「米中枢同時テロ事件は米国自身が招いた」などと主張して批判を呼んでいたことも明らかになった。
ライト氏は、メディアの批判を「わたし自身やオバマ氏への攻撃ではなく、黒人教会全体への攻撃」に等しいと指摘した。また講演後の質疑で「愛国心に欠ける」と責められると、「6年間兵役に就いた私が愛国的でないなら、チェイニー副大統領はどうなのか」と、ベトナム戦争時代に入隊猶予を受けた副大統領を引き合いに反論した。さらに「エイズウイルス(HIV)は政府が黒人を抹殺するために開発した」などと述べたことに関しては「黒人が経験してきたことを考えれば、政府はどんなことでもやりかねない」と発言、改めて論議を呼ぶ形となった。
一連の発言に、低所得の白人層が強く反発、4月22日のペンシルベニア州予備選でオバマ氏が敗れる一因になった。オバマ氏の支持率は5月2日までに実施された主要世論調査で急落している。一部調査ではヒラリー・クリントン上院議員に逆転を許した。
オバマ氏は28日の記者会見で、「ライト師とは連携をとっていない」と述べ、さらに29日、ノースカロライナ州での記者会見で、「昨日見た人物は、わたしが20年来知っているライト師ではなかった」と言明。「わたしの、そして米国民の感情を害した。非難されるべきだ」と同氏の発言に強い拒否感を示した上で「彼はわたしの代弁者ではない」「わたしの持つ世界観と相反している」と強調、師と仰いできた人物との決別を宣言した。
オバマ氏の発言に、ライト氏は「彼は政治家だから距離を置こうとしている。彼は『私が希望を与えていない』というが、どうしてわかるのか」と不快感を示した。
ライト氏は1941年9月22日、フィラデルフィア生まれ。父、祖父、叔父の1人も牧師。高卒後、バージニア・ユニオン大学神学校に入学、偏見を受け、教会が人権運動を強く支援していないことが不満で退学した。海兵隊と海軍で6年間兵役に就いた。退役後、ハワード大学で勉学を再開、神学教師を目指したが、アフリカ系市民(黒人)が多数、キリスト教を離れ、他の宗教に転向するのを見て、説教への転身を決意した。
72年、シカゴのトリニティ合同キリスト教会牧師に就任。当時は会員87人だったが、年初に辞任した時には8000人にまで増加している。オプラ・ウインフリーやラッパーのコモンなども会員。
説教は、黒人の解放の神学に結びつくもので、キリスト教と黒人の経験とを融合させ、人種差別や不正義を取り上げる。説教「希望への大胆さ」は、オバマ氏が2004年7月の民主党全国大会での基調講演に影響を与えたとされ、同氏が06年に公表した著作の題名にもなっている。
◎教皇、9月にフランス訪問、ルルドの聖母出現150周年記念
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は9月12日から15日までフランスを司牧訪問する。仏司教協議会が発表した。ルルドのマッサビエルの洞窟における聖母出現150周年・記念年を機会とするもの。
教皇訪問の主な日程は次の通り。
9月12日、パリ到着。コレージュ・デ・ベルナルディンで学術文化界の人々と会見ノートルダム大聖堂で司祭・助祭・修道者・神学生らと夕べの祈り。
13日午前、アンヴァリッド広場でミサ。午後、ルルドの聖母巡礼聖堂へ。
14日、荘厳ミサ司式後、フランス司教団と会見。聖体行列を。
15日、ミサの中で病者の塗油の秘跡を授ける。午後、ローマへ。
◎食糧危機で援助団体も活動規模縮小
【CJC=東京】世界の食糧危機で穀物価格が高騰、援助団体も規模縮小を迫られている。国連世界食糧計画(WFP)は、2008年度に78カ国で7300万人に食糧支援を実施する計画を立て、その費用は29億米ドルと試算した。しかし食糧購入価格が昨年6月以降著増し、援助規模を維持するには当初の見込みより7億5500万ドル(約790億円)必要となったと見られる。WFPの活動は国連分担金にはよらず、すべて各国政府や企業・個人からの任意拠出金や寄付金で成り立っている。
キリスト教系人道援助機関『ワールドビジョン』は、各国政府にWFPへの拠出増を要請、7月の北海道洞爺湖サミットでも優先課題とするよう訴えた。
『ワールドビジョン』は約30国を対象に45万トンの食糧を提供しているが、今年は価格高騰の一方、献金も不足しているため援助対象者を150万人分削減しなければならない、とASSIST通信は報じている。
◎ツツ元大主教が五輪開会式ボイコット呼びかけ
【CJC=東京】1984年のノーベル平和賞受賞者、デズモンド・ツツ英国国教会元ケープタウン大主教が4月27日、自由世界の指導者は北京五輪開会式をボイコットするよう呼びかけた。
ケープタウンで開かれた"チベット人による聖火リレー"の式典に参加したツツ氏は「中国当局のチベット人への暴力停止が明らかにならない限り、自由世界の指導者は開会式に参加するべきではない」と訴えた。
◎豪が同性カップルにも婚姻と同等の権利
【CJC=東京】オーストラリア政府は4月23日、長期的関係を築いている同性カップルに対する税制、年金、福祉などの差別撤廃のため、連邦法を改正すると発表した。ただ「婚姻とは男女間のもの」(ロバート・マクレランド司法長官)との考えから、婚姻法の改正は予定していない。2009年半ばまでに改正を終える見通し。州や準州ではすでに同性カップルの権利を認めている例が多い。
