世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第888信(2008.01.21)

  • 人種差別問題めぐりクリントン氏、オバマ氏の舌戦過熱
  • 朝鮮の人権「抑圧なお深刻」と国連人権理の特別報告者
  • ガリレオめぐる教皇見解がイタリアで論議
  • 教皇の日曜恒例の祈りに信者ら大きな歓声
  • イエズス会新総長にアドルフォ・ニコラス神父、日本にも長く滞在
  • 「トム・クルーズ演説はナチスの宣伝相に似ている」とドイツの歴史家
  • 《メディア展望》

◎人種差別問題めぐりクリントン氏、オバマ氏の舌戦過熱

 【CJC=東京】次期米大統領選で、民主党の候補指名を争うヒラリー・ロダム・クリントン、バラック・フセイン・オバマ両上院議員の陣営が、黒人公民権運動指導者の故マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師をめぐり新年に入って激しい舌戦を展開したが、1月15日に両議員が"停戦"を宣言した。対立がこれ以上激化すると、双方ともにイメージが損なわれるだけでなく、共和党を利するだけと判断したようだ。ただ黒人人口が優勢な南部諸州での選挙の結果次第で再燃する可能性もある。
 クリントン氏はニューハンプシャー州を遊説中に、キング牧師を引き合いに出し、「キング牧師の夢が実現したのは、リンドン・ベインズ・ジョンソン大統領が1964年7月に(公民権運動の指導者らと協議を重ね、人種差別撤廃を掲げた)公民権法を制定したから」と語った。
 キング牧師の「理念」よりも大統領の「実行力」を重要視し、「キング牧師の運動を傷つけるもの」と見たオバマ氏がすぐに「不適切な発言だ」と非難した。「黒人への差別撤廃を叫んだキング牧師の理念は、白人大統領の承諾なしには実現しなかった、との趣旨ではないか」という声も上がった。クリントン氏は13日、「オバマ氏が私の発言をゆがめている」と反論した。
 クリントン氏は14日には、ニューヨークで開かれた民間警備会社の労働条件改善を求める労働団体の会合に出席、キング牧師の偉業をたたえた。キング牧師の誕生日(15日)のお祝いも兼ねたものとあってか、聴衆のほとんどは黒人。クリントン氏が演台に上がると、歓声とともにブーイングが起き、退席者も出た。同氏は「未完の夢を実現し、受け継いだものを実行しなければならない。誰もがキング牧師の恩恵を受けている」と同牧師に敬意を表した。
 さらに、クリントン氏が「女性やアフリカ系米国人(黒人)が米大統領選に出馬する日が来る時を、どれだけ大勢の人々が夢に描いたことか。オバマ上院議員も私も、キング牧師のおかげでここまで来られた」と強調すると、拍手が沸いた。
 オバマ氏に対しては、クリントン前大統領が、オバマ氏のイラク戦争をめぐる態度の揺れを取り上げ、反対で一貫していたとするオバマ氏の主張を、「私がみたなかで最高のおとぎ話だ」と非難したが、これには「度を超した軽侮」との批判が広がり、15日夜、ネバダ州での演説ではそうした発言は一切しなかった。
 同日夜のテレビ討論会で、両候補は「支持者たちは時に熱狂し、制御がきかなくなる」(クリントン氏)、「支持者たちは過度に熱心になることがある」(オバマ氏)などと述べ、非難合戦が度を超していたことを認めた。


◎北朝鮮の人権「抑圧なお深刻」と国連人権理の特別報告者

 【CJC=東京】国連人権理事会の特別報告者として北朝鮮の人権状況を調査しているウィティット・ムンタボーン氏(タイ)が18日、東京都内で朝日新聞と会見し、「深刻な抑圧状況が続いている」として、国際社会が圧力をかけ続ける必要があるとの認識を示した。
 北朝鮮が昨年夏の洪水被害以降、食糧支援機関の立ち入り規制を緩和したことを評価する一方、予算の軍事への偏りなどから国民に食糧が行き渡らない実態を指摘。政治的な自由の抑圧や拷問など「組織的な人権侵害が続いている」とした。
 朝日新聞によると、日本人をはじめとする拉致問題について「世界的な問題であり、北朝鮮は具体的な対応を示す必要がある」と強調。核問題の6者協議の進展具合が、拉致などの人権問題の解決にも影響するとの見方を示した。


