世界キリスト教情報 第906信(2008.05.26)
- 四川省大地震被災者に『愛徳基金会』が緊急援助
- あのキュンク教授が教皇ベネディクト十六世に不満
- 教皇が「死の兵器」クラスター爆弾を批判
- 米テキサス州カルト教団からの子ども保護に疑念
- テレビ伝道者の支持を返上 問題発言受けマケイン氏
- 豪で初の女性主教誕生
- 有名になり過ぎてビヨンセが教会通い断念
- 《メディア展望》
◎四川省大地震被災者に『愛徳基金会』が緊急援助
【CJC=東京】中国四川省で5月12日発生した大地震の被災者に、『愛徳基金会』(本部・南京)が緊急救援を開始した。
外国からの援助も含めて、救援の主力が交通の便のある都会中心に展開され、脱出して来た避難民には援助の手が差し伸べられるようになったため、『愛徳基金会』は現場への接近が困難な山間部の遠隔地農村支援に力を入れている。
11日ぶりに80歳の男性が救助された綿竹では、今も5000人近くが運動場で暮らしている。負傷者も多数に上っており、援助もままならない所から、心理面でのケアも必要。『愛徳基金会』は、心的外傷カウンセラーとソーシャルワーカーのボランティアチームを派遣した。
近郊の村では、飲料水、ビスケット、即席めんや医薬品などが政府の手で配られた。「援助食糧はおいしいけれど、農民の私としてはご飯を食べたいし、野菜いためを作りたい。衣料や寝具などはつぶされた家の中にあるのでもう使えない」と女性が語っていた。
『愛徳基金会』から調理用の菜種油や布団などが届くと村人の1人が、「本当に私たちは助かった。どうしてこれほど速く届けられたのか想像できない。私たちのほしいもので助けてくれたのだ」と語った。ほとんどの家が潰されたり、大きな被害を受けている状況を見た『愛徳基金会』のスタッフは調理油6800キログラムと布団1700枚を持ち込んだ。村人は驚きと共に、物資の積み卸しに協力した。
『愛徳基金会』は、防水シートや米などの必需品も購入、配布の準備を進めている。
援助が十分でない地域では、子どもと高齢者だけに1日1椀の米が提供されるだけ、という例も報告されている。『愛徳基金会』はなお実態調査を進めると言う。
『愛徳基金会』が加盟している国際ACT(教会共同行動)ではとりあえず147万5000米ドル(約1億5200万円)の募金を開始した。緊急援助に続いて、『愛徳基金会』は村落再建援助に乗り出す計画で、それには住宅600戸、学校10カ所、診療所5カ所が含まれている。さらに給水潅漑システムも援助対象としている。
ボランテア団体の多くが、様々な規制の下で援助活動がままならない中で、『愛徳基金会』は現地当局と綿密に連携を取りつつ活動している。さらに活動を円滑にするため、『愛徳基金会』は現地の協力団体やキリスト教協議会などと「調整チーム」を立ち上げた。
◎あのキュンク教授が教皇ベネディクト十六世に不満
【CJC=東京】カトリック教会の反体制派神学者の代表とされるチュービンゲン大学教授のハンス・キュンク神父も80歳、今では最年長神学者の仲間入りしているがこのほど、イタリア紙レプブリカとのインタビューで、教皇ベネディクト十六世への不満を明らかにした。カトリック教会にとって「悲劇」なのは、1965年に第二バチカン公会議で出された自由化路線をローマが歩むことに失敗したことだ、と言う。
自叙伝『自由を目指す我が闘い』(仮訳)でキュンク神父は、チュービンゲン大学カトリック神学部長だった1966年に、ベネディクト十六世を教授に任命したことに責任を持っていた、と明らかにしている。通常は複数の候補者を挙げるのに、その時は最適任として1人だけを挙げた。教皇は69年まで同大学に在籍した。その3年間、両者の関係は実りあるものだったと言う。
キュンク神父は教皇不可謬説を批評したことで、79年にカトリック神学を講じる資格をバチカン(ローマ教皇庁)から剥奪され、辞任せざるを得なかったが、その後も同大学プロテスタント神学部で講義している。