同性婚に反対してきた英国国教会シドニー教区のピーター・ジェンセン大主教は、同性愛カップルの法的権利を認めるなら、プラトニックな関係で長年共同生活をしている友人同士にも同じ権利を認めるべきだと主張した。
◎豪カトリック司教団が司牧書簡『インターネット・セイフティ』
【キャンベラ=ZENIT・CJC】豪州のカトリック司教団は、インターネットの可能性と危険性について信徒を教育するために、インターネットを駆使している。
司牧書簡『インターネット・セイフティ』が、4月28日の『世界コミュニケーションの日』に際して発表された。書簡にはピーター・インガム司教がインターネット、特にユーチューブについて説明したビデオが付属している。
同氏は司教会議のメディア問題専門家。「インターネットを安全に利用することを人々、特に若者に語りかけようとすれば、ビデオは最適だ。少しでもこのビデオを見て、問題を考えてくれれば十分だ」と言う。
司牧書簡は両親、祖父母、教師を対象にしており、インターネットの本質を説明している。
◎英国では携帯メールで「祈り」を呼びかけ
【CJC=東京】英国のキリスト者は、これからはどこにいても、祈りをささげることが出来る。ただ携帯電話の『プレヤー・モバイル・サービス』に登録しての話しではあるが...。
AFP通信や英PA通信などによると、慈善団体『プレーヤー・イン・アクション』は5月1日、携帯電話に宗教関係のコンテンツを提供している『エキュメン』社と提携し、テロやホームレス、貸し渋りまで幅広い問題への祈りを呼びかけるメールの週1回一斉送信を始めた。
料金は週25ペンス(約50円)で、今後2、3年で50万人の登録を見込むという。
プレーヤー・イン・アクションのカール・ブレットル代表はこのサービスを、「人類にとって最も古い伝統のひとつと最新技術を組み合わせたもの」として、「この不確定な世界で、社会が直面する大問題について、多くの人が同時に祈るように進められているのを知ることができる。考えただけでも素晴らしいことだ」と述べている。
◎多角経営に乗り出す米キリスト教系書店
【CJC=東京】米紙『USAツデー』によると、米国のキリスト教系の書店で、多角経営に乗り出すところが増えている。
テネシー州レバノンのクレーブ書店・カフェでは、キリスト教関連のベストセラーやCD、聖書のほかにシナモン風味のパンが買える。
クレーブが開店したのは2007年12月。経営者マイク、ベス・ワゴナー夫妻は「本だけを売っていたのではお客は呼べない」と、サンドイッチ、サラダ、コーヒー、カプチーノ、自家製スープも販売。店内では無料でゲームなどの無線機器が使える。
『クリスチャニティ・ツデー』誌が、キリスト教書店協会(CBA)によるとして報じるところでは、05~07年に開店したキリスト教系書店は437、589、98の計1124店。これらの新店舗は宗教色を薄め、ボーダーズやスターバックスなどにより近い業態だという。一方、同じ時期に閉店したのは337、286、160の計783店で、減少度合いは低下している。
米国の宗教関連書籍の市場規模(2007年)は7億8300万ドル(約783億円)と堅調だが、キリスト教系書店はネット書店『アマゾン』や量販店の進出もあってか、独自色を打ち出す方式の検討を迫られている。
CBAのビル・アンダーソン会長は『USAツデー』に「これからのキリスト教系書店は多角経営をしないと生き残れない」と指摘している。
《メディア展望》
=カトリック新聞(5月4日)=https://www.cwjpn.com
★神戸=ブラジル移民100周年祭=移住者は福音的な力
★東京教区・インターナショナルデー=課題越え2年ぶり開催=目的は「外国人が大切にされること」
★長崎教区=列福式への交通費支援=献金集め、教区内の信者に
★世界で食料価格高騰=教会、貧しい人の支援求める
★「より効果的な援助を」=カリタス国連代表ジョセフ・ドネリー氏来日
=キリスト新聞(5月3日)=https://www.kirishin.com
★教皇ベネディクト16世=米国を6日間司牧訪問=教会の信頼回復に尽力
★名古屋高裁=イラク派兵は違憲=池住義憲原告代表「誇り持って語れる」
★無防備条例で平和を=井上ひさし氏・松浦司教らが訴え=キリスト者も賛同=川崎
★アムネスティ・NCCが連続セミナー=在日難民が人権訴え
★アースデイ イベントで いとうせいこう氏=軍事政権に"対話せよ!"
=クリスチャン新聞(5月4日)=https://jpnews.org
★イラク戦争から5年=平和への願い強く=ウラン弾で小児ガン増加を警鐘
★平和をつくり出す宗教者ネット=「航空自衛隊の活動は9条違反」判決を評価=「違憲」の声実った
★教会に社会にインパクトを=日本福音同盟が創立40周年
★「日本に合った伝道方法を」=日本伝道者協力会「春の1日セミナー」
★宗教接触の脱北者弾圧=米政府諮問機関が調査報告
=リバイバル新聞(5月4日)=https://www.revival.co.jp
★アジアの女性たちを励ます=第2回アグローアジア大会=日本でのリーダー訓練会も
★イスラエル発=音声で御言葉運ぶ技術=メガ・ボイス
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