◎ガリレオめぐる教皇見解がイタリアで論議

 【CJC=東京】17世紀に地動説を唱えたガリレオ・ガリレイの裁判について教皇ベネディクト十六世が1990年、教理省長官として述べた見解がイタリアで論議を呼んでいる。
 前任の故ヨハネ・パウロ二世は、教皇在任中に、ガリレオに関して、バチカン(ローマ教皇庁)が有罪判決を下したのは誤りだった、と認めた。ただ当時の判断は理解できるものだったとして判決を擁護もしてはいた。
 問題は、教皇を補助する立場の教理省長官として、当時のヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿が、「ガリレオの時代、ローマ・カトリック教会はガリレオ自身よりもはるかに理性に忠実であり続けた。ガリレオに対する一連の措置は、理にかなった公正なものだった」と述べていたこと。
 教皇はローマ大学サピエンツァ校で1月17日の始業式に講演を予定していたが、同大学で研究者と学生たちによる抗議運動が巻き起こった。まず、同大学の科学者60人以上が、同大学に宛てた書簡の中で、教皇(当時は枢機卿)のガリレオ裁判、さらには、科学についての見解が「われわれの感情を損ない、屈辱を与えた」と主張、大学にこうした考えを持つ教皇を呼ぶのはふさわしくないと、招待をやめるよう要求した。
 学生も抗議活動を展開、約100人(200人以上との報道もある)が15日、同大学内の演説予定会場や大学総長室がある建物を占拠した。学生は演説の際の構内でのデモ実施を要求、大学総長と討議した。学生たちは、教皇が「悪魔の所業」と呼ぶ大音響のロック音楽や、「反教会的な」ゲイやレズビアンのパレード、「知には教皇も聖職者も不要だ」というバナーなどで教皇を迎える計画だったという。教皇が、妊娠中絶や同性愛の問題で保守的とされることも、学生らの反発を招く一因となったと見られる。
 大学側は、教皇による講演が確実に行なわれるよう、構内に警察を配備することも計画したが、バチカンは15日、教皇が予定していた演説を中止するとの声明を発表した。学生らは同日、占拠していた大学内の建物を明け渡した。
 教皇が抗議運動を理由に予定されたイベントを欠席するのは極めて異例で、教皇の威信にも影響しそうだ。教皇は2006年にも講演でイスラムの教えを「邪悪」とするビザンチン帝国皇帝の発言を引用、イスラム世界の反発を招いている。
 イタリアのロマーノ・プローディ首相は「(バチカンを含めた多用な価値を認める)イタリア市民社会の伝統の損失だ」と語った。
 ベネチア出身の物理学者トマソ・ドリゴ氏によると、問題になった発言は元々が科学哲学者ポール・ファイヤアーベントのもの。ファイヤアーベントは著書『方法への挑戦=科学的創造と知のアナーキズム』(邦訳、新曜社、1981)のなかで、ガリレオの地動説流行の原因を、ラテン語でなくイタリア語で書いたからであり......古い思想とそれの学問基準に嫌気がさしている人々にアピールしたことにある、と指摘しているという。
 ガリレオ裁判には「真理」をめぐる権力闘争的な面の指摘もある。ガリレオが処罰されたのは、発言内容というよりはその姿勢に原因があり、「地動説を受け入れない人は人類の恥」「成長しない子ども」など過激な発言をガリレオが行なったためだ、と教会を擁護する意見もある。


◎教皇の日曜恒例の祈りに信者ら大きな歓声

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世が学生らの反対でローマ大学サピエンツァ校での演説を中止したことを受け、バチカンのサンピエトロ広場には、1月20日の日曜恒例の祈りの集いで教皇への支持を示めそうとの動きもあってか、10万人以上の信者らが集まった。国営イタリア放送は20万人以上と報じている。
 教皇への支持を訴える横断幕や旗が掲げられ、教皇がサンピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を見せると大きな歓声が上がった。
 教皇は、「学者らが他人の意見を常に尊重し、オープンで責任のある心を持ち、真実や善を追求するように願いたい」と述べ、「友愛の精神、自由と真実を愛する心、兄弟のように寛容な社会のためにともに全力を尽くし、前進しよう」と呼び掛けた。
 演説中止を受け、枢機卿の1人が信者らに参加を呼び掛けていたとも報じられた。


