世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第896信(2008.03.17)

  • 米国務省が年次報告書で中国の人権状況に懸念
  • 中国外相、米国務省の人権報告書に反論
  • イラク武装集団に拉致の大司教、遺体で発見
  • 教皇、モスル大司教の死に「非人間的な暴力」非難
  • 教皇、アレクシー二世総主教との会談間近か
  • WCC総幹事、ユダヤ教神学校襲撃を非難
  • ロビンソン主教はランベス会議に招かれず
  • 英国国教会、結婚生活についてのガイド本出版へ
  • ルワンダ国際犯罪法廷、カトリック司祭に終身刑
  • ニューヨークのカトリック教会「深刻な聖職者不足」
  • 英合同改革派教会総幹事にロミンガー氏
  • イスラエルのテル・レヘシュ遺跡で鉄器時代の城門発掘
  • フォコラーレ運動の創始者キアラ・ルービック女史死去
  • 《メディア展望》

◎米国務省が年次報告書で中国の人権状況に懸念

 【CJC=東京】米国務省は3月11日、2007年の世界各国の人権状況をまとめた年次人権報告書を発表した。北朝鮮、キューバ、ミャンマーなど10か国を「世界で最も組織的な人権侵害国」に指定したが、昨年まで入っていた中国を除外し、司法改革などに一定の評価も与えた。北京五輪にブッシュ米大統領も出席予定のため、一定の配慮をしたとの見方も出ている。
 報告書は中国について、言論の自由や、チベットや新疆ウイグル自治区での宗教の自由への規制が強まっていると指摘した。個別の人権侵害例も多く取り上げている。
 北朝鮮については、「圧政」「孤立国家」と指摘した上で、「国民生活のほぼあらゆる面を管理している」と批判した。


◎中国外相、米国務省の人権報告書に反論

 【CJC=東京】中国の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)外相は3月12日、米国務省が人権報告書で中国の人権侵害が拡大していると批判したことに関し、米国のダブルスタンダード(二重基準)に基づくものだと非難し、「人権の名の下で中国に内政干渉すること」として同報告書に反論した。
 全国人民代表大会(全人代=国会)に合わせて行った記者会見で述べたもので、人権問題への批判が北京五輪に影響することはないと強調した。


◎イラク武装集団に拉致の大司教、遺体で発見

 【CJC=東京】イラク北部モスルで3月13日、武装集団によって拉致されたカルデア典礼カトリック教会のパウロス・ファライ・ラホ大司教が遺体で見つかった。
 カトリック系通信社SIRによると、犯行グループは12日、バグダッドにいる司教に電話で、健康状態が悪かったラホ大司教が死亡し、遺体を埋葬したことを伝えた。さらに13日の電話で遺体の放置場所を告げられた。遺体はモスル近郊に埋められており、死後約1週間が経過していたという。
 ラホ大司教は2月29日、一緒にいた護衛2人と運転手が武装集団に射殺された後、拉致された。
 ANSA通信によると、バチカン(ローマ教皇庁)は「(イラクで)少数派のキリスト教団体に対する暴力」と非難する教皇ベネディクト十六世の声明を発表した。
 イラク戦争後、現地では少数派キリスト者を米軍の協力者とみなすイスラム過激派によると見られる暗殺や拉致が相次いでいる。
 カルデア典礼教会に属す信徒は、イラク国内で約60万人と推定されている。


◎教皇、モスル大司教の死に「非人間的な暴力」非難

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、イラクで誘拐されたモスルのパウロス・ファライ・ラホ大司教の死に際し、3月14日、カルデア典礼バビロニア総大司教エマヌエル三世デリー枢機卿に宛てた電報で、ラホ大司教の悲劇的な死を悼み、人間の尊厳を傷つけ、イラクにおける市民間の共存を脅かす非道な暴力行為を断固として非難した。


◎教皇、アレクシー二世総主教との会談間近か

 【CJC=東京】アゼルバイジャン訪問から帰国したバチカン(ローマ教皇庁)国務長官のタルジチオ・ベルトーネ枢機卿は3月10日、イタリアのANSA通信に、教皇ベネディクト十六世と、東方教会で最大勢力を持つロシア正教会総主教アレクシー二世との会談の時期が近づいていると語った。聖座(バチカン)とモスクワ総主教座の間にはなお「困難」が残ってはいるが、それを打開する道が見えて来たと言う。
 枢機卿はバクーにある正教会大聖堂を訪問していた。


