世界キリスト教情報 第887信(2008.01.14)
- 国連の死刑停止決議を歓迎=教皇、各国大使に新年挨拶
- バチカンが聖職者の性的虐待犠牲者のために祈り呼び掛け
- ベトナムのカトリック教徒、教会返却を求め『徹夜の祈り』
- 「アラー」はイスラム教以前から「神」とマレーシアのキリスト者
- 米聖公会がサンホアキン教区主教に3月まで聖務停止措置
- ブッシュ大統領が中東歴訪、ベツレヘムの聖誕教会を訪問
- 英議会に提出された政教分離法案の番号が「666」
- 神学者トーマス・F・トーランス氏死去
- 《メディア展望》
◎国連の死刑停止決議を歓迎=教皇、各国大使に新年挨拶
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は1月7日、バチカン駐在の外交団と恒例の新年の挨拶を交換した。教皇宮殿には、バチカンと外交関係を結ぶ176カ国および欧州連合、マルタ騎士団、また特別外交関係にあるロシア連邦、パレスチナ解放機構、そして国連の各機関などの代表が集まった。
バチカン放送によると、外交団主席、サンマリノ共和国のジョヴァンニ・ガラッシ大使の挨拶に続き、教皇は外交官らへの言葉を述べた。
教皇は、今年の世界平和の日メッセージ「人類家族、平和の共同体」に強調したごとく、人類が一つの家族となるようにとの思いを語り、世界に安定を保証するには秩序と権利が必要だが、これらの権利が創造主から来る自然権利に基づいてのみ、それは真の平和の力となりうるだろうと述べた。
今日、生命が様々な攻撃から脅かされている中にあって、教皇は生命倫理の最前線は科学と倫理の間の選択ではなく、科学の倫理的使用にあると指摘された。また教皇は国連が死刑執行停止を求める総会決議を採択したことが、人間の命の聖なる性格を論議するきっかけとなるよう期待を寄せた。人権のテーマとして教皇は、社会の基礎である家庭の保護と、信教の自由を訴えた。
◎バチカンが聖職者の性的虐待犠牲者のために祈り呼び掛け
【ローマ=ENI・CJC】バチカン(ローマ教皇庁)聖職者省長官のクラウディオ・フンメス枢機卿は、児童に性的虐待を行った聖職者の行動を償い、犠牲者を助けるために世界中のカトリック教徒が祈るよう呼びかけた。バチカン紙『オッセルバトレ・ロマノ』が1月5日報じたところでは、同枢機卿はこの祈りを教皇ベネディクト十六世が求めている、と述べたという。
全司教が自らの教区で、聖職者によってもたらされた被害を修復し、犠牲者が自分の尊厳を取り戻すことを助ける為に祈ることを教皇が求めている、と枢機卿は語った。
ローマの『レプブリカ』紙は、教皇が性的虐待を行った聖職者を「許容しない」方策を続けるものと報じている。
フンメス枢機卿は、カトリック教会の聖職者を巻き込んだ「スキャンダル」がいつも存在したが、「最近では極めて重大な結果をもたらしている。しかし聖職者の大多数はそのようなスキャンダルには関係がない」と述べた。
同枢機卿は特定の事例を引用しなかったが、2002年、ボストンの当時の大司教バーナード・ロー枢機卿が教区の聖職者虐待問題への対処を誤ったとして起訴され、2007年7月にはロサンゼルス教区が性的虐待の犠牲者508人によって起こされた訴訟で6億6000万米ドル(約724億円)を支払っている。
◎ベトナムのカトリック教徒、教会返却を求め『徹夜の祈り』
【CJC=東京】ベトナムのカトリック教徒数百人が1月5日から6日にかけ、ハノイ市中心部の聖ヨセフ教会前に集まり、1950年代に政府に接収された同教会の返還を求める『徹夜の祈り』を行った。昨年末、首相がハノイ大司教との会談の際、解決を約していたのに政府が検討を拒否していることに抗議したもの。
同教会はフランス植民地様式の建物で、面積1・1ヘクタールという。
◎「アラー」はイスラム教以前から「神」とマレーシアのキリスト者
【シンガポール=ENI・CJC】マレーシアのキリスト者は、非イスラム教徒が「アラー」という言葉を使うことを禁止するという政府の決定に抗議の声を挙げている。1月7日、メディア向けに発表した声明で、マレーシア・キリスト教連合は、イスラム教徒だけが「アラー」という言葉を使用出来るという、アブドゥラ・ジン首相府相(宗教問題担当)の発言に「深い失望と遺憾」の意を表明した。
「『アラー』という単語はイスラム教以前にアラブ人キリスト者によって使用されていた」と、連盟議長のポール・タン・チーイン司教(イエズス会士)は声明で指摘している。「私たちは『アラー』という単語を使って来たし、これからも使い続ける。それは私たちの宗教権利だ」と、同連盟のハーマン・シャーストリ代表幹事は語った。
マレーシアの総人口2500万の約6割はイスラム教徒。キリスト者と仏教徒が28%を占めているが、その多くは少数派の中国系社会に属している。ヒンズー教徒は約1割。
◎米聖公会がサンホアキン教区主教に3月まで聖務停止措置
【CJC=東京】米聖公会は1月11日、カリフォルニア州サンホアキン教区のジョン=デービッド・ショフィールド主教に3月まで聖務執行を差し止めた。聖書理解と同性愛問題での違いをめぐって同教区が聖公会から離脱することを昨年12月6日決定したことに対するもの。教区自体が離脱を決めたのはこれが初めて。