◎イエズス会新総長にアドルフォ・ニコラス神父、日本にも長く滞在

 【CJC=東京】カトリック男子修道会『イエズス会』は、1月15日からローマで総会を開き、新総長にアドルフォ・ニコラス神父(71)を選出、教皇ベネディクト十六世に報告した、と19日発表した。
 総会はピーター=ハンス・コルベンバッハ総長(79)が高齢を理由に引退を表明したことを受けて開かれたもの。世界各地からローマに集まった217人の代表が4日間にわたり祈りのうちに投票、2回目にニコラス神父が選出に必要な過半数の票を得たという。
 ニコラス神父は1936年4月29日、スペインのパレンシア生まれ。53年イエズス会入会。マドリードや日本で哲学や神学を学んだ。日本での生活が長く、日本語にも堪能。67年3月東京で司祭に叙階された。71年から上智大学で組織神学を教えるなど日本通。93~99年日本管区長、2004年から東アジア・オセアニア地区会議議長。
 イエズス会は、112カ国に約2万人の会員がおり、カトリック教会の男子修道会としては最大。主な活動は高等教育と研究活動といった教育活動であり、宣教事業や社会正義事業と並んで活動の三本柱となっている。1534年8月15日、イグナチオ・デ・ロヨラとパリ大学の学友だったフランシスコ・ザビエルら同志6人がパリ・モンマルトルの丘の中腹の諸殉教者聖堂に集まった日が創立日とされている。清貧・貞潔の誓いとともに「エルサレムへの巡礼と同地での奉仕、それが不可能なら教皇の望むところへどこでもゆく」という誓いを立てるなどしたが、教皇への服従を唱えながらも、イグナチオと初期の会員たちは当時のカトリック教会には改革と刷新の必要があることを理解し、カトリック教会の内部に目を向けることの重要性を認識しており、教会にはびこる汚職、不正、霊的倦怠を激しく批判、教皇や教会の高位聖職者たちと対立することもあった。
 日本では、1908年の再来日以来、広島教区や東京の麹町教会(聖イグナチオ教会)における司牧を担当、上智大学、エリザベト音楽大学、六甲学院中学校・高等学校、栄光学園中学校・高等学校などで教育活動に従事している。


◎「トム・クルーズ演説はナチスの宣伝相に似ている」とドイツの歴史家

 【CJC=東京】AFP通信によると、ドイツの歴史家、グイド・クノップ氏が、1月20日付けのビルド紙で、米俳優トム・クルーズの演説をナチスの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスが戦争を呼びかけた演説に似ていると語った。
 第二次世界大戦史を専門とするクノップ氏は、クルーズが4年前、サイエントロジー教会の会員に向かって行った演説の映像を見たという。クルーズさんはこの中で、「我々はこの場所を正すべきか?」と会員に尋ねており、これを見たクノップ氏が、ゲッペルスが1943年2月18日に行った「総力戦」を呼びかける演説を思い出させると語ったもの。
 「クルーズの演説の手法は、米国の多くの権力者の間では一般的なのかもしれない。しかし、クルーズさんがサイエントロジー教会の会員に世界を正すべきかと尋ね、会員全員が『そうだ』と答える場面は、すべてのドイツ国民にゲッペルスの悪名高き演説を思い出させるだろう」言う。
 クルーズは、1944年のヒトラー暗殺未遂事件を描いた近作映画で、暗殺計画の首謀者だったクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐を演じている。ただクルーズがサイエントロジー教会の信者であるため、不快感を抱いているドイツ国民もいる。
 ドイツでは、サイエントロジー教会が信者を搾取しているとして、禁止する動きが出ている。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(1月20日)=https://www.cwjpn.com
★「城外の聖パウロ大聖堂」=超教派礼拝堂を設置へ=ローマ=キリスト教一致祈祷週間
★地球温暖化を学ぶ=正平協が講演会開催=「世界の紛争はエネルギー利権争い」
★バチカン 死刑停止決議を歓迎=国連総会の採択に「希望」
★北海道・小樽=中高生のマザー・テレサ・クラブ=クリスマスに展示会
★宗教教育 どう支援?=国際宗教研究所シンポジウム=各教団の対応問う

  =キリスト新聞(1月19日)=https://www.kirishin.com
★ルワンダに届け祈り=NGOスタッフ佐々木和之さんを支援=関東学院小が展示会
★カトリック・イスラム=今春にも代表会談実現
★ブラジル・佐々木治夫神父が報告=第二の「植民地主義」を危惧=ラテンアメリカ・キリスト教ネット
★"御心にかなわなければどうぞ改めてください"=石破防衛相、思い語る=国会クリスマス晩餐会
★聖三木図書館=装い新たに開館=麹町教会内へ移転

  =クリスチャン新聞(1月20日・休刊)=https://jpnews.org

  =リバイバル新聞(1月20日)=https://www.revival.co.jp
★国家を弟子化する試み=ハワイでトランスフォーメーション進行中=教育・政府・ビジネスの3領域で変革
★NHKラジオで十字架語る=大川従道牧師

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