2005年4月にベネディクト十六世が教皇として選出された際、キュンク神父は、「ひどく、失望した」と語っている。しかし就任5カ月目に教皇に呼ばれ、夕食を共にしたことがあり、教皇への期待を公表したことで、2人の間に和解が成立したとの噂も広がった。キュンク神父は前任者のヨハネ・パウロ二世との会見を希望してきたが、教皇は生前、それを拒んできたと伝えられている。
レプブリカ紙とのインタビューで「ローマは、あらゆる種類の革新を妨げ続け、プロテスタントや正教会との一致への動きを妨げている。教皇は重大な誤りをしている」とキュンク神父は語った。ただ教皇が、状況転換のために「勇気ある行動」をすることを望むと付け加えてはいる。
◎教皇が「死の兵器」クラスター爆弾を批判
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は5月18日、司牧訪問先のジェノヴァで不発弾が市民を無差別に殺傷しているクラスター爆弾について、「死の兵器」と批判した。
若者たちと唱えた正午の祈りの席で教皇は、翌日からアイルランド・ダブリンで開催されるクラスター爆弾の禁止条約作成を目的とする会議について触れ、この機会に強固で信頼の置ける国際的規範を作り出すことができるようにと訴えた。
教皇は、過去のあやまちに対する補償をし、それを将来繰り返さないことが必要であると述べ、クラスター爆弾の犠牲者とその家族、会議参加者のために祈った。
◎米テキサス州カルト教団からの子ども保護に疑念
【CJC=東京】米テキサス州エルドラドで、児童虐待や性的暴行などの容疑で捜査対象となっている『末日聖徒イエス・キリスト教会原理派』(FLDS)の信徒らが立てこもっていた農場を捜索、内部に居住していた生後6カ月の乳児から17歳の400人以上全員について隔離・保護に踏み切ったテキサス州当局に対し、同州控訴裁判所は5月22日、州の措置を違法とする判断を下した。
控訴裁は「子どもたちが差し迫った危険にさらされているとはいえず、全員隔離という極端な措置は正当化されない」と指摘、保護を認める決定を下した下級裁に対し、10日以内に決定を破棄するよう命じたもの。州側はこの決定を不服として23日、州最高裁に上告した。
州児童保護局は4月、思春期の少女に性行為を強要するなどの性的虐待が行われていたとして州内のFLDSの教団施設を捜索。施設内で暮らしていたすべての未成年者を用意した場所に"保護"した。
当局は「思春期を迎えた少女は中年男性との性交渉を強要されていた」などと発表したものの、捜査の契機となったFLDS内部からの情報提供者は現在も特定されていない。また教団からも「宗教弾圧だ」と強い抗議が起きていた。
FLDSは末日聖徒イエス・キリスト教会から分派し、指導者には昨年、未成年者に結婚を強要した暴行共謀罪で禁固10年から終身の不定期刑が言い渡されている。
◎テレビ伝道者の支持を返上 問題発言受けマケイン氏
【CJC=東京】米大統領選の共和党指名候補になるジョン・マケイン上院議員は5月22日、福音派のテレビ伝道者ジョン・ヘギー氏から受けていた支持を返上すると発表した。
ヘギー氏は、ナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーのユダヤ人虐殺を、結果的にユダヤ人のイスラエル帰還を促したとの見方から「神の意思の表れ」と解釈、肯定するような発言をした。 マケイン氏は「支持を受けた段階では発言を知らなかった」とし、「正気ではない。許しがたい」と支持辞退を表明した。
ヘギー氏は、発言をヒトラー容認と受け取るのは「はなはだしい誤解」と反論、「根拠のない攻撃が重要な政策論争の妨げになっている」としてマケイン氏支持を撤回した。
福音派は共和党の重要な支持基盤である宗教右派の最大勢力で、その支持は、マケイン氏の選挙戦に大きく貢献すると見られていた。
ヘギー氏はテキサス州を中心にしたテレビ布教で活躍、サンアントニオに『コーナーストーン教会』を設立、1万9000人の信者を抱えているという。ジョージ・ブッシュ政権や、イスラエル右派勢力との関係が深い。今年2月にマケイン氏を支持すると表明していた。