◎WCC総幹事、ユダヤ教神学校襲撃を非難

 【ジュネーブ=CJC】「悲しみと同情をユダヤ教神学校『メルカズ・ハラブ・イェシヴァ』で殺害され、また重傷を負った人々の家族に示したい」とWCC(世界教会協議会)のサミュエル・コビア総幹事がエルサレムの教会指導者に宛てたメッセージで明らかにした。「ユダヤ教神学校に対する攻撃は信仰者全てに深刻な影響を与えた。WCCはこの襲撃を強く非難する」と言う。


◎ロビンソン主教はランベス会議に招かれず

 【CJC=東京】米聖公会主教会はテキサス州ナヴァソタで開催されたが、3月10日、カンタベリー大主教からランベス会議に公然同性愛者のジーン・ロビンソン主教(ニューハンプシャー教区)を招くことは出来ない、と通知を受けた。ロビンソン氏の参加のため働きかけていた主教3人が伝えたもの。ロビンソン氏は、これまでの努力に感謝し、他の主教が会議に参加することを希望した。
 ロビンソン氏は、期間中はカンタベリーに滞在するが、正式代表でもオブザーバーでもないことを明らかにした。
 ランベス会議は、英国国教会の霊的最高指導者カンタベリー大主教が世界聖公会共同体を構成する各国聖公会の主教を10年に1回招集する会議で、今年は7月16日から8月3日まで開催される。


◎英国国教会、結婚生活についてのガイド本出版へ

 【CJC=東京】完全な結婚へのガイドブックを英国国教会が発刊した。『グロウイング・ツゲザー』(共に成長を)は高い離婚率を懸念して出されたもので120ページにわたり、結婚生活で目指すべきものについて、詳細に記している。
 夫婦間のコミュニケーション不足が背景にあるとして、家計簿の付け方や葬儀、子どもやスポーツについて、さらには誰が料理をし、トイレ掃除、セックスに至るまで述べている。とは言え、技術的指導書ではない。
 英国の離婚数は1993年に18万件とピークに達したが、2004年にも16万7000件に上っている。
 同書は本来、結婚を願うカップルに対応する牧師のために作成された。夫妻はお互いにオープンかつ率直でいることを奨励、また性交渉は「十分素晴らしく祝福されるべきもの」であり、「お互いが教師となって学ぶもの」だとしている。
 英国国教会が2006年に行った調査では、市民の44%が、教会で挙式する夫妻には何らかの形で結婚生活への準備をさせるべきだ、と考えている。
 ただ英国国教会での挙式は最近10年間で4分の1に減少、ここ5年間は年5万6000件と横ばい。


◎ルワンダ国際犯罪法廷、カトリック司祭に終身刑

 【CJC=東京】タンザニアのアルーシャに設置されたルワンダ国際犯罪法廷は3月12日、カトリック司祭アタナゼ・セロンバ被告の控訴審で、1審の有罪判決を支持、1審の禁固15年より重い終身刑を言い渡した。AFP通信が報じた。同被告は80万人が死亡した1994年の大虐殺に関与した罪に問われている
 判決によると、同年4月、フツ族強硬派民兵組織が、ツチ族に対し虐殺を始めた際、同被告の教区民らが同国西部ニャンゲの教会に避難してきた。
 AFP通信は、フツ族のセロンバ被告が、教区民らを保護するどころか、教会をブルドーザーで破壊させ、逃げようとするツチ人を強硬派に射殺するよう命じた、としている。生存者はいなかったという。


◎ニューヨークのカトリック教会「深刻な聖職者不足」

 【CJC=東京】米カトリック教会ニューヨーク大司教区は、信者数に対し神学生の数が少なく、米国内176教区の中で170位。深刻な聖職者不足に直面している。
 USAツデー紙報道としてMSN産経ニュースが報じるところでは、ヨンカースにあるセント・ヨゼフ神学校は、在校生23人。今秋の入学予定者はゼロ。ジェラルド・ウォルシュ司祭は「何とかしなければならない」と顔をしかめる。今の頼みは4月に訪米する教皇ベネディクト十六世が同校で説教する予定があること。
 米国のカトリック聖職者は1975年の3万6000人から、2007年には2万8000人に減少した。ただ神学生は1960年代に激減したが、この10年間で3300人まで回復しているという。
 ニューヨークではアイルランド出身者が200年にわたり、多くのカトリック聖職者を送り出してきた。だが、カトリック信者の40~50%がヒスパニックになって事情は大きく変わった。