3月13日に聖公会指導者が最終判断するが、それまで再考の時を与えたものとカサリン・ジェファート・ショリ総裁主教の『カノン』チャールズ・ロバートソン氏が語った。
今回の措置に対する教区側の反応はなお確かではないが、離脱を決めても教区自体とその財産は分離出来ないとする聖公会側の見解を同教区は否定している。
◎ブッシュ大統領が中東歴訪、ベツレヘムの聖誕教会を訪問
【CJC=東京】ジョージ・ブッシュ米大統領は1月9日、中東歴訪を開始し、最初の訪問国であるイスラエルに到着、中東和平実現のための新たな機会を期待していると述べた。
イスラエルのシモン・ペレス大統領は歓迎の辞の中で、イランや同国と連帯関係を持つイスラム原理主義組織『ハマス』、シーア派武装組織『ヒズボラ』などの狂気を止めるため、ブッシュ大統領に支援をと呼びかけた。
ブッシュ大統領は聖地(パレスチナ)の和平実現へ向けた新たな機会を期待していると述べた。
大統領は同日、イスラエルのエフド・オルメルト首相、ペレス大統領と会談し、翌10日、ヨルダン川西岸ラマラでアッバス・パレスチナ自治政府議長と会談した。会談後の共同記者会見で、大統領はパレスチナの領土が一体性を保つ必要があることを指摘した。ただ入植地撤去について具体的な見解は示さず、実質的な成果はなかった。
大統領はアッバス議長と会談した後、ベツレヘムに移動し、イエス・キリストの生誕地とされる聖誕教会を訪問した。今回の訪問でキリストゆかりの地を訪れることを希望しており、「これほど神聖な場所はない。魂が高揚し、歴史的知見が深まった」とコメントした。
大統領は10日、和平反対派も含むイスラエル閣僚らとの夕食会でオルメルト首相を絶賛、首相も大統領の「テロとの戦い」に最大級の賛辞を贈った。首相は「テロとの戦い」の大義名分で、イスラム原理主義組織ハマスが支配するガザへの攻撃強化に対するお墨付きと、「パレスチナ国家樹立よりイスラエルの安全保障が優先」との確約を得た格好だ。
大統領はイスラエルに対し、1967年から続くヨルダン川西岸の占領終結を呼び掛け、1948年のイスラエル建国に伴って発生したパレスチナ難民の問題について、帰還先を将来のパレスチナ国家とする一方、難民に補償を行うための国際的な枠組みを創設すべきだとの考えを示すなど、解決に向け踏み込んだ姿勢は見せた。
◎英議会に提出された政教分離法案の番号が「666」
【CJC=東京】英下院で1月10日、国教会制度廃止と政教分離を求める法案が提出されたが、問題の議案の提出番号が666番だったことから、議員らに驚きが広がった、とAFP通信が報じている。
「666」は新約聖書の『黙示録13・18』に登場する。「ここに知恵が必要である。賢い人は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は六百六十六である」(新共同訳)と記されている。
法案策定に関わった自由民主党のボブ・ラッセル議員は、「その数字は悪魔の印だ。まるで神か悪魔の不思議なわざだ」と驚きを隠さない。黙示録、特にこの個所をめぐっては論議が絶えず、「666」という数字自体も正確には「616」だという主張もある。
英国では、エリザベス女王が英国国教会の首長でもあり、政教分離は完全ではない。
ただ英下院では慣習的に、役職についていない議員が提出した法案が実際に本議会で審議される可能性はほとんどない、とAFP通信は指摘している。
◎神学者トーマス・F・トーランス氏死去
【CJC=東京】神学者トーマス・F・トーランス氏が12月2日死去した。94歳。1913年8月30日、中国で宣教師の家庭に生まれた。「20世紀、英国で最も偉大な神学者」(アリスター・マクグラス氏)。三位一体教義や神学と科学の分野の研究で知られ、カール・バルトの大作『教会教義学』の英訳、神学雑誌『スコッティッシュ・ジャーナル・オブ・セオロジー』創刊、改革派と東方正教会の対話などにも貢献した。
エジンバラ大学で哲学、神学を学ぶ。ニューヨークのオーバーン神学校教授、第二次大戦末期には英軍の従軍牧師として北アフリカやイタリアに駐留したこともある。1947年、アバディーンのビーチグローブ教会牧師に就任、50年にはエジンバラ大学で教会史を、52年にはキリスト教教義を講じている。76年、スコットランド教会(長老派)大会議長に選任された。
著作は『バルト初期神学の展開=1910~1931年』(邦訳・新教出版社、1977年)、『科学としての神学の基礎』(邦訳・教文館、1990年)など多数。
《メディア展望》
=カトリック新聞(1月13日・休刊)=https://www.cwjpn.com
=キリスト新聞(1月12日)=https://www.kirishin.com
★宗教界は何を求められているか=改定教育基本法「一般的な教養」めぐりシンポ
★日宗連が中教連で意見=宗教文化や知識教育を
★葛飾ビラ控訴審=「表現の自由」に制限=東京高裁 一審無罪判決を破棄
★日本の司教団がバチカン訪問=教皇「新たな道の追及を」
★中国のキリスト教対策=北京五輪控え硬軟多様
=クリスチャン新聞(1月13日・休刊)=https://jpnews.org
=リバイバル新聞(1月13日・休刊)=https://www.revival.co.jp