ただ最近になって「神はユダヤ人を天国に送るためにヒトラーを地上につかわした」などと説教で述べていたことが表面化した。同氏はカトリック教会に対しても「カルト教団」などと形容していたが、これについては謝罪している。
大統領選に向けた候補者指名争いでは、民主党のオバマ上院議員が、通っていた教会の牧師の問題発言から「絶縁」を余儀なくされ注目を集めた。
◎豪で初の女性主教誕生
【CJC=東京】オーストラリア聖公会(英国国教会)で初の女性主教となるケイ・ゴールズワージーさん(51)が5月22日、西部パースのセント・ジョージ大聖堂で正式に就任した。
2時間にわたる式典には同聖公会首座主教のフィリップ・アスピナル・ブリスベーン大主教やパースのロジャー・ハーフト大主教ら同派指導者や聖職、信徒など800人が参列したが、シドニーのピーター・ジェンセン大主教らは就任に抗議して欠席したのが目立った。
同聖公会の信者数は2006年でカトリックに次ぐ約372万人。世界聖公会共同体の中では、米国やカナダなどの聖公会で既に女性主教が誕生している。
ゴールズワージーさんは双子の母親。
◎有名になり過ぎてビヨンセが教会通い断念
【CJC=東京】『米エンターテインメント史上最も美しい女性』との評判を得た「デスティニーズ・チャイルド」のビヨンセ・ノウルズ(26)は、7歳のころから聖歌隊で歌うなど、テキサス州ヒューストンの教会に熱心に通っていたが、礼拝に出る度にファンにもみくちゃにされ、「恥ずかしくてもう行けない」と断念することにした。専門通信『コンタクトミュージック』などが報じた。
「説教の最中にも押し寄せて、行動の全てを注視している。携帯電話で写真もとるし、良い人たちだけれど...。もしも日曜礼拝に行くのを止めても、神様は理解されると思う」と言う。
またラッパーのジェイZとの結婚について、否定もしないし、話すことはない、と語っている。
《メディア展望》
=カトリック新聞(5月25日)=https://www.cwjpn.com
★福岡教区に宮原司教着座=「信徒と共に祈りたい」
★中国・四川大地震=教会の被害状況把握は困難
★難民移住移動者委員会=大阪・釜ヶ崎で研修=路上生活者の現状に学ぶ
★「世界青年の日」大会=パパ様の言葉 ケータイで=オーストラリア=会期中に毎日配信
★日本聖書協会=「聖書の翻訳」でセミナー=ことしは新共同訳20周年記念
=キリスト新聞(5月24日)=https://www.kirishin.com
★津田仙に新たな脚光=没後100年="もう一つの近代化を目指した人"=青山学院が記念プログラム
★「日本だけのものでない」=9条=幕張の世界会議に2万人
★功労賞に「アジア学院」 エキュメニカル協会 農業実践で宣教に刺激
★ミャンマー=サイクロン救援へ=キリスト教救援団体 活動家のビザ要請
★教皇と直接会見=高松教区立国際宣教神学院閉校=司教団 新求道共同体を懸念
=クリスチャン新聞(5月25日)=https://jpnews.org
★ミャンマーのサイクロン被害甚大=キリスト教団体緊急支援
★中国・四川省で大地震=ワールド・ビジョンが緊急支援開始
★10年秋に関西フランクリン・グラハム国際大会開催=関西諸教会が教派超え協力
★早紀江さん作詩「コスモスのように」CD発売=めぐみさんとの思い出を歌に=岩渕まことさん作曲で発表記者会見
★広島でラブ・ソナタ開催=広がる地元教会の協力=今年も全国4か所で開催
=リバイバル新聞(5月25日)=https://www.revival.co.jp
★チョー・ヨンギ牧師が引退=ヨイド純福音教会50周年=今後は元老牧師に
★ペンテコステの日に祈る=GDOP 日本でも拡大
★ミャンマー=飲料水など救援物資に困窮=被災者数は200万人規模に
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