◎英合同改革派教会総幹事にロミンガー氏

 【ロンドン=ENI・CJC】英合同改革派教会は3月7日、デービッド・コーニック総幹事の後任にロベルタ・ロミンガー氏を任命した。女性の就任は初めて。
 ロミンガー氏はチェリストで米カリフォルニア大学で音楽を専攻した。聖職への訓練は米国で受け、米合同キリスト教会で叙階された。1985年から英合同改革派教会の聖職者。テームズ・ノース教区議長を務めている。
 英合同改革派教会は1600教会、信徒10万人。聖職者は有給、無給合わせて700人強。


◎イスラエルのテル・レヘシュ遺跡で鉄器時代の城門発掘

 【CJC=東京】イスラエル北部タボル山の南東に位置する古代遺跡テル・レヘシュ(紀元前3000年ごろ~同1000年ごろ)で鉄器時代の城門や青銅器時代の神殿とみられる遺構が見つかり、天理大、立教大などでつくる発掘調査団(団長=置田雅昭天理大教授)が3月13日、概要を発表した。
 イスラエル考古局から2006年2月に発掘ライセンスを取得、約450平方メートルを発掘していた。
 鉄器時代初頭(紀元前11世紀)とみられる城門跡は遺跡の北東部にあり、二重構造の城壁(厚さ約1・2メートル)の約8メートル分と、見張り台の遺構が出土した。この時代に城壁を伴う大規模な都市は珍しく、イスラエル王国成立期に建造された可能性が高いという。
 中央部では祭祀(さいし)に使われたとみられる後期青銅器時代(紀元前13世紀ごろ)の玄武岩製の石槽(長さ約1・2メートル、幅40センチ)も出土した。カナーン文化の影響下で建てられた神殿跡と推測される。
 またナツメヤシの模様が刻まれたつぼの取っ手の破片(長さ約15センチ、幅約7センチ)が見つかっている。
 テル・レヘシュ遺跡は古代エジプト文書や旧約聖書ヨシュア記に記された都市「アナハラト」だった可能性が高いとされる。


◎フォコラーレ運動の創始者キアラ・ルービック女史死去

 【CJC=東京】フォコラーレ運動の創始者、キアラ・ルービック会長が3月14日、ローマ郊外のロッカ・ディ・パーパのフォコラーレ本部で死去した。88歳。
 ルービック氏は、ローマ市内のジェメッリ病院に入院していたが、本人の希望で本部に戻り、会員らに見守られながら息を引き取った。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇ベネディクト十六世は関係者への弔文で、教会と常に一致し、エキュメニカル対話や民族間の友愛を推進したルービック会長のイエスへの愛に駆り立てられた長く豊かな人生を想起した。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(3月16日)=https://www.cwjpn.com
★「世界青年の日」メッセージ=「若者自身、宣教を」=教皇が呼び掛け
★教皇、司祭と神学生へ=ゆるしの秘跡 「神の愛感じる時」に
★仏・パリ教区=殺人犯の列福擁護=批判の中、調査終了間近
★滞日外国人との多文化共生へ=現状から対応策探る=難民委が大阪教会管区セミナー
★朝ミサ狙い 計107万円盗む=教会どろぼう御用=長崎・平戸署

  =キリスト新聞(3月15日)=https://www.kirishin.com
★"イエスの姿が見えてくる"=『島崎光正全詩集』=60年に及ぶ詩業の集大成
★自衛隊イラク派兵違憲訴訟="派遣差し止めは不適切"
★NCC教育部 神学校卒業者のための研修会で森一弘司教="「エクレシア」の原点に立って"
★ペトロ岐部と187殉教者=標語・ロゴ決定=「海原進む教会」をイメージ
★イラク・モスル=ラホ大司教誘拐=警護ら3人も殺害

  =クリスチャン新聞(3月16日・休刊)=https://jpnews.org

  =リバイバル新聞(3月16日)=https://www.revival.co.jp
★「解体調査」(リバースエンジニアリング)で教会開拓を=アール・クレップス氏来日
★バルナバたちが集合=教会増殖で情報交換
★シアトル=邦人宣教をネットワークで=RJC国際大会


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 ☆活動のご紹介は https://homepage2.nifty.com/cjc-skj/
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              https://www.kohara.ac/news/

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